この黒猫に祝福を!   作:双剣士

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彼らの冒険に仲間を!

 カズマとアクアが冒険者になって数日が経過していた。

その間、せめて借金返済、そして生活費くらいは自分たちで稼がねば!と彼らは日々汗水たらし頑張った。

それはもう、土木工事に掃除雑用なんのその……。

 

「……ってちっがぁうー!!!俺が求めてた冒険者は、こんなのじゃねぇよ!?」

 

 ワクワクする高揚感、心強い仲間との連帯感、見たこともない世界に思いを馳せていた彼は、この数日でそれがぶち壊しになっていることを自覚し叫んでいた。

すっかり肉体労働とこの世界のシュワシュワ(おいしいじゅーす)、そして優しい街の人にほだされていたが、彼が求めていたのはこんな連帯感ではない。

 

「なによ、うっさいわねー。仕方ないでしょ?カズマが貧弱なんだから」

「うっせぇ。お前だって碌なことしねぇダ女神じゃねぇか!せっかく稼いだ金を散財しやがって!!」

「なによぉ!私女神よ!?むしろ足りないくらいでしょ!?敬ってよ、もっと傅いてよ!!」

「やかましいわ!!」

 

 ギャーギャーと騒ぎ出す彼らだが、こんな光景もすでに日常として扱われる程この街に馴染んでしまっていた。ちっとも嬉しくないかもしれないが、カズマは異世界でうまいこと生きていた。

毎日働き、その後ギルドで飲み食いをし、次の日にはほぼすっからかんになった財布を憂いて働く……。

 

「……このままじゃダメだ。仲間を募集するぞ!」

 

 この時の彼の決心は決して間違えていない。

彼が冒険者らしいことが出来ないのは明らかに力不足と人手不足が原因だからだ。

ただ、唯一惜しかったことがある。

 

 そう、応募要項を書いたのがアクアだということだ。

 

 

***

 

 

 とあるクエストで街を離れていたキリカは、数日ぶりにアクセルの家へと帰った。

この期間ずっとモンスターを一人で狩り続けてそれなりに疲れており、昼間から寝ようかなぁなんて考えていた彼女だったが、家に入った瞬間そんな考えが消えうせた。

 

「………えっと、カズマ?」

「はい、カズマです……」

 

 カズマは緑色のジャージという独特な衣服ではなく、身軽な軽装に緑色の肩にかけるタイプのマントを羽織っていた。

これなら冒険者だと言えるだろうが、彼の意気消沈っぷりが半端ではない。

おかしい、冒険者らしい装備が整ってきたのに微塵も喜んでいない。

 

「ど、どうしたの?」

「うぅ……聞いてくれよキリカぁぁぁ!!」

 

 泣き付かれてしまい、流石にこれを放置することが出来るキリカでもない。

仕方なく彼の話を聞いてみることにした。

 

「俺、オレ、パーティ組んだんだけどさぁ……メンバーが、メンバーが酷いんだ!!」

「えっと、ひどいって全員冒険者、とか?」

「いや、アークウィザードとクルセイダー……」

「それ上級職じゃ……?」

「うぅ……それがさぁ」

 

 それから彼の愚痴というか泣き言というか、キリカがいない僅か数日に起こったことをそれはもう詳しく教えてくれた。

凄い才能を持っているのに爆裂魔法しか覚えず、使おうとせず、しかも一日一発使うと倒れるアークウィザード。

確かに頑丈なんだけど、攻撃はまず当たらない。しかも攻撃を受けることに悦びを覚えている超ドMクルセイダー。

そして止めにアクアがいつも通り不運な上に碌なことをしない散財駄女神だ、と。

 

「この間キャベツ狩りがあったんだけど、ダクネスはデコイのスキル使ってまでキャベツの猛攻を受けに行くし、めぐみんは爆裂魔法でぶち抜くし……ダクネス巻き込まれても無事だし……駄女神に至ってはなぜか全部レタスで俺がツケを払うことになるし……」

「レ、レタス?というか、爆裂魔法に巻き込まれても無事って、すごいね」

 

 話を聞いていると、笑っていいのか感心していいのかよく分からない印象を受ける。

というか、何気に本当凄いと思うのだが。爆裂魔法って本当に強力で鎧を着ていようがほぼ無意味のはずなんだけど……。

 

「ある意味凄いよ?でも、俺が欲しかったのはもっとまともな奴なんだよ!こんな色物イヤだぁぁああああ!!!」

「はいはい、よしよし」

 

 事の発端は応募要項に上級職のみという条件を付けたせいで、そういう色物……もとい、訳あり冒険者が集まってしまったらしい。

暫く慰めていると、少し落ち着いたのか話が違う方向へと進んだ。

 

「ぐすっ……そういえば、キリカはどこ行ってたんだ?」

「え?あぁ、ボクかい?ちょっと討伐系のクエストを数件はしごして来たんだ」

「と、討伐クエストを……はしご?」

 

 一件こなすことすら文字通り命がけのカズマには到底理解できない言葉が出てきた。

というか、クエストをはしごなんて聞いたことがないのだが?

