ゆるふわ仮面ライダーワールド   作:空飛ぶマネッキー

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店、凍(こわ)れる

「そんな事俺が知るかぁ!」

 

 この世界の事やすべき事を全て話した反応がこれだった。

 

「いやいやいやストさん。このままじゃ元の世界に帰れないんですよ?」

 

「けっ、どうせ俺が帰ったところで誰も俺を必要としねえだろ」

 

 おそらくフラれた事がかなりダメージに来てる、絶対そうだ。

 

「それにここには俺を見てくれる女がいるんだ」

 

 隣に座る女性にコンタクトアイをするストさん。酔っ払ってる事もあってか色々拗らせ過ぎだろ。

 

「俺たちライダー課のみんなだってストさんを必要としてますよ……多分、それにストさん以外に誰が通訳やるんすか」

 

「お前がやれ」

 

「俺、ストさんにまだなんも教わってないすよ」

 

「いいからてめえがやれぇ!」

 

 机をドンドンと叩き今にでも突っかかって来そうな雰囲気だった。

 

「けっ、てめえはコヨミちゃんや大門がいるからそんな事言ってられんだよ……」

 

「ええ……」

 

「コヨミちゃんにフラれても大門がいる、大門にフラれてもコヨミちゃんがいるてめえにんぞに……俺の気持ちわかるわけねぇだろお!?」

 

「いやいや、なんで俺が二股してることになってるんですか」

 

「くそッ、言ってると腹が立ってきやがった……お前なんか二人にフラれちまえ!」

 

 勘違いされてるようだがカチンときた。

 

「ストさん……アンタは『元』奥さんがバルタン星人と付き合ってただけで別れるとか……ハッ、器が小さすぎだろ」

 

「ァァ!? 円○だぞ、東○じゃねぇんだぞぉ!?」

 

「そこが小さい、小さすぎる……権利の一つや二つ、愛でなんとかしてみろって言ってんすよ!」

 

「やんのかテメェ!?」

 

「やっーてやろうじゃないすか!」

 

 晴人とストさんは立ち上がり、お互い肩を掴みいがみ合うが突然、ガシャンとビンが砕け散る音に手が止まった。

 

「隙ありィ! 電ショッォォクゥゥゥ!」

 

『ディフェンド』

 

「熱っ! 何これアチィ! アチイ!」

 

 晴人はディフェンドでストさんの攻撃を防ぎながら割れた方に目をやる。店の酒の棚がポカリと円形の穴を開けていくつかの酒が無駄になってしまっていた。

 

「イーッ!」

 

 店の入り口にどこかで聞いた声がして振り向くと、三体の青い姿をしたショッカー戦闘員がいた。

 そして戦闘員達は六つの氷柱を宙に浮かせていた。まるで生身ならアッサリと貫かれそうほど鋭利な氷柱。

 戦闘員が晴人の方に指を指し、嫌な気がした。

 案の定、氷柱は晴人に向かってくる。

 

「マジかよ……」

 

 弾丸の速度で飛ぶ氷柱を炎の盾で凌ぐ。

 隣のストさんはしゃがんで氷柱を避けた。

 

「うぉっ! なんだよこの状況!」

 

「俺が聞きたいっすよ!」

 

 晴人はウィザーソードガンを取り出しディフェンドからはみ出る氷柱を砕いていく。

 

 店内は案の定大パニックを起こし、客達は逃げる。だがこちらを支援してくれるものもいた。

 ボスの話通り味方を集めるには丁度いい場所だ。

 

「おいウィザード! てめえの恨みに俺も巻き込むんじゃねえ!」

 

 隣でストさんが電気をまとった拳で、文句を言ってくるがそれはこっちのセリフ。

 

「俺だって恨みは……買うことはありますけど命狙われるほどダメな魔法使いはしてませんよ……」

 

「じゃあなんだぐぇっ!」

 

