マシロ様、中途半端でニューゲーム   作:秋羅

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クジュウリ編
1.時を遡った神様


 

 気づくと不思議な空間にいた。

 青い網目状の管が何層も重なったようなその場所は、動いているのかどんどん自分の後ろに流れていく。

 いや、これは自分が流されているのか?それにしては、身体には何の感覚もない。そもそも本当に自分はここにいるのか?

 よく考えれば、こんな場所があるわけがない。つまり、ここは夢の中。そうか、自分は眠っているのか・・・

 

 ? なんだ? 何かが自分に流れ込んでくる・・・

 

 ビィー! ビィー!

 

 『外部ヨリ未知ノえねるぎーガ流入。対象ニ悪影響ノ恐レ有リ。』

 

 突然合成音声の様な声が聞こえてくる。

 その歪んだ声は、どうやら警告を発しているようだ。

 

 『えねるぎーノ流入ヲ遮断・・・・・・遮断デキマセン・・・・・・重大えらー発生・・・・・・えらーヲ解消デキマセン。しすてむ強制起動。』 

 

 何が・・・いったい何が起こっているんだ? 自分の中に流れ込んできているものはなんだ!?

 

 ドクン!!

 

 「ガッ!?」

 

 体が・・・熱い!?・・・まるで焼けるようだっ・・・

 

 『覚醒処理ヲ開始。5秒後ニ起動。かうんとだうん開始。』

 

 やめろ! 入ってくるな! 頭が・・・割れるっ・・・

 

 『5,4,3,2,1・・・・・・』

 

 ッ―――――――――――

 

 『あなたに良き目覚めを・・・・・・』

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 「ん・・・自分は・・・」

 

 気が付くと荒れ果てた白い部屋の中にいた。

 自分が横たわっていたモノから身体を起こし、頭を振ると少しずつ頭がはっきりしてくる。

 

 「何故自分はこんなところにいるんだ? って、寒っ!? なんで自分はこんな寒いところで寝てるんだ!?」

 

 意識が完全に覚醒すると共に肌を刺す寒さに身を震わせる。

 白い息を吐きながら、その寒さを紛らわせる為に、腕で身体を包み込むように擦る。

 キョロキョロと周りを見渡せば、ところどころ壊れて崩れ、物が散乱している白く塗装された金属の部屋が目に入る。

 どうやら、自分はどこかの遺跡の中にいるようだ。

 

 「うん? ここはまさか・・・」

 

 部屋を見渡しているうちに既視感を覚えた。そして、自分が横たわっていたモノを見て、そこがどこであるのかを思い出した。

 

 「そうか。ここは自分が眠っていた場所か・・・」

 

 思い出した事実にポンと手を打ちながら、何故ここにいるのかを思い出そうとする。

 

 「・・・あれ? なんでだ? 何も思い出せん・・・」

 

 再度思い出そうと頭を捻るが、やはり思い出すことができない。

 いや、思い出すことはできるのだ。だが、それはこの世界がどういった世界なのかということや、自分がどういった存在で何をやっていたのかということで、どういったヒト達と関わってきたのか、この力を手に入れるまでどんなことをしてきたのか、といった所謂エピソード記憶と呼ばれる記憶をほとんど思い出すことができないのだ。

 

 「いやはや、まさかまた記憶喪失になるとはな・・・」

 

 至ったその事実に溜息をつきながら額に手を当てる。

 するとあるはずのモノがないことに気が付いた。

 慌てて辛うじて壊れずに残っていた鏡にその身を写せば、何も着いていない自分の素顔が写し出された。

 

 「おいおい、ホントにどうなってんだ?」

 

 服装自体は記憶にあるとおりの白い着物と黒い襦袢だ。だが、自分が神の力を受け継いだ証である仮面が無くなっていた。

 その代わりに目元と額に朱色の隈取が付いてた。試しに擦ってみるが、落ちる気配はない。どうやら入れ墨のように肌に染みついているようだ。

 

 「げっ、鉄扇もねぇ・・・まさか権能(チカラ)もなくなってないだろうな・・・」

 