 

「もしかして、いやもしかしなくてもキリカのとこって凄腕パーティーなのか?」

「ぇっと、ボクはソロだよ?」

「へ?」

「あ、アハハ……」

 

 最早白くなってきたカズマを見てなんと言えばいいのかわからず、とりあえず笑っておくことに。

 

「キリカ、すごい強いんだな……」

「そんな凄くないよ。カズマだって強くなれるって、ほら元気出して?」

「……というか、キリカ」

「ん?なに?」

「ソロなら、ぜひうちのパーティーに入ってくれないか」

「え?」

 

 真剣な表情のカズマがずずいっと顔を近づけてくる。

両手を握られており、これは逃げられない。

 

「いや、足を引っ張るのは重々承知なんだが、正直このままだとまずい。何がまずいって碌な収入が入りそうにない……!」

「あ、アハハ」

 

 否定してあげたいが、日頃の散財っぷりから否定できない。収入が入ってもすぐ使い切ってしまう光景がありありと思い浮かべられる。

 

「ずっととは言わない。いや、出来れば正式加入してほしいが、うちみたいなところに入りたがるようなもの好きいないだろうしな!」

「そこまで言わなくても……」

「事実だ……だから、せめて俺たちがまともにクエストをこなせるようになるまで、一緒に行動してくださいお願いします!!!」

「えと、えっと……」

 

 ついに土下座までしだしたカズマ。

どう断ろうか、と考えていたが……。

 

「頼むッ!」

「――」

 

 必死なカズマのその姿に、何だか昔見た誰かの面影を感じて……。

 

「はぁ。分かった、これも縁ってことで、お手伝いするね」

「あ、ありがとぉぉー!!」

「はいはい。もぉ、しょうがないんだから」

 

 それはカズマに言ったのか、それとも自分に向けたのか……わからないが、こうしてカズマたちのパーティーに仲間入りすることになったキリカだった。

 

 

***

 

「と、いうわけで今日から面倒を見てもらうことになった」

「えっと、よろしく?」

「キリカなら大歓迎よ!」

「「………」」

 

 なぜかいきなり呆然としているダクネスとめぐみん。

彼女たちはカズマの襟首を掴むと、少し離れた場所へ連れて行った。

 

「ちょ、なんだよいきなり!?」

「か、カカカズマ、貴方どうやってあのキリカさんを引き込んだのですか!?」

「は?いや、ちょっと頼み込んで。ていうか、キリカってやっぱ有名なのか?」

「あぁ。凄腕の剣士だ。ちょっと特殊なスキルを使うことから、《黒猫》という二つ名を持っている」

「ふ、二つ名……」

 

 すげぇと感心するが、その二つ名を言ったダクネス自身がちょっと表情を曇らせた。

 

「ただ、最近は少し嫌な使い方をされていてな」

「え?どんな?」

「不吉の証、だそうだ」

「はぁ?あんないい人が、不吉ぅ?」

「色々あったんだ。詳しくは私からあまり言えん……ただ、彼女はパーティーに入ろうとしないことで有名だ。ソロで戦果を挙げ続けているから、誰も文句も注意も出来ない凄腕だぞ」

「マジかよ……てか、もう大体予想付いたわ」

 

 不吉の黒猫がパーティーを作らず、一人で日々を過ごす理由。

あの優しい性格から詳しいことはともかく、大方の予想はカズマの脳裏に浮かんでいた。

彼はどこぞのラノベヒーローのような鈍感ではない。知力は普通だし、現代社会に汚染されたダメ人間だが、それなりに察しがよくないとこの世界では生きていけない。

 

「ともかく、碌なクエストをクリア出来ない俺たちを見てくれるんだ。普通に接してやってくれ」

「……まぁ、彼女がいるなら問題ないだろう」

「はい。実力は大陸に轟いていますから」

「……マジでそんなにすごいの?」

「「あぁ/はい」」

 

 揃って首肯する二人。

 

「俺と同い年に見えるんだけど……」

「たしか15歳と聞いてますよ?」

「年下!?」

 

 思わず背後のキリカを振り向いて凝視してしまう。

アクアにじゃれつかれている彼女が年下で凄腕の冒険者……。

 

(もう、魔王とかキリカに任せりゃいいんじゃね?)

 

 思ったそれは、カズマの最後の最後に残っていたプライドっぽいものが言うことを否定したため、放たれることはなかった。

 

「ところでカズマ」

「ん?なんだよめぐみん」

「最近、魔王幹部が街の近くに住み着いたらしく、弱いモンスターが隠れてしまって高難易度クエストしかないそうですが、どうしますか?」

「え」

 

 初っ端から躓く彼らの前途は、多難である。

 

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