マシロ様、中途半端でニューゲーム   作:秋羅

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4.神は乙女を二度染める

 

 自分とヤシュマはボコボコにされた後、正座でお説教を受けていた。

 

 「まったく! 貴方はこのクジュウリの次期(オゥルォ)なのよ! それなのにあんなはしたない真似をして・・・恥を知りなさい!!」

 

 「はい・・・本当に申し訳ありませんでした。」

 

 「そして貴方! 民を救ってくれたお方と聞いたからどんな方かと思ったら・・・あ・・・あんな・・・あんな破廉恥な方だとは思いませんでしたわ!!」

 

 「はいすいません・・・生まれてきてすみません・・・」

 

 怒れる皇女を前に謝ることしかできない馬鹿二人。かれこれ一時間はこの調子だ。

 自分達は寒空の下、褌のみを着けた姿でお説教を受けていた。そろそろ足の感覚が無くなってきてヤバイ。

 

 一緒に宴をしてた連中は遠の昔に解散し、天邪鬼達まで自分を見捨てて帰ってしまった・・・まぁ、自業自得なのでしょうがないんだが、少し薄情過ぎやしないか?

 

 「・・・はぁ。まだまだ言いたいことはありますが、今日のところはこれで勘弁してあげます。」

 

 「「ホッ・・・」」

 

 「た・だ・し! 次こんなことがあったら、その姿で山に放り出すわよ! 分かったわね!!」

 

 「「はい・・・本当にすみませんでした。もう二度としません・・・」」

 

 そうしてようやく解放された自分達は、いそいそと服を着るのだった。

 

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 「悪かったな。自分のせいで大変な目に会わせちまって。」

 

 「いや。確かに大変な目には会ったが、あんなに楽しい時間は初めてだった。また機会があれば一緒に飲もう。」

 

 そう言ってガッチリと握手を交わす。

 共に裸踊りを踊り、試練を乗り越えた自分達には友情が生まれていた。

 

 「自分はしばらくここにいるつもりだから、何かあったら声をかけてくれ。」

 

 「分かった。その時は頼りにさせてもらう。」

 

 握手したままニヤリと笑い合っていると旅籠屋の外から皇女さん―シスがヤシュマを呼ぶ声が聞こえた。

 その声には苛立ちが混じり、今にも怒り出しそうだ。

 

 「・・・それじゃあ、帰らせてもらう。これ以上は姉上の雷が落ちそうだ。」

 

 「確かにな・・・それじゃあまたな。今度は茶でも飲みながら語り合おう。」

 

 「ああ、また会おう。」

 

 共に旅籠屋を出て、ヤシュマとシスを見送る。

 シスは今だにプリプリと怒っていたが、挨拶をすると胡乱な目で見ながらもしっかりと返してくれた。

 なかなかの女傑ではあるようだが、皇女として礼儀は弁えているようだ。

 

 そのまま皇城に帰っていく二人の背を眺める。

 ヤシュマはシスにど突かれているが、その姿はどこか楽しそうでもあった。

 

 「ああやって好き勝手されるのも仲が良い証拠か・・・」

 

 そんな姉弟の姿にクスリと笑いを漏らし、どこか懐かしい思いを抱きながら、マシロは旅籠屋に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 「ほい。サイナイナ草は一束四百センだ。」

 

 「どうもね。雪のせいで採れなくて困ってたんだ。でもいいのかい? こんなに安くて。」

 

 「いいってことよ。こっちは特別な販路でいつでも手に入れられるからな。これでも十分採算が取れる。」

 

 「それならいいんだけど・・・じゃあ、また何か必要になったら来させてもらうね。」

 

 「おう! 三日に一度やらせてもらうつもりだから、その時はまた頼むぜ!」

 

 薬草を買いに来た婆さんを見送り、金を袋に移す。

 朝からこうして薬草を売っているが、なかなかの売れ行きだ。この分なら、しばらく宿代には困らないだろう。

 