 ストさんが隣で氷柱にぶつかったがマジギレしてるのを見て大丈夫だと安心した。

 すると隣でマスターとは違う人物の茶色いライダーが話しかけてくる。

 

「剣士よあれは、恐るべき悪魔、この街を支配する暗黒の輩の眷属、奴が来るという事はこの街も……」

 

「いや何言ってんのかわかんないんだけど」

 

「ふむ、つまりは……ぐわぁぁぁぁぁぁ!」

 

 茶色いライダーは隣で突き刺さって飛んで行った。

 

「肝心なトコ聞き逃した……」

 

 晴人はさっきのライダーを助けるためディフェンドを盾にしながら後ろに下がり全部ストさんに任せた。

 

「ウィザードっ! てめぇ!」

 

「うっ……私を救済してくれるのか……」

 

 晴人は肩に突き刺さっている氷柱を切り落とし、血が出る傷口に回復薬を塗る。

 

「助けれる人を見捨てるほど人間腐ってないんでね」

 

「ちっ……俺がやるしかねぇか……いいぜぇストレスが溜まってたんだ」

 

 ストさんがバシンとパーの拳にグーを叩き込み、電撃がストさんの周囲にハジけて向かって来る氷柱が全て砕け散る。

 

「頼みますよーストさん」

 

「仕方ねぇな! 観とけよ後輩、先輩が全部持っていってやるぜ……エレクトロファイアー!」

 

 ストさんが両手を擦り合わせて地面に腕を深く突き刺す。

 電撃が地を走る技である。

 晴人もストさんのエレクトロファイアーを間近で見るのは初めてでどういうものかと見ようとした。

 

「やべえ……何も出てこねぇ!」

 

「まさかここでMP切れ……」

 

「ぐぇっ!」

 

 ストさんが氷柱に壁にまで吹っ飛ばされ晴人を守ってくれる味方は今は存在しない。

 

「クッ……」

 

 晴人は武器を持ち怪我人の前から動けないまま氷柱を砕いていく。

 何度も、何度も、何度も雨のように降り注ぐ。

 腕が痺れる、疲れる、少しピンチだなと、この状況を打開する方法を考える。

 方法はある、ストさんの力を借りる事だ。

 

「ストさん!」

 

 晴人はストさんの吹き飛んだ方向に目を向ける。

 

「うぃ~……いい酒だなこれ……」

 

「何酒飲んでんだゴラァ!」

 

 晴人はウィザーソードガンを向けストさんに数発撃つ。

 

「ってオイ何しやがんだ! って前!」

 

「あ……」

 

 しまった、いつものノリでツッコミを入れたせいで氷柱の存在を忘れていた。今更避ける事は少しキツイ。

 せめて、致命傷を避けようと身体を捻ろうとするが……

 

 肌色の布がムチのように氷柱をはたき落した。

 

「えっ」

 

 何が起きたのだと自分の真横に浮かぶ外套を見つめる。ボスがくれた外套が何故が助けてくれたのだ。

 

「流石ファンタジー……」

 晴人は驚きながらも氷柱を剣で切り裂く。

 外套は布の端、つまり腕の部分なんだろうか、端で胸を叩きドンと任せろと言っているようだった。

 

「じゃあ彼を任せた」

 

 浮かぶ外套に怪我人を守ってほしいと命令した。

 外套は怪我人を守ってくれるところかぐるぐる簀巻きにして外に飛んで行った。

 

「案外ボスもまともなプレゼントをしてくれるじゃないの」

 

 晴人は武器を手に敵の近くまで走り出す。

 四人ほどのライダーや怪人が戦闘員二人と戦いを繰り広げている。真ん中の戦闘員が厄介なだけで他の二体はなんとか晴人の邪魔が入らないよう抑えてくれている。

 

 今がチャンスだと、武器を持ち氷柱を破壊しながら走り出す。

 戦闘員との距離が後数メートルになり、晴人は武器で切り裂こうとする。が戦闘員の手に角砂糖くらい小さい氷が握られていた。

 

