マシロ様、中途半端でニューゲーム   作:秋羅

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エンナカムイ編
10.神の居ぬ間に


 

 「はぁーー!!」

 

 「遅い。」

 

 練武場にて、幼さが残る少女が大柄な男に闘いを挑んでいた。

 4本の三つ編みと斑模様の尻尾が特徴のその少女は、小柄な身体に似合わぬ力で大剣を振り回し、大男に攻撃を繰り出す。

 対する大男は最小限の動きで少女の猛攻を捌き切ると隙を見て強烈なカウンターを繰り出した。

 攻撃することに意識を割いていた少女は防御が間に合わず、それを腹にまともに喰らってしまう。

 一応大男は加減をしていたようではあるが、少女は鞠の様に吹き飛び壁に叩きつけられた。

 

 「ぬぐぐぐぐ・・・まったく攻撃が当たらん!」

 

 「・・・恐れながら殿下。殿下の攻撃はただ闇雲に武器を振り回しているにすぎません。雑兵相手ならばそれでもよいでしょうが、将を相手するには無駄な動きが多過ぎます。それに攻撃中の視野が狭い。故に先ほどのように攻撃を喰らってしまう。そのような有様では帝の後を継ぐなど夢のまた夢でしょうな。」

 

 「むぅ・・・予はつい最近武の鍛錬を始めたばかりだというのにヴライは厳しいのう。それに身体が急に大きくなったから動きづらいんじゃぞ? そこのところも考慮してほしいもんじゃ。」

 

 少女は自身を酷評する大男――ヴライにむくれながら反論してみるが、とうのヴライは表情一つ変えずに佇み、物凄いプレッシャーを放ちながら少女を見下ろしてくる。

 

 「アンジュ姫殿下。貴方はヤマトの偉大なる帝の後継者。故にこの世の誰よりも強く在らねばなりませぬ・・・貴方は帝の天子として誰よりも優れた資質をお持ちです。ですが、それがそのような軟弱な考えでは強くなるものもなれませぬぞ。」

 

 「・・・そうであったな。予は帝の天子じゃ。ならば最強にならねば嘘じゃな! なにより予は世界全てを遍く照らす存在にならねばならんのだ。こんなところで立ち止まっている暇はないのじゃ!」

 

 「・・・宜しい。ならば構えなされ。そして存分に打ち込んでくるがいい。」

 

 「そこは型とか受け身の練習から始めるものじゃないのかの!?」

 

 「実戦に勝る修練無し。それに殿下には少しでも早く強くなっていただかなくてはなりませぬ故、我も殺さぬギリギリで攻めさせていただく。覚悟なされよ。」

 

 「なんじゃってー!? このガウンジ! 禍日神(ヌグィソムカミ)! 筋肉達磨!」

 

 「無駄口を叩く暇があるならば敵を殺せ! 戦場(いくさば)では誰も待ってはくれんぞ! 己が前に立ち塞がる全てのモノを悉く打ち砕き、蹴散らし、灰燼とかせ!!」

 

 全身に気力を漲らせながら、ヴライがアンジュを攻め立てる。

 アンジュは悲鳴を上げながらもその攻撃を防ぎ、躱していく。

 傍から見ればいい大人が少女をいたぶっている様にしか見えないが、その実、アンジュは驚異的な成長スピードでヴライに食らいつき、少しずつ反撃の手が増えている。

 

 ヴライはそんなアンジュの姿にこれまで抱いたことのない感情を抱く。

 それは強者(ツワモノ)と闘った時や戦場で敵を屠った時に感じる喜びとはまた別の喜び。

 

 「・・・ふ・・・ふはっ・・・ふはははははは!!」

 

 「はあぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 ヴライが感じた喜び・・・それは何かを育て育み、その成長を見守る喜び。

 親が子を。師が弟子を育て、その成長を目の当たりにした時に感じる喜びをヴライはアンジュに対して感じていた。

 

