「……変身ッ!!」
彩人が叫ぶと、廃材が怪人のほうへ跳ね返り、彩人の身体が変身していく。
『PSYCHIC(サイキック) RIDER(ライダー)!! GO(ゴー)!! PSYCHOKINESIS(サイコキネシス)!!』
彩人のつけたベルト……、ブレインドライバーから電子音声が聞こえると、
彩人の身体は、全くの別物になっていた。
人間の筋肉を象った、無機質な紫の身体。
昆虫の複眼の様なオレンジ掛かった黄色の眼。
そして、眼の上から伸びる触覚は、スプーンの形状に酷似している。
「何だこれ……?」
彩人は変化した自分の姿を、見たり触ったりして確かめている。
「彩人、前!!前!!」
「前……?」
彩人の背後に隠れていた絵理子の声に、自身の身体を見ていた彩人が前を向くと、
目の前から、再び廃材が飛んできていた。
廃材はそのまま彩人の頭部へ衝突した。
「痛ってぇえええーーーッ!?」
本来なら、痛いと叫ぶだけでは済まされないはずの攻撃だが、
強化された彩人の強靭な身体により、並の攻撃では致命傷にすらならないのだ。
「痛た……、よし、絵理子あの人の手当て、頼めるか?」
廃材の当たった頭部を擦りながら、彩人は絵理子に言った。
「で……ど、どうすればいいんだ!?」
「何やってる!!早く戦え!!」
「戦うって、どうやって!!」
その答えを聞く前に、怪人の方が彩人へ襲い掛って来た。
先ほどまでの怪人の動きからは考えられない程の素早さである。
風を切る音と共に、拳が繰り出される。
「あぶね!?」
繰り出された拳を危な気ながらも回避し、距離を取る彩人。
「くっそ!!俺、碌に喧嘩もしたことねぇんだってッ!!」
彩人はがむしゃらに拳を怪人へ繰り出した。
拳は怪人の胴体に当たり、その衝撃から、怪人はよろめいた。
「あ、当たった……?あ、当たった!!アイテッ!?」
攻撃が当たり、喜んでいるのも束の間、怪人の反撃の一撃を受けてしまう。
その後も、攻撃を当てては当て返される状況が続いた。
時間にしてたった3分ほどだが、戦っている本人である彩人にとっては、
それ以上に長い時間の経過を感じていた。
「これ、本当に倒せるのかよ……ッ!!」
そうこうしていると、怪人に変化が訪れた。
怪人を包んでいたスプーンの数が増え、怪人自体の身体も、より筋肉質になっていく。
「悪化し始めたか!?気を付けろ!!」
怪人は身体を包んでいるスプーンを宙へ浮かばせ、彩人に飛ばした。
先ほどの廃材とは違い、軽いスプーンということもあり、無防備にもスプーンの山を身体に受けてしまう。
その瞬間、とてもスプーンが当たった音とは思えない音と、
火花を散らして、彩人の身体が吹き飛ばされた。
吹き飛ばされ、地面を転がるが、そこへさらに追い打ちが掛けられる。
怪人の操るスプーンによる攻撃が続き、何も出来ずに攻撃に晒される彩人。
最後に大きく吹き飛ばされ、一時的に攻撃が止んだ。
攻撃から解放されたとは言え、彩人はダメージで立ち上がることすら困難であり、
戦うことなどもっともだった。
彩人は地面に這い付くばりながらも、怪人を見つめていると……。
再び、怪人は身体のスプーンを宙に浮かばせ始めていた。
「やっば……ッ!!」
どうにか立ち上がろうとする彩人、そこへ、男性が彩人へ言った。
「お前の超能力を使え!!」
「超能力……?俺の……?
超能力なんて俺……あ……!!」
彩人は変身した瞬間に流れた音声を思い出した。
「サイコキネシス……、そうか!!」
怪人がスプーンを彩人目掛けて飛ばす。
「止まれぇえええええッ!!」
片膝立ちになり、両手を前に突き出すと、叫ぶ。
複眼が光ると、紫色のオーラがスプーンを包み込み、動きを止めた。
……いや、止まっていたスプーンは急に怪人の方へと動き出し、彩人がされたように、
怪人にスプーンを当て返した。
「隙が出来た……!!サイキックバーストだ!!
