マシロ様、中途半端でニューゲーム   作:秋羅

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11.神の法則

  

 オシュトル達のじゃれ合いの後、彼らの母親であるトリコリさんに挨拶をした。

 トリコリさんは、儚げで落ち着いた雰囲気の大人の女性といった感じで、どういうわけか一目見た瞬間、胸が締め付けられるような思いがした。

 

 まさか、これは恋!?

 

 なんて馬鹿な考えが一瞬浮かんだが、この感じはそういった感情とは別のモノの様な気がする・・・そう、これはまるで長い間会っていなかった母親に会ったかのような・・・そんな気持ちだ。

 

 「どうかしたのですか?」

 

 「ああ・・・いや。なんでもないです・・・お気になさらず。」

 

 様子がおかしい自分に気付いたトリコリさんが、顔を覗き込むように近づいてきた。

 近くで見る憂いを帯びたような彼女の顔はとても美しく、右目の泣きボクロも相まってどこか艶かしい魅力があった。それに思わずドキリとしてしまったが、視線を外す様に顔を逸らしてなんとか誤魔化す。しかし、それと同時に自分の腹から盛大な腹の虫が鳴いてしまった。

 

 「あらあら。お腹が空いていたのね。今晩は貴方達の為にごちそうを作ったから、是非食べていってくださいね。」

 

 「ふん! 本当なら貴方みたいなヒトに食べさせるのはもったいないですけど、寛大な母さまに感謝するのです!」

 

 「もう・・・ネコネ、お客様にそんなことを言ってはいけないわ。」

 

 「母上の言うとおりだネコネ。それに食事は大勢で食べたほうが美味いのだぞ?」

 

 「む~!」

 

 むくれるネコネを宥めるトリコリさんとオシュトル。その仲睦まじい親子の姿はとても眩しく、見ていて嬉しくなってくる。

 それはまるで見ることのできなかった光景を目の当たりにしたような・・・そんな切なさを含んだ喜びという不思議な感情だった。

 

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 「さぁ、遠慮なく召し上がって。貴方達のために腕によりをかけて作ったの。」

 

 「有り難う御座います母上。」

 

 「自分の分まですみません。」

 

 「気になさらないで。せっかくオシュトルがお友達を連れて来てくれたんだもの。今はここを自分の家だと思ってゆっくりしていってね。」

 

 「・・・ありがとうございます。トリコリさん。」

 

 トリコリさんが近所のヒトから自分達の事を聞いて用意してくれていた料理の数々はとても豪華なものだった。

 川魚の塩焼きに山菜の天麩羅、根菜をふんだんに使った煮物、タレで漬け込んで焼いた肉、そして具沢山の酒粕汁。

 どれも大変美味く、どこか懐かしい味わいの所謂お袋の味と言える素晴らしい料理だった。

 

 「いや~! ホントに美味い! トリコリさんは料理がお上手なんですね!」

 

 「ふふふっ・・・ありがとう。でも、今食べている酒粕汁はネコネが作ったものなのよ。」

 

 「ほ~・・・これをネコネが・・・やるじゃないかネコネ。」

 

 食べていた酒粕汁を作ったのがネコネと聞いて驚きと共に彼女を褒める。この酒粕汁はとてもまろやかで、具材の旨味をまるごと味わえる素晴らしい逸品だった。

 

 「ふん! 貴方に食べさせると分かっていたら作らなかったのです!」

 

 しかし、眉毛の件でからかったせいか、ネコネは自分に対してつんけんした態度を取るようになってしまっていた為、そっぽを向かれてしまった。

 とはいえ、オシュトル曰く、どうやらこれで自分を嫌っているわけではないらしい。なんでもネコネは本当に嫌っている相手に対しては他人行儀で接するらしく、このような反応をするのは相手に興味がある時らしい。

 そう考えるとツンデレキャラを前にしているようで、なんだか可愛らしく思えてくる。

 

 「・・・なんなのですか。にやにやとして気持ち悪いのです。」

 

 微笑ましいネコネの姿にニヤニヤしているとネコネに虫を見るような目で見られながらキモイと言われてしまった。

 最早自分に対して遠慮をする気はないらしい。

 

 「いやなに。オシュトルもネコネもトリコリさんに似たんだなと思ってな。こんなに綺麗なヒトの子供なんだ。二人が美形なのも納得だ。」

 

