真・恋姫†夢想 革命~新たな外史を駆けるもの~   作:黒石大河

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序章 天の遣いたちと地の覇王2

俺たちが取り囲まれ戸惑っていると、兵士たちは一糸乱れぬ動作で間に道を作った。

 

その間からこちらにゆっくりと歩いてくる三人の女の子。

 

「華琳様、こやつらが例の賊でしょうか?」

 

「...どうやら違うようね。連中はもっと年かさの、中年の男達だと聞いたわ。」

 

「どうしましょう。連中の一味の可能性もありますし、引っ立てましょうか?」

 

「そうね...けれど、逃げる様子もないということは...連中とは関係ないのかしら?」

 

「我々に怯えているのでしょう。そうに決まっています!」

 

「怯えているというよりは、面食らっているようにも見えるのだけれど...。」

 

どうやら誰かを探しているようだ。中年の男達ねぇ...。

 

とりあえず、さっきの趙雲さんたち同様言葉は通じるらしい。

 

「あ、あの...」

 

「...あら?言葉はしゃべれるようね。私の言葉は通じているかしら?」

 

「ああ。大丈夫だ通じてる。」

 

一刀の返答に合わせて俺もうなずく。しかしこの三人もかなりのやり手だな。

 

とりあえず、真名ってのは呼ばないようにして、名前を聞くか。

 

「すまない。俺は高河夏輝、んでこっちは北郷一刀。構わなければ君の名前を教えてもらいたい。」

 

「それなりに礼儀はわかっているようね。私は曹孟徳。ここ、苑州の陳留の太守をしている者よ。」

 

よりにもよって曹孟徳とは。ほんとに三国志の登場人物しかいないのか…。

 

「……たいしゅ?」

 

「太守も知らないの?あなた達、どこの生まれかしら?」

 

「え、ええっと、俺は生まれは東京だ。」

 

「俺も、生まれは東京だな。」

 

「……はぁ?」

 

やっぱりだめか。

 

「貴様ら!華琳様の質問に答えんか!生国を名乗れと言っておるだろうが!」

 

「い、いやだから!俺も夏輝も日本の東京だって言ってるじゃないか!」

 

この黒髪の人、何というかとても脳筋な空気が...。

 

「姉者、そう威圧しては、答えられるものも答えられんぞ。」

 

「しかし秋蘭!こやつらが盗賊の一味という可能性もあるのだぞ!そうですよね、華琳様っ!」

 

「そう?私には、殺気の一つも感じさせないほどの手練れには片方は見えないのだけれど。もう片方も、どうやら知り合いのようだし、その可能性はなさそうだけれど。」

 

もう片方って俺のことか?相手を見ただけでそういう判断ができるとは、すごい女の子だな。演技なのか、それとも本物なのか?

 

髪色や服装はともかく顔つきは東洋系だから、恐らくアジア圏の人たちで間違いないな。とりあえずどこかわからない場所とはいえ、ヨーロッパやアメリカの方ってわけじゃないようだ。

 

「そうだ、たいしゅってのを教えてもらいたいんだけど。」

 

一刀、お前ぶれないな。

 

「...あきれた。秋蘭。」

 

どうやら説明するのが面倒になったらしい。太守ねぇ。

 

「太守というのは郡の政事を司り、治安維持に従事し、不審者や狼藉者を捕まえ、処罰する務めのことだ。これなら意味は分かるか?」

 

「...なんとなく。要するに、警察と役所と裁判所を足したようなもんか。」

 

「またわけのわからんことを...」

 

一刀は無事納得したらしい。

 

「要するに、税金を集めたり、法律を決めたり、町の治安を守る仕事だろ?」

 

「補足するなら、その治安を乱した輩の確保やその罪の刑罰を与える仕事だな。」

 

「二人ともわかっているじゃない。なら、今の自分の立場も分かっているわよね?」

 

おっと、この補足は藪蛇だったようだ。

 

「税金の未納はともかく、町の治安は乱してないと思うんだけど?」

 