 自分のチカラの象徴ともいえる仮面と鉄扇を失っていることに気づき、身の内を探ってみる。これで権能(チカラ)も失ってしまっていれば、どうしようもなくなってしまう。

 

 「・・・ホッ、よかった。こっちは大丈夫みたいだな・・・だが・・・」

 

 己の権能(チカラ)がすべて失われていないことに胸を撫で下ろすが、すぐにその表情が曇る。

 たしかに権能(チカラ)は失われていなかった。だが、何故かそのチカラは半減してしまっていたのだ。

 

 「・・・どういうことだ?・・・座に誰かいる?・・・この気配は・・・ハクオロ?」

 

 チカラが半減してしまった原因を調べるべく、己のチカラの源である『根源』に接続するが、そこには、居るはずのない存在が座していていることに気づく。

 それは自分の前の神であり、すでにこの世を去った男。ヤマトの西方に位置するトゥスクルの始祖皇『ハクオロ』の気配であった。

 

 「なんでハクオロが・・・あいつはとっくの昔に人として死んで、その魂もすでに転生を果たしているはずだ。なのになんであいつがあそこにいるんだ!? あーーーもう!! ホントわけわからん!!!」

 

 次々と起こる不測の事態に頭を掻きながら声を上げるが、それでどうにかなるわけもなく、その声は崩れた遺跡に虚しく響き渡った。

 

 「・・・ハァ、ここからだと座まで行けないみたいだから、チカラを取り戻せん・・・しょうがない。とりあえず外に出るか。」

 

 チカラの半分を失い、それを取り戻そうにも座に接続できない事実に深いため息をつくと、記憶を失った男は遺跡を後にした。

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ざくざくと白い雪を踏みしめながら、一面銀世界の山を下る。

 ここはヤマトでも特に寒い國クジュウリにあるシシリ州の山の中。

 しかも季節は冬とあって、その寒さもひとしおだ。

 

 「うぅ・・・寒い・・・」

 

 そんな雪の中を歩く一人の男。優美な着物を纏ってはいるが、歯をガタガタさせながら、寒さから少しでも身を守るため、両袖に手を入れ、背を丸めるその姿は、精悍な雰囲気を失わせるには十分すぎるほど情けない姿だ。

 

 「くそぅ・・・まさか、空間の位相をズラすことも幽体になることもできんとは・・・」

 

 そうぼやきながら男は雪に埋もれて最早道と言えない道を進んでいく。

 

 神のチカラを受け継いでからこのかた、特に理由が無ければ自分はそれらの能力を使って移動してきたのだ。それが使えないと気付いた時は愕然としてしまった。

 これらの能力は自身の姿を見えなくするだけでなく、外気の影響を受けなくなるため、様々な環境でなんの制限も無く活動することができるのだ。

 この能力をおおいに使い、自身の使命である人類の救済―タタリの浄化をするために世界中のいろんな場所を巡った。その中には溶岩が流れる火山だったり、すべてが凍てつく氷の大地だったり、およそ人の身ではいくことのできない場所も含まれていたがこの能力のおかげで問題なく行くことができた。

 まぁ、そんな場所以外でも使っていたのだが、別にエアコン代わりにしてたわけではない。ないったらない。

 

 と、誰に言うでもなく内心言い訳をしていると急に風が強くなり、吹雪へと変わっていった。

 これはまずいと雪に足を取られながらも駆け出し、何とか洞窟までたどり着くことができた。

 

 「ふぅ、酷い目にあったぜ・・・」

 

 パンパンと身体に積もった雪を払う。

 山の天気は変わりやすいとよく言うが、ここまで突然変わるのは勘弁してほしい。

 入り口を見やると数メートル先も見えないくらいの猛吹雪が吹いており、しばらく外に出れそうにない。

 できることなら日が暮れる前には麓の村に着きたかったが、この様子では無理そうだ。

  

 「ハァ・・・今日はここで野宿か・・・」

 

 今日は麓の旅籠屋で一杯やろうと思っていただけに落胆が大きい。

 仕方なく、何か火種になりそうなものはないかと洞窟の奥に進もうとして、感覚に引っかかるものを感じた。

 

