特殊鎮守府の艦娘   作:黒つ羽

2 / 4
黒つ羽です。
頑張って書きました。

よろしくお願いします。


変異艦:夕立

「てーとくさ~ん!」

 

 

 お、夕立か。どう゛ェッ!

 

 

 

 マフラーをふわりと浮き上がらせ、赤い目を光らせながら突っ込んで来たのは白露型駆逐艦夕立。頭を尋常ではない勢いでこすりつけ、現在進行形で提督の腹部にダメージを与え続ける。比較的最近、特殊鎮守府に異動してきた艦娘だ。

 

 

 

「てーとくさん!お願いがあるっぽい!」

 

 

 お、おう、夕立なにかな?私のでき「敵を駆逐したいっぽい!」る…おう、そうか

 

 

「良いっぽい!?」

 

 

 ま、待て!許可はしてい「早速行ってくるぽ~い!」な、い。ちょ、ホントに待て!

 

 

「キャウンッ!?」

 

 

 

 静電気に驚いた犬のような反応をする。夕立はこの鎮守に来てから、常に首輪を装着している。理由は明白だ。まず、命令を聞かない。話を聞かない。話を勝手に解釈して前進、突進、特攻を繰り返す。そのくせ、しっかり帰還するのだからたちが悪い。

 

 

 

 おまえ、また深海棲艦の()を鎮守府に並べる気か?

 

 

「うぅ~、てーとくさんの為っぽい。戦果を上げればていとくさんにいっぱい褒めてもらえるし、大本営から勲章たっくさん貰えるっぽい!」

 

 

 

 提督のために、妄信的に提督のためならば、例え命令を無視してでも戦果を上げるという行き過ぎた提督至上主義。兆候は改装前から見られていたらしい。一人突撃を繰り返して戦果を上げ、褒めて褒めてとすり寄る。

 

 

 

 だが、前の提督は褒めずに命令無視を咎めた。それは当たり前のことで艦隊の規律を乱し、勝手に行動することは軍隊ではあり得ない事だ。

 

 

 

 彼女は何故怒られたのかを理解しなかった。いや、理解はしていたのだろう。ただ、提督のためにやっていることなのだから、悪いことなど何もないという自己中心的な考えだった。

 

 

 

 彼女は比較的改装レベルにまで到達するのが早かった。命令無視をして毎回MVPを取る程の活躍をしていたのだ、当然とも言えた。

 

 

 

 改装前の夕立はある程度話は聞いていたし、そこまで規律を乱すようなことはなかったらしい。が、改二に至ったところで彼女の異常性が際立った。変異したと言うべきだろう。

 

 

 

 駆逐艦夕立は変異艦だ。それも変異しやすい艦娘であり、判断しやすい艦娘でもあった。初めの夕立(戦争初期の艦娘)が改二に至った時は、その見た目の変化と飛び抜けた性能に当初は正常な改装ではなく変異したものだと判断された。

 

 

 

 しかし、他の夕立たちが改二になり始めるとそれは通常の改装だと言うことが分かった。他の艦娘で変異艦と勘違いされたのは主に艦種が変わる艦娘や呂500などが上げられる。

 

 

 

 特に呂500は酷い。なんせ、見た目と性格の変化が凄まじい。改装したら別人に入れ替わったと言っても不思議ではなかった。海外からの派遣で日本に来たのは良いが、染まったというか、毒されたというか、当時の混乱はドイツをも巻き込んだ酷いものだった。

 

 

 

 話がそれた。さて、夕立は当初すぐに正常な艦娘だと判断され、特に問題はなかったのだが、一部の鎮守府で夕立の様子がおかしいという報告が何件か上がった。

 

 

 

 それは異常なほどの狂暴性。深海棲艦に肉迫し、魚雷を直接たたき込むのは序の口で、深海棲艦を盾に敵艦隊に突っ込み、味方の砲撃を背に深海棲艦で深海棲艦を撲殺するなど、野蛮な戦法をとるようになった。

 

 

 

 再度、変異艦認定された複数の夕立は、この特殊鎮守府に異動してきたが、またすぐに元の鎮守府に戻ることになった。

 

 

 

 彼女たちは一つの共通点があった。それは提督至上主義、提督のためならどんな無茶な命令でも遂行するという狂気の人格だった。

 

 

 

 当時、変異した彼女たちを()()()()()()()()()と呼んだ。提督(飼い主)には尻尾を振り、深海棲艦()には狂気と暴力を持って殺戮する。的を射た表現だった。

 

 

 

 戦力的には文句はない上、提督が絶対の彼女たちが通常の鎮守府に戻れたのは当然とも言えた。

 

 