 ヴライは、鍛えれば鍛えるだけ強くなる鋼を叩くように次々と拳を繰り出していく。

 アンジュはその拳を受け何度も吹き飛ばされるが、その度に起き上がり、ヴライに挑みかかっていく。

 最早最初の訓練気分のアンジュは居なかった。そこにいるのは、一匹の獣。

 自らの生命を脅かす敵を排除する為に持てる全ての力を使って闘う若き雪豹(アンシア)だ。

 

 「ぐぅらぁぁぁぁ!!」

 

 「むっ!」

 

 再び吹き飛ばされたアンジュが空中で態勢を立て直して猫のように着地する。そして、その身に光の神憑(カムナ)の力を纏うと天高く飛び上がり、全ての力を込めて剣を振り下ろした。

 

ドンッ!!

 

 凄まじい衝撃が練武場に響く。

 アンジュが放った渾身の一撃は分厚い石の床を粉々に砕き、クレーターの様な大穴を作り出した。

 しかし、その穴の中心には交差した両腕で大剣を受け止めているヴライの姿があった。

 上半身の衣服は弾け飛び、光の力で焼かれた生々しい傷が所々に見られたが、彼は自分の足でしっかりと立っていた。

 

 「・・・御身の力、確と見せて頂いた。次の練武の時を楽しみにさせていただく。」

 

 ヴライはそう言うと力を使い果たして気絶したアンジュを抱き上げ、練武場の隅で控えていたホノカに引き渡した。

 

 「どうやらアンジュ様は貴方様のお眼鏡に適ったようですね。」

 

 「・・・まだ見込みがあると分かっただけの事だ。」

 

 「ヤマト一の武人であるヴライ様にそう言って頂けるならば、アンジュ様の教育係としてこれほど嬉しい事はありません。」

 

 「ふん・・・・・・我の期待を裏切らぬ事を祈っている。」

 

 ヴライは微笑むホノカに背を向けて練武場の出口に向かって歩き始める。

 今まで帝への忠誠と戦いのみを喜びとして生きてきた己に生まれた新たな喜びの感情に戸惑いながら。

 

 未来にて、妄信の果てに覇者を目指した愚かで哀しいひとりの漢は、白き神が紡いだ縁によりその運命を変えようとしていた。

 願わくば、彼がその力をヤマトの安寧の為に使いたまわん事を・・・

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

  

 「痛たたたたた! ヴライの奴め! 天子たる予をこのようにボロボロにするとはなんと不忠者なのじゃ!」

 

 「仕方がないでしょう。ヴライが忠誠を向けているのはあくまで父上。彼にとってアンジュはその娘程度の存在なのですから。」

 

 「だから不忠者だと言っておるのです兄上! 予を大事にしてくれるお父上が予がこのようにボロボロになった姿を見て何も思わぬわけがないじゃろう!?」

 

 「それは・・・そうですね。ヴライにはヒトの心が分からない。そして、父上を絶対視するが故に父上にヒトと同じように心があることを見落としている・・・だからこそ父上は情勢が安定している近年、彼を重用しなくなっているのです。」

 

 「確かにのぅ・・・今ヤマトに歯向かおう等という輩は北方のウズールッシャぐらいじゃ。そやつらを抑えた後は、武のみを尊ぶ輩は不要。寧ろ害悪となる・・・か。」

 

 アンジュの手当てをしていたウォシスは、彼女がきちんとヤマトの情勢に考えを巡らせていたことに笑みを浮かべる。

 彼女が物心ついた頃から兄として多くの事を教えてきたのだ。偉大なる父の後継として恥ずかしくないように。そして、新たな時代の象徴としてヒトを導ける存在となれるようにと。

 

 「それはそうと・・・身体の調子はどうですか? 今日の練武では活性状態にもなったようですし、少しでも違和感があるならすぐに言いなさい。」

 

 「う~む・・・全身の筋肉が強張っとるような気がするのじゃ。」

 

 「では、後で母上に按摩して頂きなさい。それでも治まらないようなら検査してみましょう。」

 

 「分かったのじゃ! お母上と一緒に風呂に入ってからやってもらうのじゃ!」

 