 「これは・・・まさか、タタリ?」

 

 そんな馬鹿なと自分の感覚を疑う。何故なら、タタリは長い年月を懸けて自分が全て浄化したはずだったからだ。

 

 「見逃していた?・・・いや、ありえん。この辺りには頻繁に来ていたんだ。それなのに見逃すわけがない。」

 

 腰に差した刀の柄に手をかけながら、気配がする方に進んでいく。

 

 ズゾゾゾッ・・・ゾゾゾッ・・・

 

 進むにつれて何かが地面を這う音が聞こえてくる。

 しかし、暗闇に包まれた洞窟ではその姿を捉えることができない。

 自分は暗闇の中で蠢く物体の正体を確かめるべく、呪術で光源を作り出し、辺りを照らした。

 

 「ヴ・・・ア゛・・・ア゛ァァァァァ・・・」

 

 光に照らされて現れたのは、想像していたとおりの紅いスライム状の物体・・・人類の成れの果てであるタタリであった。

 

 「勘違いで会ってほしかったんだがな・・・」

 

 そうぼやきながら、目の前に現れたタタリに手をかざす。

 すると地面から数本の太い蔦が生えてきてタタリを拘束した。

 これが自分の神としての権能(チカラ)の一つ――『桜花』である。

 とはいえ、この権能(チカラ)、桜花なんて銘打っているが、植物ならばどんなものでも生み出すことができる。そして、この桜花で生み出した植物には邪気を払う力と神性を縛る力があり、これでタタリを縛り上げれば、何の苦労もなく捕らえることができるのだ。

 

 「ごめんな。今まで見つけてやれなくて・・・」

 

 そう言って、居合の型を取り、目に力を集中させる。

 するとタタリを縛り付ける蔦とは別にタタリに巻き付いた鎖が浮かび上がってきた。

 これこそが、タタリに不死性を与え、現世に縛り付けるウィツァルネミテアの契約の鎖。

 これがある限り、タタリは決して死ぬことがなく、永遠に地上を彷徨い続けなければならない。

 だが、自分ならば彼らを解放することができる。ウィツァルネミテアのチカラを受け継ぎし新たな神である自分ならば。

 

 「一閃!」

 

 気合と共に刀を抜き放ち、契約の鎖ごとタタリを切り裂く。

  

 「ヴぁ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!」

 

 絶叫と共に切り裂かれたタタリが崩れ落ち、溶けていく。

 そして、それが地面に染み込むように消えていくと、その地面を埋め尽くすように青々とした苔が生い茂った。

 タタリは無事浄化されたのだ。

 

 「ふぅ・・・こっちの方も大丈夫か。これで浄化ができなかったら自分の存在意義を疑うところだったぜ。」

 

 刀を鞘に納めながら、安堵の息をつく。

 正直チカラを失ってしまったことからタタリの浄化ができるか半信半疑だったのだ。

 タタリが全て浄化できていないと分かった今、このチカラが使えないのではどうしようもない。

 

 ポゥ・・・

 

 タタリが変じた苔から色とりどりの光の玉が浮き上がる。

 それは、自分が『幸玉』と呼んでいるもので、感謝の気持ちや信仰心が形となったものだ。

 自分はこの『幸玉』を対価に願いを叶える。これが多ければ多いほど強いチカラを行使することができ、大きな願いを叶えることができるのだ。無論大きすぎる願いを叶える場合は、それ以外の対価が必要になるが、自分がヒトの願いを叶える時はこの『幸玉』で事足りる。(時には酒を失敬することもあるわけだが・・・。)

 

 これは元々のウィツァルネミテアには無かったチカラだ。それがどういうわけか自分には備わっていた。

 恐らく、神としての在り方のせいだろう。自分の神としての在り方は、ヒトの上に立ち、導くのではなく、ヒトに寄り添い、前に進む手助けをすることだ。そして、そんなヒトが自分の足でしっかり立ち、自ら進んでいく姿を見ることこそ自分の喜びなのだ。(願いを悪意的に解釈して叶えた挙句、理不尽な対価を徴収して愉悦しているどこぞの神様とは違うのである。)

