ゆるふわ仮面ライダーワールド   作:空飛ぶマネッキー

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街、厨二る(こごえる)

 

「まずは、戦力を集めるぞ。必ず魔王に敵対心を示す兵士や冒険者が存在する……はずだっ」

 

「するはずじゃダメだろ」

 

 太陽の日を程よく遮ってくれる落ち葉の道を歩きながら晴人はボスの話を聞く。

 晴人自身、一応元の世界に戻るために魔王を説得するという事に納得はした。

 

「伊達に魔王の肩書きを持っているだけはある」

 

 ボスの言う話によるとこの森を抜けた先には最初に最弱の魔王が支配する氷の街に辿り着くそうだ。

 そこの酒場で味方を雇うという、なんというゲーム感。気にするだけ無駄だろう。

 

「ふむ、そろそろ景色が変わってきたな」

 

 ボスがそういい森を抜け外を見回すと「おお……」と晴人は感慨深い声を漏らした。

 確かに街並みは全てが水晶のように透き通った氷でできており、氷の街という名が似合う印象だった。

 そして街には冷たい風。

 

「寒っ…………なんでもアリっすねこの世界」

 

「フフフ美しいだろ勇剣ドーよ、だがこの街は魔王のせいで街人の会話が全て厨二っぽくなってしまっているのだ。はやく救わなければ悪化して大変な事になってしまうっ!」

 

「アーソウデスネー」

 

「なんだ、そのどうでも良さそうな返事は……俺が叩き直してやうぉっ!」

 

 晴人はボスの昆虫のような羽をつまみ、無表情のままブンブン振り回した。

 

「やめろっ! やめろっ! 話せばわかる!」

 

 そのまま手を離し、ボスは空でぐるんぐるん回った。

 

「はぁはぁ……この街は寒い、薄着のお前にこれをやろう……」

 

 一瞬、光が現れたその瞬間に肌色のフードのついた外套が現れた。

 

「四次元ポケットみたいすね」

 

「私はタヌキなどではない!」

 

 晴人は無視してスーツの上からその外套を羽織る。この氷一色の街にスーツ一枚じゃ辛いので助かる。

 晴人はこのままボスに氷の街について軽い説明を聞いた。

 氷の料理が上手いそうだ。氷の肉、氷のスープ、ただの冷凍した奴なんじゃとあまり美味しそうには聞こえないが。

 街に近づくほど雪や氷の色が増え、街中に入るときは氷一色で染め上げられた。

 

 氷の煉瓦で作られた建築物に、全体的にこの街の環境に適した白い怪人達や厚着をする人間。この街の怪人は案外温厚なのが多いのだろうか、仲のいい両種族を見るに人間と共存しているように思える。

 

 ふと、あまりジロジロ見ないようにしていたが、逆に一人の人間に向こうから見られた。細くて気弱そうな青年だ。

 

「ああ、もしかして君も観光者? ここ、結構変わってる街だよねー」

 

「結構……確かに、怪人と人間が共存する街は見たことない」

 

「あれ、そっち? 僕が言ってるのはこの街の状況の事だったんだけどな、もしかして遠い国から来たのかな? よかったらインタビューしていい? 僕の名前はコタロウって言うんだけど」

 

 青年は頭を掻いて苦笑いをした。

 どうやらこの世界は全体的に怪人と人間は共存しているのだろうか。

 

「勇剣ドーよ、さっさと行くぞっ」

 

 後ろでボスが痺れを切らしていたのを見た。

 

「はいはいボス」

 

 晴人は申し訳無さげにインタビューを断ることにした。

 

「用があるんだ、インタビューはまた今度って事で」

 

 そのまま去ろうとしたが、青年に呼び止められ。

 

「じゃあ時間があったらまた連絡してくれない? だってこの街の人たち呪いにかかってるのが多くってさ、取材しても何言ってるのかわかんないんだよ、そこの宿泊宿にいるから」

 

 『BODOBODO』という宿泊宿のメモを渡されコタロウはせっせと歩いて行った。

 

「呪いって……厨二っぽくなる奴っすか」

 

