この黒猫に祝福を!   作:双剣士

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この対決に助力を!

 剣士と騎士が無言で構え、互いに衝突しそうになったその時だった。

 

「ちょっと待ってもらおうか」

「ん?今度はなんだ?」

 

 現れたのは茶髪で少し派手目の鎧をまとった青年。

一本の豪華な剣を所持しており、堂々と名乗りを上げた。

 

「僕は御剣響也。魔剣グラムを女神より与えられた、勇者だ!」

「ほぉ……」

「お嬢さん、ここは僕に任せてキミは下がるんだ」

「………」

 

 魔剣を取り出し構える青年。

ジッと下から上まで観察したキリカは、ジト目になった。

 

(何この人……弱い(・・))

 

 職業はきっと特殊なものなのだろう。魔剣を所持するような人だ、きっと随力はある。

ただ、構えが中途半端だ。剣を持ち慣れてはいるが、あんな堂々と真正面に構えていてはフェイントに引っかかる。

仮にフェイントに反応出来るだけの反射神経があったとして、それだけでは凌げるだろうが勝てない。

 

(ただ正義感はある。本物かは分からないけど、レベルの分強さはあるはず)

 

 なら巻き込んでも(・・・・・・)死なないだろうと判断し、改めて構える。

キリカの構えは少し独特だ。半身になって2本の剣を前後に軽く持つ。

片手剣を2本所有している彼女ならではだろう。

 

「お、おい。話を聞いていたのか?」

「戦えるから問題ない。それより――」

「え」

 

 ガキィィィン……と鉄がぶつかり合う音が響いた。

響也の目線がキリカへ向いた瞬間、デュラハンが響也の死角に入り斬りかかったのだ。

それをキリカが防いだ音であり、響也は予想通りギリギリ反応していたらしく、半瞬遅れで一歩下がっていた。

 

「気を抜かないで、アレは強いわ」

「あ、あぁ」

 

 この時、きっとカズマだけが気づいていた。

冷静で冷徹な言葉遣い。闘気と殺気が混ざったような切り替え。

何より、響也への気の使い方。

 

「真正面に構えないで、敵から攻撃される的を減らすように斜めに立つの」

「は、はい!」

 

 何だか、鍛錬をしている時のキリカになっている、と。

もしかしなくとも彼女は響也を使えるようにしようとしていた。

 

「ハッ、剣を持っていながら扱い方を知らないか!笑わせる!!」

「ぐっ、この」

 

 魔剣の力を開放し、遠距離を切り裂ける透明の刃を放った。

最大出力なら魔力の巨大な斬撃を放てるが、ほぼゼロ距離の斬り合いとなるとタメ(・・)る余裕がない。

それでも余裕で鎧程度は切裂くはずだったが、それはデュラハンの振るう大剣によって弾かれてしまう。

 

「なに!?」

「そんなに驚くことではないだろ?俺は魔王様から加護を受けている。生半可な攻撃が効くと思っては――」

「疾ッ」

 

 ボッとロケット噴射のように喋っているデュラハンに突っ込んでいく。

一瞬で遠かった間合いを詰めた彼女の鋭い突きがデュラハンを襲った。

 

「うぉお!?」

 

 焦ったように身をねじり躱した。瞬時にもう片方の剣が振るわれたが、それは大剣によって防がれる。

 元から巨大な力を持つ魔剣とは違う。あれは魔力を付与……それも尋常じゃない密度であることを感じさせる威圧感があった。

勘ではあるが、アレを真正面から受けては鎧は意味をなさないだろう。

 

「惜しい……」

「小娘、貴様強いな。だが、それだけならば俺には届かん!!」

 

 2対1であるというのに、デュラハンの優勢だった。

カズマからすると悪夢のような光景だ。魔剣というチートを持ち、恐らくスキルの効果で色々補正が掛かっているはずの転生者がまるで子供の様にあしらわれている。

 

「嘘だろ、響也さんでも無理なのかよ」

「あの黒猫も一緒なのよ、きっと大丈夫!頑張ってー!」

 

 街の人々から応援が上がる。

駆け出しの彼らにはこの戦いに割って入ることなど、出来るはずもない。

 

(何か、何かできることはないか…!)

