ヒュンケルをかなりいじってます。
ヒュンケルファンは見ないでください。
魔王軍不死騎団長『魔剣戦士』ヒュンケルと百獣魔団長『獣王』クロコダインは、ダイ達アバンの使徒に敗北したことで正義の心に光を見出し、共にアバンの使徒の力となることを心に固く誓っていた。
「ヒュンケル……本当に身体は大丈夫なのか?」
「ああ……何度も言うが、オレは罪を贖うため、戦い続けなければならんのだ……」
「ならば行こう。ダイ達のもとへ……」
アバンの使徒一行は現在、氷炎魔団長『氷炎将軍』フレイザード麾下の戦力とバルジ島で交戦していた。
「ヒュンケルよ、ここがバルジ島に最も近い海岸だ。しかし、こことバルジ島の間には『バルジの大渦』と呼ばれる巨大な渦潮が巻いている。ここからはオレのガルーダに掴まって飛んでいこう」
「クロコダインよ……。すまないが空からは一人で行ってくれ。オレは海から行く」
クロコダインはしばしの間訝しんだが、すぐに答えを得たとばかりに言った。
「なるほど……。海と空の二面から攻撃するつもりか」
「いや……そうではない……」
「ではなぜだ……?共に行った方が安全だろう?」
ヒュンケルは、強い意志を宿した瞳で言った。
「クロコダインよ……。オレが共にガルーダで行った場合、その間オレはどうなる?おそらくおまえに抱きつく格好になるだろう。オレはおまえのピンクのイボ肌など、なんかキモくて触ることもできん。それならばオレは……たとえ大渦があろうとも泳いででもダイ達のもとへ行く!」
その迫力に、クロコダインが気圧される。
「ムッ……オレよりも遥かに小柄な体躯にも関わらず、凄まじい闘志を秘めている……。これがヒュンケル、これがアバンの使徒か……」
「すまんクロコダイン。助かる」
「なに、気にするな。己の信ずる道を進めと言ったのはオレだからな。ガハハハッ!!」
「ところでヒュンケルよ。どうやって海を渡る気なのだ?」
「無論……こいつを使う」
ヒュンケルは自らの腰を指差す。
「鎧の魔剣……!!」
『鎧の魔剣』。それは、『魔界の名工』ロン・ベルクが打ったとされる逸品である。普段は幅広の両手剣のような形状をしているが、鎧化――アムド――の言葉により、一振りの片手剣とあらゆる呪文を弾く全身鎧に変貌する。
「ヒュンケル……まさか……」
「そうだ……この魔剣を、ビート板代わりにする……!」
「バカな……!いかにおまえと言えども、それはさすがに無茶というものよ!」
「無茶かどうか……やってみなければわからん……!この諦めの悪さこそが、アバンの使徒の最大の武器なのだから……!」
クロコダインは、一人涙していた。
「フッ……どうやらオレは、おまえを過小評価していたようだ。ヒュンケル!一人の武人として、おまえの覚悟、見届けてやる!」
「ありがとうクロコダイン。では行くぞっ……!」
ヒュンケルは鎧の魔剣の先端を前にし、その左右に手をかけ海に向かって走り出した。
ヒュンケルは、何者かの声を聞いていた。
――あなたは力は強いんですが、なにぶんかしこさが低い。それでは真の強敵と出会った時には勝てませんよ。なにせかしこさが低いんですから――
『この声は……アバン……?』
――それに……まだこちらに来てもらっては困りますよ……かしこさが低い弟子の面倒を見るなんて正直ごめんですよ――
「ヒュンケル!」
クロコダインの呼びかけに応じ、ヒュンケルは意識を取り戻した。
「オ……オレは一体……?」
「おまえは溺れたのだ。鎧の魔剣は呪文が効かないとはいえ金属製だ。海に入った途端にドボンと沈んだよ」
『そうか……アバンはそのことを……。』
ヒュンケルは、意識のない中で聞いた師の声を思い出していた。
「しかし、おまえもさすがの武人だ。決して己の得物を離すことなく、共にどこまでも沈んでいったぞ。一人の武人として、敬意すら覚えた」
「クロコダイン……おまえが助けてくれたのか?」
「ウム。真空の斧の力を使い、水の中からおまえを救い出したのだ」
『真空の斧』。それは、魔法の力が込められた斧であり、『つかう』ことによって気流を操り、またかまいたち現象を引き起こすことができるものである。
「ありがとう、クロコダイン」
ヒュンケルは礼を言い、クロコダインの肌から目を逸らした。
二人は、舟、あるいは舟の代わりになるものを探していた。
すると、真新しい舟が見つかった。
「ヒュンケル、この舟などどうだ?爺さんが近海で釣りに使うようなチンケな舟だが、詰めれば人が4人は乗れそうな舟だぞ!しかもまるで以前所有していたものを他人に貸したために仕方なく今作ったかのように新しいものだぞ!」
「そうだな。爺さんが近海で釣りに使うような、だが詰めれば人が4人は乗れそうな舟だな。なにより以前所有していた舟を他人に貸したせいで仕方なく今作ったような真新しさがいい」
「よし、ではこれを使おう。ところでヒュンケル、バルジの大渦を越える方法は考えているのか?」
クロコダインは当然の疑問を口にした。
「それについては抜かりはない。無論……こいつを使う」
ヒュンケルは自らの腰を指差す。
「鎧の魔剣……!!」
