戦騎絶壊ディケイド   作:必殺仕事人BLACK

4 / 9
この作品を読んでいただき、有難うございます。

評価や感想、お気に入り登録してくださり身に余る光栄です。

新しく書き直しました
戦闘のクオリティが低くて申し訳ありません


8/1 誠に勝手ながら奏視点を追加しました。理由としては、次話の文字数がえらいことになりましたので、急遽このような措置をさせてもらいました。


余談ですが、事故に遭い現在入院しております。怪我のお陰で只でさえ熱いのに、高熱で魘されていました。今は、微熱ですけど。次話はなるべく今月中に投稿できると思います


04

ヤッベーイな状況な、仮面ライダーディケイドこと門谷司です。何がヤバイって?それはギランギランに目を輝かしながら、殺意100%でこちらに向かって奏ちゃんが駆けて来ているからです。

 

 

どう見ても、俺をヤる気ですね。訂正、殺る気だ。別にいやらしい意味でわざと言った訳じゃないんだけど、どうせならそっちの方がいいなぁ。平和的だし、俺も得してとてもwinwin(ニヤニヤ)なかんけ──

 

 

「死ね──!」

 

 

死んでたまるかぁ!(真顔)

 

 

俺の心臓に目掛けて突き出された槍を、右手でポンと弾く。一見、軽く弾いたように見えるけど、実際かなり力を入れているかんな?

 

 

流石、シンフォギア。現行兵器を凌駕するという、謳い文句は伊達ではない。手がむっちゃ痛いです!漫画やアニメだと手自体が大きく腫れ上がって、赤くなっているに違いない。

 

 

それにしても、こう近くで見るとやっぱシンフォギアスーツはエロいな。どっかの影の国の女王バリに、ピッチピチ。スタイルが良ければ尚更ね。

 

 

はあ〜、最近ノイズの不細工な面を見ることが多かったからホント目の保養になるわ。もう、どこのどいつだよノイズがかわいいと宣った奴は……。いざ対面するとかなり気持ち悪いからな!

 

 

ウッ!……フゥ。目の保養だけじゃなく、荒んだ心も癒やされるわぁ。何か、段々と下腹部にも熱い血が流れ込んでいるのを感じる。

 

 

心が落ち着くに連れて我が息子が起き上が──

 

 

「──────!?」

 

 

らなかった。急速に萎えたせいか、少し痛かった。

 

 

槍を弾いたと思ったら、奏ちゃんは身体を翻し、遠心力を乗せた槍を思い切りフルスイングした。俺の頭に向けて……。俺はもう無意識に近い反射で腕で槍をガードしたが、勢いを完全に殺せず左側に多少よろけた。

 

 

マジでチビりそうになった。この攻撃、防いでなかったらほぼ確実に頭が飛んでいた。千切れた頚から、血がプッシャー案件である。……笑えん。ガードした腕が地味に痺れており、より一層先の一撃が本気だと伺えた。──俺を殺すことに……。

 

 

タラリ、と背中に冷や汗が流れた。

 

 

ヤバいヤバい奏ちゃんがガチで俺を殺しに来ている!俺、奏ちゃんに恨まれるようなことしたっけ?此方は一方的に知っているけど、対面するのは実質これが初なんだけど?ううむ、まったく心当たりがないんだけって!?痛い!ちょっ、奏ちゃん、空いた手で本気顔面パンチはやめてっ。ディケイドに変身しているとはいえ、シンフォギアで強化されたパンチは洒落にならんっ。

 

 

 

「──チッ」

 

 

イケメンフェイスを傷つけさせたくないので、少し反撃します。まだ押し付けてくる槍を、ガードしていた腕で押し返してやる。押し返されるとは思わなかったのか、「うわっ!?」と声をあげて体勢を崩してしまう。その隙を突き、回し蹴りを奏ちゃんにお見舞いする。……槍の方に。だって身体に当てて怪我させたら嫌じゃん。女の子の身体は宝物なんだよぉ!

