ゆるふわ仮面ライダーワールド   作:空飛ぶマネッキー

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ストさん狙われ(じごうじとく)る

 

「証明……か」

 

 証明と言われて少し悩んだが、相手の立場に立ってみると彼の言うことももっともである。

 つまりは自分達の事を話せばいい。

 晴人はギャレンに話を任せたが、話が長いことを忘れて同じ話を聞かされる事になった。

 そんな中イクサは静かに聞いていたが、1時間を超えた時に。

 

「君たちの事情は大体わかった、だが手を貸すには二つ条件がある」

 

「二つだと……なんだと言うのだっ」

 

「もう少し魔王城に攻め込むのは待ちなさい、そして私の弟子になりなさい」

 

「弟子だとっ!? 私を誰だと思っている! 私は……んがうぐっ! 話せ勇剣……ぐがっ」

 

 晴人はボスの口を抑えたまま話しかける。

 

「わかった、その条件を呑もう。ギャレン、あんたもそれでOK?」

 

「ああ」

 

 仲間が増えるのなら好条件だ。

 弟子になるぐらいならそこまで気にする程でもない。

 するとイクサは嬉しそうに「いいでしょう」と答えた。

 ボスが指を噛んできて痛い。

 

「っ、何するんすかボス」

 

「あの信用ならない男の条件を呑むのかっ!?」

 

「探し当てたのはボスでしょ!」

 

 晴人とボスのやり取りを見ていたイクサは不満そうな声でこちらに放つ。

 

「君達が弟子になる気がないなら、この話はこれでおしまいになる事に」

 

「なるからなるからって、噛まないで下さいよ……!」

 

 ボスはクラッシャーを開けて何度も噛み始める。

 

「聞こえないな、もっと大きな声で弟子にしてくださいと言いなさい」

 

 流石に晴人もこれには困惑してボスを抑える手が緩みそうになった。

 なんでアンタにそれを言わなきゃいけないんだと煽る気満々のセリフが頭に浮かんだが堪える。

 

「弟子に……してください」

 

「もっと大きな声で!」

 

「弟子にしてください!」

 

 半分ヤケクソだった。

 

 

 

 

 

「あいつ変な奴だったな」

 

 全身ローブで体を纏うギャレンがそれを言うかと晴人は思ったが確かに変な奴だった。

 

「ま、今は猫の手も借りたい状況だから仕方ないさ」

 

 戦力的には強いのは確かなのだ。

 レベルも36もあった。

 

「ふんっ、私達だけで魔王レンゲルは倒せるはずだ」

 

 さっきからボスは拗ねているが相手しても面倒なので無視だ。

 今はそれより、ドーナツを食べたい。ギャレンに聞くと似たようなお菓子はあるそうだ。

 名前は……シューティングリングスノー、意味がわからない。

 けどこの街に来てからは気にすることをやめることにした。プレーンシュガーに変わりはないのだ。

 晴人はボスの愚痴が長引きそうだったので逃げるように一人行動をして、氷で作られた出店に顔を出した。

 【スノーポアトリン】と書かれたドーナツ屋だ。

 名前を見て、嫌な記憶が蘇りそうになった。

 

「あらぁ~いらっしゃっい」

 

 そのオカマの店長は晴人の世界でも知る行きつけのドーナツ店【はんぐり~】店長と同じ顔をしていた。

 

「いつもの、って言っても通じないか。これ一つ」

 

 と言ってこの世界のプレーンシュガーを一つ頼もうとしたが店長はぐいぐい別の商品を薦めてくる。

 

「私的にオススメなのはね、このブリザードクラウンゴッドっていう……」

 

「シューティングリングスノーで」

 

 キッパリ言うと不満気な口をしながらもプレーンシュガーを用意してくれた。

 店の隣の氷の椅子に座り(何故か冷たくはない)のんびりと暖かい飲み物とプレーンシュガーを楽しもうかと思った瞬間。

 

「緊急事例だ!」

 

 一口加えた瞬間に甲冑を纏った氷の兵士らしき人間二人が大声を放った。

 もぐもぐと口に含みながらなんだなんだと晴人は見るが。

 

「あら……また兵士達だわ、最近多いのよねえ……私の聖なるお仕事まで邪魔されちゃったら困るわ」

 

 兵士一人が何か丸まった紙を出し、元に戻していく。これは手配書だった。

 紙には顔が描かれていた。うん、嫌な予感がする。

 

「この者は、我ら魔王レンゲル様に敵意を向けた愚か者である! 此奴を捉えた者にはレンゲル様の氷の神器を側で見る事ができるのだ! 貴様らのレンゲル様の忠誠を誓え! もし匿ったりするのならヴァルハラへと送り込まれる事だろう!」

 

 笑えばいいのか、同情すればいいのか。

 晴人はプレーンシュガーが喉に入らなくなった。

 

 何故かって言われると、ストさんだ。

 ストさんの顔が手配書に書かれてあったのだ。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「ハァハァ……畜生! 俺が何やらかしたってんだよ!」

 

 後ろから二、三人、怪人の足跡がする。

 俺が何やらかしたんだ。ただ酔っ払ってダサい魔王の銅像を壊してやっただけじゃねぇか。

 どれだけの敵を倒したかはわからないが今の自分はかなり力が衰えて、パワーアップのチャージアップすらままならない。

 今は逃げるしかない。

 

「ハァ……くっ」

 

 路地を抜け大通りの人混みに隠れようとしたが前方に後方、どちらにも氷の怪人に行く手を阻まれてしまった。

 

「ちっ……仕方ねえな……俺様の本気を見せてやるか!」

 

 これはハッタリだが案外効く。

 

「行くぜ! 電パァン……」

 

 1秒の出来事だった。白の聖職者に似た甲冑を纏ったライダーが音を超えた速度で走り、音を超えた速度で斬撃を繰り出したのだった。

 1秒の間に雑魚どもはみんなやられていった。

 

「逃げ切りたければ来なさい」

 

 白い聖職者の助け舟にストロンガーは悪運があるなと思った。

 


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