 

 そんな中、カズマだけは頭の回転を続けていた。

見ているだけなんてじれった過ぎる。自分も何かしなければ。

 

「……――発動》」

 

 そうこうしているうちに、キリカが手札を切った。

ぼそっと呟くと、彼女の頭から猫耳が生えた(・・・・・・・・・)

 

「……は?」

 

 見れば、尾も出ているように見える。

 

「え、アレ何?」

「ん?あぁ、カズマは初めて見るか。いや、私も見たのは初めてだが、あれは彼女の本気だ。魔力を消費するがあれで感覚とバランスを強化しているんだとか」

 

 確かに動きがさっきより機敏になり、相手が動いた時にはその動きを事前に察知していたように対処していた。

アクロバットな動きも混ざり、変幻自在の二刀流になっていた。

 

「………普通に可愛いんだが」

 

 強いのは分かったが、それ以上に似合いすぎる。

なにあれ?反則じゃね?とはその場にいた大半の男性と一部女性の意見である。

 

「ショット」

「ぬぉ!?」

 

 バチッという音がした時には、デュラハンに何かが当たった。

高速でなにかは分からないが、光ったように見える。

 

「今のは?」

「恐らく雷系の魔法だろう。感覚の強化に雷属性が相性がいいらしい。近距離だけだが、自在に放出することが出来ると聞いている」

「へ、へぇ……」

 

 段々デュラハンが押されていくが、決め手に欠けていた。

これで彼女の武器が魔剣だったらよかったのだが、あれはちょっと高い名剣というだけだ。魔力付与されていなければ今頃折れているだろう。

 

「……そうだ、アクア。お前の攻撃なら効くんじゃないか?」

「当たらないと意味ないでしょ」

「それもそうか」

 

 あの戦闘に撃ち込めるだけの命中率がなければ無理だ。

そして、それをアクアに求めるのは酷である。

 

「あとは、何かないか……そうだ、アクア!俺に補助魔法かけてくれ!」

「あんたに?あの二人じゃなくて?」

「いきなり補助されてもテンポが崩れて邪魔になりかねねぇよ。それより、俺に命中率と速力、あとできれば純粋な腕力向上も頼む!」

「要するに全体強化ね。オッケー、でも長い時間持たないわよ?」

「どうせあんなのに割り込めるのなんてできて一瞬だろうよ……それとめぐみん、魔法の準備しとけよ」

「分かってますよ」

 

 カズマに出来ること。

それは、もしかしたらのサポートくらいだろう。

巻き込む爆裂魔法でもなく、当たらないクルセイダーにも出来ない。

偶然鍛錬で剣の扱いを覚えたカズマなら、可能性はなくもない。

 一応、カズマにどうすることも出来ない規模の何かがあった時のためにめぐみんに魔法を準備させておく。

 

「《聖属性付与》――」

「この、小娘お前どれだけ手数がっ」

「《振動付与》、《魔力密度上昇》」

 

 剣が白く輝き、刀身がぼやけるように高速振動し始めた。

 

「あ、あれってもしかして高周波ブレード!?」

「はー、なるほどね。思い付きなのかわからないけど、あの子本当に倒しちゃうんじゃない?」

 

 細かく超振動することで切れ味を増す方法。

カズマの世界では在った技術だが、この世界にはチェーンソーすらない。

魔法が普及している分、どこか科学技術は遅れているのが原因だろう。

 

「なっ」

 

 切裂かれた大剣を見て驚き、その瞬間を狙って響也がデュラハン目掛けて大振りで斬りかかった。

 

「これで―」

「なめるなっ!」

 

 止めを刺そうとした響也の魔剣は、デュラハンを切り裂くことはなかった。

突如現れたアンデットモンスターの大群が壁になったのだ。

 

「召喚魔法か!」

「行け、そいつらを足止めし、ついでに街の奴らを惨殺しろ!」

「そうはさせ……え?」

「は?」

 

 走っていくアンデットたち。目指すは命令通り街の人々……ではなく、われらが女神アクアだった。

 

「なぁんでよぉぉ~~~!!!」

「あー……しんせいなおーらってやつのせいじゃね?っていうかチャンスだ!めぐみん!」

「アクア、そこの岩陰に飛び込んでください!」

「うわぁぁ~~ん!」

 

 アンデットの大群に追われるアクアは全速力で岩陰に飛び込むと、その瞬間めぐみんの爆裂魔法、エクスプロージョンが炸裂した。

アンデットは消滅し、残ったアクアは大泣きしていた。

 

「ヒック、私、悪いことしてないのにぃなんでこんな、こんなぁ~」

「まぁある意味自業自得だな……っと、逃がすか!」

 

 強化されたカズマは、馬に乗ったまま去ろうとしているデュラハンをとらえていた。

 

「なっ見物していた雑魚がなにを!」

「おぉらぁー!」

 

 ボッとキリカの様に(・・・・・・)魔力を噴出し、一気に間合いを詰めた。

振った剣は当たらないが、確かにデュラハンを足止めすることに成功していた。

 

 そして、その()を狙い、デュラハンの背後をとった存在がいた。

黒い髪、黒いコート、白く光る剣……キリカだ。

 

 

「トドメ」

 

 

 その日魔王軍幹部の一人は、少女が静かに振るった一刀により、討ち取られた。

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