戦騎絶壊ディケイド 作:必殺仕事人BLACK
皆さん、感想と誤字報告いつもありがとうございます。
忙しくて感想の返信が出来ず申し訳ございません。
お待たせした挙げ句に、話は余り進んでいません。話の中では一応2年間は経過し、原作開始間近です。
久しぶりに書き上げたせいで、文体がおかしくなっているとおもいます
それは、あのライブ会場からの次に送られた新たな戦場である南極大陸に到着したときだ。
「死ぃぃねっっっうえええぇおやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっっ!!!」
【FINAL ATTACK RIDE A A A AGITΩ】
一人の人間がここまで発露させるかと言う程の怨念めいた絶叫を放ちながら、眼下に広がるノイズの群勢の中心地に向けてDアギトのライダーキックを喰らわせる。
ノイズの群勢の真上上空に転移された直後に、一切の容赦どころか完全に殺意マシマシに必殺技を使い出した。その様は流星の如くに降り注ぎ、ノイズにとっては向こうから勝手にやって来た死兆星として映り込んだろう。
音速の壁を容易に超えたDアギトの一撃は一体のノイズに着弾し、氷の地面に音もなく打ち付けた。発生した衝撃はキックを受けたノイズだけに留まらず、波紋のように瞬く間に広がり周囲の全てのノイズに浴びせられた。
破壊の衝撃波がノイズの身体を通り過ぎた頃には、全てのノイズは崩れ落ちていた。Dアギトの周りには氷雪の大地を埋め尽くす大量の黒い粉塊が、風に踊り吹かれながらも白から黒に染め上げていた。
その光景に、何も思うことはない。ただ極寒の環境に放り出されたお陰か、熱くなりすぎていた頭が冷静さを取り戻したことで気付きたくない事実に直面してしまった。
この瞬間に、『俺』──門谷司(偽)は思い出した。
戦姫絶唱シンフォギアの物語の始まりである、ツヴァイウィングのライブコンサートの惨劇の後で世間では何が起こりだすのかを。
ライブ会場のノイズ被災に遭った、被害者たちへのバッシング。
あの惨劇からどれだけの期間まで明確に続くかは不明だが、しばらくの間は世間ではこの話題に持ちきりだろう。
かのツヴァイウィングのライブ会場を襲った惨劇によって、確かに多くの人が亡くなってしまったのは事実である。しかし、ノイズによって亡くなった人間はそれほど多くはなく、逆に避難していた際の人身事故による被害が凄まじかったなど云われている。
避難路を巡ってのトラブルによって混雑し、その騒ぎで将棋倒しの事態が起きたことに多数の人間が圧死、更には我先にと避難しようと他人を暴力的に押し退けたことによる重傷害事故の発生。
その事を週刊誌に掲載されたことによって、一部の世論が騒ぎだしていた。掲載された内容は正確な事実であるが、悪い意味で煽るような文章により大多数の人々はライブ会場の生存者たちを『悪』だと断じ始めた。
何故なら生存者たちは生き残るために、他の人間を蹴落としころしたのだと言っているようなものだから。
それに加えて被災者や遺族に莫大な補償金が支払われたことにより、世論は彼らに自己責任論を打ち立てた。
ネットから始まったそれは瞬く間に苛烈さを増し、遂にはライブ会場の災害に関係のない多くの人間が憂さ晴らしのように、生存者たちを激しく責め立てた。
『ライブ会場で生き残った奴等は、皆人殺し』
『人殺しといてお金もらえるとか、ぜってぇ許されることじゃねえだろ』
『マジ最低な奴ら、お前らが死んどけよ』
『自業自得乙ww』
正しさを振りかざし、中世の魔女狩りを彷彿させる正義の暴力で生存者たちを糾弾する民衆。
それは戦姫絶唱シンフォギアの主人公である立花響も、例外なく対象にされている。
詳しい原因は思い出せないが、同じ学校の生徒からの八つ当たりがきっかけだったはず。