 「ふ・・・ふん! そんな風におだてても無駄なのです! 貴方の口車には絶対に乗らないのです!」

 

 「あらあら。私みたいなおばさんをそんな風に言ってくれるなんて嬉しいわ。」

 

 「いやいや。本当にトリコリさんはお綺麗ですよ。子供二人産んだだなんて信じられないくらいお若いですし。」

 

 「まぁ・・・ふふふ・・・」

 

 「騙されてはいけないのです母さま! こいつはヒトを堕としいれて喜ぶロクデナシなのです!! きっと母さまを油断させて何かよからぬ事をしようとしているに違いないのです!」

 

 「何言ってんだおまえ。そんなことするわけないだろう?」

 

 トリコリさんの美しさを褒めているとネコネがいわれのない誹謗中傷をしてくる。

 確かにトリコリさんは自分の好みドストライクで、来る前になるべく合わないと決めていた考えが早くも揺らいでいるが、自分は身体が弱い女性になにかするほど鬼畜ではない。

 

 「・・・ネコネよ。マシロ殿はこう見えて礼には礼をもって返す誠実な者だ。其方に対しておちゃらけているのも気に入っているが故のこと。この者の気に入らぬ相手に対する時の様はそれはもう辛辣であるからな。」

 

 「もしかして、あの山賊が商人を襲ってた時の話か? ありゃ子供を人質にとったあいつ等が悪い。」

 

 「だからと言って、呪術で動きを封じた後に急所を蹴り抜くのは如何なものかと思うぞ? あの場に居た男衆は皆顔面蒼白であった。」

 

 旅の途中で出くわした山賊達に自分がやったことを思い出して顔を青くするオシュトル。

 確かにあの光景は男にはキツイものだったと思うが、相手が悪人だから全く問題ないと思うんだが・・・

 

 「別に潰してはいないぞ? それに殺さずに地獄の苦しみを与えるのにはうってつけだろう?」

 

 「其方程の腕前なら他にもっとやり様があっただろうと言っているのだ・・・」

 

 オシュトルがげんなりとしながら溜息を吐く。どうやら生粋の武士(もののふ)であるオシュトルにはお気に召さない方法だったらしい。

 

 「ふふふふ・・・」

 

 「母上?」

 

 「あっ! すみません。女性の前でする話じゃなかったですね。」

 

 「いいえ、いいのよ。貴方達の仲が良さそうで嬉しかったの。それにマシロさんも本当に優しい方なのね。誰かの為に怒れるというのはとても素敵なことだと思うわ。」

 

 「あ・・・ありがとうございます。」

 

 自分達を微笑ましげに見ているトリコリさんに褒められて、なんだか気恥ずかしくなってしまう。

 まるで大好きな母に褒められた幼子のような気分だ。

 

 「ネコネ?」

 

 「う・・・分かったのです母さま・・・マシロさん、さっき悪く言ったのは謝るです。ごめんなさいなのです。」

 

 「いや、自分の方もネコネをからかっちまったからな。お相子だろう。」

 

 バツが悪そうに謝ってくるネコネにそう言って右手を差し出す。ネコネはそれに一瞬戸惑ったように手を彷徨わせたが、小さな手でしっかりと握り返してくれた。

 

 「ふふふ・・・これで仲直りね。」

 

 「ええ。これでもう大丈夫でしょう。」

 

 二人は照れながら握手をするネコネを見ながら暖かな笑みを浮かべる。

 ネコネが全くの赤の他人にこのように心を開くのは初めてで、その相手もネコネを受け入れてくれている。これは大変喜ばしいことだ。

 そして、この素晴らしい出会いをもたらしてくれた大神(オンカミ)に感謝しながら、愛する家族の明るい未来を祈るのであった。

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 「それじゃあネコネ。案内頼んだぞ。」

 

 「任せるのです。ですが、くれぐれもおかしなことをしないでほしいのです。」

 

 「心配すんなって。自分がからかうのはネコネだけだ。」

 

 「私をからかうのも禁止なのです!!」

 

 食事の後、そのままオシュトルの家に泊めてもらった自分は、ネコネの案内でエンナカムイの町を散策することにした。

 本当ならオシュトルに頼もうと思っていたのだが、どうやらこの國の(オゥルォ)であるイラワジに挨拶しに行くらしく、代わりにネコネに案内してもらうことになったのだ。

 