 

 そして、幸玉が身体に入る込むのを見届けると役目を終えて枯れ果てた蔦を火種にすべく動き出すのだった。

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 夜が明け、吹雪が収まったので再び山を下る。

 昨日とは打って変って雲一つない快晴の青空だ。

 そのおかげで、気温も心成しか暖かく、進む足も早い。これならば、昼前には村にたどり着けるだろう。

 そんなことを考えていると、進行方向に複数の気配を感じた。神経をそばだてて、何が居るのか探ってみる。

 

 「これは・・・オルケと・・・ヒトか。って、まずい!!」

 

 オルケに囲まれたヒトの気配を察知すると慌ててそこに向かって走り出す。

 なんでこんな雪深い山にヒトが入っているのか気になるが、そんなことを考えている暇はない。

 そのヒトが発する気力はとても小さい。このままではオルケの餌食になってしまうだろう。

 

 風を切って木々の間を駆け抜ける。そして、拓けた場所に出るとオルケに囲まれ今にも襲われそうになっている子供の姿が見えた。

 

 「しゃがめっ!」

 

 突然聞こえた自分の声に少年は一瞬自失するが、すぐに頭を抱えてしゃがみ込んだ。

 そして、それを好機ととったのか数匹のオルケが少年に向かって飛び掛かる。だが、オルケ達はその牙を少年に届かせることなく自分の一閃により切り裂かれ、肉の塊に姿を変える。

 

 突然二つに分れた仲間達の姿に残ったオルケ達が唖然としたように二の足を踏んだ。

 自分はその隙に少年の傍まで近づくと、オルケ達に向かい合い殺気を飛ばした。

 するとオルケ達は尻尾を後ろ脚の間に巻き付け、情けない鳴き声を上げながら逃げて行った。まさに『尻尾を巻いて逃げる』である。

 

 その後、助けた少年に山に居た理由を聞いた。

 なんでも、少年の母親が熱で寝込んでしまった為、薬草を探すために山に入ったのだが、肝心の薬草がなかなか見つからず、探しているうちに奥まで入り込んでしまったそうだ。

 

 まったく無茶をするもんだ。いくら身体が丈夫なヒトといえど、子供一人で雪深い山に入るのは自殺行為だ。

 母親を思う気持ちは素晴らしいが、もう少し他に方法もあっただろうに。

 

 自分は溜息をつくと少年の頭にゲンコツを落とし、お説教してやることにした。

 少年は最初こそ頭を押さえながら不服そうにしていたが、次第に自分がしたことがいかに危険で家族に心配をかけるのかを理解したようで、最後には項垂れて反省していた。

 

 自分はその少年の姿に苦笑しながら頭を撫でてやると少年は顔を上げてくすぐったそうに笑った。

 そして、その笑顔に胸が暖かくなるのを感じながら手を放すと、そろそろ村に帰ろうと少年に促した。

 だがしかし、ここで少年がまだ薬草が見つかっていないとごねはじめてしまったのだ。

 

 まったく、つい先ほどあれほど反省していたのにこいつは・・・と呆れてしまうが、母親の病気を治すには件の薬草―コウジュ草が必要なのだと必死に訴えられると無碍にするのも躊躇われた。

 

 自分は、少年に少し待つように言うと早足で茂みの中に入り、桜花のチカラを使ってコウジュ草を生み出た。幸い昨日の幸玉があったので願いの対価はそれで足りた。

 そして、そのコウジュ草を摘み取り、少年の元に戻ると少年は歓喜の声を上げた。

 そんな少年にコウジュ草を渡すと大事そうに腰の袋に入れ、「ありがとうおじさん!!」とキラキラとした眼差しで礼を言ってきた。

 その純粋な感謝の言葉と溢れ出した幸玉に自分の心は満たされる。

 

 あぁ、やはり感謝されるというのは気持ちが良いもんだ。この笑顔を見るために自分は願いを叶えるんだな・・・

 