 

 

「しまった!?」

 

 

おぉ、と俺は心の中で声をあげた。綺麗に回し蹴りが炸裂し、槍が放物線を描きながら宙に舞い上がった。やっぱり僅かな時間でも、カブトのライダーキックを真似て練習した甲斐があった。

 

 

「くそっ」

「────」

 

 

奏ちゃんが槍を取り戻そうと跳び上がり、俺が距離をとるために跳び下がったのはほぼ同じタイミングであった。取り敢えず、此処は逃げるに限る。俺にしてみれば彼女と戦う理由は一つもない。まだ他の場所でノイズと戦うかもしれないし、体力は温存しておきたい。

 

 

姿を消してやり過ごそう。

 

 

この時、俺は気づくべきだった。いつもならノイズを殲滅するとすぐにオーロラが現れて次の戦場に行くか我が家に戻っていたということを。──つまり、

 

 

……しかしまぁ、奏ちゃんよぉ敵(じゃないけど)がいるのにその行動はアカン。それじゃ襲ってくださいと言っているようなものだよ?俺?もちろん襲うけど、襲うならベッドの上でと決めておりますが?こんな所で襲ったら犯罪じゃん。

 

 

しかも俺、仮面ライダーだよ?やってしまったら全てのライダーからぶっ殺の刑(オールライダーキック)不可避である。あっでも変身解除して某進撃の奇行種の動きと奇声を上げて襲えば心神喪失で無罪を勝ち取れるワンチャンあり?(白目)

 

 

……これ以上此処にいたら変な下心が芽生えてしまう(既に大輪)。早くここから立ち去ろう。ずっと働いて、疲れているんだ。

 

 

左側のサイドバックルに手をやり、メカメカしいブックカバー──ライドブッカーを手に取る。ライドブッカーを開き、目的のカードを探す。ええと、インジビブルは何処だっけ?

 

 

 

 

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

突然の奏ちゃんの雄叫び。少し、気になってしまい目をやると、俺は言葉を失った。

 

 

見ると奏ちゃんはオーバーヘッドキックの体勢で、こちらに向かって槍を蹴〜り出したではあ〜りませんか。しかも、穂先はちゃんと俺の方に向けられている。地味に凄い……。

 

 

まぁ、驚きはしたが焦るほどではない。槍一本、避けることなんぞ余裕余裕♪なんなら、後ろ向きながら華麗に回避してやろうか?失敗したら、その槍に尻から刺されてやんよ〜。(笑)

 

 

   

【STARDUST∞FOTON】

 

 

ちょ、それ反則!?槍を増やすなんて惨いことすんなや!女なら、正々堂々槍一本で勝負せんかい!(暴論)イヤァァァァ、あ、雨が、槍の雨が降ってくるぅぅぅぅぅ!だが、切り札は常に俺の中にあるっ。

 

 

   

【ATTACK RIDE BALIA】

 

 

【BALIA】はディエンドだけかと思った?残念、ディケイドも持ってました。実はこの間カードを確認していたら見つけたんだ。それにしても、流石あの仮面ライダーBLACKのライダーパンチを防いだバリアーさん。(お前のじゃないけどな)どしゃ降りの如く降ってくる槍を見事に防いでくれてる。

 

 

──これで紙耐久だったらドライバー外して、イッテイーヨ!になっていたからな?ドライバーさんが。

 

 

つか、逃げるタイミングを失ってしまったな。あんまり彼女とは戦いたくないんだよな。防がれて驚いてる顔しているけど、俺の方が驚きだわ。だって、奏ちゃんの顔がもう絶唱顔になりかけてるもん。目や鼻と口、耳からも血がドバドバと垂れ流してるし……。もしかして、此処に来る前に絶唱を歌ってた感じ?

 

 

【STARDUST∞FOTON】の攻撃が止み、一本の槍が不規則な軌道を描きながら、奏ちゃんの手に戻っていく。不覚にも、何だかカッコいいと思ってしまった。

 

 

「……まったく、こっちは必死でやってるのに、全然意に介してないって感じだな」

 

 

気にするな、俺が強いだけだ。──なんて、口が裂けても言えんな。というか、意に介してない言っているけど、そんなことないよ?滅茶苦茶、ハラハラドキドキしております。もしやこれが、恋!?……何か、死にたくなってきた。

 

 

未だに状況を完全に把握してないけど、これだけは分かる。奏ちゃんが如何に危険な状態なのか。彼女の瞳から感じられる、怒りやら殺意は一切の衰えを感じさせない。

 

 

それとは裏腹に槍を持つ手は震え、立っているのがやっとといった状態だ。顔色も悪いし、絶対に命に関わるほどの重体だろこれは。マジで早く二課スタッフ助けに来いや。

 

 

