「あー・・・まだシスに殴られたところがズキズキするぜ・・・」
「ははは・・・姉上がすまない。」
自分とヤシュマは兵を率いて山を登っていた。
なんでも巨鳥『キョロリ』が目撃されたとかでその討伐に協力してほしいと頼まれたからだ。
「まぁ、自分が髪を触ったのが原因だから責めたりはせんが、もう少し加減してほしかったぜ。」
「いや、姉上の髪を触るとはどういう状況だ!?」
「シスが落ち込んじまってな。それで慰めようとして頭を撫でたら殴られた。」
「姉上が落ち込む? はははははっ! 面白い冗談を言うなマシロ。姉上がそんな軟弱なわけないだろう?」
「おまえは自分の姉をなんだと思ってるんだ。」
「そんなもの、クジュウリ一の女傑に決まってるだろう!」
「確かにそれは納得だ。」
雑談しながら目撃情報があった場所まで進む。
キョロリは小さいうちは脅威ではないが、成体になると全長五メートルを超える巨体となり、オルケでさえ丸呑みにしてしまうほどだ。
そして、餌が少なくなる冬場になると狂暴性が増し、人里まで降りてくることもあるため、見つけ次第討伐することになっているらしい。
「ッ! アレは・・・」
何かを見つけたヤシュマが走り出す。追いかけると雪の上に三又に分かれた大きな足跡がついていた。
「こいつはキョロリの足跡か?・・・それにしてはデカ過ぎないか?」
「まさか・・・これは・・・キンカンキョロリ!!」
「あ? キンカン? なんだそりゃ?」
ヤシュマが発した言葉に兵が騒然となる。
自分が聞きなれない言葉に頭を捻っているとヤシュマが説明してくれた。
「キンカンキョロリとは、キョロリの中でも特に大きい個体のことだ。その大きさおよそ二十六尺(8メートル)。
キンカン・・・もしかして金冠ってことか? ここはいつからモンハンの世界になったんだ!・・・いや、よく考えるとガウンジとかモンスターっぽいのが結構いるな。そうか、モンハン世界は未来だったのか・・・
そんな馬鹿なことを考えているとヤシュマ達が耳を忙しなく動かし、周囲を警戒しながら武器に手をかけた。
自分も気を引き締め、感覚を研ぎ澄ますと背後の崖の上に巨大な気配を感じた。
「全員散開!! 崖の上だ!!」
自分の声に反応して、ヤシュマ達がその場から退避する。すると大きな音と共に巨大な影が落ちてきた。
「キュロロロロロロロロ・・・・・・ギョアアアアア!!!」
現れたのは、極彩色に彩られて怪鳥。その足は木の幹のように太く、爪はガウンジの牙のように鋭い。そして、全てを丸呑みにする巨大なクチバシを打ち鳴らし、耳を塞がなければならないほどの大きな雄叫びを上げた。
「ッ! うろたえるな! 屈強なるクジュウリ兵の力を見せつけよ!!」
ヤシュマの号令で、ひるんでいた兵たちが次々と矢を射かける。だが、キョロリがその巨大な翼を羽ばたかせるとあっさり吹き飛ばされ、矢を射かけた兵士まで飛ばされる始末。
「おいおい・・・規格外過ぎるだろう・・・」
そんな様子に自分はすぐに桜花を発動させて動きを封じる。
キョロリはそれを振り払おうともがくが、その隙を見逃す自分達ではない。
「ヤシュマ! 合わせろ!!」
「応!!」
同時に巨体を支える足に攻撃を加える。
あまりに太いその足を切り落とすことまではできなかったが、拘束から逃れようともがいていたキョロリは堪らず転倒。そこにクジュウリ兵が蟻のように群がり、槍を突き立てていく。
「よし! これなら倒せそうだな。」
「・・・いやまだだ! おまえらすぐに離れろ!!」
自分がそう叫ぶと同時にキョロリが激しく暴れ出し、群がっていた兵を吹き飛ばした挙句、拘束していた蔦まで引きちぎった。
「ギュオォォォォォォ!!!!」
起き上がったキョロリの瞳は真っ赤に染まり、躰には
「これは・・・拙いな・・・」
「ああ、完全にキレてる上に
怒り狂ったキョロリが翼を広げながらこちらに突進してくる。
自分達はそれを躱すが、キョロリはすぐに方向転換してヤシュマに連続でついばみ攻撃を仕掛けてきた。
「くっ!!」
ヤシュマはその攻撃をなんとか受け流しているが、キョロリの猛攻は止まることなく続けられる。
「ったく、張り切りすぎだろあのキョロリ・・・おい! 態勢を立て直した奴から矢を射かけろ!! ヤシュマに当てるなよ!」
指示を受けたクッジュウリ兵がキョロリに矢を射かける。ヤシュマに夢中になっていたキョロリはそれを全身に浴びるが、
しかし、それを煩わしく思ったキョロリはヤシュマへの攻撃を止め、今度はクジュウリ兵へと標的を変えて突進し始めた。
