ちょっとオーバーだったり、説明くさかったりします。
おまけ1:主人公は無自覚なテロリスト。
目が覚めた。
素肌に、毛布の感触。
顔を横に向けると、あの人の背中。
ああ、とため息をつき……羞恥に悶えた。
『僕の考えた最強のねこまんまが完成した!』
ふざけちゃダメよとたしなめようと思う気持ちと、年齢相応の子供らしさを微笑ましく思う気持ちと。
とりあえず、娘がやるようにペシンと頭を叩いて、帰らせた。
一見、料理とも言えない料理。
だから、油断した。
あの、『天災』が、本気で取り組んだ料理だってことが、頭からスポーンと抜けていた。
なんの気構えもせず、一口。
食べてしまった。
数種類の味噌のブレンド。
米のブレンド。
これ、ダシも……。
くっ、こ、
悔しい、でもとろけちゃう。
風味が、味覚が、全身で弾けた。
陶然としたところに、あの人がやってきて……押し倒された。
たぶん、ひどい格好をしてたんでしょうね、私。
いや、それはいいの。
それはいいんだけれど。
そっと、お腹を撫でる。
……今、危ない時期だったのよね。
生まれてきた娘に、翼と名付けた。
おまけ2:暴君、遠月やめるってよ。
大庭準は、遠月学園86期生である。(ソーマは、92期生)
できる限り、原作キャラとは関係しない年代を選んだらここになった……というのはメタ発言だ。(笑)
遠月の教育は、中等部と高等部とではベクトルが違う。(独自解釈)
中等部は、料理知識、調理知識、食材知識、機材知識、経営論など、料理人として、また経営者として必要と思われる知識を、広く、深く、学ぶことが出来る。
その一方で、高等部の教育は……授業もあるけど、基本は自己研鑽だ。
高等部の教育は、よく言えば実践主義であり、悪く言えば食戟特化。
まあ、そもそもの理念が、『1%の珠を生むために99%の生贄を必要とする場所』だから、生徒としては受け入れるしかない。
つまり、切り捨てが前提の教育の場なので……料理人としての基礎教育は『中等部までには終わらせる』というのがコンセプトだ。
それゆえに、『高等部からの編入希望』は、料理人としての修行ではなく、遠月という教育の場に集まる食品および料理関係者とのコネ作りを夢見てのものになる。
なお、例外として……『遠月ブランドに憧れただけの勘違い者』や、『食戟が大好きなふれんず』もいる。
以上を前提に、我らが準ねえにとって、遠月の高等部は、どんな場所だったか。
人生って、ままならないことばっかりね。
ため息をついた。
中等部を卒業して、両親と話し合った、安心安定のプラン。
高等部に入学したら、最速で十傑の地位を手に入れ、必要なコネを手に入れつつ、適当なところで自主退学。
正直、十傑のまま卒業するとしがらみが増えすぎて面倒くさいことになるのだとか。
父さんも、母さんも、しみじみとした表情で語るあたり、苦労したのだろう。
と、いうか……卒業とほぼ同時に『出産と子育て』って名目で、隠遁して逃げ回った……のが、私の出生秘話とか、ぶっちゃけられても困る。
……父さん、一席卒業だしね。
歴代一席の写真が飾られて……あれは私もゴメンだわ。
まあ、それはそれとして十傑の地位を手に入れるまでは順調だったんだけど。
(十傑の仕事に)飽きた。
(人間関係が)めんどい。
というか、私、もう
付き人に向かって、いつもの泣き言をもらしたが……いつものようにスルーされた。
そもそも、十傑の地位を、放り出そうとしても、『学園への貢献度が非常に高いため』などという理由で却下される。
食戟で勝った相手に、勝者特権で押し付けようとしたら、総帥直々に説教されたし。
ちゃんと、実力を見極めたうえでの譲渡だからいいじゃない。
だったらと、退学届を提出しても提出しても、何故か受理されない。
なにこれ、もしかして十傑って、呪われた装備なの?
「いえ……基本的に、誰もが十傑の地位を欲しがってると思いますが」
というかさあ、問題なのは、私じゃなくて、私以外の十傑メンバーでしょ?
どいつもこいつも、世界を放浪して料理修行に出たっきり戻ってこないわ、権力争いに躍起になってる馬鹿はいるわ……権利と義務がセットって、最低限の認識じゃない?