 さて、何故自分がこんな商人紛いのことをしているのかというと、ズバリ金が無いからだ。

 なんでそうなったのかというと、単純に無駄遣いが原因だ。

 こっちに来る前は、ヒトと直接関わり合いになることが少なかったし、別に飲み食いしなくても問題は無かったんだが、こっちに来てからは身体が常に実体化している状態な上に、ヒト付き合いもしなければならないので酒を飲む量が格段に増えた。それに加えて、買い食いもできるようになったので、ついつい屋台なんかで買ってしまい、結果金欠になってしまったというわけだ。

 そして、そんな極貧生活まっしぐらな状況を脱するために、市の一角を借り、自分で生み出した薬草なんかを売って儲けることにしたのだ。

 

 え? 神の権能(チカラ)をそんなことに使っていいのかって? いいんだよ。薬草が欲しいという願いに対して、金という対価を払わせてるんだからまったくもって問題無い!!

 

 そうして、ジャラジャラと財布に詰まる金を眺めながら、これなら高めの酒を買っても問題無いなとニヤニヤしていると自分の頭上に影が差した。どうやら客が来たようだ。

 

 「いらっしゃい。何をお求めで・・・」

 

 「貴方、何をしてらっしゃるの?」

 

 「・・・え? 皇女さん?」

 

 顔を上げた先には呆れ顔のシスの姿があった。

 

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 「ふ~ん。それで薬草を売ってお金を稼いでいたのね。」

 

 「え・・・ええ。お恥ずかしながらそうです、ハイ。」

 

 何故か正座でシスと話をする自分。どうやら彼女には敵わないと身体にインプットされてしまったようだ。

 

 「貴方、呪術師なんだからそっちで稼げばいいじゃない。」

 

 「いや~・・・それはそうなんですけどね。自分、荒事とか好きじゃないですし・・・」

 

 若干苦手意識が芽生えているシスを前にキョロキョロと挙動不審気味になってしまう。そして、そんな自分を見てシスの顔が少しずつ険しくなっていく。

 

 「ねぇ、貴方・・・」

 

 「は、ハイすみません!! 金をやるから勘弁してくれ!!!」

 

 語気を強めたシスに思わず土下座で謝っていた。

 周りからは、なんだどうしたと野次馬染みた視線が集まってくる。

 

 「ちょっ、ちょっと何やってるの!? お止めなさい! それじゃあまるで私が貴方を脅しているみたいじゃない!! 私はただ、昨日のことはもう気にしてないって言いたかっただけなのよ!!」

 

 「・・・え? そうなんですか?」

 

 思ってもみなかった言葉にキョトンとしてシスを見上げる。

 彼女は周囲からの好奇の視線に晒されて、プルプルと羞恥に顔を染めていた。

 

 何この()、すごく可愛い・・・じゃなくて!

 

 ヤバイ・・・ヤバイぞ・・・このままじゃシスが爆発しちまう! そうなったらどれだけの被害を被ることかっ!!

 ・・・・・・こうなれば!

 

 「あ~その・・・ここじゃあなんですから、茶屋ででも話しませんかね?」

 

 この人の目が集まる空間から脱するためにそう言うとシスは無言ながらも頷いてくれた。

 自分は商品を手早く片付けるとシスの手を引きながら市を後にするのであった。

 

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 茶屋に入り、頼んだ茶と菓子で一息つく。

 市ではあわや爆発寸前であったシスも甘い菓子を食べると落ち着いたようで、その顔色は元の雪の様に美しい白に戻っていた。

 それを見計らって自分は話の続きを促した。

 

 「・・・初めて見たのよ。ヤシュマがあんなに楽しそうにしているの・・・」

 

 「ヤシュマが?」

 

 「ええ・・・あのコはこのクジュウリの後継者として、相応の教育を受けてきたわ。そのおかげで武はこの國でも敵う者がほとんどいないくらいの腕前になったし、政もそれなりにこなせるようになった。でも、そのせいで少し真面目が過ぎるというか・・・まぁ、堅苦しくなってしまったの・・・」

 