「……ハァ。そんだけの力があるアンタが、凄く羨ましい。聞かせてくれよ、アンタがその力で戦う理由を」

 

 

喋るのが辛いはずなのに、奏ちゃんは俺を見つめながら問いかける。

 

 

何か羨ましいという単語が聞こえたんだけど。そうかぁ、奏ちゃん俺のことをそう思ってくれてたんだ。ちょっと嬉しくて、顔がニヤついてしまう──わけない。いや、奏ちゃんの目が「ふざけた理由なら、ただじゃおかない」と伝えてくるんだもん。

 

 

じゃあ話すのかと言われれば、話すわけないじゃん。これでも俺は正体を掴まれないように終始無言を貫いているんだから。ま、まあ最初の時は状況がわからずつい「仮面ライダーディケイド」と名乗ってしまったが、反省して今は無言の戦士スタイルを崩さないよう必死こいてます。

 

 

「だんまり、か。まあ、最初から返事が来ないのは分かってたんだが……」

 

 

なら聞くなよ。

 

 

「でもさ、こうやって隙だらけなのにアンタは何もしてこない。なら、少なくとも話を聞いてるつもりなんだろ?」

 

 

ええ、ええ。そりゃ、聞きますとも。奏ちゃんの生ボイスを聴く機会なんて滅多にありませんからね。しっかりと脳内にサンプルボイスとして保存して、それを元に後で思い切り達しますとも!

 

 

「アンタにはそんだけの力があるのに、何でここはこんな有り様なんだよ」

 

 

見渡せば、俺達の足元には無数の煤の山がある。それは元が人間であり、ノイズに殺された者の末路。中にはノイズがひとりでに自壊した物も含まれているが、人間の物の方が多いだろう。

 

 

不意にある記憶が蘇った。それは俺がディケイドになって、一週間位の頃。

 

 

俺もよくわからないが、ディケイドにはノイズに対し誘引効果がある。だから、いつも現場に行くとノイズが俺に寄って集る。だが、俺は見てしまった。ノイズが俺に向かう道程に、運悪く人間が居たことを。

 

 

気づいた時には、既に手遅れ。その人は近づいたノイズを察知するも、恐怖に染まった顔のまま炭素の粉に変わり果てた。もし俺がもっと早く気づければ助けられたかもしれない。そんな考えが、ずっと頭の中にこびりついて離れなかった。

 

 

……何で、あの日の記憶を思い出したんだろう。奏ちゃんの言葉から、あの日のことを無意識に連想してしまったのだろうか?

 

 

つまり、あれだな。俺の対応がもっと早ければ、犠牲者の数はもっと減っていたんじゃないのか?とか言いたいのかな。

 

 

奏ちゃんは俺に槍を向ける。槍を持つ手に、震えはなかった。

 

 

「──アンタ程の力があれば、アンタがもっと早く来ていれば……ここに居た人達を、誰一人死なせずに済んだんじゃないのかっ!!」

 

 

……心の中で申し訳ないけど、まず先に謝るわ。そして、その上で言わせて戴きたい。

 

 

無理だし、無茶だし、俺の心情的にも負担を掛けたくない。

 

 

これを言ったらガチで叩かれるだろうが、ぶっちゃける。

 

 

『俺』は、他人の命より司くんの命が大事なんだよ!元を辿れば全部『俺』の自業自得だけど、『俺』は今でも司くんの意識が蘇るのを信じている。そのときが来るまで、この身を危険に晒したくはない。絶賛死地に飛び込んでるけどなっ。

 

 

別に他人の死に対して何も感じないわけではない。悲しむし、場合によっては後悔することもある。それでも、『俺』には司くんのこれまでの人生を奪ってしまった責任がある。だから、何があってもこの身命を失わせない。

 

 

今更だけど、俺は仮面ライダーを名乗れないし、名乗る資格も最初からなかった。もはや前世の残り火に等しい、仮面ライダーの憧れで司くんの命を好き勝手にするわけにはいかない。

 

 

それでも、今まで戦ってきたのは憧れを捨てきれなかったから。だから、立ち回りをしっかり考えてなるべく【KAMEN RIDE】の使用を控えた。ホントのことを言うと、他のライダーに変身したのって今日の昼頃のカブトが初なんだよね。

 

 

考えてみて欲しい。世間ではディケイドがノイズを倒す驚異の謎の戦士として認識されている。そんな謎に満ちた存在が別の姿になり且つ新たな能力を披露すれば確実に世間は騒ぎだす。やがて、きっと誰かは思う筈だ。

 

 

──ディケイドはいつか、自分達に敵対するのではないか?

