わたしは ながい あいだ まっくらな
ところに すんでいる
そこは いわと つちで できた
つうろ みたいな ところ
ときどき ごはんが はいってくる
いがいは なんにもない
わたしは そんな ばしょで いきている
もう どれくらい ここに いるのかも
わからない
ただただ くらいみちを あるき まわり
ごはんが いないか さがしてる
きょうは そとから すごい おとがする
たぶん しろくて つめたいものが
いっぱい ふってるんだ
なんどか ごはんが はいってくる
ところに いって みて みたけど
あかるい ときの しろいものは
すごくきれい
でも わたしは あかるいのが
にがて
すこし だけなら だいじょうぶ
だけど ながく あかるい ところに
いると きもちが わるくなる
まるで ひきこもりの にーと
みたい
そうだ しろいのが いっぱい
ふってくる ひは ごはんが
はいってくる ひだ
きょうは ごはんが たべられる
あ ごはんが はいってくる
ところから なにかが わたしに
ちかづいて くる
きっと ごはんが きたんだ
わたしは ひさしぶりの
ごはんに わくわく しながら
ごはんの くるほうに むかった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とつぜん まわりが あかるくなる
わたしは びっくりして こえを
あげて しまった
そうしたら じめんから みどりの
ぐねぐねが でてきて
わたしの からだに まきついた
はじめはくるしかったけど、だんだんあたたかくて、きもちがよくなってきた
だれかのこえとかちゃりというおとがきこえた
こえがきこえたほうをむいてみると、おとこのひとがたっていた
わたしは、このひとのことをしっている
このひとは、わたしのたいせつなひと わたしのだいすきなひと
ああ、やっとあえた ずっとずっとわたしはあなたにあいたかった
わたしはだいすきなひとにちかづこうとしたけれど、ぐねぐねがじゃまで
ちかづくことができない
そうしているうちにおとこのひとはこしからなにかをぬいた
それはとてもつめたかった でも、すぐにぽかぽかとあたたかくなって
からだがかるくなった
気づくとわたしは上から男の人を見ていた。
男の人は気だるそうに、それでいて安心したように溜息をついていた。
からだがどんどん男の人から離れていく
いやだ! この人と離れたくない!
わたしは必死に男の人に近づこうとしたけれど、なにかに引かれて
ぜんぜん近づくことができない。
いやだいやだいやだいやだ!! わたしはこの人といっしょにいる!
今度こそずっとずっといっしょにいるの!
やっと会えたのに! ずっと待ってたのに!
こんなにすぐにお別れなんていやだよ・・・
いやだよおじちゃん!!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
村についてから半月ほど経った。
自分はその間、旅籠屋を拠点に村周辺のタタリの浄化をしながら、自分が何をできるのか、そして、何を覚えているのか確認をした。
まずに
一つは「光明」
これは夜を昼のごとく照らす巨大な光源を生み出す
二つ目は「
これは直径1メートル程の花火を生み出す
三つ目は「水郷」
これは水を操る
最後に「
断崖絶壁をまるで普通に歩くように登れる
・・・うん。これだけ物凄く地味だな。今の身体能力なら崖ぐらい簡単に登れるから必要なのかと言われる別に要らない
そして、記憶の方についてだが、どうやら失われているのは以前目覚めてから神になるまでの記憶のようだ。と言っても全ての記憶を忘れているわけではなく。旅籠屋の女将さんを覚えていたように一部の記憶は残っていた。恐らく覚えているのは関係性が薄かったヒトと友好的な関係に無かった奴らの記憶だ。
前者は兎も角後者の方はどうせなら忘れていた方が良かった。
なんで親しかった奴らは欠片も覚えていないのに馬鹿主従やダイビング地味オヤジ、BL
まぁ、ウォシスのことを覚えていたのは良かったと言えば良かった。あいつに関しては間が悪かっただけだ。
あいつ自身の選択も―――あいつをとりまく環境も―――あいつが良しとして、しかし手に入らなかったささやかな未来の夢も。 それらすべてが、たまたまその時だけ、かみ合わなかっただけなのだ。
つっても、あいつが何者でなんであんなことをしたのかは覚えていないんだけどな!
ホント、この肝心なことを覚えていない中途半端な記憶には困ったもんだぜ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おや? マシロさん。また山に出かけるのかい?」
旅籠屋から出ると、店先を掃除していた女将さんに声をかけられた。
「ええ、ここの山はいろんな薬草がありますからね。」
「毎日毎日熱心だねぇ。学士さんってのは皆そうなのかい?」
「まぁ、似たり寄ったりですよ。」
そのまましばらく女将さんと世間話をしたあと、山に向かって歩き出す。
途中何度も村人にマシロさんと声をかけられ、その都度立ち止まって話をしたので少し時間がかかったが、彼らと交流することは自分にとって楽しみでもあるため気にはならなかった。
ちなみにマシロという名前は時間を遡る前にヒトから呼ばれていた神としての名前だ。元々はこの周辺の民間伝承に出てくる神様の名前らしいが、以前の名前を忘れてしまっているため、そのまま名乗らせてもらうことにしたのだ。
それと学士と女将さんに呼ばれていたのは、山に頻繁に入る理由として薬草の研究をしていると言ったところ、女将さんが学士だと勘違いした為だ。よって役職詐称にはならない。なんたって、自分では一度も学士だと名乗ってないからな!