(なんだ? アレ? ま、でも俺の方が速い)

 

 晴人は戦闘員が異変な行動をしでかす前に剣で縦に切り裂こうとするが小さい氷が横長に巨大化した。

 ソレを見た次の瞬間、晴人の身体は痛みを感じながら空を飛んでいた。

 何があったと一瞬の出来事に記憶を辿る。

 横長になった氷でボディをバットのボールのように殴られたのだった。

 

「ウワー(棒読み)」

 

 晴人は酒を飲んでいたストさんに激突して酒がかかる。

 

「アァ゛!?」

 

「つつ……ストさん、アンタも手伝ってくださいよ……」

 

 晴人はストさんの上で身体が絡まり身動きできずにいた。

 

「重いんだよ! 気色悪りぃ!」とストさんはバンバン背中を叩く。

 

「って……まだ来てますよっ!」

 

 氷柱の攻撃がまだ地を這う蛇のようにこちらに向かって来ているのだった。

 

「だぁーっ! テメェ俺ごと道連れにするつもりか!」

 

「俺だってこんな女々しいカブト虫と心中なんて真っ平すよ!」

 

「後で覚えとけよてめぇ!」

 

 この状況でストさんは両手を擦り合わせる。

 そして床に手を突っ込むと電撃が走り、氷柱が電撃によって破壊されて。

 

「MP残ってたんすか?」

 

「ちげぇよ回復したんだよ、これでなっ」

 

 やっと身体が離れたストさんは酒瓶を手に持ちコルクを親指で弾くように抜く。

 そのままガブガブと飲み出した。

 

「あーそういうことか」

 

 晴人はここを一瞬のゲームの世界として例えて見ることにした。それならまだ理解しやすい。

 

「流石っ、俺……ストさんのことフラれた事を何度も引きずり有給取れないだけでストライキ起こす情けない先輩だと思ってました……流石です!」

 

「おう…………ってそんな風に思ってたのかてめぇこの野郎!」

 

「おっと次来ますよ」

 

 晴人は氷を作り出していく戦闘員に目を向けた。

 相手は1分ほどなら何度でも氷柱を放つことが可能だが、その度に何秒か力を溜める必要があるようだ。

 だがそれを死守する氷が存在する。

 

「ストさんどうします?」

 

 晴人はそういいながら隙だらけの戦闘員に弾丸を放つ。

 そして氷が平べったい盾になりそれを止めた。

 

「けっ、簡単なこった」

 

 ストさんはそういいながら倒れている店のマスターに軽い電気を食らわせ目を覚ませた。

 

「うう……我は何を……? ここはヴァルハラか」

 

「店長、この店保険入ってんだったよな?」

 

 上手く事情が飲み込めてないマスターはコクリと。

 

「ああ、この店は加護されている」

 

「じゃあ任せとけぇぇぇ!」

 

「って投げた!?」

 

 ストさんがマスターをぶん投げて外に放り投げたのと同時に氷柱は放たれる。

 

「けっ、遅えんだよ」

 

 ストさんが手を擦り地に付けた時は既にエレクトロファイアーは放たれていた。

 地が目にも見えない、枝分かれした電撃は一瞬のうちに戦闘員の近くまで走り小さい氷もそれを反応する事はできない。

 

 戦闘員、三体はエレクトロファイアーを喰らい倒れた。

 

 そして爆発した。

 

「「えっ」」

 

 

 

 

 

 晴人はかつてさっきまで店だったものから顔を出す。

 

「もうちょっと手加減してくださいよ」

 

「これでもかなり弱ってる方なんだよ、それに爆発したのは俺じゃねえよ」

 

 氷の街なだけあって爆発の後は氷が溶けるのだと思っていたが溶けることはなく普通に崩れて特別な氷でできてるのだろうか。

 晴人に続き、他の客達も店から顔を出して行く。見る限りちょっと焦げただけで犠牲者はゼロだ。

 