 「あ~・・・確かに最初に会った時はそんな感じでしたね。」

 

 しかし、すぐに一緒になって馬鹿騒ぎしていたから、公私の使い分けがうまいのかと思っていたが違ったのか・・・

 

 「そんなだから、一緒に馬鹿をやるような友達もできなかったの・・・まぁ、弟達とはよく騒いでるけど、それとこれとはまた別の話・・・だから、貴方には感謝しているのよ? 愚弟と友達になってくれた貴方には、ね。」

 

 「皇女さん・・・」

 

 ヤシュマが居る時とは打って変ってその顔には慈愛が浮かんでいた。

 少々過激な部分もあるようだが、それも家族を思えばこそなのかもしれない。

 

 「だからと言って、昨日のように羽目を外すのはダメよ? お酒の席だからある程度は仕方無いけど、あんな・・・は・・・破廉恥なこと許しません! あれじゃあ皇族として示しが付かないわ!!」

 

 「本当に申し訳ございませんでした。」

 

 自分達の勇姿?を思い出しているのか若干顔を赤らめるシスに素直に謝る。

 よく考えればとんでもないことさせてたよなぁ・・・一緒になって騒いでて忘れてたが、ヤシュマも皇族・・・しかも次期(オゥルォ)だ・・・それに皇女であるシスには裸同然の姿を見せちまったし・・・アレ? これが(オゥルォ)の耳に入ったらヤバくね?

 

 「あ~その・・・今更なんだが、大丈夫なんですかね自分。一國の皇子にあんなことさせちまった上に皇女さんにも失礼を・・・」

 

 「・・・お父様については平気よ。その話を聞いて笑っていたもの。むしろ一緒にお酒を飲みたいとおっしゃっていたわ・・・私の方は・・・まぁ、事故のようなものだから許してあげます。」

 

 「ありがとうございます!!」

 

 本当に良かった。いざとなったら逃げきる自身はあるが、そうなると今後の活動に支障が出るからな。寛大な(オゥルォ)と皇女さんに感謝だ。

 

 「・・・ところで、その敬語止めにしないかしら?」

 

 「え? いいんですか?」

 

 突然のシスの言葉に目を瞬かせる。結構気位の高そうな感じだっただけに意外だ。

 

 「ヤシュマとは普通に話していたでしょ? それに貴方が敬語で話してるとなんだか気持ち悪いのよ。」

 

 「気持ち悪いって・・・」

 

 なんだそれは・・・こっちは一応敬意を払ってるってのに・・・

 

 「だから私とも普通に話しなさい。それとシスと呼ぶことを許すわ。」

 

 「・・・・・・分かったよ。じゃあ、短い間になると思うが、よろしく頼むぜ、シス。」

 

 「ええ。こちらこそよろしく。」

 

 こうして打ち解けることが出来た自分達は、そのまま茶飲み話に花を咲かせるのだった。

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 「マシロ・・・お前本気なのか?」

 

 シスと別れ、皇都をブラブラしてると、警邏中のヤシュマにそんなことを言われた。

 

 「あ?・・・なんの話だ?・・・というか、主語を言え主語を。いきなり本気なのかと聞かれてもなんのことか分からんぞ。」

 

 「そ・・・そうだったな。すまない。」

 

 何やら困惑顔のヤシュマの姿に疑問が深まる。

 自分、なんかやったっけ? 今日やったことといえば、薬草を売ったこととシスと話した程度だが・・・

 

 「その・・・なんだ。城下でお前と姉上が痴話喧嘩をしていたと噂になっていてな・・・なんでもお前が姉上に手を出したとか、金で買ったとか・・・そんな噂だ。」

 

 なんてこったい!! 

 

 確かに市での騒動はいろんな奴に見れてはいたが、そんな歪曲して広がっているとは!!