そんな風に村人達と交流しながらのんびりと村を出る。そして、山の中腹まで登ると誰もいないことを確認して手を叩く。
すると黒いつむじ風と共に神代文字が書いてある紙を顔に張り付けた三匹の式神が現れる。それぞれ緑、赤、黄色をしたその式神達はこの山で調伏した
まぁ、悪戯や盗みなんてことをしている時点で分かると思うが、こいつらの力は大したことはない。だが、広い山でタタリを探索するとなるとこいつらの力は役に立つ。
天邪鬼は力が弱い代わりにどこにでも入り込むことができる。そして、ヒトに近い身体を持っているため、自分の補佐をさせるのに丁度良いのだ。
時を遡るまでは自分を補佐してくれる眷属達もいたんだが、過去に戻った時点でその姿はなかった。しかも、どんな姿をしていたのか、どんな名前だったのかも忘れてしまっているため、探そうにも探せないのだ。
だが、僅かだが繋がりを感じる。繋がりが弱過ぎてどこにいるのか感知することはできないが、どうやら彼女達もこっちに来ているようだ。
問題はあいつ等が自分と同じように記憶を失っている場合だ。その場合、近くにでもいなければ彼女達を見つけることができない。逆に記憶がある場合は、あいつ等の方から探しにくるだろう。すごく献身的な眷属だった覚えがあるからな。
「よし。今日は最後の確認だ。この近辺のタタリは粗方浄化したが、まだ見逃しがあるかもしれん。終わったら酒を飲ませてやるから頑張ってくれよ?」
「「「キキキィーー!!!」」」
自分が命令を出すと天邪鬼達は敬礼して各々山に散っていく。
それを見届けたあと、自分もタタリを探して森の中に分け入った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
タタリが残っていないことを確認した自分は、持ってきたクワサを天邪鬼達に飲ませてやった後、日が暮れる前に村へと戻った。
これで自分がこの村でやることは無くなった。明日には村を出ることにしよう。親しくなった村人達と別れるのは名残惜しいが、いつまでもここに留まるわけにはいかない。自分にはまだまだやることがあるのだから。
旅籠屋に戻って女将さんに村を出ることを言うととても残念がってくれた。そして、夕餉の後に餞別だと言って秘蔵の古酒を出してくれた。
「くぅ~!! 旨い!! 流石女将さん秘蔵の酒なだけはあるな!!」
「ふふふっ。気に入ってくれたみたいでうれしいよ。こいつはアマムを黒麹で仕込んで作るイホシキってお酒でね、酒精が強くてクセも強いが、独特な甘い香りが良いだろう?」
「ああ! 自分みたいな飲兵衛にはたまらん酒だな! もう一杯貰えるか?」
「もちろん。そのために出したんだからね。けど今度はお湯割りでどうだい? イホシキはお湯で割ると湯気で香りが広がって、味もまろやかで甘くなるんだよ。」
「おっ! そういう飲み方もありなのか! それじゃあそれをいただくぜ!」
女将さんのお酌でどんどん杯を空けていく。お湯割りにしたことで飲みやすくなったことに加えて、旨い肴で酒が進む進む。
そのうち女将さんも一緒に飲み始めたことで飲むペースは更に早くなり、あっという間にイホシキを飲みつくし、他の酒まで開ける始末。
そんな二人だけの飲み会は日を跨ぐまで続くのだった・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
チュンチュンと鳴く鳥の声と朝の日差しで目が覚める。
昨夜は女将さんと酒を浴びるように飲んで途中から記憶が無い。
布団に寝ているということは、あの後、女将さんが運んでくれたのか・・・
深酒のせいで重たい頭でそう考えながら二度寝しようと寝返り打とうとしたら布団の中に誰かいることに気が付いた。
恐る恐る目線を下げてみるとそこには一糸纏わぬ女将さんの姿が・・・
「うぉっ!?」
慌てて布団から出て周りを見た渡す。部屋には昨日の酒盛りの跡が残っており、布団の脇には二人分の衣服が散乱していた。
「あぁ、やっちまった・・・」
自分がしでかしたことに頭を抱える。よくよく思い出してみれば、確かに致した記憶もある。思い出されるのは女将さんの成熟した豊満な身体と甘い声・・・じゃなくて! 今はこの状態をどうにかしなくてはっ
「う・・・ううん・・・おや? もう起きてたのかい?」
この状況をなんとか打開しようと頭を高速回転させていると女将さんが起きてしまった。
ダメだ、もうおしまいだ~!