 「それでは、まず商店がある場所に行くです。マシロさんが泊る旅籠屋にも案内しなくてはいけませんし、それでいいですか?」

 

 「おう。二日連続で厄介になるわけにはいかないからな。それで頼む。」

 

 そうして目的地を決めた自分達は家を出ると昨日通った畑道を歩いていく。

 昨日は日が傾いていた時間だったので居なかったが、農作業に精を出す人々の姿が見られた。

 今は植え付けの季節らしく、地面を耕し、アマムのものと思われる種を蒔いていた。

 

 「あまり農作業はやったことがないが、こういうのを見るとそういう生活にも憧れるな。」

 

 「確かに畑仕事は食べ物を作る大切な仕事ですけど、そんなに甘いものではないのです。特にこのエンナカムイでは慢性的な水不足のせいで苦労が多いのです。」

 

 「そうなのか? たしかここからそう遠くないところに大きな湖があった気がしたんだが・・・」

 

 「湖・・・もしかしてオバロ湖のことですか?」

 

 どうやらネコネもあの湖のことを知っていたようで、すぐにその湖の名前を挙げる。しかし、その顔には複雑そうな表情が浮かんでいた。

 

 どうしたのだろうか? 自分が知るエンナカムイでは陶器の筒を繋いだ水路でオバロ湖から水を引いて使っていたはずだ。もしかしたら、記憶に無い期間に造られたものだったのだろうか?

 

 「残念ですけど、あの湖までの道は悪くて、人手や荷馬車で水を運ぶのが難しいのですよ。かといって水路を作っても湖水は全て水はけの良い土壌に吸い込まれてしまうのです。」

 

 「ふむ・・・そういうことか・・・」

 

 「・・・あの、マシロさんは何か良い方法を知らないですか? 兄さまがマシロさんは物知りだと言っていたのです。だから・・・」

 

 ネコネが懇願するような表情で自分を見上げてくる。賢い彼女のことだ。國を豊かにするにはあの湖の水を活用することが必須であると気付いているのだろう。

 

 「出来ないことはないが、訳有って自分には少々面倒な制約が有ってな。何かを与えるには同等の対価を貰わなくちゃならん。」

 

 「制約・・・もしかして、何かの宗教上の理由なのでしょうか?」

 

 「そう思ってくれればいい。」

 

 自分の話を聞いたネコネは口に手を当てて何やら考え始める。しかし、これは國の公共事業レベルの案件だ。如何に彼女が天才であっても、そうそう何かできるとは思えない。精々(オゥルォ)に謁見できるオシュトルにこの話を伝えるくらいだが、今の彼の地位では案を採用してもらえない可能性の方が高いだろう。

 

 「・・・マシロさん。商店通りを案内した後に会ってほしいヒトが居るのですが・・・」

 

 「会ってほしいヒト? 今の話に関係があるのか?」

 

 「はいなのです! まだ若くて頼りないですけど、彼ならきっと力になってくれるのです!」

 

 自信満々にそう言い放つネコネ。あのブラコンのネコネがオシュトルを差し置いて薦める程の人物だ。相当上の地位に居るのだろう。それなら(オゥルォ)も真剣に検討してくれるかもしれない。

 

 「それはいったいどんな奴なんだ?」

 

 「それは・・・この國の(オゥルォ)である御前・・・イラワジ様のご令孫で、後継者でもあるキウルなのです!!」

 

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 商店を見て回り、旅籠屋に荷物を置いた自分達は、エンナカムイの皇城まで来ていた。

 皇子であるキウルの友人であるネコネは門番に軽く挨拶するだけで中に通され、自分もネコネの口添えですんなり入ることができた。どうやらネコネは城の者達から信用されているようだ。

 そして、そのままネコネの後を追って皇城内を進み、城の上層にある皇子の部屋の前までやってきた。

 

 「・・・今更なんだが、自分がここまで入って良いのか? そのキウルって奴の友達であるネコネと違って、自分は完全に部外者だぞ?」

 

 「大丈夫なのです。私の家はヤマトの貴族では下位に位置しますが、この國では十分名家なのです。ですから、私と一緒に行動してさえいれば問題無いのです。」

 

 そういうことか。確かに一國の皇子と友達という時点でネコネがこの國では高い身分であるのは分かる。

 家が貴族というには質素過ぎるから忘れていたが、ネコネも一応お姫様なんだな。

 