 にぱっと能天気に笑うアンジュの姿を微笑ましく思うと同時に頭が痛くなる。

 アンジュはチィの魂と融合した際に一ヶ月以上眠っていた上に身体が12~13歳程まで成長し、神憑(カムナ)の属性も元々の火から光に変わっていた。

 恐らく融合したチィの影響だと思われるが、このような事態は前例がないので今後何が起こるか分かったものではないので心配なのだ。

 

 幸いだったのが、アンジュがチィの存在に塗りつぶされなかったことだ。どうやらアンジュをメインとして、チィの記憶と思いを受け継いだ形らしい。

 たが、問題が無かったわけでもない。

 

 「ところで兄上。おじちゃんの行方はまだ分からぬのか? 予は早くおじちゃんに会いたいのじゃ!」

 

 「・・・つい最近クジュウリに居ることが分かったので、ウルゥルとサラァナを向かわせましたよ。そう遠くないうちに見つかるでしょう。」

 

 「おお! ということはもうすぐおじちゃんに会えるのじゃな! 楽しみじゃのぅ! こっちに来たら、お父上に頼んで予の婚約者にしてもらわねば!」

 

 このようにチィと融合した結果、叔父である男に対して好感度が振り切れてしまったのである。しかもアンジュの遠慮の無い性格も相まって、叔父を自身の夫にすることに全く戸惑いがない。

 幼い娘がそれを言うならば微笑ましいだけなのだが、アンジュにいたってはガチなのだ。

 これはアンジュを溺愛している帝とウォシスからすれば非常に複雑な気持ちになってしまう話なのだが、アンジュはすでにホノカとウルゥル、サラァナを味方に付け、四人がかりで圧力をかけてきている。しかもウルゥルとサラァナには叔父の愛人の地位を確約しているというのだから目も当てられない。

 

 「ぬふふふふ・・・おじちゃ~ん♡」

 

 ウォシスは、叔父を思って妄想し出したアンジュの姿に頭を抱えたくなった。

 そして、アンジュの未来を案じながら、妹をこのようにした叔父に対して心の中で悪態をつくのであった。

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

  

 「ッ!?」

 

 「マシロ殿? どうかなされたか?」

 

 歩いていると突然悪寒を感じた。

 周囲を見渡してみるがおかしなところは何もない。

 まるで貞操を狙われているかのような邪念に満ちた思念を感じた気がしたのだが、なんだったのだろうか?

 

 「・・・いや、ちょっと悪寒がな。もう治まったから大丈夫だ。」

 

 「しかし、風邪のひき始めの可能性も有り得る。体調が悪くなったらすぐに言ってほしい。」

 

 「大丈夫だって。自分は風邪をひくほど柔じゃない。それより少し急ごう。このままじゃエンナカムイに着く前に日が暮れちまう。」

 

 「・・・承知した。では近道を致そう。少々道は荒れているが、その分早くエンナカムイに着くことができる。」

 

 「流石地元民。それじゃあ道案内頼んだぜ、オシュトル。」

 

 自分は現在、里帰りの途中だというオシュトルという男と共にエンナカムイを目指して山道を進んでいた。

 深い山々に囲まれたエンナカムイへの旅路はだいぶ過酷なものだったが、オシュトルという道連れの御蔭であまり苦労も感じず、なかなかに楽しい旅だった。

 

 このオシュトルとは、旅の途中で立ち寄った茶屋で出会った。そして、そこでしばらく話をしたところ妙に気が合い、目的地も一緒だった事もあり、ここまで一緒に旅をしてきたのだ。

 なんでも帝都の右近衛府に所属しているそうなのだが、身体が弱い母親と幼い妹の様子を見るために故郷であるエンナカムイに帰る途中だったらしい。

 そして、オシュトルは下級とはいえ貴族ということもあり、佇まいに気品があり、喋り方も丁寧だ。しかし、その鍛え抜かれた肉体と身のこなしからひとかどの武人であることが伺えた。

 今はまだ役職は無いようだが、この漢ならすぐに上に登り詰めるだろうという根拠のない確信があった。

 

 「ところでオシュトルの家族はどんなヒトたちなんだ?」

 

