食戟のソーマの世界で。   作:高任斎

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時間が飛びます。
主人公、やや達観した11歳。


3:運命の川は海に向かって流れていく。

 あれから6年が過ぎ、弟と妹ができました。

 オーナー夫妻にも、子供が1人。

 俺の両親も、オーナー夫妻も、にこやかに微笑みながら『だから何の問題もないわ』などと言ってくる。

 あ、オーナーは、顔が笑ってるだけなんだけど。

 

 いや、待って。

 なんで、俺と準ねえが、そのまま2人でゴールインな前提になってるの?

 いやいやいや、そろそろ子供の約束じゃすまない年頃になってきてるよ。

 俺は今11歳だけど、準ねえは17歳だよ。

 ピッチピチのJKだよ。

 あ、いや、元JKか。

 

「うるさい!」

 

 叩かれた。

 

 料理学校の最高峰、遠月学園。

 準ねえは、そこの中等部に入学して、無事に高等部へ。

 そして、順調に3年生まで進級していたんだけど……ついさっき、『退学になった!』って笑いながら戻ってきた。

 何があったんだろというか、何があってもおかしくないのが遠月って学校のイメージだ。

 準ねえから色々と話を聞いてたけど、なんというか、前世(仮)で読んだ漫画、『〇の転校生』ででてくる、『すべて勝負で決着をつける。勝者こそ正義』的な学校を連想してしまう。

 まあ、高等部に1000人入学して、卒業できるのは数十人程度とか……まあ、そこに在籍できただけでも、料理人としては名誉なのはわからなくもない。

 

 あ、いや、そうじゃない。

 準ねえ、なんか俺と準ねえの結婚話が進んでるけど、嫌なら嫌って言わないとまずいかも。

 俺ももう11歳で、もうショタとは言えない外見になったし。

 

「っ!っ!っ!っ!っ!」

 

 顔を真っ赤にして、叩かれまくりました。

 

 うん、ショタコン(笑)の闇は深い。

 

 正直、俺の外見は、いたって普通程度。

 まだ成長期の途中だけど、そこそこ背は伸びた。

 小学6年生で160センチ。

 そして、料理人の修行は割とハードだから、そこそこ筋肉質。

 ちなみに、右手は何度も疲労骨折を経験済み。

 そのせいで、左手でも過不足なく刃物を扱えるし、フライパンが振れる程度にはなった。

 チートすげえとか思ったけど、オーナー夫妻には『まあ、料理人なら普通』とか言われた。

 両手は、火傷の跡や、切り傷なんかで……正直、何も知らない人間が見たらギョッとする程度に醜い。

 

 まあ、準ねえも料理人だからあれだけどね。

 ただ、俺の手を自分の手で包み込んで……『料理人として最高の手だから問題ないの』とか呟きながら、頬ずりしたりするのはどうかと思う。

 いやまあ、涎れとか垂らされなくなったからいいんだけど。(感覚麻痺中)

 

 

「というわけで、心!久しぶりに、あなたの全力の料理を食べさせて!」

 

 そういえば……メールや電話のやり取りをしてたからあれだけど、準ねえって、高等部に入学してから、一度もここに帰ってこられなかったんだったっけ。

 そっか、俺が準ねえに料理を作ったのって、中等部の卒業と高等部の入学祝いのあれが……最後か。

 

 よかろう。

 わが料理力の真髄を味わうが良い。(ノリノリ)

 身体ができてきたおかげで、味付けだけじゃなく、料理人としての調理力も整ってきた。(整ったとは言ってない)

 そして、6年間の修行で得た、経験と知識。

 

『お、美味しさを使い分ける修行だから(震え声)……決して、娘の肌を見せたくないとかそういう理由じゃないから』という理由で、オーナーには『全力は出さないように』って言われたからなあ。

 

 でも、準ねえに直接頼まれたら仕方ないよね。

 それに、遠月って言ってみれば料理学校としての最高峰で、そこでバチバチしのぎを削り合ってきたわけだから、むしろここは、俺が胸を借りる立場。

 それに、料理人に『お前の料理が食べたい』って言われるのって……冥利に尽きるよ。

 

 全力を出すのは久しぶりだから、ワクワクするぜ。

 

 

 

 

 

 準ねえ専用のモップで床を拭き。

 全裸で、ビクンビクンしてる準ねえの身体に、そっと毛布をかけておく。

 

「もぅ、無理ぃ……絶対、はなれられない……」

 

 なんか怖いこと言ってるけど、聞こえない。

 というか、遠月学園で、最高峰の料理を散々味わっただろうに、大げさな。

 空腹とか、思い出は、最高のスパイスってやつかな。

 