「お前等! ヤシュマが復帰するまでなんとか持ち堪えろ!・・・そんでヤシュマ、今治癒術かけるから終わるまでに息を整えろよ。」
「はぁ・・・はぁ・・・すまない・・・」
「そこは謝罪じゃなくて感謝を言っとけ。」
「そうだな・・・ありがとう・・・」
自分がヤシュマを回復させている間もキョロリは暴れまわる。対するクジュウリ兵は森の中に身を隠しながらヒットアンドアウェイで攻撃を仕掛けるが、付けられる傷は浅く、決定打を与えられない。
「これでよし・・・ヤシュマ、行けるな?」
「ああ! だが、どうする? このままでは、こちらが先にやられてしまうぞ。」
「大丈夫だ。活性状態はそう長く続かない。それに考えもある。」
「いったいどうするんだ?」
「まずは、自分の方に誘導してくれ。そしたら合図するから、目を塞いでくれ。」
「・・・分かった。任せたぞ。」
頷いたヤシュマが背を向けて暴れているキョロリに高速で躍りかかる。
クジュウリでも屈指の
その隙にヤシュマが手で合図を送るとクジュウリ兵はキョロリを自分がいる方向に誘導するように攻撃を仕掛けていく。
ひるんだところに次々と矢を射かけられたキョロリはたまらず逃げるように自分に向かって走ってきた。
「いくぞヤシュマ!!」
自分は声を上げると同時にキョロリの眼前に向けて瞬間的に『光明』を発動させた。
カッ!!
「ギュアァァァァァ!?」
突然発せられた強力な光にキョロリは視力を奪われ転倒する。その拍子に活性状態も解かれ、自分達の前に無防備な姿を晒す。
「畳みかけろ!!」
号令と共に一斉に攻撃を加えていく。ありったけの矢を叩き込み、槍を突き刺し、剣で切り裂く。
その猛攻に
「やったぞ! あのキンカンキョロリを倒したぞ!!」
「見たか怪物! 我らクジュウリの力を!!」
「今夜は焼き鳥だーーーー!!」
動かなくなったキョロリの周りに兵たちが集まり、勝鬨を上げる。
ヤシュマもその輪に加わり、兵を労い喜びを分かち合っていた。
「ふぅ・・・予想外のデカさに驚いたが、なんとかなって良かったぜ。」
額の汗を拭いながら安堵の息を吐く。
今回は協力という形だったので、戦いは主にヤシュマ達に任せたが、誰一人死なずに終わって本当に良かった。
喜び合う彼らの姿を自分は少し離れた場所から眺める。
自分が力を貸したとはいえ、彼らが自分たちの力で勝ち取った勝利だ。喜びも
そんな彼らを誇らしく思いながら、そろそろ皇都に戻る準備をしようと言おうとして気が付いた。
死んだはずのキョロリの目が動いたことに・・・
突然起き上がったキョロリがヤシュマに向かって巨大なくちばしを広げる。
完全に油断していたヤシュマ達は誰一人動くことが出来ず、その光景を唖然と見つめていた。
ヤシュマにはその瞬間がとてもゆっくりに感じられた。
そして、頭を巡る走馬燈に死を覚悟した瞬間、キョロリの巨大な首が消え去り、代わりに大量の血が噴き出した。
「・・・え?」
キョロリの血を頭から被り唖然とするヤシュマ。兵たちも同様に血を浴びながら、首が無くなったキョロリを信じられないといった様子で眺めていた。
ドスンと音を立ててキョロリの首が落ちてくる。そして、それを合図にするかのようにキョロリの躰もゆっくりと倒れ伏した。
その大きな音に我に返った彼らが攻撃が放たれたと思しき場所に目を向けると振りきった刀を鞘に納めるマシロの姿があった。
恐るべき怪物は旅の呪術師の手によって今度こそ打ち倒されたのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
キンカンキョロリの亡骸と共に皇都に帰還すると民の大歓声に迎えられた。
民は血塗れのヤシュマ達と小山程あるキョロリに驚きながらも尊敬の眼差しを向け、彼らを称えた。
「うはははははは!! よくぞキンカンキョロリを打ち倒した! ワレ達はクジュウリの誇りじゃあ! そして、マシロ殿! 貴殿の御蔭で兵だけでなく息子も命拾いした。ほんにありがとうのぅ!」
そして、豪快な笑いと共に自分達を褒めそやす、この恰幅が良く、髭を三つ編みにした初老の男こそクジュウリの
彼は先に戻った兵から報告を受け、巨鳥を討伐した勇者達を迎えるべく、自ら都の正門まで出向いてきたのだ。
その後、血塗れになったヤシュマ達が身体を清め終えると都を上げての大宴会となった。
自分が切り落としたキョロリの首は祭壇に飾られ、肉は解体されて民に振舞われた。