会議にメンバーが揃わないのは当たり前で、学校のイベントの仕事も放置とか……。
自分勝手にヒャッハーしてる連中が放置で、なんで私だけ怒られるのかな?かな?
3人の付き人がそろって、ついーと、目をそらす。
そのまま、十数秒。
沈黙に耐えられなくなったのか、ようやく1人が口を開いた。
「お、大庭先輩しか……仕事しないから、かな?かな?」
ねえ、アンタ……私、高等部に上がってから、一度も家に帰ってないのよ?
帰らせろ。
家に帰らせろ。
家に帰って、心の栄養を補給させろ。(本命)
「わ、私だって、大庭先輩の付き人になってから、休日をとったことないです!」
「あ、あなたは1年だからまだいいでしょ!私なんか、準が十傑メンバーにカチコんで(物理含む)からずっと……」
「……休みがあるから辛いと思うの。だったら、最初から休みなんてなかったと思えばいい……」
……知ってた。
この娘たちも、被害者なのよ。
十傑入りしたら、雑事が増えて料理する時間が減っちゃうとか、どんな罰ゲームなのよ……。
権限が増えたところで、料理する時間がなくなりゃ、なんの意味もないわ。
十傑からしてこの有様だから、私たちの世代はハズレ世代とか言われるのよ。
まあ、高等部に上がって半年で十傑メンバーになれたって意味ではありがたかったけど。
私以外の十傑が好き勝手やって、負担が全部のしかかってくるとか……。
あれ?
なんで私だけ、こんな我慢しなきゃいけないのかな?
料理したい、家に帰りたい、心の料理食べたい。
心の料理食べて……えへへ。
私の心が丸裸にされて……溶け合っちゃうあの感覚。
「……大庭先輩が、またメスの顔になってる」
「シッ!」
「あの顔はむしろ、女をやめてるとしか……」
聞こえてるから。
ああ、はやく中等部から、タキちゃん上がってこないかなあ。
あの娘なら、任せられると思うんだけど。
タキちゃんと、新メンバーを十傑に推薦して……それじゃあ、私が逃げられないか。
んー。
機能不全を起こしてる十傑メンバーをどうにかする。
そして、私はここから逃げる。
あ、ひらめいた。
物理で、ヤっちゃえばいいじゃない。
3年はいなくなるからいいか。
2年のメンバーね。
うん、あいつら、衆人環視のなかで料理で叩きのめして、そのあとに物理的にシメよう。
十傑メンバーの監督不行き届きと、暴行傷害。
うん、物理的に退学しちゃおう、そうしよう。
そうと決まれば。
付き人の3人を見る。
この娘達が困らないように話をつけて、便宜を図って……ああ、結局忙しいことには変わりないのね。
おまけ3:人のふり見て……。
勝つか負けるかわからないから勝負だと。
絶対に負けない勝負は、ただの蹂躙だと。
そう言ってあいつは、まるで妥協を許さなかった。
ああ、蹂躙しつくすつもりなんだな、と。
そう思ったとき、俺の心から……何か、刺のようなものが抜けた。
父を、祖父を、哀れに感じた。
それと同時に、父を、祖父を、そして美作家にこだわっていた自分に気づけた。
それまで顔も名前も、存在も知らなかった叔母さんが、『やっちゃえ』と、とてもいい笑顔で後押しするから、まあ、いいのかなと。
そう思ったら、楽しくなった。
そしてあの、約束の場所。
不思議そうにそれを見つめていたあいつの顔を見て、気づいた。
あ、こいつ自分のことわかってねえ、と。
でもまあ、自分の立ち位置を定めるはずの、周囲のメンバーがおかしいから仕方ないのかもしれない。
オーナー夫妻はもちろん、大庭家全員(現時点で翼を除く)がまずおかしい。
遠月の1席、2席卒業の夫婦は、そもそも同学年と聞いた。
準さんも、退学になったとは言うが、正直眉唾だと思ってる。
たぶん、あいつの中のものさしはこんな感じか。
オーナー夫妻はすごくて、遠月の卒業生。
準さんもすごいけど、遠月の落第生。
叔母さんが、一般人。
そして自分自身は、料理人としてやっていけるレベルぐらいに考えてる。
おそらく、準さん≒自分>叔母さん(一般人)という比較式が成立してるんだろう。
……ちょっと考えればわかるはずなんだがな。
その『すごい』奥さんの穴を、準さん1人で埋められる。
遠月の二席卒業は、そんなに軽くない。
そしてなにより、叔母さんだ。
確かに、美作家を『出来損ない』として追放されたのかもしれない。
でも、それを『一般人』として考えるのは絶対おかしい。
たぶん、準さんをはじめ、オーナー夫妻が、意図的に偏った『遠月の知識』を与えている気がする。
触れないほうがいいんだろうな、俺は。
まあ、そういうわけで、あいつは自己評価がおかしい。
それはつまり、周囲への評価もおかしいってことで……。
だから……。
あいつの言う、俺の評価。
話半分ぐらいに聞いとくか。
天才なんてのは、そんなにゴロゴロと転がってるもんでもないだろ。
おまけ4:僕、経営者ぁっ!