ダイヤルを下してスイッチを押せ!!」
「分かった!!」
彩人は男性に言われるまま、ブレインドライバーのダイヤルを下し、右側面にあるスイッチを押した。
『GYU-(ギュー)! !!CONCENTRATE(コンセントレイト)!!』
再び、紫色のオーラが現れ、彩人を包むと、宙へ浮いていく。
倒れていた怪人が起き上がり、上空にいる彩人に気付く。
複眼が光った瞬間、彩人はダイヤルを上げた。
『PICKERING(ピッカーン)!!PSYCHOKINESIS(サイコキネシス)!!PSYKICK(サイ/キック) BURST(バースト)!!』
瞬間、凄まじい速度で怪人へと飛び出し、キックを繰り出した。
キックが炸裂すると、怪人を包んでいたスプーンがバラバラと落ち、怪人は倒れた。
怪人の頭からは、彩人の持つプレートと似たものが飛び出し、割れると、粒子のようなものが、
元の姿……、人間に戻った怪人の頭に入って行った。
「お、終わった……?」
彩人は終わったと安心すると、地面に横になった。
「これ……どう戻るの……?」
男性の手により、変身を解除し、元の身体に戻った彩人。
絵理子の肩を借りながら、なんとか立っている状態だった。
「くっそー……。
身体中痛いし、なんでか頭も痛いし……」
「超能力をつかった反動だ。
もうすぐ迎えが来る、それまで少し休んでおけ。」
男性はそう言うと、握手を求め、右手を差し出した。
「挨拶が遅れた、橘(たちばな) 信二(しんじ)だ。色々と済まなかった」
「あ……と、楠木 彩人です、こっちは幼馴染の堀木 絵理子。
一応こっちも、絵理子が危なかったけど助けられたんで……ありがとうございました」
彩人も右手を差し出し、互いに握手を交わした。
「ところで、絵理子はなんでこんなところに……?」
「え……?あ~……。ドーナツ屋さんへ寄ろうと思ってたら迷っちゃって……」
「いや、迷っちゃってって、ドーナツ屋は反対側だろ」
「あーーー、もう!!あの後彩人を探しに追いかけたの!!
地図は見てたから……こんな場所に何の用だろうって思って……。
そしたらあいつに襲われて……」
「……ごめんな、巻き込んじゃって」
彩人と絵理子のやり取りを見ていた信二は……。
「仲がいいんだな」
と言った。
「まぁそうですね、親の仕事が一緒だったりで、ずっと一緒でしたから」
話していると、研究所の外に、一台の車が止まり、クラクションが鳴らされる。
「おーい、信二君~!!迎えに来たよー!!」
運転席の窓から、女性が顔を出し、手を振っている。
「来たようだ、悪いが、あそこにいる人を運ぶのを手伝ってくれないか?」
信二は絵理子にそういうと、怪我をしている足を引きずりながらも、
さっきまで怪人だった男性の元へ歩き出した。
「あぁ!!俺も手伝い……ツッ!?」
彩人も手伝おうとするが、動いた瞬間、頭に激痛が走った。
「あんまり無理をするな。初めて変身したんだ。座って待っていろ」
車に乗り、信二達の拠点に向かう最中、助手席に座る信二が、隣で車を運転する女性を紹介した。
「梓(あずさ) 薫(かおる)だ、サポートやらをしてもらっている」
「どうも、はじめまして」
彩人と絵理子が薫へ頭を下げるが……。
「はいはい、よろしくー。
けど、サポート役ではないし、サポートって言葉、嫌いだから忘れていいよ~。
なんたって仮面ライダーの装置とか作ってるの私だし!!」
「仮面……ライダー……?」
「君が変身した姿の名前だよ、仮面のライダーだから仮面ライダー。」
「はぁ……」
「あまり気にしないでやってくれ、変ってるんだ彼女は」
「あ、装置を作ってるってことは……!!」
「ううん、君が持ってるベルトは私が作ったものじゃない。
だから、誰が作って、何のために君に送ったのか……気になるよね~!!」
薫は彩人が今日見た中で一番の笑みを浮かべたのを見た。
「あぁ……なるほど、変わってる」
しばらくすると、彩人達を乗せた車は、とあるお店の前で止まった。
「到着~!!ようこそ!!我が研究所兼ドーナツ屋たちばなへ!!」
「逆だ、ドーナツ屋兼研究所だ……どーした?」
彩人と絵理子はお互いに顔を見合い、笑った。
「いやぁ……世の中狭いなぁって」
そこは絵理子が行こうとしていたドーナツ屋であった。
次回、仮面ライダーキネシス第2話……『超能力者!!』