「そうかもしれないけど、あなた達、十分以上に怪しいわよ。春蘭、秋蘭。引っ立てなさい。」

 

「え、いや、悪いこと何もしてないと思うんだけど!?」

 

一刀、往生際が悪いぞ。

 

「それは華琳様がお決めになることだ!貴様が決めることではない!」

 

そりゃごもっともだ。

 

一刀は春蘭って人に取り押さえられた。どうやら細身だが力はすごいらしい。一刀がいとも簡単に取り押さえられる。

 

「すまないな。これも華琳様の命令だからな。」

 

「いや、そういう仕事なんだ。俺が同じ立場ならそうするさ。」

 

俺は水色の髪の秋蘭って呼ばれていた人だった。物分かりがよさそうな人で良かった。

 

「その通り。」

 

二人にそれぞれとらえられ、移動しそうな雰囲気になった時、

 

「まってー。」

 

「...華琳様、何やら人が。」

 

この声は、

 

「シャン!どうした?」

 

さっき分かれたはずのシャンが、ぱたぱたと走り寄ってきた。

 

「やっぱり、お兄ちゃんたちのことが気になったから。...戻ってきた。」

 

「...そか、ありがとな。」

 

俺は走り寄ってきたシャンの頭をなでる。すると、シャンはくすぐったそうな顔をして、腰あたりにギュッと抱き着いた。

 

「貴女は?この者たちを知っているの?」

 

「貴様!名を名乗らんか!」

 

「えーっと。ちょっと待って。...こういう時は、ちゃんとしたやつ...。」

 

威圧的な春蘭さんの前でもちょっとボーっとした空気のシャン。もはや才能だな。

 

少しすると、シャンは曹操を見上げて背筋も伸ばした。

 

「シャン...じゃなかった。わたくしは、姓を徐、名を晃、字を公明と申します。以前は長安で騎都尉を務めておりました。今は暇をいただき、野に下っております。」

 

...シャンって徐晃公明だったのか。その名乗りは少し眠そうな見た目とは違い、すごくキリっとしたものだった。

 

「香風って、そんな名乗りできたんだな。」

 

「ちゃんとできるよー。お兄ちゃん、シャンちゃんとできたよー。」

 

「そうだな。えらいぞ―シャン。」

 

「えへへー。」

 

何というか、物凄い癒される。

 

「騎都尉の徐公明...。確か、車騎将軍の楊奉殿の麾下にそんな名の子がいたわね。都の周りに巣くう賊退治で名を上げたと聞いていたけれど。」

 

「あー、それシャンのこと。」

 

「それほどの人物ならば、こいつらはお前の侍従なのか?」

 

「...違うよ。シャン、もうそんなに偉くない。今はただのシャン。」

 

「ならば、どういうかんけいなのだ?」

 

「んー、……頭をごつーん、ってした関係?」

 

「訳が分からんな。」

 

「いずれにしても、これの言葉が妄言かどうかを確かめる一助けにはなるわ。それに、徐公明殿が真名を預けたとなれば、少なくとも凡百の庶人ということもないのでしょう。」

 

真名って、そういう信頼の現れとしても使えるんだな。

 

そんなものをおいそれと言ってしまったことは、一生の秘密にしよう。

 

「では、徐公明殿。私たちに同行いただけるかしら?もちろん、私の客人として。」

 

「お兄ちゃんも一緒なら。」

 

「構わないわ。...どうする?高河夏輝、北郷一刀。」

 

「貴様らに選択肢はないぞ。まぁ、華琳様の客人というなら、相応の態度はとってやる。」

 

「...わかったよ。一刀、お前もいいだろ?」

 

「あぁ。俺にも拒む理由はないしな。...とりあえずその手を離して。...痛い...。」

 

なんか、一刀の手、砕かれそうなくらいに握られてやがる。

 

「まだ連中の手がかりもあるかもしれないわ。秋蘭は半数を率いてあたりを捜索。春蘭は私とともに一時帰還するわよ。」

 