学校では毎日壮絶な嫌がらせを受けて、家庭内でも大きな問題が多発していた。
最たるものは父親の失踪だろう。仕事に出掛けた矢先に、その日から帰ってくることはなくなったのだ。
まだ子供である立花響には、あまりにも辛い出来事だ。
学校では年の近い者たちから侮蔑と嫌悪の嘲笑を見舞われ、家には石と罵詈雑言が飛び込んでくる。
こうして客観的に捉えると、確かに立花響を何とかして助けたくなる。だって『俺』は全て知っているもの。
立花響は何も悪くない。むしろ人殺しどころか、死にかけたんだぞ、あの子は。生きていることを喜びこそすれ、責められる謂れはない。
じゃあどうするべきか。イヤ、何もしないけどね。
本音は滅茶苦茶、立花響を助けてあげたいけど、『俺』にはそれができない理由が3つあった。
一つ目は、原作の内容が変化してしまうこと。下手に『俺』が介入して全く知らない展開になってしまったら、計画に大きな支障をきたすかもしれないから。まあ、結果的に天羽奏を助けた時点で、完っ全に原作崩壊しているけどな。マジで悪い方向に改変していないことを祈りたい。
二つ目は、普通に現実的な問題。立花響の住んでる場所を知らない。千葉県に在住なのは原作知識で把握しているが、流石にどの辺りに住んでいるかはまったくもってご存知ない。知っていたら今すぐにでも近所に引っ越して、立花響と小日向未来を四六時中見守ってあげたい。
そして三つ目、立花響を助けてあげる大義名分がまるでない。仮に二つの条件をクリア(或いは無視)して助けたとして、助けられた本人は果たしてどう思うのだろうか。不審人物確定です。誠に嬉しくない称号あざマース。冷静に考えて今までの人生で接点のなかった人物(司くん東京都在住)が態々千葉に赴いて、名前も知らない一人の女の子を助けに行く。なんだろう、新種のストーカーですか。ポリスメンな赤いライダー二人がフルスロットルで振り切って来る爆散逮捕案件(『俺』が)じゃねーか。そんな形でレジェンドと会いたくねーわ。
という訳で、これが『俺』が立花響を助けない理由。明日のパンツと女の涙より、司くんの肉体返却が最優先事項なんだよ。外道だろうが悪魔だろうが罵ればいいッ。
なんて言われようが、『俺』は梃子でも動かねーよ!どうせ近い未来に出会うのは確定してるんだからな!多分!
というか立花響には、小日向未来という嫁がいるじゃないか!楽しいとき辛いとき悲しいときにぃ、優しい陽だまりの如き存在が立花響を救い癒してくれるんだろう⤵……………………嗚呼、うぅぅぅらやましいなぁあああ!!幸せぇぇぇぇぇっ!!!嗚呼っじあ゛わ゛ぜえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
というかそんな理解あるヒロインがいたからこそ、立花響の物語が始まるまでの2年間を耐えることができたのだろう。
────さて、お気づきだろうか。この世界の「戦姫絶唱シンフォギア」の物語が本格的に始動するのはあと2年の歳月が必要不可欠なのである。
そう、2年。あと、2年間。日数、約730日。
つ・ま・りぃ〜、『俺』はもう2年ほどノイズとの戦いを続けなければいけないのが確定している。
そのことに気づいた瞬間、気づけば氷の地面に膝を付いていた。
いや、マジでねぇ……。もうなんて言えばいいんだろうねぇ、この言い表せない気持ち。へへっ、この胸の高鳴りが激しすぎるし、何だか涙が出てきてうまく言葉に表せフザケルナァァァァァ!(唐突なブチ切れ)
この馬鹿野郎!(氷の地面に右拳ドォン!)
この馬鹿野郎!(氷の地面に右拳ドォン!)
何だか足場がミシミシと音を立てているが、気にシナーイ!
『俺』にもう2年も孤独に戦えと?もう、やめて限界なんですけど。
肉体的にも精神的にもなんだか超越しそうなんだけど。アギトだけではなく、鬼にもなれと申す気かオォン?
