また、諱や諡号を生前に使用している場合があります。
分かりやすさ重視ですが、ご注意ください。
転生したら古代中国でした。
具体的には春秋戦国時代の前、ボロボロになってきた周がまだ頑張ってる紀元前800年。
転生を司る神様とかいるならもうちょっとこう気を利かせてくれないですかね。
せめて周建国のあたりなら封神演義じゃん!でテンションも上がったのに。
なーんで戦乱の世が始まりそうって時代に産み落としてくれたのやら。
そもそも古代中国ですよ、ありえない。
まずね、衣食住どれをとってもゴミだよゴミ。
とくに住。
だってこの時代って鉄器すらないからね。
電気ガス水道とかそういう話ですらない。
文明にまみれてた日本人としては絶望しかないわけよ。
なんで二千年以上昔に転生してるのっていう。
確かにまぁ歴史シュミレーションものとかは好きですよ?
コーエーは神だからノッブの野望に始まり水滸伝やら項劉記やらランペルールでナポレオンになったり、提督は決断したし北海道でも戦争したし、アクションゲーは得意ではなかったけど無双もやりこんだし、元ネタを知るために漫画だって横山三国志や蒼天航路に始まりキングダムやら少女漫画ではベルばらや王家の紋章、日本史関連のものもよく読んだしね(オタク特有の早口)
……ゴホン。
とにかくまぁとんでもない世界に来ちまったわけですよ。
しかも周っていうとこれから分裂したりなんだりで500年もの戦乱時代、いわゆる春秋戦国時代に突入するわけで。
あーもうめちゃくちゃだよ。
そんな私の名前はエイ。
今世では周の国の片田舎、名もない母親から生まれまして、母親はなんと私を生んで即死亡。
父親?いねーよ。
というわけで0歳児にしてハードモードでスタートでございます。
今際の際に呟かれたエイってのが私の名前かどうかもわっかんねー。
けどまあ、そういうことにしておこう。
さて、こんな状況だったから自分が転生したとか云々考えるまでもなく「あっ死んだ」と思ったものだ。
ところがどっこい、脳裏に浮かぶは自分のステータスですよ奥さん。
産湯にも浸かっていない体でぼんやりとしていると割と鮮明な感じでステータス画面が浮かんできたのだ。
まるでRPGのような表記で色々と書かれていて頭の中で考えるだけで色々と操作が可能な模様。
どうやらいわゆる転生特典というべきものらしい。
ま、レベル1な上にスキルも持ち物もないんですけどね。
ハハッ。
ちょっと希望を持ってからまた絶望に叩き落された。
そんな私は生後数日の赤ん坊なわけでハイハイすらできず、餓死か凍死かと思っていたのに……あれ?なぜか死なない。
食べ物どころか水もとらず睡眠もしてないのに死なない。
いや、喉乾かないしお腹すかないし眠くならないし……。
寝転がったまま数日が過ぎても私は死ななかった。
どうもこれ特典の一つというか、人間ではなく勇者基準の体になってるっぽい。
まぁそうですよね、普通のRPGの勇者に餓死なんてステータス異常ないわな。
風来のシレンとかだったら危なかった。
母親が死んで私のことを育てる人がいないから生後半年くらいはそんな感じだったんだけど、普通に生きてるしすくすく成長したのは自分の体ながら怖かったもんだ。
食事してないのに体が成長するってどういうことなんですかねえ。
あと動けない私の隣で徐々に腐っていく母親(推定)の臭いと見た目が、いやーきついっす(素)
一歳を過ぎ、自分で動けるようになってからは色々やった。
まぁ何もしなくても死なないことは分かっていたので気楽なもんだ。
なんなら死んでもコンテニューするかもしれないし。
や、まぁそれは確証ないからさすがにやらないけど。
それで、5歳くらいになってようやくこの世界が周、つまり古代中国なことがわかったわけ。
そのころにゃ私は鬼子として忌み嫌われて村々を転々と旅してた。
まぁ自分でも鬼っていうか人間じゃねえな
旅自体はそう大変じゃなかった。
魔物を倒したり人を殺したりしなくてもなんか勝手にレベルが上がって、身体能力とかジョブのスキルが上がったりしたのが大きい。
家事してるだけでレベル上がったし、レベル5くらいになってからは普通の大人くらいの力は出せたからね。
食糧問題は最悪飲まず食わずでも死なないし。
石投げられたり盗賊に身ぐるみはがされそうになったり商人に詐欺吹っ掛けられたりしたけど、だいたい腕力で解決するし。
ぬ、言ってる傍から。
「おう、嬢ちゃん。こんな夜更けにこのあたりうろつくなんざ、他所モンかい?」
「痛い目見たくなきゃ荷物全部置いてきな」
「いやまて、コイツよく見りゃかなりの上玉だぞ。とっ捕まえて売っ払った方がいい」
「おう……まだガキだが将来はどえらい別嬪になりそうじゃねえの」
なんかギャーギャーやってるけど、やっと釣れたか。
人数は3人、身なりは薄汚いけど小銭くらいは持ってるだろう。
「嬢ちゃんではない。これでももう三十路だ。それとまぁ、悪いが私の路銀になってくれ」
スマンね。
