ドラゴンクエスト ダイの大冒険~裏の章~   作:山いもごはん

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大冒険への旅立ち!!~アバン編~

 私はあの日、デルムリン島で仇敵であるかつての魔王ハドラーの襲撃を受けました。その激戦の末、私は弟子達を守るため、ハドラーに対し自己犠牲呪文(メガンテ)を使用しました。術者の生命を犠牲として爆発的な破壊力を放つこの術は、神の祝福を受けた者以外が使用すれば命を落とす、諸刃の剣のような術です。私は命を賭ける覚悟でこの術を使いましたが、所持していた身代わりアイテムのおかげで、一命を取り止めていました。

 しばらくはデルムリン島の洋上で気絶していたようですが、ヒゲの伸び具合から、1日以上は経過していないことがわかりました。

 勇者と呼ばれる私でも、さすがに時が経てばヒゲは伸びるのです。

 しかし、ヒゲは伸びなかったものの、私の体はひどく傷つき、一方で髪の毛はサラッサラになっていました。

 その時、すぐ近くで人の声やモンスターの声が聞こえてきました。見れば、まさにポップとダイ君が旅立とうとしてるその瞬間でした。

 

 しかしポップよ。その舟はないでしょう。というか、舟ですらない、ボートでしょう。確かに、私たちがデルムリン島へ来たときも同じようなボートでやって来ました。しかしあの時は、私が針路を指示し、あなたが漕ぐ、という分担だったこそたどり着いたです。あれは、私の魔法力あってこそできる芸当なのです。しかも、そのとって付けたような帆。それはなんですか?あなたはその帆に自分の生命を託すことができるのですか?

 デルムリン島から大陸に行くとなれば、まずはロモス王国を目指すことになるでしょう。ロモスまでどれだけかかるか知っていますか?5日間ですよ?舟で5日間かかるのですよ?水は?食料は?針路は?魔物に襲われたら?

 もう、完全に海をなめているとしか思えません。それでも彼らは行こうというのです。その時名乗り出て冒険を共にしていく事は簡単でした。しかし、私にはそれができませんでした。

 だって、あいつら完全に海ナメてるもん。それにあのボートに3人で5日間とかマジで無理ですもん。

 そのため、私たちは彼らの成長を促すため、あえて名乗り出なかったのです。

『家庭教師』を名乗る以上、もっと一般教育にも力を入れておくべきでしたね…。

 

 それはそうと、魔王ハドラー…今は魔軍司令ハドラーと名乗っていましたが、彼は何をしにデルムリン島へやってきたのでしょうか。

 直接聞いてはいませんが、なんとなく、『この島か…捜したぞ』とか言っていたような雰囲気がするので、なにかを捜しにきたのでしょう。

 もしも…彼の目的が私だったら、結構…いえ、かなりキモいです。実際、彼は私の破邪呪文(マホカトール)を破った直後に私の元へたどり着いたのです。私が目的だった可能性は充分に高いと言えます。しかし、この広い世界で彼はどうやって私の居場所を把握したのでしょうか。彼にはジニュアールレーダーとかそういうのが積んであるのでしょうか。

 そしてその後、彼は演説を始めました。魔王だか魔軍司令だか知りませんが、こういったいわゆる『魔王』的な方々は、皆同じように演説が好きなのでしょうか。それともハドラーがただペラペラと話すのが好きなだけなのでしょうか。こちらが『はい』か『いいえ』しか言えないのをいいことに、彼は本当にペラペラと話すのです。『大魔王バーン』、『かつてとは比較にならないほど強大な魔王軍』。そこまで話して大丈夫なのかと、こちらが心配になるほど情報をペラペラと話すのです。その大魔王バーンとやらも、彼を魔軍司令とやらに指名したことに頭を痛めているのかもしれません。

 

 どういうわけかこの島は、私の破邪呪文(マホカトール)が破られた後も魔物が凶暴化することはないようです。どういう理屈かは私にもわかりませんが、もしかしたらこれこそがデルムリン島が長く平和を保っていた理由なのかもしれません。

 このように、私の頭脳はフル回転していますが、肉体には自己犠牲呪文(メガンテ)により深刻なダメージを負ったままです。

 となると、体力の回復のためにも、食料の調達は喫緊の課題となってきます。

 最初は、ブラス老を脅して、ということも考えたのですが、彼がダイ君と顔を合わせたときに、私が生きていることを万が一にも話してしまうかも知れません。それは、私にとってはあまり望ましいことではありませんし、私もダイ君の育ての親を手にかけることはしたくありません。魔物とはいえ、家族がいる者については、私は斬ることができないのです。

 ゆえに、私は、そこら辺をうろついている野良モンスターを食糧とすることにしました。家族がいなければ、まあ所詮魔物は魔物です。いくら殺そうがまた沸いて出てくるのですから。

 私は現在武器を持っていません。自己犠牲呪文(メガンテ)の衝撃で、持っていたアイテム類はすべて失われてしまいました。とはいえ、私ぐらいのレベルになれば、素手でもそれなりの攻撃力を発揮できるのです。

 島を歩いていると、おおにわとりを発見しました。あれなら殺せば食べられそうです。しばらく観察していましたが、どうやら家族はいないようです。私はそれの背後から近づき、殴り、蹴り殺しました。心ある力というのはいつの世も正義なのです。

 私はそのおおにわとりを素手でさばき、焼きました。それは、泥水のようなニオイがし、口に入れるのもはばかられるようなものでした。これは、肉ではありません。モンスターの死骸です。ジニュアール家が後世に伝えるべきことがまた増えました。

 

 私はかつて、また現在も、勇者と呼ばれています。

 実際の能力から考えればいわゆる賢者なのですが、『勇気ある者』が勇者であるのならば、私も、15年前ハドラー相手に共に戦ってくれた私の仲間たちも、皆勇者と讃えられるべき人物なのです。

 ただしロカ、お前はダメだ。

 お前のせいで4人パーティーが5人パーティーになってしまいました。

 しかし、そもそも一般的な宿屋には、扉もなく、ベッドが4つ配置してあるだけです。マトリフはジジイなので早々に寝てしまっていて、私だけがそこで気まずい思いをしながら狸寝入りを決め込んでいました。

 あの宿屋の状態でことに及んだと考えれば、ある意味であなたが一番の大勇者なのかも知れません。

 私は『ゆうべはおたのしみでしたね』と言ってあげるべきだったのでしょう。

 

 数日経ち、肉体がある程度回復したところで、私はデルムリン島に来た本来の目的を達成するために調査を開始しました。

 それは、ジニュアール家に代々伝わる古文書と、世界情勢から導き出した、私の知識と勘によるものです。

 すなわち、あるかも知れないし、ないかも知れない。

 しかし、調査を進めるにつれ、島の至るところに魔法力の『痕跡』とも呼べるものが発見されました。

 私の目的は、それが悪の手に渡ることを防ぎ、いつの日か必要となる日まで守っておくことでした。

 そして、その痕跡は海岸から海へ向かっていることがわかりました。

 ポップとダイ君がいれば、まず間違いなくあれを守ってくれることでしょう。

 私はひとまず安心し、故郷であるカール王国へ向けて帰るのでした。




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