 「そうだな・・・母上は、とても優しく強いヒトだ。早くに父上が亡くなったが故に、幼かった某達を女手一つで育ててくださった。今は視力が弱り体調も崩しがちだが、妹や近所の方の助けもあって楽しく生活しているそうだ。」

 

 「ほう・・・未亡人か・・・」

 

 「・・・今何か不穏なことを言わなかったか?」

 

 「うん? 気のせいじゃないか?」

 

 思わず漏れた呟きをオシュトルに聞かれてしまったようだが、努めて平静を装いながらなんでも無いように振舞う。

 女将さんとの一件以来人妻もとい未亡人への欲求が強くなったような気がする。イケメンのオシュトルの母親なら美人に違いないから自制できるか少々不安だ。なのでエンナカムイにいる間、なるべく会わないように気を付けよう。

 

 「それより、妹さんはどんな()なんだ? オシュトルの妹なんだから優秀なんだろう?」

 

 「・・・ああ。自分で言うのはなんだが、ネコネはとても優秀な子だ。学び舎でも常に一番であるし、大人でも理解できぬ学術書も難なく読み解く。あの子ならば、殿試に受かることも難しくないであろう。」

 

 「そいつはまたとんでもない()だな。でも、そんなに頭が良いと同年代の子とは話が合わなそうだな。」

 

 「・・・その通りだ。ネコネにとって同年代の子供達は幼過ぎる。自分に分かることが分からず、話にもついてこれない。それ故に子供達の輪に加わらず一人で本ばかり読んでいる・・・幸いエンナカムイの皇子であるキウルとは仲良くしてもらっているが、それ以外に友人が居ないというのもな・・・」

 

 思った通りオシュトルの妹であるネコネには友達がいないようだ。

 優秀なのは良い事だが、幼い頃から友達がいないようじゃ、将来人付き合いで苦労しそうだ。

 子供の集団というのは社会の縮図だ。そして社会で生きていくうえで必要な技術を習得するための訓練所のようなものでもある。ここで上手くいかないようじゃ、社会に出ても上手くいかない場合が大抵だ。

 

 「だったら帝都の学府に入れるのはどうだ? あそこなら優秀な奴が多いから友達もできるかもしれん。」

 

 「某もそれを考えたが、知に優れた者は総じて自尊心が高い。それに一般的に学府に入る者は元服(コポロ)を迎えた年頃の者だ。そんな中に幼いネコネが入っていったとしても要らぬ嫉妬や顰蹙(ひんしゅく)を買うことになるだろう。」

 

 「そうか・・・ままならんもんだな。」

 

 「全くだ・・・」

 

 自分とオシュトルはネコネの将来を思い、深い溜息を吐いた。

 神が人間関係に口出しするのは違う気がするが、せっかく仲良くなったオシュトルの妹なのだ。助言くらいはしてやろう。

 10歳前後でボッチとか本当に可愛そうだからな・・・

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 無事にエンナカムイに着くことが出来た自分達は、そのままオシュトルの家に行くことになった。

 オシュトルの家はエンナカムイの町はずれにあるらしく、長閑な畑の風景を眺めながらゆっくりと進んでいく。

 その道中、オシュトルは老若男女問わず多くのヒトに話しかけられていた。なんでもオシュトルはエンナカムイ出身の者で随一の武士(もののふ)であり、若くして右近衛府に所属する出世頭。しかも品行方正な好青年とあって民から大人気らしい。

 

 そんなこともあって日暮れ前にはエンナカムイに着いていたのにオシュトル家に辿り着いた時には日が沈んでしまっていた。

 そして、そのオシュトルの実家は、貴族のものとは思えない質素な家だった。大きさは4~5人が住める程度で、屋根は茅葺、壁は漆喰、そして木の雨戸。まるで時代劇に出てくる民家の様だ。これで家紋の入った垂れ幕が無ければ誰も貴族の家とは思わないだろう。

 

 「ではマシロ殿。中に入ろうか。貴殿を家族に紹介しよう。」

 

 「分かった。それじゃあお邪魔します・・・」

 