というか本当な話し、これからもノイズがこのペースで出現するなら絶対に耐えられない。最初の一年はなんとかやり遂げたけどさ、こっちもこっちで門谷司としての生活があるのよ。そんな中さ、こちらは結果的に世のため人の為に、無償でノイズどもを駆除してるんだからな。無償で!(大事なことなので2回も言う)
最早憧れとかでの心境で耐えられる状態とか、そういう次元の話じゃない。
はっきり言おう。二課のスタッフの男どもが冗談抜きで憎い。今すぐにでも呪いの藁人形で男ども一人一人を釘で打ち付けたい。
だってぇ、今をときめくアイドル歌手ユニットと同じ職場で働けて、あのエッチィスーツをリアルタイムでしかも本人達も公認でガン見出来るんすよ?殺意を覚えるなと言うのが無理な話じゃありません?(変態的正論で殴ろうとする悪質なファン)
そんな女の子たちと日常的に会話出来るどころか同じ空気を吸えるとか、なんでファンを生殺しにするような酷いことが出来るの?ただの一ファンなら涎垂らすだけじゃなく、下半身が勝手に自家発電する案件よ?(←この男だけです)
あぁ、翼さんや奏ちゃんと他の装者たちに慕われる風鳴弦十郎が妬まじぃ。
あぁ、翼さんの下着に触れる(掃除的な意味)緒川さんのそのポジションを譲って欲しい。
あぁ、隣で友里さんと一緒に仕事が出来る藤堯朔也を殴り飛ばしたい。エルフナインを隣に侍らせて仕事する藤尭朔也のイスを思いっ切り後ろに引きたい。切歌ちゃんにおんぶされる藤尭朔也を蹴り抜きたい。二次創作で切歌ちゃんとのカップリングが多い藤尭朔也をマジで爆殺させてほしい。させてください。マジさせろ。サセレヤ。(マジトーン)
藤尭朔也という男が、どうしようもなくゆるせねぇっ!
ナニ、なんなのあの男は!情報戦とか事務作業とか人間離れしとるくせに装者たちや友里さんに愚痴をぶちまけちゃってさぁ!
こっちには愚痴をぶちまけられる人がいないどころか、秘密を共有できるような人間すらいない!端的に言えば癒やしが足りない!異性と過ごす時間がナッシング!ノオォ!!
謝れ!!詫びれ!!藤尭朔也ぁ、貴様は毎度毎度の如く天国みたいな職場にいるのにブラック企業の社員みたいに愚痴をこぼしてんじゃねぇええええ!!異性と同じ空間にいて、同じ時間を共有して、異性の零れた息が混ざった空気と匂いを吸えて、装者たちシンフォギアスーツを映像でドアップで見ても変態&変質者扱いされないという、こんな理想的な職場があるだろうかっ?!
いや、ない!!!(氷の地面にライダーパンチ!)
あと、給料も出るし(とっさに取り付けたような言い方)
せめてこちらにも癒やしが、ヒロインが欲しい(超本音)
もうね、我儘言いません。ヒロインとのアレやコレな関係を作りたいとか思いません。ただただ普通に交流したいのです『自分』は……。
ビッキーの笑顔に癒やされたい。
未来ちゃんにお帰りなさいと言ってもらいたい。
翼さんのはにかんだ顔を拝みたい。
奏ちゃんのライブ衣装の上乳を覗き込みたい。
クリスちゃんの運動中の乳揺れ具合を動画に永久保存したい。
マリアさんを『俺』の料理で餌付けしてゴールインしたい。
調ちゃんに割烹着を着てもらって料理中の後ろ姿でエロエロしたい(?)
切歌ちゃんのシンフォギアスーツのタイツをパッツンしたい(!?)
エルフナインの破廉恥ルックなおパンティを思い切り上に引き上げたい(……)
友里さんに温かいものどうぞとして欲しい(結婚しよう)
大人キャロルの胸に触れて、胸の大きさについて語り合いたい(敵キャラにまで……)
サンジェルマンとバラルの呪詛からの解放について朝まで語り合いたい(ホテルで)
カリオストロと大人な情熱的な夜を過ごしたい(ホテry)
プレラーティはファウストローブの露出を増やして(純粋な意見)
こんな普通なことでいいから、せめて交流させてください!!
それだけで『俺』は月が墜ちてくる頃まではマジで戦えるから!
そして何故まだ南極大陸にいるのかね『俺』は。もしかしての同じ場所での第2ラウンドかぁ〜?Ok!なんだか胸の内を少し(?)吐き出したおかげで気を持ち直せたぜ!