「あらあら、どうしたんだいマシロさん? もしかして昨日のことを気にしてるのかい?」
「そ、そりゃあまぁ・・・じゃなくて! 女将さん! 酔った勢いとはいえとんでもないことしちまって本当にすまん!!」
そう言って全裸で全身全霊全力全開で土下座する。なんだったら焼き土下座をやったっていい。
「もう、マシロさん。そんなに気にしなくたっていいんだよ。それに私の方から誘ったんだ。だからマシロさんはなんにも悪くない。」
「いやしかしっ」
「いいからいいから。さっ、そろそろ服を着なよ。私も着替えるから。あぁ、その前に体を拭くものが必要だねぇ。ちょっと待ってておくれ。すぐに持ってくるから。」
そう言うと女将さんは手早く着替えて部屋を出て行ってしまった。全裸で土下座していた自分はそれを追うわけにもいかない為、自己嫌悪しながら深い溜息をついて浴衣を手に取るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結局あの後も女将さんは謝罪を受け取ってくれなかった。
自分が一人悶々としている間も女将さんはいつもの笑顔で客に朝食を配膳している。しかも時折自分の方を見てはウィンクしてくるので余計ドギマギしてしまった。
まるで初心な少年のような反応をしてしまう自分に呆れてしまう。これも女将さんが自分の好みドストライクなのが原因だろう。
これでも長いこと生きてきたんだ。それなりに経験もある。まぁ、例のごとく記憶が無いから誰とやったかまでは覚えていないが。
それに問題もある。何せ二人とも酔っぱらっていたのだ。そんな状態じゃ避妊なんてこともやってないだろう。
だが、後悔したところで致した事実が覆るわけもなく。余計頭を悩ませことになってしまうのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後、旅籠屋を出ると女将さんが村の入り口まで見送ってくれることになった。
道すがら女将さんと話しながら歩くが、意識してしまってなかなかうまく話すことが出来ずにいた。
「・・・ごめんね、マシロさん。私みたいなおばさんじゃ嫌だっただろう?」
「あっ、いや。別にそんなことは・・・自分としては役得でしたし・・・」
突然そんなことを言った女将さんに驚きながらもなんとか返す。
いやホント役得でした。女盛りの未亡人とか最高過ぎる。
「ふふふ。ありがとうマシロさん。良い一夜の夢を見させてもらったよ。」
そう言って微笑む女将さんに思わず見惚れてしまった。
あれぇ? 自分ってこんなに惚れっぽかったっけ? 昔はかなり枯れてたはずなんだけどなぁ・・・
そんなことを思いながら自分も女将さんになんとか微笑み返す。しかし、次の女将さんの言葉に顔を引きつらせることになった。
「まさか十回もするとは思わなかったよ。やるじゃないかマシロさん。」
「・・・え!?」
「あれだけ出されたらできちまうかもしれないねぇ・・・あぁ、子供ができても心配しなくていいよ。これでも一国一城の主なんだ。子供一人育てるくらいわけないさ。」
からから笑いながら事も無げにそんなことを言う女将さん。
流石は辺境の地で旅籠屋を切り盛りするだけのことはあるが、さっぱりした、ともすれば男らしいとも言えるその性格に乾いた笑いが漏れた。やはり辺境の女は強い。
「まぁ、流石に一度じゃできないだろうけどね。」
「は、はははは・・・そ、そうですよね。大丈夫ですよね。」
う、うん。よく考えればそうだ。たった一夜共に過ごした程度で子供ができるわけがないよな。猛禽類の翼のような眉毛を持ったスナイパーが狙撃するみたいにピンポイントで当たるわけがないよな!
そうなんとか己を納得させたマシロは忘れていた。自分がどういう存在なのかを・・・古来より神にはある特性があることを・・・
それは『一夜孕み』
様々な神話で語られる、ただ一度の交わりで子をなすことができるという神の特性を忘れていた。
これにより、愛した少女達との間に子供を儲けていたことも。
ただ、幸いなことは、生まれてくる子供は神のチカラを持たない唯のヒトであることだ。
それは、愛した少女の一人が父より受け継いだ神のチカラで世界を滅ぼしかけたが故に二度とそのような事が起きぬよう彼自らそのような制約を課したからだ。
自分の子供達が、唯のヒトとして穏やかな生を歩めるようにと願いを込めて・・・
そんなこととは露知らず、マシロは村の出口への道を歩いていく。
これから彼にどのような出会いがあり、何を成すのかは分からない。だが、一つだけはっきりしていることがある。
それは彼が女難に遭う運命にあるということだ。
マシロは、見上げた空に良い笑顔でサムズアップする老人の姿を見た気がした。
今回出てきた天邪鬼は、「大神」出てくる妖怪です。
あいつ等結構コミカルで好きです。