「はっ!」

 

「御意。」

 

こうして俺たちはいったん町に向かうこととなった。

 

当初思っていた方法とはだいぶかけ離れているけれど。

 

 

 

 

 

 

「では、改めて質問させてもらう。名前は?」

 

「高河夏輝。」

 

「では高河夏輝、おぬしの生国は?」

 

「日本。」

 

「...この国に来た目的は?」

 

「わからない。」

 

「……ここまでどうやってきた?」

 

「シャンの話では一刀と空から落ちてきたらしい。俺は気が付いたらここだったんだがな。」

 

「うん。流れ星見てたら、一刀お兄ちゃんと一緒にお兄ちゃんがひゅーって落ちてきた。」

 

あの後、曹操の出城にある街に連れてこられて、一刀と合わせてもう何度も繰り返されたやり取りだった。

 

「...華琳様。」

 

「埒が明かないわね。春蘭。」

 

「はっ!拷問にでも掛けましょうか?」

 

「んなっ!?」

 

春蘭さんの言葉に俺と一刀は同時に立ち上がる。

 

「拷問されようが何されようが、今言った以上の事はわからないし、知らないんだって!」

 

「しかも、ほんとに頭をぶつけただけの関係だったとはね。」

 

「まぁ、ぶつけたのは一刀で、俺はほんとに落ちてきただけだがな。」

 

「そうだったわね。」

 

「あとはこやつらの持ち物ですが...。」

 

机の上に置かれていたのは、俺と一刀の持ってきたもの全てが並べられていた。

 

一刀の方は、壊れた携帯、ハンカチに小銭が少し。

 

俺の方は、リュックの中身がすべて出されていた。そして小銭入れに入ってあった、百円玉の1枚はいま曹操が手に取っている。

 

「この菊の細工は見事なものね。北郷一刀も同じものを持っているようだけど、細工はあなたが?」

 

「いや、これは俺の国の貨幣だな。国が管理して国が発行している。」

 

「その割には、見たこともない貨幣だけど。...その日本という国は、西方にでもあるの?」

 

「いや、国の位置として東方になるな。」

 

「その前に、この国がどこか教えてくれるかな?日本でも中国でもないなら、モンゴルとかか?それともインド?東南アジアとはまた違う気がするけど。」

 

一刀の問いはもっともだ。確かに、街の雰囲気や建物はこれぞ中華風っていう建物だし、もしここが本当に中国じゃなければ、きっと本当にタイムスリップとかなんだろう。諦めるしかない。ファンタジーな住人になるのかぁ。涙でそう。

 

「貴様ぁ...っ!こちらが下手に出ていれば、のらりくらりと訳の分からん事ばかり...!」

 

「いや、あんたは下手に出てねぇだろ...。」

 

俺の言葉に一刀もうんうんと首を縦に振る。

 

「当たり前だ!貴様ら相手に下手に出る理由がどこにある!」

 

「はぁ...春蘭。私の頭痛の種を増やさないで頂戴。」

 

「...で、ですが。」

 

「あ、あといい加減そっちの二人も名前を教えてもらいたいんだけど。その今呼びあってるのは真名ってやつだよな?」

 

「あら、知らない国から来たわりに、真名の事は知っているのね。」

 

「シャンからある程度聞いてね。」

 

「...うん。お兄ちゃんたちに、真名の事教えたんだー。」

 

そういって隣に座っているシャンが抱き着いてくる。

 

何というか、兄離れできない妹みたいな感じだな。

 

さすがに、一刀が勝手に程立の真名を呼んでしまって、趙雲さんたちに殺されかけたとかは黙っておこう。さすがにこんなことで迷惑をかけるわけにはいかない。

 

「そうね。私はさっきも言ったけど、曹孟徳。彼女たちは夏侯惇と夏侯淵よ。」

 

「ふんっ。」

 

「...。」

 

「は?」

 

「はぁ。」

 

さすがに俺と一刀は顔を見合わせた。だってなぁ。

 