 オシュトルに誘われて戸を潜ると、狭いたたき上げの土間と玉石、そして、南天と水仙が活けてある青磁の壺が置かれた下駄箱が目についた。玄関は家の顔と言うだけのことはあり、シンプルながらも上品な趣を感じさせる落ち着いた雰囲気の玄関だった。

 そして、自分達の気配を感じたのか、奥の部屋から小柄な少女が現れた。

 

 「兄さま! お帰りになられたのですね!」

 

 「ああ。ただいまネコネ。変わりはないか?」

 

 「はいなのです! 母さまも最近は体調が良くて、よくお散歩してるのです!」

 

 「そうか。それは良かった。」

 

 どうやらこの少女が、件の妹のようだ。

 

 彼女はオシュトルの姿を認めるとその胸に飛び込み、目一杯甘えていた。

 彼女の年の頃を考えれば別におかしな事ではないはずなのだが、甘える彼女の姿は少々過剰なような気がした。もしかしたら、友達が少ない事が原因なのかもしれない。

 

 「ネコネよ。そろそろ離してくれまいか? 某の友を紹介したいのだ。」

 

 「え?・・・兄さまのご友人ですか?」

 

 「ああ。國に帰る途中に出会った者でな。武術と呪術の両方に優れ、旅で培った幅広い見識持つ、マシロという男だ。」

 

 そう言ってオシュトルは背後に居た自分の前にネコネを押し出してきた。

 突然目の前に現れた自分に人見知りのネコネは落ち着かないように目線を彷徨わせる。

 

 「はじめまして。自分の名前はマシロだ。見聞を広める為に旅をしている。よろしくな。」

 

 「あ・・・はじめましてです・・・わたしはネコネというです・・・よ・・・よろしくおねがいしますです・・・」 

 

 視線を合わせるためにしゃがんで挨拶するとネコネは時々俯きながらも挨拶を返してくれた。

 その顔はオシュトルが自慢するだけの事はあり、とても整っていて可愛らしい。しかし、その眉毛は特徴的な二又眉毛だ。

 

 「くくっ・・・」

 

 「とっ・・・突然なんなのですか!?」

 

 オシュトルそっくりなその眉毛に思わず笑ってしまうとネコネは素早くオシュトルの背に隠れ、威嚇するように睨みつけてきた。

 それは先ほどまでのしおらしい姿とは打って変って、気が強そうな印象を受ける姿だった。

 

 「はははっ! 悪い悪い。お前さんの眉毛がオシュトルとそっくりだったもんでな。思わず笑っちまった。」

 

 「へ・・・まゆげ?」

 

 「ああそうだ。そんなに可愛らしい顔してんのに眉毛だけオシュトルみたいに凛々しいんだ。笑っちまうのもしょうがないだろ?」

 

 「な・・・なななななっ!?」

 

 「・・・そういえばネコネの眉は某と同じであったな。今まであまり気にしていなかったが、こうしてまじまじと見ると確かに可笑しな気がするな・・・ふっ・・・ふふふっ・・・」

 

 「あ、兄さま!?」

 

 自分だけでなくオシュトルにまで笑われてしまったネコネは驚いたようにオシュトルを見上げる。するとオシュトルは手でネコネの前髪を上げて、二又素敵眉毛を露わにさせた。

 

 「い・・・いかん・・・ツボに嵌ってしまった・・・く・・・くくく・・・ははははははははははっ!!」

 

 「ちょっ・・・やめるです兄さま! 離すですー!!」

 

 行灯の光に照らされた屋敷の中にじゃれ合う兄妹の騒がしい声が響き渡る。

 ネコネは兄から離れようとジタバタともがき、オシュトルはそれを逃がすまいと抑え込む。

 これまで見てきたオシュトルの姿からは想像も付かないその姿に軽く驚いたが、何故かとても懐かしいと感じた。

 そして、そんな面白可笑しい兄妹の戯れは、声を聞き付けた彼らの母が現れるまで続くのだった。

 

 

 

 

 




ネコネは偽りの仮面ではハクを貶してくるクソガキとか思ってましたが、二人の白皇の献身的な姿で好きになりました。
ヴライと戦った時の話は本当に良かったです。
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