 

 「それと、姉上と手を繋ぎながら茶屋に入ったという情報も兵から上がっている・・・いつの間にそんな仲になったんだ?」

 

 「んなわけあるか!! あれは昨日のことを謝ってたんだよ!! それと茶屋に入ったのはあんな人目が集まっている所じゃ落ち着いて話が出来なかったからだ!!・・・まぁ、手を繋いでいたの確かだが、あれは成り行き上そうなっただけだ!!」

 

 慌てて噂について否定する。

 そんな噂を信じられでもしたら、今度こそ(オゥルォ)の怒りを買っちまう。そうなったら、ここでのタタリの調査もできなくなってしまう。そんな事態だけは何としても避けたかった。

 

 「そうか、それならいいんだ。いや、お前を疑っていたわけではないが、城下中で噂になっているとなると無視するわけにもいかないからな。」

 

 「・・・え? 嘘だろ?」

 

 「本当だ。幸い父上の耳には入っていない。その前に真相を確かめられて良かった。」

 

 「真相も何も、自分とシスにそんなことが起きる余地が無いのは、昨日一緒にいたお前なら分かってるだろ!?」

 

 「それはそうなんだが、こと皇族の噂となるとな・・・うん? シス?・・・マシロ、お前いつの間に呼び捨てにするほど姉上と仲良くなったんだ?」

 

 「え? ああ、茶屋で話した時に打ち解けてな。そんで敬語も要らないし、呼び捨てでいいって言われたんだ。」

 

 「そうなのか・・・」

 

 何やら考えるような素振りを見せるヤシュマ。

 おい止めろ! なんだか不安になってくるぞ!!

 

 「おい、なんか不穏なこと考えてないか?」

 

 「え!? いや、そんなことはないぞ!? ただ姉上が他人とそんなに打ち解けるのが珍しいと思っただけだ!!」

 

 ジト目でヤシュマを問い詰めると明らかに焦った様子で否定してきた。しかも視線は泳ぎ怪しいことこの上ない。

 

 「そ・・・そうだ! 俺は警邏の途中だったんだ! 悪いなマシロ! また会おう!!」

 

 「あっ、オイちょっと待てぇい!!・・・・・・行っちまった・・・」

 

 駆け出したその背を掴もうと手を伸ばすが、ヤシュマの姿はあっという間に点と化していた。

 あの挙動不審なヤシュマの姿に嫌な予感しかしないが、今から追いかけるわけにもいかない。

 自分には、この悪い予感が外れることを祈るしかなかった。

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 「ほいじゃ、シスがそのマシロいう男を気に入っとるんは、ホントなんじゃな?」

 

 「はい。姉上が異性、しかも出会ったばかりの者に気を許すというのは、普通では考えられません。」

 

 「ふ~む・・・あとは武術の腕があればええんだがのぅ・・・」

 

 「刀を持っているようですし、武術の心得はあると思います。が、その腕前となると見てみないことにはわかりません。」

 

 「ほいなら試してみるか! 丁度キョロリが目撃されとるし、その討伐に連れていくいうんはどうじゃ?」

 

 「それは名案です父上! それでもし腕が立つようなら姉上と・・・」

 

 「ほんにそうだったらええのぅ!・・・マシロいうもんには悪い気がするが・・・」

 

 「いやいや! これも我らの平穏のため!」

 

 「そうじゃな! そしてシスのためじゃけぇ! ヤシュマよ! 万事任せたぞ!!」

 

 「お任せください!! クジュウリのため、粉骨砕身で努めさせていただきます!!」

 

 「「はーはっはっはっはっはっはっ・・・・・・!!」」

 

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 「・・・ヴェックシュン!!」

 

 「旦那ぁ・・・くしゃみするなら向こうむいてやってくだせぇ。」

 

 「あ・・・悪い。」

 

 屋台で晩飯を食っていると悪寒と共に盛大なくしゃみをしてしまった。

 嫌そうな顔をする店主に謝りながら鼻をすする。

   

 風邪を引いたか? いや、今の自分が風邪を引くわけないか。とするとヤシュマか? アイツ、変なことしなけりゃいいんだが・・・

 

 昼のヤシュマの様子を思い出して不安になりながら、おでんと共に熱燗をするる。

 

 くぅーー!! やっぱり寒い夜はこれに限るぜ!