『鎧の魔剣』。それは、『魔界の名工』ロン・ベルクが打ったとされる逸品である。普段は幅広の両手剣のような形状をしているが、鎧化――アムド――の言葉により、一振りの片手剣とあらゆる呪文を弾く全身鎧に変貌する。
「ヒュンケル……まさか……」
「そうだ……この魔剣を、オール代わりにする……!」
「バカな……!いかにおまえと言えども、それはさすがに無茶というものよ!」
「無茶かどうか……やってみなければわからん……!それにこの諦めの悪さこそが、アバンの使徒の最大の武器なのだから……!」
クロコダインは、一人涙していた。
「フッ……どうやらオレは、おまえをますます過小評価していたようだ。ヒュンケル!一人の武人として、おまえの覚悟、見届けてやる!」
「ありがとうクロコダイン。では行くぞっ……!」
ヒュンケルは鎧の魔剣の柄を持ち、舟に乗って漕ぎ始めた。
ヒュンケルは、何者かの声を聞いていた。
――あなたは本当にかしこさが低いですね。20もないんですか?めいれいさせろもさせてくれないんですか――
『この声は……アバン……?』
「ヒュンケル!」
クロコダインの呼びかけに応じ、ヒュンケルは意識を取り戻した。
「オ……オレは一体……?」
「驚いたぞ。漕ぎ出したと思った瞬間、突然大渦に捕らわれたのだから。もうなんなら漕ぐ前から吸い寄せられていたぐらいだったぞ。ガハハハッ!」
「クロコダイン……おまえが助けてくれたのか?」
「ウム。真空の斧の力と獣王痛恨撃を使い、水の中からおまえを救い出したのだ。新たな必殺技が生まれそうだったぞ!ガハハハッ!」
獣王痛恨撃。裂帛の気合と共に闘気を片腕に集中し、回転させながら前方に放つ、獣王クロコダインの必殺技だ。
「ありがとう、クロコダイン」
ヒュンケルは礼を言い、やはりクロコダインの肌から目を逸らした。
「ヒュンケルよ……オレも作戦を思いついたのだが、聞いてくれんか?」
「トカゲ頭にどの程度の策があるのか知らんが……聞こう」
「ウム。先ほどの舟におまえが乗り、オレが獣王痛恨撃で舟を押し出すというものだ。舟は空中を走り、バルジの大渦も越えられるというわけだ。どうだ?」
「なるほど。魔法のように低いところ飛んでいくというわけか。ピンクトカゲにしては悪くない作戦だ。よし、早速試してみよう」
ヒュンケルは再び舟に乗り、その後ろにクロコダインが立つ。その視線の先にはバルジ島が見える。
「ゆくぞヒュンケル!むううううっ!獣王痛恨撃!」
獣王が、その必殺の奥義を放つ。
果たして舟は、クロコダインの目論見どおり、海の上をバルジ島へ向け進んでいた。
その様子を見届けたクロコダインは、ヒュンケルに背を向け言った。
「戦友よ、しばしの別れだ。次は戦場で会おう。行くぞガルーダ!」
一方ヒュンケルは、舟に乗り高速でバルジ島へ向かっていた。
しかし、ヒュンケルにもクロコダインにも誤算があった。
舟は痛恨撃の闘気の回転に乗り、ヒュンケルともども回転していた。
さながら、ヒュンケルの頭を中心にし、体を針に、舟を針先に見立て超高速回転する時計のようであった。
『くっ……このままでは……。』
今まで経験したことのない回転に、ヒュンケルの三半規管が悲鳴を上げていた。
口から鼻から、あらゆるものが出てしまいそうだった。
『しかし、オレはアバンの使徒の長兄……!オレが闘志を失ってしまっては、ダイ達に、そして師に顔向けができん……っ!』
ヒュンケルは、その凄まじいほどの闘志で、出そうになるものをすべて塞き止めていた。
ヒュンケルは、間もなくバルジ島に到着しようとしていた。
そこでふと気付く。一体どうやって止めるのか。
「クソピンクトカゲが」
ヒュンケルはそうつぶやく。
『せめて、オレが呪文の一つも使えれば何かしら脱出法が見つかるのかも知れないが……。』
と、その時ヒュンケルの耳に何者かの声が聞こえてきた。
――生命ですよ……。すなわち闘気――
『まさか、アバン……!?』
――まだこちらには来ないでくださいね――
まるでアバンが電話を切ったように声が聞こえなくなる。
闘気……そういえば、かつてアバンが見せてくれた、闘気を放出する技……。
そうしている間にもバルジ島の海岸が迫ってくる。
「このまま衝突するよりは、最後まであがいて見せる……っ!」
ヒュンケルは、鎧の魔剣の鍔と柄の交差部分に意識を集中した。
そして……。
それは、奇跡だった。
闘気の放出により、衝撃波がクッションとなり、ヒュンケルは無傷で上陸に成功した。
通常初めて闘気技を使う場合、出力の加減ができず、自らの生命を犠牲にしてしまうこともある。
しかしヒュンケルの場合は、クロコダインへの復讐心を糧に、ただ『生き残る』ことだけが念頭にあったため、偶然闘気の出力が低かったこと。
それでも海岸の岩に闘気が直撃していた場合、海岸の岩は砕け、ヒュンケルも無傷ではいられなかっただろう。
しかし、偶然ヒュンケル自身が回転していたことから、放たれた闘気が集中することなく分散したこと。
これらの偶然が合わさって奇跡となり、ヒュンケルは無傷でバルジ島に上陸したのだ。
言うまでもなく彼もアバンの使徒。諦めない心が奇跡を起こしたのだ。
ヒュンケルは上陸後、すぐに走り出しながら言った。
「待っていろ、ダイ。そしてクロコダイン!!」