まあ、料理人にもいろいろスタイルがあるね。
ただ、食戟にありがちの、1食完全燃焼主義がキャリアに活かされる料理人のあり方って、そんなに多くないと思うんだよ。
店を経営する。
料理を作る。
食材を仕入れる。
情報収集。
そして、新作を作ったり、自分を研鑽する時間。
人間一人のリソースは有限なんだ。
毎日毎日、やってくるお客に対して、ほぼ同等の料理をコンスタントに提供し続ける。
私が心くんにいつも言ってる『美味すぎない料理。それでいながら満足してもらえる美味さ』ってのは、それを見越したものだ。
疲労のせいで昨日と同じ働きができないとか、幻の食材は滅多に手に入らないから幻なんだとか……瞬間最大的な美味しさを売りをメインにすると、余計な苦労をするよ。
もちろん、私の主張が絶対に正しいとまでは言わないけどね。
人を雇えばいいと言われるかもしれないけど、腕と人格、信頼できる人間はそんなに多くない。
コスト面でもね。
……と、いうわけで、何か言い訳はあるかい?
「いや、その、なんか話が無駄に大きくなってませんか……」
この店は、私(と妻)が経営している店だからね。(にっこり)
「申し訳ありませんでした」
心くんの土下座を見て、私はため息をついた。
『僕の考えた最強のお茶漬けが完成しました!』
さあ、これから店を開こうかというタイミングで、妻と、準と、昴くんが、戦線離脱した。
今日は、ハードな一日になりそうだ。
まずは店の掃除と……。
もう一度、心くんを見る。
本当にもう、この『天災』くんときたら。
料理力の差が、リアクションを生む。
それは、真実の一面だ。
しかし、その真実には先がある。
優秀な料理人は、総じて優秀な舌を持っている。
それは、美味さを、刺激を、受け取る能力だ。
遠月関係者のリアクションが派手と言われるのは、それが理由だ。(強弁)
だから。
彼を、遠月に進学させるわけにはいかないという意見には私も賛成だ。
じゅ、準との仲を……み、認めることには、や、やぶさかではないつもりだけどね。
というか、もういろんな意味で手遅れだし。(震え声)
おまけ5:プライド。
神の舌……そう称されるようになってから久しい。
私は、お金をもらって料理を試食する。
そういう立場だ。
『薙切』の名と、この『舌』を無視すれば、私はただの小娘でしかない。
私に向けられる顔のほとんどは、『媚び』という一言で表現できる。
そうでない人間は、料理の実力や地位というものを背負った人たち。
でも、私に出す料理はいつだって真摯だ。
それが、評価するに値しない料理であっても……結果として切り捨てるしかない料理であっても、『私に評価されるために作られた』ものであることを疑ったことはない。
あの日、お祖父様に連れられて行った場所。
私は、手加減された。
香りが。
味が。
気配が。
『このぐらいでいいよね』
そう語りかけてきていた。
私は戸惑い、そして料理人を睨みつけた。
睨みつけた理由を考えることもなく。
その場はそれでおしまい。
最初に気づいたのは、自分が久しぶりに料理人の顔をまともに見たこと。
お祖父様に紹介されたわけでもなく、昔からの顔なじみというわけでもない。
試食。
試食。
試食。
料理しか見てこなかった自分。
手加減された自分。
じわりと。
熱く、大きな感情を覚えた。
怒りだ。
これは、試食じゃない。
私のもとへ、足を運ばせるのではなく、私から足を運んだ。
私は、客になる。
静かに、しかし、気持ちを乗せて睨みつける。
出しなさい。
本気の料理を出しなさい。
あれから数年。
この店に足を運ぶのは、何度目になるだろうか。
この店の料理人は、彼だけじゃなく……私に本気を見せてくれない。
それが、悔しくもあり、嬉しくもある。
不思議な気分だ。
……ところで、あなたは準さん、でしたよね?なぜ私に対して刺々しいのですか?