「一刀。」

 

「あぁ。まさかこの子たちが魏の曹操に夏侯惇、夏侯淵とはなぁ。」

 

「...はぁ?」

 

「...ん?」

 

「...。」

 

俺と一刀の会話によくわからない感じの、夏侯惇、夏侯淵にシャン。

 

とりあえず、曹操の側近として夏侯惇、夏侯淵がいるとなると、まさか本当にタイムスリップしてしまったらしい。しかも全員女性という訳の分からない状況付きで。

 

「...一ついいかしら?」

 

「なんだ?」

 

「...どうして今その地名を口にしたのかしら?それは、冀州の魏郡を示しているというわけではないわよね?」

 

「ああ。そうなる。」

 

「そもそも俺たちじゃあ、その冀州の魏郡ってのがどのへんかもわからないし。それに曹操といえば、魏の曹孟徳っていうのが定番だろ?」

 

さすがに乱世の奸雄という呼び名は伏せるべきだな。...切られたくないし。

 

「貴様、華琳様を呼び捨てにするでない!しかも、魏だの何だのと、意味不明なことばかり言いよって...!ここは陳留で、魏郡はもっと北だ!」

 

「春蘭。少し黙ってなさい。」

 

「う..は、はぃ…。」

 

「...信じられないわ。」

 

「...華琳様?」

 

「以前戯れに、この先私が支配領域を広めた時の勢力図を思い描いてみたことがあるのよ。この陳留を第一歩とし中原に覇をを唱え、辺境にまで名を轟かせ...その時、要になるであろう地の名が...」

 

「...魏、ですか。」

 

「もちろんただの戯れよ。今それを口にしたとしても、それはただの絵空事にしか過ぎないもの。けれど、どうして会ったばかりのあなた達が知っているの?それに、私の操という名も知っていた理由を教えなさい。」

 

「まさかこやつら、五胡の妖術使いでは…!」

 

「華琳様、お下がりください!未来の魏王となるべきお方が、妖術使いなどという怪しげな輩に近づいてはなりませぬ!」

 

夏侯惇、適応するのはやっ!?

 

「...やっぱりな。一刀。」

 

「あぁ。そうらしいな。」

 

一刀も同じ結論に至ったらしい。

 

「…お兄ちゃん?」

 

「ん?シャン、大丈夫だよ。...曹操、分かったことがある。一刀と一緒に話させてもらうが、構わないか?」

 

とりあえず、分かったことを話してみるか。俺はシャンの頭をなでながら、今の状況で分かったことを、曹操がうなずいたのを確認して話し始めた。

 

 

 

 

「…で、結局それは、どういう事なのだ?」

 

「だから、俺たちはこの世界かいうと…ずっと先の世界から来た人間ってことらしいってことだよ。」

 

夏侯惇の疑問に一刀が答える。

 

まさか漫画やSFでしか起きそうにない、理不尽な出来事。それならこの状況は説明がつく。

 

「秋蘭、理解できた?」

 

「…ある程度は。しかし、にわかには信じがたい話ですね。」

 

「俺たちも全部が真実だとはおもってない。けれど、そう考えないと辻褄が合わないことが多すぎる。」

 

漢字圏のはずなのに日本や中国も知らない。三国志の存在を知らない。曹操、夏侯惇、夏侯淵、徐晃といった三国志を彩る英雄たちの名を持つ人物。

きっとまだ魏を建国する前で間違いないだろう。曹操は先ほど陳留の太守だといったということは、黄巾の乱、もしくはその以前の時代なのだろう。

 

真名という風習や、曹操たちが女の子という、謎のおまけもくっついているが…。

 

恐らくはこの部分はたいして関係はないだろう。

 

「この時代の王朝は漢王朝で間違いないだろう。今の皇帝は恐らく霊帝だと思う。初代の皇帝は光武帝であってるかな?」

 

「...ふむ。間違ってないわよ。そのあたりの知識はあるのね。」

 