 

 「貴方、本当に美味しそうにお酒飲むのね。」

 

 「え?」

 

 聞き覚えがある声に振り向いてみると、そこにはお供を伴った呆れ顔のシスの姿があった。

 驚いていると、シスは自分の隣に座り、馴れた様子で店主に注文していた。対する店主の方も何事も無いようにシスに挨拶し、おでんと酒を用意していた。

 

 「ここは私の行きつけなのよ。」

 

 「あ・・・そうだったのか。自分はてっきり噂の件で来たんだと思ったんだが・・・」

 

 「ああ、あれね。気にすることはないわ。皆、私がそんなことされる程柔じゃないって知ってるし。あんな噂すぐに無くなるわ。」

 

 そういえば、イアラオルケの群れを単独で狩れるほどの力の持ち主だとヤシュマから聞いたな。

 亞人(デコイ)の身体能力が高いとはいえ、こんな細腕でよくやるもんだ。

 

 「まぁ、そっちが気にしてないならいいんだが・・・悪かったな。自分があんな真似しなけりゃ、誤解もされなかった。」

 

 「いいえ。貴方があんな態度を取ったのは、昨日私がキツく言い過ぎたせいだもの・・・」

 

 「うん・・・まぁ、それが理由ではあるな・・・」

 

 「はぁ・・・駄目ね。頭では解っているのだけど、ついカッとなって余計なことまで言ってしまうの・・・」

 

 ああ、確かに。会って間もないがシスは常にイライラしているイメージがあるな。気にしているみたいだし、軽くアドバイスでもしてみるか。

 

 「イライラには、(ペルコ)の乳や小魚がいいぞ? 」

 

 「乳と小魚? それはどうしてかしら?」

 

 「乳や小魚の骨にはカル・・・いや、(カイ)という栄養が含まれててな。そいつがイライラに効くんだよ。」

 

 「まぁ、そうだったの。貴方って意外と物知りなのね。」

 

 「意外とは余計だ。ああ、それと(カイ)には骨を丈夫にする効果や肌を綺麗にする効果もあるから、そういう意味でも多めに取っておいた方がいいぞ。」

 

 「へぇ・・・そういうことなら明日から試して見ようかしら。」

 

 「そうしろそうしろ。キレやすい女は男にモテんぞ。」

 

 「余計なお世話よ!!」

 

 からかい混じりに軽口を言うとシスから平手が飛んできた。

 自分は何とかそれを躱すが、代わりに椅子から転げ落ちてしまった。

 

 「痛ててててて・・・そういうとこだよそういうとこ!!」

 

 「あ・・・ご、ごめんなさい! つい・・・」

 

 お供のヒトに支えられながら椅子に戻るとシスはシュンとしてしまっていた。

 そんなシスの姿に苦笑すると自分は彼女の頭を撫でていた。

 

 「ちょっ、ちょっと何するのよ!」

 

 「ん~? なに、落ち込んでるおまえさんを慰めてやろうと思ってな。」

 

 「慰めるって・・・というか貴方酔ってるでしょ!? それと頭を撫でるのを止めなさい! これじゃあまるで子供だわ!」

 

 「いや~、何気にやってみたが想像以上に髪の触り心地が良くってなぁ・・・」

 

 「なっ・・・なっ・・・なっ・・・」

 

 シスの抗議の声を右から左に受け流し、艶やかな髪に指を通す。

 皇女ということもあって、よく手入れされた髪はいつまでも触っていたくなるほどの滑らかさだ。

 

 「まるで上質な絹みたいに綺麗な髪だな・・・」

 

 「ッ――――――バカーーーー!!!!

 

 ギュンと唸りを上げて、顔を真っ赤に染めたシスの拳が迫ってくる。

 それがその日最後に見た光景だった。

 

 

 

 

 




クジュウリ勢の口調がいまいち分からん。

特にオーゼン。アレは広島弁でいいんだろうか?
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