「よしっ、怪我人はいねえな」

 

「被害は酷いっすけどね」

 

 晴人はチラリと別方向を見る。

 

「我の……我の店ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

「酷い被害が出たなっ、勇剣ドー」

 

 晴人の肩にボスが座りボスの発言に同意する。

 

「そうっすね……ってえええ! ボス!」

 

「うおっ、耳元で大きな声を出すなっ」

 

「どこ行ってたんすかこの一大事に」

 

「ハッハッハッ、私は予言で魔王の手下がここを襲撃すると知ってな。いち早く退散しようと……待てっ、その武器を向けるんじゃないっ」

 

「じゃあ敵が来るって言ってくださいよ」

 

「それじゃあレベル上げにならないだろ」

 

 マスターが側に近寄りボスを睨む。

 

「やめろっ、私をそんな目で見るなっ! わかった、わかった直すからやめろっ」

 

 ボスは突然空を飛び、店だった場所の真上に浮かんだ。

 

「エロイムエッサムエロイムエッサム」

 

「悪魔でも召喚する気か」

 

 ボスが呪文を唱え終えると上空から黒い魔法陣が現れ店だった場所をくぐり終えると元の店に戻っていた。

 

「おお……流石精霊」

 

「ふんっ、見たか、コレが俺の力だっ!」

 

 直ったのを見てマスターはボスの前で膝をつき。

 

「か、感謝する精霊様、我の店を修復してくれて……」

 

 掌返しがすごい。けど、まいいか。

 

 さっきの騒ぎで街の人たちが壁を作ろうとしているのを見てこれ以上居座るとこの世界の警察にでも捕まりそうだ。と退散しようとしたが。

 

 ストさんはボスを見て口をポカンと開けている。

 そのままボスの羽を掴み、回し、叩く。

 

「ってボスゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」

 

「何をするっ、私はボスなどではないっ! 精霊ボスだ!」

 

 晴人はふと精霊ボスのことはストさんに説明するのを忘れていたことに気づいた。

 

「あっ、それはつまりかくかくしかじかで」

 

 

 

 

 

「…………という事です」

 

「よしわかった! 俺帰るわ!」

 

「ぬうっ!? そこは普通仲間になるパターンじゃないのか!」

 

「知るかチビボス、俺はこの世界から帰る気ねぇんだよ! 魔王退治なんぞ勝手にやってろ!」

 

「あー色々あって抉られちゃって」

 

「じゃあな! お前らとは二度と会わねえと思うけどよ! マイハニーィ! 待ってろよ今帰るぜ!」

 

 ストさんは後ろ向きで手を振ってずしずしと歩いて行った。

 溜息をしようかと思った時、手に何か握られていた。

 

『エクステンド』

 

 その指輪をベルトにかざした晴人はびよーんとゴムのように伸びた手でストさんの頭を引っ叩いた。

 そしてすぐに戻す。

 

 ストさんは「誰だぁ喧嘩売ってる奴は!」と野次を飛ばしている。

 さてと、気が晴れたし今は宿でも探すか。出来るだけ迷惑をかけずに隠れれるような宿があればいいのだが。

 今夜は野宿かも。

 

「さっきの店は……出禁かもしれんな……いいだろう、私のとっておきの店を紹介してやろう」

 

「今度は頼みますよ、冷たいのより暖かいのを……うん?」

 

 まあ野宿でもなんとかなるだろうと考えた晴人の目の前に銀色のクワガタで菱形を連想させるライダーが立っていた。

 敵か、と構えようとしたが。

 

「今、魔王を倒すと聞いたが……それは本当か?」

 

 ここは答えるべきか。

 

「まあ、うんちょっと事情があってね」

 

「俺も仲間に入れてくれないか?」

 

「…………アンタの名前は?」

 

「ギャレンだ」

 

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