その筋肉質でありながら、しっかり脂を蓄えたキョロリの肉は思ったよりも柔らかく、噛みしめる度にうまみが口中に広がり、それを食べた者は感嘆の声を上げるほどの美味であった。
そして、民が宴を楽しむ中、自分は今回の戦い最大の功労者として広場に設けられた壇上にオーゼンと共に座らされていた。
本当なら好き勝手に飲みたかったんだが、
「いやー! 大層な術師と聞いとったが、まさか剣の腕まで一流とはのぅ! どうじゃあ? このままクジュウリに仕えんか?」
「いえ、自分は故あって旅をしている身。折角の申し出ではございますが、それをお受けするわけにはいきませぬ。」
酒を飲んで上機嫌なオーゼンにやんわり断りを入れる。
自分はタタリを浄化しなければならないし、何より忠誠を誓った相手がいたはずなのだ。過去の世界とはいえ、彼女を差し置いて誰かに仕える気はさらさらなかった。
「そこをなんとか! おまさん程の漢なら領地を任せてもええ! 今ならシスも付けるけぇ、どうかクジュウリに・・・」
「何馬鹿なことおっしゃってるのお父様!!」
自分に掴みかかる勢いで勧誘してくるオーゼンが突然吹き飛ぶ。唖然としてその下手人を見るとボロ雑巾と化したヤシュマを引きずりながら得物の番傘を振りきったシスの姿があった。
「なにすんじゃあシス! こりゃおまんのためでもあるんじゃぞ!!」
「なにが私のためですか! お父様はただ私をさっさと嫁がせたいだけでしょう! しかもヤシュマも一緒になってくだらない企みをして! 少し反省なさい!!」
そう言うと手にしたヤシュマを思いっきり振りかぶりオーゼンへと投げつけた。
そして、悲鳴を上げるボロ雑巾を顔面で受け止めたオーゼンは諸共吹き飛ばされ、目を回して気絶した。
しかもシスの部下が気絶した彼らを簀巻きにして木に吊るそうとしている。
「OH・・・JOKETSU・・・」
あまりな出来事に目元を押さえながら天を仰ぎ見る。
なにやら企んでいたオーゼンとヤシュマを庇う気はないが、その扱いの酷さに目頭が熱くなった。
「ホント! お父様と愚弟には困ったものだわ!!」
プリプリと怒りながら自分の隣に座ったシスは、軽蔑の眼差しで吊るされるオーゼン達を睨みつける。
彼らの企みが余程気に入らなかったのだろう。このままでは彼らをサンドバッグにスパーリングを始める勢いだ。
「まぁまぁ、あいつらが何を企んでいたのかは知らんが、せっかくの宴でそうカッカなさんな。」
「う・・・それもそうね・・・」
自分の言葉に我に返ったシスはバツが悪そうにするが、すぐに顔をほんのり赤くしながら、ちらちらとこちらをうかがい始めた。
「うん? どうしたんだシス?」
「え!? な、なんでもないわ! それより今日は暑いわね!!」
「いや、むしろ寒いと思うんだが・・・大丈夫か? 顔が赤いぞ? もしかして熱があるんじゃないか?」
なにやら狼狽えているシスの顔が更に赤くなる。その様子に心配になり熱を測ろうと額に手を伸ばすが、彼女は慌てて立ち上がると、壇上の下に居た少女を呼び寄せた。
「マ、マシロ! この
「はい、お姉さま。」
シスに呼ばれてやってきたのは、
「初めまして、マシロ様。わたしはヤシュマお兄さまとシスお姉さまの妹でルルティエと言います。今日はお兄さま達を助けていただきありがとうございました。」
「お・・・おう。どういたしまして・・・」
その少女を目にした瞬間、強い既視感に襲われた。
そのことに思わず彼女をジッと見つめてしまうが、すぐにその既視感は治まってしまった。
「あ・・・あの・・・どうかなさいましたか?」
「ああ、いや・・・随分と可愛らしいお姫様だったんで見惚れちまったんだ。」
「え!? そ・・・そんな・・・恥ずかしいです・・・」
誤魔化す様にそう言うとルルティエは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
どうやらかなり恥ずかしがり屋のようだ。
自分は、ハハハ・・・と笑いながら頭を掻き、先ほどの既視感について考える。
もしかして、彼女は過去の自分と関りがあったのだろうか? だが、彼女の姉弟達に会った時にはあの既視感は感じなかった。もし彼女と深い関わりがあったなら、シス達にも既視感を感じていたはずだ。ということは、彼女自身ではなく、彼女とよく似た人物と知り合いだったのだろうか・・・
「むー・・・」
自分の過去の人間関係に思いを馳せているとなにやら唸るような声が聞こえてきた。
目線を横にズラすとそこには頬を膨らませたシスがジト目でこちらを睨んでいた。
「ん? どうしたんだシス?