 でも、久しぶりに全力を出したけど、全力だからこその粗も見えてくるな。

 全力といっても、与えられた食材に対しての、今の全力に過ぎない。

 なんとなくだけど、頭の中で『まだ行ける』って感じがするんだ。

 

 ただ、料理人って、単純に美味しさを追求するってことじゃないとも思う。

 それ以前に、客というか食べる側にも好みはあるし。

 

『これが俺の最高の料理だ』という道と、『料理は愛情、食べる側優先』という道との間の、言ってみれば白と黒の間の、灰色の部分が俺の目指す道のような気がする。

 

 うん、料理に限った事じゃなく、『道』は果てしないってことか。

 

 

 

 

 

 

 

「心を、遠月に行かせるのは反対」

 

 シャワーを浴びて身だしなみを整えた準ねえが、いきなりオーナー夫妻にぶっちゃけた。

 うん、まあ確かに、聞く限りではあの学校はあんまり自分には合わないかなって気はする。

 

 ただ、俺の進路なのに、俺の意見を聞かれないのはなぜだろう。

 

「実際、私が遠月でそれなりにコネはつないできたし……」

「それで、準。本音は?」

「お母さん、わかんない?遠月って、食戟があるのよ?」

「……」

 

 奥さんが、俺を見た。

 そして、小さく頷く。

 

「あぁ、うん……今さら、準を捨てられてもねえ……」

「お母さん、なんで私が捨てられる前提なの!?」

「いやいや、準。心くんの可能性を、私たちの都合で狭めるのはよくない」

「お父さん、それ以上言ったら、私、心と一緒に家を出て、独立するから」

 

 俺の進路ってなんだろうね?

 

 準の妹、翼に話しかけたが、『……?』みたいな感じに、首を傾げられた。

 可愛い。

 超和む。

 たどたどしく、『にーたん』とか言われたら、正直倒れそうになる。

 この子はちゃんと、人の話を聞くように育てようと決意した。

 

 

 

 本来の家に帰った。

 

「にーちゃん」

「にぃにぃ」

 

 かわいい。

 癒しだ。

 ちなみに弟は『誠』で、妹は『(みゆき)』。

 

 そして、母さんが、台所で酒を飲んでいた。

 

「ざ、ま、あ!それ、ざ、ま、あ!うーん、お酒がおいしいっ!」

 

 ……。

 何があったの?

 

 

 ほろ酔い加減、上機嫌で、母親が語りだす。

 

 例の、母親の実家。

 クソ親父の後を、クソ兄貴が継いだらしいが、クソ兄貴の息子が……えっと、俺の従兄弟ってことね。

 この従兄弟が、料理の才能に溢れていたらしく、まだ小学生だというのに、クソ兄貴と、クソ親父を、料理の腕でぼっこぼっこにしてしまったらしい。

 

 美味いものをつくれないやつは人とは認めない……みたいな家の人間の店で、小学生が超下克上しちゃったわけだ。

 ああ、うん……店の中というか、従業員も含めて、人間関係ずたずただろうね。

 

 俺は、母親を見た。

 いや、まあ……虐待としか思えない扱いを受けていた母親の気持ちはわからなくないんだけど、復讐というか、負の感情をむきだしにした母親の顔はあんまり見ていたくない。

 

 なので、わりと本気で料理を作って母親の口に突っ込んだ。

 

 

 全裸でビクンビクンしている母親の身体に毛布をかける。

 

 そして、適度に手を抜いたデザートを、弟と妹に食べさせる。

 

「うまー」

「ぁー」

 

 うん、料理は人を幸せにする。

 

 世界の全てを平和に、なんてことは言わないが、できるだけ争いごとはなくしたいものだ。

 そういや、母親の実家って、『美作』っていうんだな。

 

『薙切』とか『遠月』じゃなかったことに、ほっとする部分と、ちょっとだけ落胆する俺がいる。

 まあ、転生者が俺一人とも限らないし、いわゆる主人公もいるんだろうし……俺は俺で、自分の目の見える範囲で、精一杯生きていこう。

 なんだかんだ言って料理は楽しいし。

 

 しかし、『美作』か。

 うちの母親、わりと和洋中の偏りなくご飯作るし……なんの料理の店なんだろ。

 あー、でも思いっきり実家のことを引きずってるから、逆に手を出さない可能性もあるか。

 手作りのお菓子とか作らないあたり、案外、和菓子とか洋菓子とか、そっちの店だったりしてな。

 

 

 

 

 