 

「てーとくさん?聞いてるっぽい?」

 

 

 

 この夕立もそれに準ずる能力を持つ。他の変異した夕立たちと違うのは自己中心的な部分が強いこと。提督至上主義は変わらないのに、提督のためならば提督の意見を無視するというある種の矛盾した思考を持っていた。

 

 

 

 改二になったことで力を手に入れた夕立は苛烈を極めた。以前よりも敵が雑魚になった。より多くの戦果を上げられると昼夜問わずに出撃し、その結果鎮守府の港に()が並べられた。

 

 

 

 本来、旗艦と鎮守府の通信を介すことで、詳しい敵艦隊の戦力などを記録し、撃滅することで戦果とする。勝手に出撃する夕立は、当然戦果を上げたことを鎮守府に伝えることができない。そこで首を持ち帰ることにした。

 

 

 

 艦娘の膂力は艤装を顕現させた状態で、艦時代の馬力に近い力を発揮する。そのため、深海棲艦の()()()()()()()()()()()ことができた。

 

 

 

 即、特殊鎮守府行きとなった夕立は、特に抵抗することなく異動した。提督が変わることで何らかの不都合が起こるかとも予想されたが、夕立自身に変化はなく、ただ暴走し続けるだけだった。

 

 

 

「てーとくさん!なんで出撃しちゃ駄目っぽい!?」

 

 

 あのな、夕立。命令無視は駄目だろ

 

 

 「無視していないっぽい!ていとくさんの為に敵を駆逐しているだけっぽい!」

 

 

 いや、だから「とにかく敵は駆逐っぽい!戦果を上げればていとくさんが喜んでくれるっぽい!」おい、聞け

 

 

「だからすぐに出撃するっぽい!てーとくさんが喜んでくれるなら火の中、水の中、深海棲艦の巣の中っぽい!」

 

 

 夕立、黙れ

 

 

「っ!?」

 

 

 お前、私の為だと言うなら勝手な行動は慎め…でないと解体処分だぞ

 

 

「むっ!?んー!んー!」

 

 

 解除

 

 

「てーとくさんの為っぽい!戦果を上げればてーとくさんが喜ぶっぽい!だから夕立は戦うっぽい!」

 

 

 黙れ

 

 

「んー!!!!!」

 

 

 吹雪!いるか?明石にいつも通り頼むと伝えてくれ。夕立を暫く工廠にぶち込む。

 

 

「はい、こちらに。明石さんはすでに工廠の方で待機しているようです。」

 

 

 流石明石だな、無駄がない。夕立、今日から工廠だ。明石にしっかり弄られろ。そら、行け

 

 

「んー!?」

 

 

 

 声に出せない悲鳴を上げながら、夕立の意志とは関係なく、足が工廠へと向かう。顔を見れば信じられないような、心底驚いたような、提督の仕打ちに理解が及んでいない子どものような表情を浮かべながら、鎮守府の奥へと消えていく。

 

 

 

「司令官、明石さんには何をしてもらうつもりですか」

 

 

 この前は薬で暫く放置していたからな。今度は直接頭の中を弄って根本から人格の矯正を頼むつもりだ。

 

 

「明石さんは異端艦でしたか」

 

 

 おう、鹵獲した深海棲艦をバラしたり、ダブった艦娘をバラしたりな。あれだ、マッドサイエンティスト

 

 

「なるほど、お世話になった方ですが、やはり私との相性は悪そうですね。まあ、今回で夕立ちゃんも変われば良いのですが」

 

 

 さて、うまくいくかねぇ 

 

 

「場合によっては解体処分ですか」

 

 

 そうだな、戦力的に困ってるわけではないしな。夕立は無断出撃も何度かやっているし、ここら辺りが限界だろう。

 

 

「そうですか」

 

 

 残念?

 

 

「ええ、まあ、他の変異艦の夕立ちゃんより、人格はゆがんでいないので仲良くなれるかと思ったのですが」

 

 

 ま、明石がうまくやってくれるだろ。あまり心配しなくても大丈夫だと思うぞ。

 

 

「…分かりました。では仕事に戻りましょう」

 

 

 おう

 

 

 

 この日、鎮守府内では恐ろしい機械音と一人の艦娘の狂ったうめき声が絶えず響き渡っていた。




タグに見切り発車を付けようと思います。
プロットがなく、突発的に思いついた事を書くので一応、念のため。

夕立がどうなったかは、また気が向いた時に書こうと思います。まあ、処分されるかされないかは私の気まぐれなので、楽しみにしていて下さい。

あ、気に入らないところがあればガンガン修正してしまうのでご了承下さい。

あと、誤字報告ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。