「違います! どこかの誰かさんがルルティエを毒牙にかけようとしているから怒ってるだけです!」
「お・・・お姉さま!?」
「おいおい毒牙って・・・自分はただ褒めただけだろう?」
「・・・もしかして、女の子にはみんなそうするの? 私にもあんなことしたし・・・やっぱり貴方って破廉恥なのね!!」
「こらこらこらこらぁ!! 妹さんが誤解するようなこと言うんじゃない!」
「なによホントのことじゃない!!」
「あ・・・あの・・・お姉さま?・・・マシロ様?・・・」
口喧嘩を始めた二人の間でルルティエがそれを止めようとワタワタするが、気の弱い彼女には間に割って入ることもできない。そうしている間にも二人はヒートアップしていき、いよいよ泣いてしまいそうになった時、彼女は友達の存在を思い出した。自分の大切な友達である『あの子』ならば二人を止めてくれると・・・
「お願いココポっ!!」
ルルティエの声に応えるように巨大な影が壇上に飛び上がる。そしてそのまま鳴き声を上げると喧嘩している二人にのしかかった。
「ココココココココ・・・!!!」
「な!? なんだぁ!?」
「きゃっ!? こ、これはココポ!? ちょっと止めなさいココポ! おどきなさい!!」
抱き合うように倒れ込んだ二人にのしかかるココポと呼ばれた巨大なホロロン鳥。
本来ヒトの膝丈ほどしかないその鳥は、
「なんなんだこのデカいホロロン鳥は!? 今度はキンカンホロロン鳥かぁ!?」
「このコはルルティエの飼っているココポよ! って、どこ触ってるの!? 止めなさい! そこはっ・・・!」
「うぇ!? 悪い、すぐに退ける・・・って、こいつのせいでピクリとも動けん!?」
「ちょ、ちょっと! そんなにモゾモゾ動かないでよヘンタイ!」
「んなこと言われたって・・・誰かこいつをなんとかしてくれぇ!!」
「あぁ!? ごめんなさい! ほらココポ、もういいからお姉さま達から離れて!」
「ポゥ~♪」
ようやく自分達の状況に気が付いたルルティエがココポに退けるように言うが、とうのココポはなにやらご機嫌な様子で動く気配が無い。
「もうココポ、退けて!」
ルルティエが懸命にココポを押すがびくともしない。それどころか遊んで貰っていると思ったのか躰を揺すりはじめる。
「ぐえぇ!? 中身が出るっ!?」
「んっ・・・あっ・・・だめぇ・・・」
「うんしょっ! うんしょっ!」
「クルルルル~♪」
巨大な白黒饅頭に潰された男女とそれを退けようとする少女というおかしな光景は、騒ぎを聞きつけたクジュウリ兵に助けられるまで続いたのだった。
ルルティエの腐設定はヒロイン度を下げてクオンを上げる為な気がする。
追記
感想で『ハクがモンハンを知っているのが変』との指摘が会ったので捕捉説明
まず夢幻演武での話ですが、兄貴が化石ゲー好きという設定があり、ドラクエの『おお ○○○○! しんでしまうとは なにごとだ!』というネタをやっていたことから、ハク達が生きていた時代にも我々の知っているゲームが残っていたと思われます。
更にヤムマキリがガウンジの卵を盗むイベントが明らかにモンハンパロでした。
この事からハクがモンハンを知っていてもおかしくはないと考えています。
というか、うたわれるものは、元々ネタ満載なので、この作品でネタや作品名が出てきても、ハク達の時代にも残っていて知っていたと思ってください。