 「それでは入りましょう・・・キウル! ネコネなのです! 入りますよ!」

 

 『へ!? ネコネさん!? ど、どうぞお入りください。』

 

 ネコネが障子越しに声をかけると中から少年特有の甲高い声で返事が返ってきた。

 そして、戸を開いたネコネに続いて部屋に入り込むと、一見少女にも見える美少年がオシュトルと向かい合って座っているのが見えた。

 

 「兄さまもいらしていたのですか。」

 

 「ああ。帝都での話を聞きたいと言うのでな。それでネコネはどうしたのだ?」

 

 「私はキウルに相談したいことがあって来たのです。キウル、今良いですか?」

 

 「はっ、はい! ネコネさんならいつでも大丈夫ですっ!!」

 

 「なら良かったのです。では相談の前に紹介したいヒトが居るのです。マシロさん。」

 

 ネコネに促されて前に進み出るとキウルはようやく自分の存在に気付いたようで怪訝そうな表情を浮かべる。そして、並んで立つ自分とネコネの間で忙しなく視線を行ったり来たりさせていた。

 

 ほ~ん・・・このキウルって奴はまさか・・・

 

 自分はキウルのネコネに対する思いを察すると心の中でニヤリと笑い、この場をほぐすために一発かましてやることにした。

 

 「エンナカムイの皇子キウル殿。お目にかかれて幸栄です。自分はマシロと申す者でございます。研鑽を積む為に諸國を旅しております。そして、オシュトルの友であり、ネコネの・・・・・・・・・・婚約者です。」

 

 「「こっ婚約者!?」」

 

 自分の爆弾発言に同時に驚愕の声を上げるネコネとキウル。ネコネは羞恥に顔を染め、キウルは目が飛び出んばかりに目を見開きあんぐりと口を開けている。そして、オシュトルは口を抑えて笑うのを必死に堪えていた。

 

 「な・・・何馬鹿なこと言ってるですかマシロさん! なんで私が貴方と婚約者にならなくちゃいけないのですか!? というかなんなのですかその喋り方は! すごく気持ち悪いのです!!」

 

 「どうしたのだネコネ。昨夜、これから仲良くやっていこうと誓ったばかりではないか。あの言葉は嘘だったのか?」

 

 「た・・・たしかに仲良くするとは言ったですけど・・・」

 

 「そんなネコネさん・・・!?」

 

 「ち、違うのですキウル! このヒトは私達をからかって遊んでるだけなのです! だから婚約者というのも嘘なのです!」

 

 「ほ・・・本当ですか!?」

 

 「某としてはそれでも一向にかまわんのだが?」

 

 「兄さま!?」

 「兄上!?」

 

 混沌とした場に投下されたオシュトルの言葉にネコネとキウルの愕然とした声が響く。

 その姿に自分とオシュトルは顔を見合わせて大声で笑うのだった。

 

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 「痛てててて・・・何も噛みつくことはないだろうネコネ。」

 

 「キウルはまだしも私をからかった罰なのです!」

 

 「僕はまだしもって・・・酷いですよネコネさん・・・」

 

 「はっはっはっ・・・。やはりマシロ殿と一緒に居ると退屈しないな。」

 

 ようやく場が落ち着き、ネコネも暴れるのを止めたので、自分達は卓を囲んで茶を飲んでいた。

 

 あの後、キウルにからかったことを謝ると彼は戸惑いながらも許してくれたのだが、ネコネの方は怒りが治まらず、自分に飛び掛かってきたので宥めるのに一刻近くかかってしまった。あとでネコネの好きな菓子を買ってやる約束をさせられたが、楽しかったので良しとしよう。

 

 「えっと・・・それでお話とはいったい何なのでしょうか?」

 

 「そういえばその為に来たんだったな。ネコネが騒ぐから忘れてたぜ。」

 

 「~~~! 貴方いうヒトは!!」

 

 「落ち着くのだネコネ。大事な話なのだろう?」

 

 「・・・分かったのです。ですが、マシロさんは後で覚えておくのです!」

 

 「はっはっはっ! 今度とっておきの菓子を食わせてやるから勘弁してくれよ。」

 

 「・・・絶対なのですよ?」

 