 

 

実は自宅の風呂場から最初に転移されたのって、バルベルデ共和国だったんだよね。そこでノイズと戦っていたらさ、バルベルデの軍隊が攻撃してきたんだよ。最初はさ、俺の近くにいるノイズどもを狙っていたと思ったんだ。でも、砲弾やミサイルが飛んできた時、明らかに俺を捉えていると分かった。お陰で、爆風やらなんかに邪魔されて随分と時間を掛けてしまった。

 

 

最近、ディケイドが戦っている動画が何本もあることを知り、俺は撮影者に対して危機意識足りねぇなぁなんて気楽に考えてた。

 

 

だが、バルベルデの戦闘時に俺が軍隊に攻撃して、更にそれが動画に撮られてそれを広められたら?芽生えた不安が現実のものとなり、世界のディケイドに対する警戒度は飛躍するだろう。

 

 

そこで【KAMEN RIDE】して、特に龍騎でドラグレッターを召喚してみろ。世界中パニックに陥るよ。そしたら捕獲どころではなく、脅威認定されて討伐対象になるだろうな、きっと。

 

 

つまり何が言いたいのかというと、目立てば目立つほど『俺』は司くんの首を締めてしまう。

 

 

ディケイドの力を十全に引き出せば、奏ちゃんの言葉通り、犠牲者を出すことなく解決できるだろう。その分、狙われるリスクは増してしまい、司くん第一に考えている『俺』にとっては決して無視できない問題だ。

 

 

「いつも遅すぎるんだよ、お前はっ。今も、あの時も!本当に来て欲しいときに、お前はいなかった!……そんな奴が、救世主(ヒーロー)?ふざけんなぁ!」

 

 

なんか、ホントに心にグサグサ刺さってくるよ。確かに、家族をノイズに殺された人から見れば、俺のやってることって中途半端に見えてしまうんだろうな。ノイズと戦える力があるのに、死人を出した後に悠々と姿を現して、ノイズを倒したらさっさと消える。……マジで、自分の中途半端ぶりに嫌気が差してきたわ。

 

 

「ディケイド、アンタには捕獲命令が出ている。でも、アタシ的にはアンタを一回、ボコしてやらないと気が済まないっ」

 

 

そうかぁ、捕獲命令が出ているのかぁ。もしかして、ここが潮時なのか?二課って良心的な人物が多いから、事情を話せば悪いようにならないかな。……ラスボスがいる時点で不安だが、優秀なOTONAがいるから何とかなるか?うん、信じよう。上手くいけば、原作キャラと繋がりが持てるかもしれないし。(現実は甘くない)

 

 

よしっ。そうと決まったら、ちゃっちゃと投降しよう。もうこんな状況にはうんざりだ。け、決していつでも突撃出来る構えをした奏ちゃんに臆しているわけではないからね?(ブルブル)

 

 

投降の意を示すために、俺は両手を挙げようとして次の瞬間には後悔した。

 

 

後に、俺は語る。ミンナ、伝えたいことがあるなら口に出して伝えようね。

 

 

「っ、させるか!?」

 

 

奏ちゃんが一気に距離を詰めて、槍を突きだす!槍の穂先は、また俺の心臓に向けられている。ナシテ?俺は降参しようと手を動かしただけなのに、どう曲解すれば反意があると思われるんだよチクショウ!

 

 

というか、捕獲命令が出ているのにこの子、俺を本気に殺しに来ているんだけど……。最初の時点で俺に「死ね」って言ってたな、そういえば。きみ、一応組織に属している身なんだから、上の命令には従おうよ、ね?もし俺が捕まっても、弁護する気ZEROだからな。どうしてもというなら、その時の弁護代を君の身体で払ってもらおうか、グェッヘッヘ〜。

 

 

迫り来る槍、距離的に完全には避けきれない。ならば多少のダメージは覚悟して奏ちゃんを無力化するしかない。そんで駆けつけてきた二課に素直に身柄を預けよう。本っとうにごめん!司くん。……あと、奏ちゃんも。

 

 

腰を低く落とし、心臓に向けられた槍が俺の左肩上を掠りながら通過していく。ディケイドボディのお陰で痛みはないけど、衝撃が半端なく目の前に火花が散っておっかない。ヤベ、チビッタ。