さあ、ノイズ共。掛かって来やがれ!
Dアギトの姿のまま立ち上がり、足に力を入れた瞬間。
足場の氷が砕けた。
その後のことは、正直あまり覚えていない。
覚えていることといえば、冷たい水の中でノイズの群勢が待ち構えていたこと。
気がついたらDアギトの姿のままで我が家のリビングの長テーブルの上で、打ち上げられた魚のようにビクついていたことだ。尚、腹部貫通の傷はこの時点で完治していた。
この時の『俺』は思いもしなかった。これから数カ月後に、あるヒロインと出会い、原作開始まで交流を持ち続ける未来が待っていようとは。
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そうして、時は2年が過ぎて
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認定特異災害ノイズの出現は、本来ならそう頻繁に確認されることはなかった。
しかし、三年前に起きた米国首都のノイズ災害より前から、小規模ながら世界各地でノイズの出現が確認されていた。緩やかながら出現頻度が増えていき、人類は少しずつノイズの脅威を芯に染み込まされ、米国に訪れたノイズ災害で恐怖のドン底に叩き落とされた。
ノイズの脅威が決して他人事なのではないと示すかのように、ノイズの大群は米国首都を蹂躙した。人々を瞬く間に殺戮し続け、米国の選りすぐりの軍隊はノイズに成す術なく国土蹂躙を許してしまう。
その光景はノイズにギリギリ気づかれない範囲で飛んでいた報道ヘリによって、世界中にノイズが引き起こした地獄を映像として配信された。
世界の中心たる米国が、ノイズに滅ぼされてしまう。誰もがそう思い、米国現大統領も絶望に暮れていたという。人類の叡智が通じない存在に、人々はノイズが絶対的な死の象徴として心に刻まれた。
だからこそ、ノイズを倒せるディケイドの存在は世界に衝撃を与えた。
拳や剣と銃といった原始的な戦い方でありながらも、ノイズを全て打ち倒した存在に、人々はディケイドを神と崇め始めることとなった。
米国を発端に、世界各地で現れたノイズを倒し人々を護ってくれていた。大小の規模は関係なく現れ、何度も災害を打ち払った。
今ではすっかり人々はディケイドを讃えているが、当然、最初はディケイドの存在に懐疑的だった。
アレは一体何者なのか。
アレは何故ノイズと戦うのか。
アレの──ディケイドの目的はなんなのか。
人知の及ばない理解不能な存在は、人間社会にとっては未知なる恐怖をディケイドは孕んでいた。歴史においても、人というものは異端な存在に厳しい。その存在がいずれ自分達に害を及ぼすのではないかと、嫌な可能性をそれでも考えてしまうからだ。
それでも、ディケイドは戦い続けた。たとえ後ろ指を指されようとも、人を襲うノイズを阻むように戦うディケイドの姿は、なんとも頼もしくやがて希望を抱かせてくれた。
ある軍人は語った。
──ディケイドのお陰で家族を悲しませることなく、今もこうして国防に励むことができると。
ある家族は語った。
──逃げ遅れた自分達を、ディケイドが身を呈してノイズの攻撃から庇ってくれたと。
ある子供は語った。
──怖くて泣きじゃくっていた自分をディケイドは、何も言わず頭を撫でて慰めてくれたと。
ディケイドは何も言わないし、語ってもくれない。それでも、ディケイドのやっていることに希望を抱きかける。
本当にディケイドは、自分達を守るために戦ってくれているのではないかと。
人知れぬ場所でもディケイドがノイズと戦ってくれていることに気づき、信頼し始めた。
小さな芽吹きから始まり、それは世界に広まった。