「夏輝、お前ってただテストの点がいいだけじゃなかったんだな。」

 

「...」

 

「イテッ!?」

 

俺は一刀の頭に鉄拳を落とした。失礼な奴だ。

 

「...てすと?」

 

「あぁ、学校...いや、私塾って言った方がいいな。そこで定期的にある試験のことだ。」

 

「俺や、夏輝の国では、国が国民全員に義務として勉強させているんだ。」

 

「なるほど。基本的な学力を平均的に身に着けさせるためには悪くない方法ね...。」

 

「実際俺たちのいた国では国民すべてが字の読み書きは習得している。…さて、ここからが重要だが、漢王朝は俺や一刀のいた世界から、千年以上昔の話なんだ。」

 

「どうやってこの国に来たのかもわからず、なぜこの時代なのかも俺たちにはわからないがな。」

 

「そう。…南華老仙の言葉にこういう話があるわ。南華老仙…荘周が夢を見て蝶となり、蝶として大いに楽しんだ後、目が覚める。ただ、それが果たして荘周が夢で蝶になっていたのか、蝶が夢を見て荘周になっていたのかは…誰にも証明できないの。」

 

「胡蝶の夢だな。」

 

「大した教養ね。それも学校とやらでおそわったのかしら?」

 

「まぁな。ところで俺たちはどうするのが一番いいのかだな。」

 

「そうね…。今、この大陸にはある噂が流れているの。 …星に乗って降臨する天からの御遣いが、乱れた世を鎮める。というね。実際、あなた達は違う世界から来たのだし、自分たちは天の御遣いとでも名乗るのがいいんじゃないかしら。」

 

「うわぁ。何というか胡散臭い話だな。」

 

「一刀、そんなこと言ってると…。」

 

「貴様!華琳様がせっかくお前達に進言しているのになんだその態度は!」

 

やっぱり夏侯惇が出てきたよ…。

 

「…お兄ちゃんは、天の御遣いさんなの?」

 

「あー、シャンまだそうと決まったわけじゃないんだけどな。」

 

「…シャンそれがいいと思う。難しい話されてもシャンは分からないし。みんなもわかりやすい。」

 

俺にいまだに抱き着いているシャンが見上げながらそう言ってくる。まぁでも確かに、未来から来ましたって言っても、なんだこいつは?くらいにしか俺も思わないしな。

 

「…そうだな。わかったよ曹操。俺たちは天の御遣いということでこれから名乗っていこう。」

 

一刀もいいだろ?と聞こうと思って一刀を見ると、なぜか夏侯惇と言い合いをしていた。話がひと段落したのを確認して、ずっと黙っていた夏侯淵が夏侯惇を抑えに行った。早速うちの一刀が原因で迷惑かけてますね。ごめんなさい。

 

「さて、大きな疑問も片付いたところでもっと現実的な話をしていいか?」

 

「えぇっと…その、南華老仙って人の書いた書物を盗んだ盗賊の件だっけ?」

 

夏侯淵の言葉に一刀が確認を取る。

 

先ほど説明されたが、どうやらその書物を追っている途中に俺たちを拾ったらしい。

 

「そうよ。あなた達、そいつらの顔をみたのね?」

 

「あぁ。チビ、デブ、ノッポの髭面の三人組だ。シャンも見たはずだ。」

 

「…お兄ちゃんすごいね。シャンみんな同じ顔に見えた。」

 

何というか、ほんとに興味ないことにはずっとぼーっとしてるんだな。

 

「一刀も見てるし、特徴的な三人だから見ればすぐわかる。」

 

「そう。ならば、私たちの捜査に協力しなさい。」

 

「わかった。一刀もそれでいいか?」

 

「あぁ。協力しない理由もないし、何より俺たちは今無一文だからな。飯くらいは出るんだろう?」

 

「ええ、そうね。役に立つうちは、城に部屋も用意させるわ。」

 

「しかし、今回はやけに素直だな。」

 