「学園のゴタゴタを持ち込んで欲しくないんですけど」
そうですね。
微笑みを返した……そのつもり。
次にこの店にやってくる頃には……カタが付いているといいのですけど。
おまけ6:そう遠くもない未来。
「なんて言ったらいいのかしら……えっと、
どうやら、お母さんは、私にグレてもらいたいらしい。
思春期の女の子に対しては、もう少し慎重に言葉を選ぶべきだと思うの。
「私なんか、人から逃げるための口実の子作りの結果よ……今さらだけど、うちの両親って、常識人ぶってるけど、どっかネジが外れてるのよ」
たぶん……準姉さんには、言われたくないと思うわ。
当然、準姉さんと結婚した心兄さんは……いい人だし、好きだけど、変人であることは否定できないし……。
あれ?
私の家族って、変人しかいなくない?
もしかして、料理人って、みんな変人なの?
待って、昴にぃ。
無言で目をそらすのやめて。
昴にぃはまともだよね?
いつも、準姉さんや、心兄さんのストッパーになってくれてるし、常識枠ってやつだよね?
変人なのはうちの家族だけで、料理人が変人ってわけじゃないよね?
お父さんたちからいろいろ教えてもらってるけど、私、おかしくなってなんかないよね?
ちょっ。
まこにぃ、みゆき!
なんで逃げるの!?
そういう優しさに見せかけた暴力はダメなんだからね!
大庭家と、早瀬家は、今日も平和です。
おまけ?:しあわせのかたち。
「……美作の血のせいって思ったんだけど、結局
しみじみと、そんなことを言い出す母親の髪には、白いものが混じっている。
結局、言えなかったなあ……前世の記憶持ちとか。
今思えば、相当おかしな子供だったと思うんだけど。
今は今で、翼ちゃんには変人扱いだし。
義務教育の小学校や中学校にもろくに通わず、料理の修行に明け暮れて。
準ねえとの結婚を意識し始めた時に、自分の子供のことを意識した。
高卒ぐらいの資格は取っておくかと、準ねえと二人で勉強して。
ああ、そうじゃないな。
ちゃんと、母親がしっかりしてるうちに聞いておかないと。
人間、いつ何が起きるかわからないしな。
誠や、幸を見てると……俺が母親に振り回されたんじゃなく、母親が俺に、俺のチートに振り回されたんじゃないかって気がする。
ねえ、母さん。
俺は、いい息子だったかな?
母親は、笑ってくれた。
うん、それだけでいいから。
満面の笑みで、またあの動画を見返さないで。
どんだけ、恨んでるんだよ……復讐の闇は深い。(震え声)
それじゃ、そろそろ帰るわ。
準の様子も心配だし。
「ばいばーい」
やめて。
自分の子供に、『ばいばい』されるのって、心にくるの。
一時的にあずけてるだけだから。
『ほら、まーまって言って』とか、嘘教えてるんじゃないぞ、ババア。
子育て大事、超大事。
ちゃんと時間作るから、準が子供産んだら、ちゃんと時間作るから。(震え声)
仕事にかまければ家庭が壊れ、家庭にかまければ仕事が壊れる。
げに生きにくきは、人の世よ、って。
膝をカクカクさせながら立ち上がった俺の背中に、ぽつりと。
「ありがとう」
母親の言葉。
……うん、俺は生きている。
たぶん、料理バトル系作品の擬似世界で。
オーナー夫妻は、ソーマの父親や、堂島さんよりちょっと年上ぐらい、かな。
そこは、ふわっとした、『ちみつなせってい(笑)』で、脳内変換お願いします。
これにて幕引きでございます。
応援ありがとうございました。
次は、どの星にかけようか……。(昭和生まれにしか通じないネタで逃亡)