ノイズ在る所に、ディケイドは現れ人々を守護する。
たとえ未だにディケイドを信用しない者が多かろうと、ディケイドは必ず来てくれると信じていた。
そして、今日もディケイドはノイズから人々を守るために戦っている。
──本人の意思かは別として。
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日本某所の山間部にて、ノイズの出現が確認された。
人がまだ活動する夕方の時間帯のお陰と幸いにも最初に人里から離れた場所に現れたため、特異災害機動対策部一課の迅速な避難誘導のお陰で民間人の死傷者を出すことはなかった。
しかし、安心するのはまだ早い。一課の活動目的は民間人の防衛とノイズの殲滅。殲滅と言っているが要はノイズが自壊するまでの時間稼ぎである。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
恐怖が混ざり合わさった咆哮を上げながら、一課の一人隊員がライフルを進軍してくるノイズの群に向けて発砲している。他の隊員たちも同じように所持しているライフルの銃口をノイズに向けて掃射していた。
放たれた無数の銃弾は全て、小型ノイズの群に吸い込まれるように迫るも、銃弾はノイズの体をすり抜けていく。一発もノイズにダメージを与えること叶わず進み続ける群勢に、間断なく発砲を続ける一課の隊員たちは焦りと死の恐怖を募らせていく。
ここにいる一課の隊員たちは皆、自分達が手にしている武器がノイズに通用しないということは百も承知している。それでも彼らは戦わなければならない。自分達がここを退けばノイズは近くにいる人間──避難所にいる民間人に向かって迷わず前進する。
そうなれば多大な犠牲者を生み出し、多くの人間が悲しみと恐怖に暮れる。尊き人命を守るために国防の組織に皆、属している。いざとなればこの身を盾にしてでも、ノイズから人を守る覚悟を隊員たちは胸に秘めている。
だが、覚悟を決めているとはいえ迫り来る死の恐怖に隊員たちの顔が曇る。
銃弾を砲弾をミサイルを何度も撃ち放ってもノイズの数は減らず、それどころか一課の攻撃で山の木々を燃やし民間の建物を倒壊させていく。これだと一課側が無駄に被害を拡げているだけだ。
「(やはり、通常兵器ではノイズの足止めすらままならんか!)」
現場の指揮を執っている一課の隊長は、忌々しくノイズを理不尽たらしめている能力──位相差障壁の存在に歯噛みする。
日々の訓練の賜物か未だにこの部隊に死傷者は出ていないが、攻撃が効かない以上追い詰められるのも時間の問題だ。距離を十分に取って応戦しているものの、ノイズが攻撃行為に入れば直ぐに殺傷圏内に入れられる。
人間がノイズに触れれば死ぬ。その身を炭素の塊に変えられて、風が吹けば粉となって散りゆく。亡骸も残らず誰の遺骸かも分からなくなる。
ノイズと対峙する度に、一課の隊長は聞こえる筈のない声が聞こえてくる。
──お前たち人類の死など、何の価値もない。
──ただ黙して塵芥となり、何処かへ消えろ。
幻聴の内容の通りにノイズの無法を許し、いよいよもってこの残酷な現実に膓が煮え繰りかえそうだった。
人類には目の前の災害に、抗う権利すらないというのか。
そんな一課の隊長が小さく抱いた憤りに応えるかのように、ノイズたちが攻勢に躍り出た。
数多のノイズがその身を紐状に形状を変えて、前線で応戦している一課の隊員たちに飛来した。充分な距離を取っていたとしてもノイズ相手には距離感など関係ない。超高速で距離を詰め、奴等は無慈悲に人間の命をこれまで奪ってきたのだから。
前線にいる一課の隊員たちがノイズが攻撃してきたと認知する頃には、もう回避は間に合いそうになかった。動きたくても動けなかった。諦めの意識と死の恐怖が身体をその場で縫い止めされていた。