「そうだ、この街に長い間滞在するほど悪化するのだ。彼の様子を見るにこの街に来て最近なのかもしれないなっ」

 

 ボスは酒場にまで飛んでいき、晴人はそれをついて行った。

 五分ほど歩いた先に『酒場』と何故か漢字で書かれてあった看板を見たが、さっきもアルファベットで書かれていた看板があったのだ。突っ込むのは足を進めた。

 酒場の中に入ると意外にも変わっていた。

 晴人の予想では店も氷で建築されていたので中身も氷だと思ったが、店内は木製で西部劇にありそうな酒場を連想させられた。

 

 ボスはL字のカウンター席に座り、晴人も隣に座った。

 茶色いマリオのクリボーのようなライダーのマスターが顔を出した。

 

「やぁ、いらっしゃい迷える子羊達よ。今日の店のオススメは暗黒面のブリザードスープが人気だな」

 

「なんだよそのスープ」

 

「食ってみると意外といけるぞっ」

 

 ボスは身体が小さいのでカウンターのテーブルに座り、メニューを手で触れずにめくる。

 

「なら私は極熱筋肉のマグマスープでも……」

 

「って暖かいのがあるのなら先に言ってくださいよ」

 

 そう呆れながらも晴人はボスと同じスープを注文した。

 ボスはスープ以外も何か頼もうとしていたが、突如電波を受信したような反応をした。

 

「ううっ? なんだとっ!」

 

「ボス、どうしたんですか」

 

「勇剣ドー、少し私は席を外す。用事ができたっ」

 

「用事?」

 

「後で説明するっ」

 

 突然、ボスはそう言ってパタパタ飛んで行くがこちらを振り向く。

 

「私のスープを勝手に呑むなよ! 絶対にだ!」

 

「はいはい」

 

 そう言い、ボスが去った後一人になった晴人は暇になったので自分のステータスを見ることにした。

 

 勇者剣士ウィザード レベル3

 HP214 MP 40

 

 スキル 変身50MP 

     ドライバーオン10MP

     コネクト5MP

     ディフェンド5MP

     スモール3MP

 

「おっ、増えてる」

 

 よく見るとスキルにディフェンドとスモールが追加されている。レベルが上がっただろうか、だがそれでも変身には届かない。

 

 晴人が苦い顔をしてる途中、自分のカウンターテーブルの上にはスープが置かれていた。

 

「フッ、心に龍を宿す剣士よ。貴様の顔を見れば歴戦の勇者の一人という事が魔眼を持つ我には理解できる。邪悪なる心の奥底に眠る我の悪魔の魔眼ならな……フフッ」

 

「どうも」

 

 晴人は取り敢えず平然を装いながら返事をしてマスターが調理場に戻ったのを見てポツリと呟いた。

 

「ヤバイなこの街」

 

 街中に彼のような人物がいるのなら正直、魔王をどうにかしないとダメだなと初めて感じた。

 自分もこの街に長いこと滞在するとああなるのかと考えながらスープに目を落とす。

 

 氷の容器の上にはグツグツとマグマのように燃え滾るスープ。辛そうだが温まりそうではある。

 スプーンを手にしてスープを掬おうとした。

 

「あーん……もう一度言ってぇ?」

 

「へへっなんだよ……まぁーた言って欲しいのか? いいぜ……天が呼ぶ、地が呼ぶ人が呼ぶ、悪を倒せと俺を呼ぶ……ヒィーック」

 

 その声を聴いた途端、晴人は即スプーンを聞き慣れた声のする方に投げた。

 理由は少し腹が立ったのもある。

 

 カン。

 

 バチバチっと電気が走る音がした。

 

「なんだぁ……てめぇ……俺様に喧嘩売ってんのか……?」

 

 その声の主はドンドンと晴人に近づいていき、ドンとカウンターテーブルを叩いた。

 

「って……お、お前は……まさか」

 

「そのまさかっすよ、こんなところで何やってんすかストさん」

 

 そう、声の主は晴人の知るストさんだった。

 

 

 

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