 さてさて、大庭家における俺の進路に関する会議は進んでいるようで進まない。

 そして、早瀬家では母親が『水に落ちた犬は叩くべきよね』などと、俺の肩に手を置いてゲス顔で言い出す。

 正直、今の母親は、弟と妹の教育に悪い。

 

 とりあえず、母親には料理を食べさせて、ビクンビクンさせておくことにする。

 

 

 

 

 ゴールデンウイークが終わる頃。

 準ねえが、家族会議の場で勝利の雄叫びをあげた。

 

「っしゃ、おらぁっ!」

 

 女子力が、女死力になっておる……。

 まあ、裸も【武士の情け】も見ちゃったから、今さらだけど。

 

 よくわからないけど、俺は遠月学園の中等部に進学しないことになった。

 うん、どうやら俺は脇役にもならない感じだな。

 そして準ねえは、店でバリバリに働き始めた。

 

 ……この腕前で、退学させられるのか。

 遠月のレベルは高い。

 脇役にもならないというか、脇役にもなれないという方が正しいのか。

 

 と、いうか……オーナー夫妻は、2人してそこの卒業生なんだよな。

 ぱねえ。

 

 え?

 俺もバリバリ働いてるよ。

 オーナーの奥さんが翼を産んだとき、店の穴を埋めたの、俺だよ?

 準ねえは、遠月にいたし。

 むしろ、俺が奥さんの穴を埋められるようになったから、オーナー夫婦も、子作りに励んだってことだろう。

 学校?

 俺、小学校の2年生ぐらいから、年に3回ぐらいしか学校に行ってない。

 職員室の片隅で、テストを受けるだけ。

 必要な学力が身についているかどうかの確認なんだろうけど、それでいいのか。

 

 俺の振舞う昼食を口にしながら、校長と教頭が『ええんやで』とサムズアップしてきたけどな。

 

 詳しくは聞かなかったけど、この世界、料理人は結構権力者とつるんでるみたい。

 たぶん、オーナー夫妻は、俺が思ってるより有名人だきっと。

 

 

 さて、そんなある日のこと。

 店になんかきた。

 

 いかにもな老人と女の子……孫娘かな?

 

 そして、その姿を見て準ねえが、盛大に吹いた。

 必死で隠れようとしている。

 んーと?

 準ねえの首根っこを掴んだ。

 

 お客様、ご注文の、準ねえです。

 

「心っ!裏切り者ぉ!」

「おお、久しいの大庭くん」

 

 おお、この人……雰囲気あるなあ。

 なんというか、キャラが濃そうな感じ。

 

「……お久しぶりでございます」

「『心』の栄養は補給できたかね?」

「これから一生かけて、補給し続ける予定ですので」

「戻ってこんか?」

「……目的もなく通う学校じゃないですよ、遠月は。私にとって、料理は手段であって目的ではないです……」

 

 あ、準ねえがシリアスだ。

 と、いうか……遠月の関係者かな。

 この場を離れたほうがよさそう。

 

 あの女の子、老人と準ねえが話し込んでいるせいで、ぽつんとお人形さんみたいにしてる。

 お子様向けのデザートっぽい食べ物でも作って、持って行ってあげようか。

 

 相手の料理力を感じ取り、適度な力を使う……か。

 女の子には、ちょっと睨まれてしまった。

 美味すぎない料理。

 それでいて、満足できるほど美味しいと思ってもらえる料理。

 うん、オーナーの教えは難しい。

 

 

 

 

 

 

 あとで準ねえに、叩かれました。

 まあ、裏切り者だから仕方がない。

 

 

 

 

 さて、オーナーの奥さんも翼の育児から手が空いてきたし、準ねえも戻ってきた。

 

 僕、いらない子?

 

 ああ、うん。

 これが使えるのは、小学校に上がる前までだな。

 自分自身に寒気がしたわ。

 

「じゃあ、しばらくよその店に行って、修行してみようか?」

 

 ニコニコと、オーナー。

 むう、善意なのか、準ねえから引き離したいのか、わからん。

 

「まあ、実を言うと……知人に頼まれてね。知人の恩人筋にあたる店でちょっとトラブルがあったらしい。手を貸してあげたいんだ。心くんなら、心配なく送り出せるし……この店じゃないやり方を経験するのも良いことだと思う」

 

 なんの店ですか?

 

「ああ、洋菓子の店だ。心くんは、これまであまり専門的なデザートには触れてこなかっただろう?」

 

 

 ……洋菓子?

 まさかね。

 

 

 私のフラグ力は、53万です。(白目)

 

 




原作キャラとニアミスっ!(笑)
が、ダメっ……気付かず。
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