 ネコネの反応が可愛らしくて、ついからかってしまいまた怒らせそうになったが、菓子をエサにするとあっさり引き下がり大人しくなった。どうやらネコネを宥めるには菓子が有効なようだ。

 

 「それで相談についてなのですが、もしかしたらオバロ湖の水を使えるようになるかもしれないので御前に口添えをしてほしいのです。」

 

 「え!? オバロ湖の水をですか!?」

 

 「・・・ふむ。もしやマシロ殿の入れ知恵か?」

 

 「そうだ。だが、事が事だし、これだけ大きなことをやるとなると対価無しじゃ無理だからな。そんなわけでキウルに相談に来たんだよ。」

 

 「そうだったのですか・・・それでその方法とは?」

 

 「う~ん・・・教えたいのは山々なんだが、聞いたら対価を払ってもらわないといけないんだよ。」

 

 「え!? 聞くだけでもダメなんですか!?」

 

 「悪いな。自分でもめんどくさいとは思うんだが、そういう決まりなんだよ。」

 

 「うむ・・・なにやら事情があるようだな。ちなみに対価とはどれほどのものなのだ?」

 

 オシュトルに聞かれて、フムと対価について考える。

 今回の願いを叶える方法は、神の力を使うわけでも取り立てて革新的な技術を与えるというわけでもない。少しだけ見方を変えれば誰でもすぐに思いつくようなことだ。だが、それによって得られる恩恵を考えるとそれなりに対価を貰わなくてはならない。となると・・・

 

 「・・・そうだな。金子で払ってもらう場合、最低でも一千萬は必要だな。」

 

 「一千萬!? そんな大金無理ですよ!?」

 

 「うむ・・・國庫を開けば払うことは可能であろうが、かなり財政を圧迫するであろうな。」

 

 「そうですね・・・予想はしていましたが、かなりの金額なのです。それに加えて工事費を考えると國の財政が破綻しかねないのです・・・」

 

 自分が提示した対価の額に顔を引きつらせるキウルとオシュトル。そして、ネコネも対価を支払った場合にエンナカムイが辿る運命に思い至り、落胆の表情を浮かべていた。

 

 「・・・と言ってもこれは金子だけで払ってもらった場合だ。他に自分が価値があると判断したモノを貰えれば負担は小さくなるだろう。」

 

 「本当なのですか!? いったい何を払えばいいのですか!? 教えてほしいのです!!」

 

 金子以外の方法があると聞いたネコネが必死の様相で自分に縋り付いてくる。

 自分はそんなネコネの頭を撫でながら宥めるように話しかけた。

 

 「落ち着けネコネ。この場で何が欲しいかなんてパッとは決められん。とりあえず一晩考えてみるから待ってくれないか?」

 

 「ですが・・・」

 

 「・・・マシロ殿。とりあえず概要だけでも教えてもらえぬか? その分の対価は某が払おう。」

 

 自分に縋り付いたまま納得いかない顔をしているネコネを見かねてオシュトルが提案をしてくる。

 確かに概要程度ならそれほど大きな対価も必要ないし、そもそも概要も分からないのでは御前に献策することもできない。

 

 「・・・いいだろう。それじゃあお前が持っているキセルを渡してもらう。それが対価だ。」

 

 「相分かった。その対価確と払わせて頂く。」

 

 「なっ!? それは父さまの形見のキセルなのです!? それを渡すだなんて・・・」

 

 「良いのだネコネ。確かにこれは大切な物だが、この國の為になるというのなら父上も喜んでくれるであろう・・・それではマシロ殿。」

 

 オシュトルが懐から布に包まれたキセルを取り出し差し出してくる。自分はそれを受け取り、布を開いて中身を確かめる。

 そのキセルは銅と竹を使った安価な物だった。しかし、それにはオシュトル達の父への思いが籠っており、何物にも代えられない価値を持っていた。

 

 「願いへの対価。確かに頂いた・・・それじゃあ早速話すとするか!」

 

 自分は受け取ったキセルを大事に懐にしまい込むとネコネ達に向かって計画の概要を話し始めるのだった。

 

 

 

 

 




 
装備品 NEW
・形見のキセル:オシュトル達の父親が愛用していたキセル。
        素材に銅と竹を使った安価な代物であるが、持ち主が『ヤマトの
        民を守る』という強い信念を持っていた為、その思いがキセルに
        宿り、守りの力が備わった。
        物理/術ダメージを5%軽減する。

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