覚悟していた。ノイズ相手には、人間はあまりにも無力だ。それでも奴らに奪われる命を少しでも減らすために、この身を盾にしてでも人々を救おうと。だというのに、彼らが最後に心から湧き出したのは死にたくないという当たり前の感情だ。この瞬間、誰かの為という崇高な使命感は吹き飛んでいた。
そんな覚悟を容易く吐き捨てるような自分たちに奇跡が起きるはずはない。
ノイズの攻撃が少しでも触れれば、瞬く間にその身は炭素の粉塊に成り果てるだろう。
その最悪の未来は訪れることなく、一課の隊員たちは命を繋げていた。
ノイズの攻撃が彼らに接触する寸前、突如その軌道を全て変えて、一箇所に集中された。
位置は丁度、ノイズと一課の隊員たちに挟まれた場所。そこには一つの人影があった。マゼンタを基調とした配色の鎧を身に纏い、左胸に十字架を彷彿させる刻印を持った存在。
その存在は、四方八方から飛来してきたノイズの攻撃を全て拳戟と蹴撃で撃ち落とした。倒されたノイズの黒い粉塵が晴れだすと、一課の隊員の誰かが漸くその存在の名を口にした。
「でぃ、ディケイド……?」
その名を持つ存在はこの世界に突如として現れた、人間に迫る災厄を振り払う戦士。
絶対的な危機的状況に颯爽と駆けつけてくれる、希望を背負ったヒーロー。
こんな状況はテレビの絵空事だけだと思っていた大人になった彼らは、さりとて現実となったこの現状に童心に帰ったような胸の熱さが込み上げていた。
名前を隊員が呟いたのを耳に拾ったのか、ディケイドが静かに一課の隊員たちの方に振り向き、彼ら全体を見渡してゆっくりと頷いた。
『無事で良かった。後は、自分に任せてくれ』
ディケイドの仕草がそう語っているかのように思えて、一課の隊員たちは改めてディケイドを見て涙ぐむ。胸に抱くのは迫りきていた死の瞬間が消えた安堵と、それを齎してくれたディケイドへの感謝だった。
ディケイドは何も言わず、ノイズの群勢に向き直りライドブッカーをソードモードに展開し右手に持つ。その瞬間に全てのノイズが人間からディケイドに、標的を変えた。
たった一人でノイズに立ち向かうなど、と誰もが思うだろう。だが、この場にいる人々は知っている。
これまで幾百のノイズとの戦いで、ディケイドが負けたことはないのだと。だからこそ、彼らの目に不安はなど宿らず、希望の眼差しをディケイドの背中に向けていた。
「────────」
手にしている剣の刀身を撫で、ディケイドが駆け出す。
『『『『『#®>†¥=·£©¿℃+·&』』』』』
声とは言いづらい音声を発しながらノイズの群勢も、人間たちを無視してディケイドに向かって動き出す。
今ここに、今宵最後の戦いが幕を開けた。
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「(奏ちゃんと翼さんは、いねぇんかぁいっ!!)」
迫り来ていた先頭のノイズをライドブッカー・ソードモードの剣で切り裂き、すぐに大袈裟に身体を翻しながら周囲のノイズ共を横から真っ二つにする。
最早悲しさすら感じるほど長い戦いの中で鍛えられた体捌きでもってノイズの攻撃を躱し、次々とノイズを屠っていく。
あのツヴァイウィングのライブの惨劇から早2年。あれ以来、出現頻度が減ってきたとはいえ、相変わらずオレはノイズと戦い続けていた。しかも、ごく稀に厄介な奴が現れるようになったから、出動回数は減っても戦闘後の疲労が改善されてない。むしろ悪化している!主に精神的に…………。
そして、この2年間のノイズとの戦闘でまーーったく、奏ちゃんと翼さんに出会えていない!