 

 

すかさず、槍を掴んでいる手を俺の手が掴み取り、態勢を戻すと同時に奏ちゃんを引き寄せる。

 

 

奏ちゃんの顔がドアップ。俺の方が身長高いから、奏ちゃんが見上げる形になっている。なんだろう、イケナイコトなのに血塗れの奏ちゃんの顔を至近距離で見たら、胸の高鳴りガガガガガガァ、お、俺にリョナ趣味はねぇのに。

 

 

そして、もっと凄いことに気づいた。俺と奏ちゃんは互い向かい合ったまま、密着しているのだ。お分かりいただけただろうか?

 

 

奏ちゃんのおっぱいが、俺の胸に当たっているんです。

 

 

アーマー越しに感じる、密着している事によって潰れている奏ちゃんのおっぱいの感触。奏ちゃんが俺の拘束から逃れようと動き、それに追随して形を変えるおっぱいの感触。それを感じとる度に俺の背筋に甘美な電流が走り、下腹部に到達する。

 

 

なんかもう、こっから背負い投げしたりとか腹パンして気絶させようと思ったけどそんなことはどうでもよくなった。

 

 

今は俺のお稲荷さんが起き上がらないようにせねばぁ!

 

 

もしこの状態で起き上がったら、確実に奏ちゃんにバレる、当たっちゃう!そうなったら、謎の戦士から変態仮面にジョブチェンしてまう!?それだけは嫌だあ!

 

 

じゃあ離れろって?………………それも嫌じゃあ!!だって、俺がディケイドになってからずっと働きづめで癒しが全然ないんだよ!これくらいのご褒美は、当然じゃろ!?もっと味わいたーい!え、駄目?

 

 

い、いかん。空いてる方の手が奏ちゃんのお尻に向かってしまう!触ってしまったら最後、俺の性剣エロスキャリバーが奏ちゃんに突き当たってしまう!

 

 

あわや大ピンチ、指先が触れようとしたとき──

 

 

 

 

 

 

 

『奏ぇ!今すぐそこから離れろぉ!』

 

 

 

 

 

 

 

気 づ い た ら 、 奏 ち ゃ ん を 後 ろ に 投 げ て た 。

 

 

 

 

 

その通信機、オープンチャンネルになってたのかビックリしたわぁ!!

 

 

つい、OTONAが近くにいると思って命の危機を感じて、弁解するために奏ちゃんから離れるためにぶん投げて、土下座しようとしてけどOTONAの姿を探したけどいなくて、まったくの杞憂だなって安堵したのも束の間で奏ちゃんをぶん投げたことを思い出して、こうなったら奏ちゃんお尻を触っとけば良かったなーとか後悔したりしてなかったり、おっぱいあざっしたと最期に伝えたかったなぁetc…。(落ち着け)

 

 

取り敢えず、心の中で「ごめん」ねと謝っとこ。

 

 

心の中でな!

 

 

 

 

 

ごフッ。

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

自分の無力さを、天羽奏は家族を失ったあの日から、ずっと呪い続けた。

 

 

それはシンフォギア(ちから)を手に入れた今でも……。否、手に入れたこそ、より自らの無力さを叩きつけられた。

 

 

最初の頃はシンフォギアを使える資質はあれど、扱えるだけの素質は奏にはなかった。それでも、ノイズへの憎しみは消えずに、むしろそれを糧として奏は力を求め続けた。

 

 

血を何度も吐き出し、身体が鉛のように重くなろうとも止まることはなかった。身を削りながら、戦う術を自身に叩き込み、奏は漸くシンフォギアを使えるに足る力を身につけた。

 

 

ガングニール。北欧の主神、オーディンが持っていたとされる無双の槍。奏が使うシンフォギアは、その槍の欠片をもとにして創られた。

 

 

だが、そのような努力の果てに力を手にしても奏の心は晴れる事なく、より一層の暗雲が立ち込めた。

 

 

初めての実戦を経験して得たものは、僅かな達成感と己の無力さ。

 

 

ノイズを自身の手で殺した時、奏は歓喜した。あの憎き害物を、自分の力で駆逐できたこと。強大な力を秘めたシンフォギアを扱えていることによる、毒々しい万能感。命を懸ける戦場にいるにも関わらず、戦いの最中奏の心は酔いしれていた。