一連のやり取りを見ていた夏侯惇がそう言ってくる。

 

「まぁな。俺も一刀もできることは少ないが、変に理想を掲げて正義のために、とか言っても今は何の意味も持たないし。それに先立つものとかを確保するのが優先だよ。」

 

「殊勝な心掛けね。」

 

「ありがとう。これからよろしく頼む曹操。」

 

「シャンはどうする?」

 

「んー…曹孟徳さんはいい政事をしてるって聞いてるから、お兄ちゃんが残るならシャンも残る。」

 

「都で騎都尉まで務めた貴女を拒む理由なんてないわ。歓迎するわ、徐公明。」

 

「シャンのことはシャンでいい。」

 

「…えぇ。なら、これからは私の事も真名で呼んで構わないわ、香風。春蘭、秋蘭もそれでいいわね?」

 

「はっ!」

 

「御意。」

 

「そうだ。夏輝、一刀、あなた達も真名を教えなさい。」

 

「へっ?俺や夏輝の事も真名で呼んでくれるのか?」

 

「あなたたちの態度次第だけれどね。呼ぶかどうかは、また決めるわ。」

 

「とは言われてもなぁ…」

 

「あぁ、すまないが俺たちの国では真名っていうものはないんだ。しいて言えば、俺なら夏輝、一刀なら一刀の部分が真名に当たるかな。」

 

「…っ!」

 

「な、なんと…。」

 

「むぅ…。」

 

「…へ?どうしたんだ?」

 

「真名をいきなり呼ぶのは…ちょっとない。」

 

「いやシャン、三人の反応からしてまずないの間違いだろ。」

 

シャンも含めて全員が引いている。まぁ文化や風習も違うから仕方ないな。カルチャーギャップだな。

 

「貴様らは初対面の我々に、いきなり真名を呼ぶことを許した…そういうことか。」

 

「まぁそちらの風習に倣うならならそういうことだ。」

 

「むむむ…。」

 

「そうなのか…なんと豪気なやつだ。」

 

「そう…。なら、こちらも真名を預けないと不公平でしょうね。いいわね、春蘭、秋蘭。」

 

「か、華琳様!こんなどこの馬の骨とも知らぬ輩に真名を許すなど…。」

 

「なら、どうするの?春蘭は夏輝と一刀をどうやって呼ぶのかしら?」

 

「あれ!とか犬!とかお前!でいいでしょうに!。」

 

「いやいやいやいや!?それはいくら何でもひどすぎるよ!?」

 

「さすがに俺も犬は勘弁してほしいな。」

 

「シャンはお兄ちゃんって呼んでるよ。」

 

「いや…さすがにそれは。」

 

「俺もそれは勘弁して。」

 

「秋蘭はどう?」

 

「華琳様の御心のままに。」

 

「くっ...。でも華琳様!こやつらの名前が本当に真名かどうかなど、分からぬではないですか!?」

 

「もしそんなくだらない嘘をついているようなら、即刻首をはねるまでよ。あとは春蘭の好きにしなさい。」

 

「...首を刎ねるの大好きだなお前ら。」

 

「一刀。あなたが真名の意味をどう捉えているのかは知らないけれど、私たちにとっての真名は魂の半分なの。それを預ける相手に相応の資格を求めるのは、当然のことではなくて?」

 

「うむむ…。」

 

一刀はなんとかついていけてる程度の反応だな。

 

「だから、もしその存在を偽っているというのなら…そうね、今ここで地に頭をつけて謝るなら、百叩きで許しましょう。どう?」

 

「どうするも何もないな。俺も一刀も親からもらった名前はこれだけだ。命だってかけてやる。」

 

そうかけるだけならいくらでもかけてやる。

 

「ああ。それに頭を下げる理由もないし、俺だって首でもなんでも懸けてやるさ。」

 

「結構。なら、これから私の事は華琳と呼びなさい。いいわね、春蘭も。」

 

こうして俺たち二人は華琳と名乗る……自称、曹操の所に厄介になることになった。

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