酷い。これは酷い。司くんの身体に風穴を空けてまで生かして助けたのに(事故です)、翌日以降の出動では二人の歌声すら聴かせてくれないこの仕打ち。放置プレイだとしても、これだと発狂するね!『
しかし、こんな現実を嘆いても何も変わらない。あ、いやオレの戦闘スタイルがドンドン変わっているな。悪化している的な。
「ディケイドぉ、そこだぁイケェ!」
「危ない!上から降ってくるぞディケイド!」
「もう、アンタしかいないんだ。頼む頑張ってくれぇ!」
うぅるっぜぇえっぃぁぁ!!!外野、黙れ!野郎の声援なんて全っ然嬉しくないのじゃボケナスがぁっ。『俺』/オレに声援を送っていいのは、子供と美女とエルフナインちゃんと友里さんと三人娘とシンフォギア装者たちだけなんだよぉ。それ以外はノーセンキューだ。野郎から声援貰うと、『あの日』のOTONAを背にして戦った記憶が生々しく蘇るからスゲぇイヤなんだよ。
あと、アンタらもとっととどっかに行ってくれないかなぁ。そのまま現場に居られると余計な仕事が増えるからさ。
右手に持った剣を逆手に持ち変えて、後ろから飛びかかってきたカエル型ノイズを背を向けたまま刺殺し、2Mの巨体ノイズを左の拳で撃ち抜いた。ライドブッカーをガンモードに変形させ空中に浮遊している飛行型ノイズの群れを纏めて、銃を乱射して一掃する。
遅れて降ってきた炭素の粉を見て、オレはマスクの中で薄く笑っていた。
いやあの人らの声援が実は嬉しくて笑ってるんじゃなくて、呆れたほうの笑いだから。
胸の中でギャーギャー喚いておきながら、身体はしっかりとノイズの動きに対応して攻撃を繰り出す動きに我ながら慄く。
無意識下でも完全に動いてしまっている体は、もう後に戻れないほど社畜化が進み出しているのか。ノイズと戦わなければ、いずれ心身が震いだすほど戦いを求めてしまうのだろうか。
…………無我の境地に達したことにしよう()
うん。そうしよう。身体に変な癖が付いたんじゃなくて、護身術が最高位に辿り着いたことにすればなんにも可笑しくない(現実逃避)
ただただノイズを倒し続けて、数がだいぶ減ったのが目に見える頃になると嫌な予感が湧いてきた。
「(居ないよね?今日は来ないよね!?)」
ノイズの攻撃に注意しながら周囲の様子を迅速に探るが、“例の黒いノイズ”の姿がないことに深く安堵する。
現れる兆候も感じず、これならばなんの憂いもなく戦いに集中出来る。
というか本当にこのまま終わらせてくれ。増援とかもナシの方向で。
これから大事な約束があるんだから、絶対に破るわけにはいかない!破ったらもう泣いちゃうからね、相手の女の子が!
まぁ、約束もあるけど個人的には“例のノイズ”に物凄くトラウマを抱いてるんじゃが。こっちは勝手にアルファもどきと呼んでるが、二課の方ではなんと呼んでるんだろうね。
ちなみに『俺』が何故そんな命名にしたのかというと、あの黒いノイズに腹部貫通されたから……。うん。冷静にその時のことを思い出したらスグにあの赤いアマゾンを連想しちゃったんだよ。
マジでこの世界にアマゾン細胞とか存在してないよね?
Amaz○nはあっても、アマゾンは生息してないよね?
ディケイドの力を手に入れてから、もしやと思いライダー界の危ない組織を探したが野座間製薬はなかった……はず。いや、野座間製薬はなくともアマゾン細胞を扱った別の組織の可能性もあるのか?
もしそうなら、狩り尽くして潰すしかない。冗談抜きでこの世界にアマゾンズ要素を存在させたくない!あんな救いのない血みどろ展開は断固として願い下げだ。
まぁ、そのことは頭の片隅に追いやってさっさとノイズを片付けよう。
山火事は酷いが、そこはプロの一課に任せよう。他人事みたいだけど、流石にこちらにも用事があるからそちらを優先したいので。
何故ならこちらはもうすぐ、響ちゃんと未来ちゃんのお食事会の約束があるからな!絶対にドタキャンするわけにはいかねぇ!
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………健全的な意味でだよ?
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「えへへ〜楽しみだなぁ、司さんのっごっ飯♪」
「響、はしゃぎ過ぎだよ。それと司さんが相手でも、少しは遠慮するんだよ。こっちから半ばお願いしちゃった形なんだから」
「もちろん、わかってるよ未来。フフン、でもねぇ司さんなら何だかんだで豪勢な料理を用意してると思うよっ。名探偵の推理に間違いはないよ!」
「う〜ん、確かに司さんならそこまでしそうな気がするけど。でも明日は入学式なんだから、食べすぎには気をつけてね」
「はぁ〜い。なんだか、未来がお母さんと同じことを……」
「響がだらしなく過ごさないよう、響のお母さんに頼まれてるからね。この際だから、司さんにも余り甘やかさないようにお願いしちゃおっかな♪」
「そんな〜酷いよぅ未来ぅ」
感想お願いします(超懇願)
尚、立花響と小日向未来の出会いは、次話か次々話に持ち込みそうです。申し訳ない。