ゆるふわ仮面ライダーワールド   作:空飛ぶマネッキー

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ボス元に戻る(しにかける)後編

 頭を隠すマスクの中見える口元がセクシーなライダー課の刑事、ライダーマンは先月、バスジャック犯と共に命を落としたはずだった。というかしょっちゅう命を落とす。

 ちなみにマンさんというのは饅頭大会で優勝したからだ。

 

「マンさん……よく生きていたな……お前のデスクはまだ残してある」

 

「感謝しますボス」

 

「話があるのなら乗るんだ。丁度ライダー課に向かう所なんだ」

 

 ライダーマンはニコリと笑い、パトカーに乗った。

 ボスは運転手の部下に発車するんだと指示を出し、パトカーを動かした。

 

「それで……元に戻る方法は?」

 

「ハハハ、簡単ですよボス。この俺の考えによると、ボスはアマさんとぶつかり合って入れ替わった。つまりそれと同じ事を繰り返せばいいんだ」

 

 その考えはなかったとボスはうんうんと感心した。

 

「だが、身が持たない場合はどうする?」

 

 改造人間だって不死ではない。お互い数百キロを超える足のスピードで何度もぶつかり合うのは想像するだけで恐ろしい。

 それにだ、一度で戻るとは言い切れない。

 

「大丈夫。この饅頭大会で優勝した俺を信じてください」

 

「それは……関係ないだろ。まあいい、とりあえずマンさんの事を信じてみよう」

 

 この際、鬼や悪魔や千翼やなんたらに縋りたい気持ちなのだ。

アマさんには失礼だがいつまでもアマさんの姿でいるのは辛い、辛すぎる。

 

「ハハハ、任せてください」

 

 何か不適な笑みを浮かべるマンさんはボスのマフラーを撫でるように触る。

 

「気持ち悪いなっ……」

 

 パトカーを走らせ20分ほどで署に辿り着き、マンさんと共にパトカーから降りようとしたのだが、少し後部席が湿っていた。

 それもマンさんが座っていた所だ。

 

「…………? ハッ!?」

 

 まさか、まさかとは思うが。

 

「マンさん貴様漏らしたなっ!」

 

「え!?」

 

「その年になってもなおっ! 下が緩み過ぎだ!」

 

「いやこれはただの汗で……」

 

「この量は汗で済む問題じゃないぞ!」

 

「嘘をつくなっ! シートの洗濯代、給料から引いておく!」

 

 ライダーマンそれでも違うと訴えてくるので「わかった、もういい」とこの話を終わらせる為に言い放った。

 

「さっさとライダー課に戻るぞ」

 

「…………了解……」

 

 

 

 ライダー課の部屋に戻ると鑑識課の仁藤攻介と大門、アマさんの三人がコンビニ弁当を食べている所だった。

 

「あ、アマさん、じゃなかったボス、お疲れ様でした」

 

 鑑識課だと強調する青い服と手にはマヨネーズを持った仁藤は真っ先にこちらに気づいた。

 その反応の様子だと入れ替わってる事を既に聞いているのだろう。

 

「そうだお前たち! なんとマンさんが帰ってきたぞ!」

 

 と一人ボスは拍手をしながら後ろにいるマンさんを見せつけるが三人の表情はあまり良いと言い切れるものでは無かった。

 

「ん? お前らどうした? マンさんが帰ってきたんだぞ、もっと喜ばないかッ!」

 

 三人の表情は作り笑いのような笑みを浮かべた。

 

「アハハハ……そ、そうね、それは良かったわ」と凛子。

 

「そうっすね……うん、うん……」と仁藤。

 

「アマゾン……ナニモミテナイ……」とアマゾン。

 

 そうやって三人はハハハハハと苦笑いしながら部屋から立ち去ろうとするのだが、ボスはそれを止めようとする。

 

「おい待て、一体どうしたんだ三人共、せっかくマンさんが元に戻れる方法を知っているというのに……」

 

 そう言うと凛子の表情がみるみる青くなっていく、まるで何かに怯えているように。

 そして怯えが限界に達したのか、なんとショットガンを自分に向けるではないか。

 

「きゃーっ!!」

 

「ま、待て、落ち着」最後まで言えずショットガンの発砲音が部屋に響いた。のだが自分に痛みなど一切ない。改造人間だからではなくそもそも当たった感触さえない。

 

「久しぶりというのに酷いじゃないか大門、私の事を忘れたのか?」

 

 マンさんの声が酷くノイズがかかっているようだった。

 ボスが後ろを振り向くと、マンさんは宙にフワフワと浮かんでいた。そして後ろの壁には穴が開いてある。

 

「ま、マンさん!?」

 

「ボ、ボス…………早くこっちに……」

 

 仁藤の側に向かおうとしたが。

 

「んぐっ!?」

 

 身体が動かなかった。

 

「せっかく、新しいボディが手に入るかもしれないというのに」

 

 マンさんは浮遊しながらボスの目の前にまで移動する。足は陽炎のように揺れて無かった。

 その姿、まさに幽霊。

 

「クククク私も運がいい、肉体を乗っ取る事ができるとはな」

 

「貴様っ!? マンさんじゃないな! 一体何が目的だッ!」

 

「いいだろう、冥土の土産に教えよう。私は貴様らによって倒されたショッカー怪人」

 

「ま、まさか死んだ後幽霊になって生き返ったとか!?」と仁藤がマヨネーズを盾にするように話す。

 