せっかくこれから周の王都に向かうからちょっとおいしいものでも食べようと思ってな。
私の財布になってくれたまえ。
黒塗りの高級車に追突したとでも思って諦めることだ。
冥途の土産にジョブレベルカンストした剣聖のスキルを見せてやるからまぁ許せ。
今の私は燕も斬れるぞ。
そんなこんなで旅をしつつ30歳、紀元前770年。
正確な年号がわかるのはステータス画面に書いてあるからですわ。
なんなら月日と秒単位の時間まで表示されてるからね。
プレイ時間表示かよ。
んでまぁこの時代、中国最初の王朝として認められる周が衰退してたんだけど、中国の周りの異民族が中国文化を手に入れて力を付けてきてるのね。
そいで今の周の王様、幽王がこれまた結構な愚王というかなんというか。
幽王は有力な諸侯の一つである申氏から皇后を迎えていたのに、後宮に入った別の女性、褒の国から来た
それでこの褒姒、まぁ見た目は絶世の美女(噂を聞いてわざわざ王城まで忍び込んで見に行ったけど確かにまぁ美しい女性だったわ)なんだけど、一切笑わない。
ところがある日女官が失敗したか何かで絹でできた服が裂けた。
絹を裂くような悲鳴っていうけど、絹織物が裂ける時ってピーとかキーみたいな甲高い音が鳴るのよね。
それでなんか知らないけどツボにはまったらしくてこの褒姒がその音を聞いてほほ笑んだらしい。
それを聞いたこの幽王、なんと国中から絹を集めて引き裂かさせた。
こんなん褒姒でなくても笑うわ。
もうね、アホの極みかと。
権力の無駄遣いはこうやってやるものなのかと感心した。
まぁそんな感じでよろしくやったお二人さんの間には子供が生まれた。
そして同時にその年は関中で大地震が発生。
見事なまでの凶兆ですほんとうにありがとうございました。
それからも幽王は褒姒をなんとか笑わせようと必死だったからやれることはなんでもやった。
もちろん政務なんかほっぽってね。
それで珍しいこととあらばすぐに自分でやるようになった。
今度は異国の慣習を自分でやってみることに。
軍を集結させるのに烽火を上げ太鼓を打つなんていう、当時の中国的美意識からすると割と野蛮な感じのことをね。
そしたらこの火の多さを見て、面白いですね、綺麗ですねと褒姒が笑った。
今度は絹のときみたいに微笑みじゃなくてちゃんとした笑顔だったから、幽王はそりゃあもう喜んだ。
ちなみに私はここら辺をリアルタイムで王城に忍び込んで見てる。
レベルも50になって忍者に転職したこともあってそこらへんはお茶の子さいさいね。
で、幽王はその後たびたび意味もなく火を焚いては将を緊急招集した。
諸将は何事かと慌てて駆けつけるものの、特に異変はなく何をしたらよいものかと右往左往。
その様子を見ておかしいと褒姒が笑うもんだから幽王はますます嬉しくなってしまった。
これに怒ったのは将たちだ。
夜中(火が一番きれいに見える時間だからってだけ)に叩き起こされて集まってみれば、「呼んだだけ♡」みたいな意味のないカップルのいちゃつきみたいな理由。
しかもそれは寵姫に笑ってもらうためだけっていう。
オオカミ少年よろしく何度目かにはもう誰も集まらなくなった。
しかもこの時期、王は仕事なんてせずに褒姒にゾッコンだったから政治をやる人がいない。
そこで自分にすり寄って来ていた虢石父を重用して政治の一切を任せてしまう。
この虢石父、まぁ一言で言えば脂ぎったクソジジイ。
私腹を肥やすために悪政に次ぐ悪政を繰り返し、あっという間に民は疲弊してばったばったと死んでいき国はボロボロ。
そしてそんな中、王様はついに当時の皇太后だった申后とその息子の太子宜臼を廃して、褒姒を皇后に、褒姒との息子伯服を太子にしてしまう。
まーこれには皇太后の実家、申氏も大激怒。
そらそうだ。
怒りのあまり国をぶっ潰そうとするけど、そこはそれ、やっぱり王様だから兵力も十分だし強い。
一氏族の申が勝つにはどうするか、ってところで申の長は異民族の犬戎を味方に引き入れるという裏技を使って大軍勢で王都に迫る。
王様はこれに慌てて軍に召集をかけるも、烽火が上がったところで集まる将は一人もいない。
まさにオオカミ少年そのままの末路というか、王様と息子は殺されて、皇后になった褒姒は異民族犬戎に連れ去られていった。
まぁ異民族に連れて行かれた美女の末路なんて決まってるわな。
この時代の倫理観とかあてにしちゃダメよ、凌辱物の薄い本なんてメじゃないんだから。
かくいう私もこの世界で30年も生きてると倫理観とかバカになってんだけど。
なんせそこらでばったばったと人が死ぬんだもの、この時代は命の重さが軽すぎる。
襲ってくる野盗やらを殺した数は数えきれないし、今じゃもう何人殺そうが特に思うこともない。
悲しいけどここ、古代中国なのよね。
とまぁ見事な流れで周は滅亡でーす。
残当。
あーあ、せっかく封神演義でおなじみの武王や太公望なんかが頑張って作った国なのにね。
作るのは大変でも壊すのは一瞬ていうのも、世の儚さがなんちゃら。
見世物よろしく楽しんでた私が言うことじゃないけど。