 

 

戦闘を終えた後、奏は避難所で泣いている女の子を見て酔いからすぐに覚めた。

 

 

聞けばその女の子の家族は、その子を残してノイズに殺されてしまったと。

 

 

奏はその子にかつての幼き自分の姿に重ねてしまった。

 

 

幼き自分が、奏に言った。

 

 

『──どうして、私の家族を助けてくれなかったの?』

 

 

その言葉を聞いた日から、天羽奏は消えない苦しみを懐きながら、戦うようになった。

 

 

助けてあげられなかった罪悪感を振り払うように、奏は戦場で歌い続けた。

 

 

奏は気付いていないが、心の奥底ではこれ以上誰かを悲しませたくないと優しい想いを持っている。

 

 

力を手に入れたのは、憎しみだけでなく、力なき人たちを守りたいという願いもあったからだ。

 

 

だからこそ、奏はディケイドに惹かれていった。

 

 

何者をも寄せ付けない、その圧倒的な強さに。

 

 

絶望的な状況に、希望を抱かせてくれる存在感。

 

 

ディケイドか見せたその在り様は、奏の理想形と過言してもいい。

 

 

同時に、奏は思う。ディケイドの成すことを見る度に、己が酷く無様な戦い方を晒しているのを嫌でも自覚してしまう。だから、更に戦いに身を投じた。

 

 

しかし、奏が何度戦おうと救えなかった命が多すぎた。それに伴い、何度も遺族の涙を見てきた。

 

 

その光景に奏は徐々に追い詰められていき、力を付けるために過剰な訓練を行った。周りの制止を振り切って、がむしゃらに槍を振るい続けた。

 

 

そして、演習場でディケイドを見た瞬間、気づいたら戦いを挑んでいた。自分の力が理想にどれだけ近づけたかを。そして、少しでも弱い自分を否定したかった。それを証明するために、殺す気でこの力を振るった。

 

 

それでも、届かなかった。姿を捉えられなかったが、昼時に見せた圧倒的な殲滅力。そして、今いる演習場での闘い。

 

 

此方の攻撃は悉くいなされ続け、闘う気はないのか、ディケイドの攻撃は槍を蹴り弾いた時だけ。

 

 

遊ばれるどころか相手にすらしていない、そんな錯覚を覚えた。いや、実際そうなのだろう。元から判っていた実力差を痛感させられ、最早心は限界に達し、歌を紡ぐことすら今の奏には辛く血を吐き出すのと同じだった。

 

 

認めたくなかった。あんなに身を削って得た力で、救えなかった命の多さの現実と己の限界に。今の自分はただ力を持った子供に過ぎないのだと。

 

 

結局、何も変わらなかった。家族を失ったあの日から。今の自分は誰よりも死に近い場所にいるというのに、失われる命は周りにいる人々だけ。

 

 

無様にノイズを殺していくことしか出来ない自分の姿を思い出し、奏の頭はぐちゃぐちゃになり何も考えられなくなっていた。

 

 

だから、言ってしまった。

 

 

『アンタにはそんだけの力があるのに、何でここはこんな有り様なんだよ』

 

 

自分が口に出した言葉に、奏は心の中で愕然とした。そして、堰を切ったように続けてしまった。

 

 

『──アンタ程の力があれば、アンタがもっと早く来ていれば……ここに居た人達を、誰一人死なせずに済んだんじゃないのかっ!!』

 

 

今すぐ自分の喉を、手にしてる槍で刺し貫きたかった。今でも生き恥を晒しているのに、自分はなんと子供じみたことをしているのだろう。自分ができなかったことを他者のせいにしている。なんと最低な人間か自分は。

 

 

ディケイドという存在は、自分に出来ないことをやり遂げている。それも何度もだ。そんな存在を自分が責め立てるのは、筋違いだ。

 

 

それでも言ってしまう奏の姿は、感情が抑えきれない幼子のようだった。

 

 

──自分に失望してから、奏は夢を見るようになった。家族の夢だ。それも、過去の幻影ではなく、『もしも』の情景。ノイズに人生を歪ませられなかった、あり得たかもしれない(みらい)

 

 

──どこかの花が沢山咲いている野原。そこで走り回る妹とその妹を追いかける(あたし)。そんな二人を優しく見守る両親。そして、その光景を見つめる(じぶん)

 

 