 そんな風にしみじみしていると少年が自分の手を握り、早く村に行こうと引っ張ってくる。

 会ったばかりだというのに警戒心も無く「早く早く!」とぐいぐい腕を引く少年の姿に少し心配になったが、ここで手を振りほどくわけにもいかない為、そのまま少年の小さな手を握り返し、苦笑しながら村への道を歩きはじめるのだった。

  

 余談だが、おじさんと言われて地味にショックだったのは内緒だ。

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 村に着くと山への入り口に慌てた様子の村人達が集まっていた。どうやら山に入り込んだ少年を探そうとしているようだ。

 

 「ウタリのおっちゃん!」

 

 そんな村人達を眺めていると少年が誰かの名前を叫んで駆け出し、村人の中で一際大きく髭面の熊のような男に飛びついた。

 その少年の叔父と思しき男は突然現れた少年に驚いた様子だったが、すぐに声を上げて少年を抱きしめた。

 抱きしめられた少年は男の豊かな髭に嫌そうな顔をしながらも嬉しそうに男を抱き返す。しかし、その表情は徐々に青く染まっていき、身体からはミシミシと音が鳴り始めた。

 少年は脂汗を流しながら男に離すように懇願するが、男は青筋を浮かべながら非常に良い笑顔で少年を締め付けていく。どうやらかなりご立腹のようだ。

 

 このままでは少年が大変なことになりそうなのでその男の傍に近寄り、声をかける。

 

 「あー・・・、そいつもちゃんと反省してるみたいだからそのへんにしてやってくれませんかね?」

 

 突然現れた自分に男は怪訝な表情をするが、顔を青くしたままの少年に命の恩人だと言われると少年を離し、自分の手を握ってきた。

 

 「おお、おお、旅のお方よ。俺の甥を・・・ニセウを助けてくれてありがとう。」

 

 「なに、困ったときは互い様だ。それより、こいつの母親が病気なんだろう? 早く薬草を持って行ってやってくれ。薬草ならニセウが持ってる。」

 

 その言葉に男―ウタリは再度礼を言うと、ニセウの首根っこを引っ掴み、村の中へと駆けていった。

 

 その後、自分は残った村人達にも感謝された後、旅籠屋まで案内してもらった。

 しかし、その道すがらおかしなことに気が付く。自分が最後に立ち寄った時よりも村が小さくなっていたのだ。

 そして、その事を疑問に思っているうちに旅籠屋までやってきて驚愕する。何故ならそこに居たのは、自分が知る姿より若干若い姿ではあったが、自分がこの旅籠屋で最初に出会った女将だったからだ。

 

 「おや? お客さんどうしたんだい? そんなにジーっとアタシの顔なんて見て。」

 

 「あ、あぁ、いや。女将さんがあまりにも美人だったんで見惚れてたんですよ。」

 

 「まぁ! お上手ね。アンタみたいな素敵な方にそう言ってもらえると嬉しいよ。」

 

 そう言ってからからと笑う女将さんに笑い返しながら、行きついた答えに眩暈を覚える。

 

 それは、自分が過去に来てしまったという想像だにしなかった答えだ。

 

 だが、これで納得がいった。ここが過去ならば、自分が座から蹴落としたハクオロが座にいることも、タタリが存在していることもおかしなことではない。なぜなら、ここは自分がそれらを成す前の世界・・・彼らがいて当然の世界なのだから。

 

 なんでこんな事になったのか、欠落した記憶ではその原因を知ることはできない。いや、もしかしたら、そのせいで記憶を失ったのかもしれない。

 どちらにせよ、今の自分ではこの問題を解決することができない。ならばいっそ開き直って今を楽しむことにしょう。

 幸いやることはいろいろとある。タタリの浄化をしなくてはならないし、失った記憶のことも探らなければならない。それにこのヤマトには自分の大切なヒト達がいるはずなのだ。無論記憶に無いから判別することはできないが、それでもいつか出会うことができると信じている。

 例え記憶を失ったとしても、自分と彼らには確かな縁が繋がっているはずなのだから。

 

 

 

 

 




作中に出てきた「桜花」「一閃」「幸玉」は、ネイチャーアドベンチャーゲーム「大神」から引用しました。

うたわれるものと大神は結構相性が良いと思ってます。
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