この黒猫に祝福を!   作:双剣士

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凡人の彼にスキルを!

 流石に高難易度クエストに連れていくわけにはいかず、かといって何もしないわけにはいかない。

アクアはツケを払うためにバイトにでかけ、ダクネスは一時的に実家へと帰っていった。

そして、めぐみんは爆裂魔法を撃ちたがり、カズマとキリカを連れて離れの城の廃墟へエクスプロージョンをする事が日課になっていた。

 

「まん、ぞく……!」

「お疲れ様」

「よくもまぁ毎日毎日飽きないな」

「まぁそう言わないで上げようよ。それに、スキルを使うことは練習にもなるしね」

「練習?ただ爆裂してるだけじゃないのか?」

 

 何もしなければ体が鈍るのと同じように、スキルだって使い慣れていた方がいい。

威力自体はレベル上げで上げた方がいいが、爆発の規模を操れるようになればこれから有利になるだろう。

 

「もしあの爆発の威力を半径一メートルに絞り込むとどうなると思う?」

「恐ろしいこと聞くな……文字通り消えるだろ」

「その通り。まぁ極端な例えだけどね……そうだ、カズマ今剣持ってる?」

「え、あ、あぁ。モンスターもいないのに何するんだ?」

 

 携えている2本のうち1本の剣を取り出したキリカは、あっけらかんと言った。

 

「ん、ちょっとボクと斬りあおうか」

「は?……はぁあああ!?」

 

 職業としてもレベルとしても相手にならない。

ボス級に名前だけ付けたレベル1で初期装備の主人公が相手になるはずがない。

 

「勝負になるわけないだろ!?」

「勝負しようってわけじゃないよ。格上相手に挑むだけでも経験になるってこと」

「あ、あぁなるほど。パワーレベリングみたいなもんか」

「そういうこと。それに、ポイントが足りなくても今のうちに使えそうなスキルを教えておけば、好きな時に覚えられるしね」

「め、女神だ……」

「大げさだなぁ」

 

 カズマの言葉に照れた笑みを浮かべるキリカ。

そんな表情も可愛らしく、年下だと知ってからはよりいっそう思ってしまう。

 

「それじゃ、使えそうなスキルを教えるから、斬りかかってきてみて」

「あ、あぁ!」

 

 この日から、めぐみんの爆裂魔法の後にカズマの剣の鍛錬が加えられることとなった。

 

 

***

 

 

「《初級魔法》に、《スティール》《気配察知》に《潜伏》《千里眼》……それにキリカから教わった《見切り》、《魔力付与》に《魔力放出》……!」

 

 盗賊のクリスという少女や、キリカに教わったスキルを見て嬉しがるカズマ。

ようやっと冒険者らしいスキルを手に入れることが出来て、異世界に来たと今更実感できているのだ。

 

「ちょっと体痛いけど、レベルも順調に上がってるし……っていうか、俺が斬りかかって一方的に弾かれるだけなのにレベルが上がるってどんだけ差があるんだよ」

 

 もちろん最近は弾かれるだけでは上がらなくなってきたため、カズマより少し素早い動きに調節して斬りあいっぽくしてくれるようになった。

握りが甘いとか、逆に力が入りすぎているとか色々指摘は多いが、少なくともレベルだけじゃなくカズマ個人の技術も上がっている自覚があり、喜びはさらに大きいものになっていた。

 

「……にしても、話してるとやっぱ転生者じゃないよなぁ。天然チート、いや公式バグ?」

 

 あまりにも強すぎるので、一時は転生者かと疑ったのだが、日本特有のネタをフッても無反応か戸惑うだけ。

ちょっとアクアに聞いてみたが、普通にこの世界に生きる人らしい。

あとはアクアの予想だが、世知辛くあまり転生したがらないこの世界では珍しく輪廻転生を繰り返しているのだろう、とのことだった。

そういう風に留まってくれる人は運命の力が強くなっていったり、少しだけだがちょっとした加護があったりするのだとか。

 

「まぁなんでもいいや。今日も頑張るかねー」

 

 今日も今日とて爆裂と鍛錬だと気合を入れていると、何やら警報が鳴り響いた。

 

「緊急!緊急!全冒険者は装備を整え、正門前へ集まってください!!」

「……緊急?」

 

 なんだ一体と耳を澄ませれば、なぜか魔王幹部が現れたらしい。

ギルドからの召集のため大人しく応じると、確かにそこには首なしの馬に跨る黒い鎧の男がいた。脇に自分の頭を抱え込んでいる。少しシュールだ。

 

「あれは、強大な力を持つアンデットモンスターのデュラハンか!」

「え、それやばい奴じゃ」

「ああ。やばいぞ、死人が出る」

 

 ダクネスの言葉に慄いていると、デュラハンは声高らかに用件を述べた。

 

「貴様らに問う……毎日毎日俺の城に爆裂魔法を撃ち込んでくる大馬鹿者は、一体どこの誰だァアアアアア!!!!!」

 

 あ、やっべ思いっきり心当たりあるやつだコレ。

思わず近くにいためぐみんをみる。めぐみんは目をそらしたが、爆裂魔法を使える上に毎日撃つようなのはこの街で彼女くらいだろう。

街の人全員の視線を浴び、観念したように前へ出た。

 

「貴様か!ほんと何なの、なんでこんな陰湿な嫌がらせするの?駆け出しばかりだからと無視しておけばポンポン撃ち込んで、頭おかしいんじゃないのか?!」

「失礼な!……我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法使い!」

「めぐ……あぁ、いかれた名前の多い」

「私の名に文句があるなら聞こうじゃないか!」

 

 文句というかツッコミというか……まぁ今は置いといて。

 

「まぁいい。今日は警告に来たのだ。俺は調査のためあそこに滞在している。何もしなければこちらも手出しはせん。お前も爆裂魔法を使うな、いいな?」

「無理です。紅魔族は一日一回爆裂魔法を撃たないと死にます」

「なに、そうなのか――って嘘つけ?!そんな話聞いたことないぞ!」

 

 なんでこんなにさらっと嘘をつけるのだろうか。

今一瞬デュラハン信じかけていたぞ。

 

(というか、幹部っていう割には対話しようとするし、何もしなければ手出ししないってんならどうにか話を飲んだ方がいいんじゃないか?)

 

 カズマが考えているとき、デュラハンがゆっくり手を挙げ、めぐみんへ指をさした。

 

「もういい、迷惑行為を止めないというならこちらも実力行使するだけだ」

 

 騎士の手に黒い力が集まっていく。

それは、めぐみんへ放たれる――直前、手が真上に弾かれた。

力は上空へ飛んでいき、霧散した。

 

「――ほぅ?」

「………」

「って、キリカ?!アイツ何してんだ!?」

 

 2本の剣を構えたキリカが、無言でデュラハンの目の前に立ち塞がった。

小柄な黒い剣士と馬に跨った大柄の黒い騎士、生者と死者、似ているようで相反する二人の戦いが勃発しようとしていた。

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