──妹を抱きしめ頭をガシガシと乱暴に、されど愛を籠めて撫でる(あたし)。その顔は笑っており、今の(じぶん)には決して出来ないだろう。

 

 

『いつも遅すぎるんだよ、お前はっ。今も、あの時も!本当に来て欲しいときに、お前はいなかった!……そんな奴が、救世主(ヒーロー)?ふざけんなぁ!』

 

 

ふざけているのは、自分の方だろう。随分と無茶なことを言ってしまっている。

 

 

それでもそんな事を言ってしまったのは、やはりディケイドに助けてもらいたかったから……。

 

 

もし、『あの時』にディケイドが助けに来てくれたなら、今の自分はあの夢のような自分になることができたのではないか……。こんな中途半端な人間にはならなかったのではないか。

 

 

言ってしまった事実は消えない。奏は後悔しながらも、誤魔化すようにまた槍を振るった。

 

 

結局、またいいようにあしらわれ、ディケイドに投げ飛ばされた。投げられて数瞬の浮遊感を味わっていた時、奏は聞こえた。聞こえてしまった。

 

 

「ごめん」

 

 

誰かのという言葉は愚問だ。何故なら、ここにいるのは二人だけだ。自ずと誰が謝罪の声を発したのかすぐに理解できた。

 

 

瞳を此方に向けて、ディケイドは本当に申し訳なさそうに奏に謝罪を送った。

 

 

(違うだろっ。アンタは何も悪くないんだ……)

 

 

初めての名乗り以来、漸く口を開いたディケイド。その第一声が謝罪とは。ある意味貴重な体験をしているというのに、奏はそんな事を言わせた自分自身を責め立てた。

 

 

自分の無力さを認めたくなくて。

それを否定するためにタチの悪い八つ当たりを行い。

恥ずかしげもなく言葉の裏に無茶な助けの声を乗せて。

挙げ句に見当違いな謝罪をさせてしまった。

 

 

(あたしは、いったい何をしたかったっていうのさ……)

 

 

憎しみに駆られ、死者への罪悪感に囚われ、自分の愚かさを目の当たりにし、最後に戦うべき理由を失ってしまった。

 

 

奏の戦意が無くなれば、必然的にシンフォギアも解除される。コンクリートの地面に、受け身もとらず転がり、止まると同時に奏の姿はラフな私服姿に戻っていた。

 

 

仰向けになった奏の瞳には、夜空から奏に向かって(・・・・・・・・・・)ノイズが飛来してくるのを捉えた。

 

 

(もう、アタシが生きる意味はどこにもない。あの時家族と一緒に死ぬのが、正しかったんだ)

 

 

ノイズに殺されるというのに、奏は恐怖も屈辱も感じない。ただ、潔く迫り来る死を受け入れた。

 

 

受け入れたというのに──

 

 

「……どうして、こんなアタシを──」

 

 

死は振り払われた。

 

 

暗い夜を切り裂くように、マゼンタの光弾が飛来してきたノイズを撃ち殺す。

 

 

再び現れた大量のノイズが我先にと奏に近づこうとする(・・・・・・・・・・・・・・)が、ノイズが奏に触れることはなかった。

 

 

仮面の戦士が奏を守るように立ち阻み、ノイズの攻勢を食い止めていた。

 

 

「たず、げっで……ぐ、れ"るん、だ?──ディケイドォ」

 

 

自分を守ってくれるあまりにも偉大な背中を見て、奏は涙を溢れさせながら問いかけた。

 

 

「────」

 

 

ディケイドは何も語らない。黙々と、奏を守るために拳を振るい続けるだけだ。

 

 

成人男性並の背丈のノイズを右アッパーで空高く吹き飛ばし、ディケイドが思うことは一つ。

 

 

「(翼さぁん!!早く貴女の片翼を助けに来てぇ!!?)」

 

 

本音は?

 

 

「(逆羅刹をしてもらい、アソコの食い込み具合を拝見したい)」

 

 




【捕捉】主人公は死者を出しているといっていますが、これまでの戦いで、死者0でおさめたことは何度もあります。ですが、戦闘している時に同時に別の場所でノイズが現れるため、結果的に死者を出してしまっています。そして、奏はそれを理解した上でああいうことをいってしまいました。


次回は奏視点で始まり、奏がディケイドに何を想っているのか明らかにします。そして、それが終わったら原作ライブになります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。