「フフフ、そう。死んだ後、私は運良くライダーマンの魂を乗っ取る事ができた。貴様らに復讐する為にな……!」

 

「な、なんて奴だ、これは前代未聞の大事件だ!」とサングラスをかけた大門がショットガンを構えた。

 

「だが……今日、1号の肉体を乗っ取りライダー課を壊滅させてやろうと思ったのだが、貴様らがぶつかったせいで失敗してしまった!」

 

「ダカラ……アマゾン、イレカワッタ?」

 

「そう! だがそれももう終わりだ……今から1号の肉体を乗っ取る!」

 

 幽霊がそう言うとボスは何かに引っ張られる、肉体ではない何かが抜けていくのを感じた。

 

「も、元に戻った……!?」

 

 自分の手や身体をペタペタと触り、鏡を覗くといつもと変わらぬ自分の顔、喜ぼうとしたが後ろには笑みを浮かべる幽霊がいる。

 

「マ、マズイ、お前たち! こいつを何とかしてくれッ!」

 

「え、えええと十字架どこ行ったかしら……」

 

「マヨネーズはニンニクの代わりになりますかね?」

 

「ならないでしょ、流石に」

 

「そうですよねー」

 

 凛子と仁藤のやり取りを見てボスの魂がより抜けていくのを感じた。

 

「お前達! ノンビリしてる場合か! ああ、マズイ! 消える俺の身体が!」

 

「フフフ、貴様の身体は私が扱ってやるよ……」

 

 頼みの綱のアマゾンを見つめるが、彼は一心不乱にカタコトのお経を言っているだけだった。

 というか南無阿弥陀仏を繰り返してるだけだ。

 

「そうだ! 塩、幽霊には塩を与えるんだッ!」

 

 ボスの言葉に一瞬、幽霊の悲鳴が聞こえた気がする。

 もしかしたら塩が最強の武器になるのでは。

 

 と三人はどこに行ったか一心不乱に塩を探すのだが一向に見つからない。

 

 もう自分の魂が8割近く消えていく感じがする。

 ああもうダメだ、ボスが死を覚悟したその時だった。

 

 

 

 

 

「ウィーっす……ストさんは……いないよな?」

 

 晴人が部屋に入ってきたのだ。

 

「って何この状況、ってかマンさん生きてたんすか」

 

「晴人君いい所に来てくれたわね! 塩持ってない!? 実はかくかくしかじかで……」

 

「ふむふむ……何っ!? ボスが幽霊でマンさんが怪人になってボスを乗っ取ろうとしている!? って何じゃそりゃ!」

 

 少し違うが、もうそれでいい、早く助けてくれ。

 もう言葉も出なくなってきた。完全に乗っ取られそうだ。

 

「そうそう、マヨネーズをかけて見たんだが全然効果なくてよ、贅沢な幽霊だ」

 

 晴人は「うし!」と気合を入れ、コネクトで召喚した魔法陣に手を突っ込んだ。

 

 そして四人分の塩を取り出し皆んなに渡した。

 

「よっしゃ行くぜみんな!」

 

 晴人の一声に全員塩を取り出し、幽霊に向けてブチまけた。

 

「ユウレイ! キライダ! キライダ!」

 

 だが、幽霊の身体には塩はすり抜けて効果を与えているなど微塵も感じなかった。

 

「アレレ……ボス、効果あるんじゃなかったんですか!?」

 

「これは……もうアレね、うん」

 

 仁藤と凛子の二人は既に諦めモードに入りかけていた。

 

 おい! 何故塩が効かんのだ!

 

「クククク、演技に決まってるだろ。今の時代塩でやられる幽霊など時代遅れだ!」

 

 うっ、意識が……消えて行く。

 ボスの意識はこうして闇に堕ちて行った。

 

「ククククク! ついに乗っ取ったーッ!!! この1号の身体をォォォ!!」

 

 幽霊はこのまま、この場にいる全員を口封じしようかと考え行動に移ろうとした瞬間。

 

「ボス、俺達は貴方事忘れないっす」

 

 晴人と仁藤はダイスサーベルとウィザーソードガンを取り出した。

 

「貴様ら薄情だな……この1号がどうなってもいいのか?」

 

 幽霊は笑みを浮かべる。こいつが信頼されてみんなから愛されているリーダーという事は知っている。これも脅しであるだろう。

 

「って痛ァァァァ!」

 

 突然仁藤の剣に切り裂かれ火花が散った。

 

「こ、こいつがどうなってもいいのかぁ!?」

 

「ボスとの思い出は忘れません」

 

 仁藤は優しそうな笑みを浮かべた。

 

「無視かよ!」

 

「色んな思い出があったなぁ……何度も立てこもりに小さくなって特攻させられたり……熱血指導と言って数十トンのパンチを生身で喰らわされたなぁ……」

 

「俺も……勝手にマヨネーズ食べられたり、高級マヨプリンも食われたなぁ確か」

 

「私もショットガン何度もブチかました事がある」

 

「アマゾン……トモダチ……」

 

「ロクな思い出がねぇな! というか大門貴様怖いよ!」

 

「この際、今までの怨みを晴らすのもアリだな」

 

 大門がポンプ式のショットガンをリロードした。

 

「ああ、少しボスには可哀想だが」

 

 ウィザーソードガンを構えた。

 

「うっし、ランチタイムだ!」

 

「キキーッ!」

 

「や、やめてくれ、身体は返す……やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 この夜、幽霊の悲鳴がこだました理由はその場にいたもの以外知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 とある病室の中、一人の男が立ち寄った。

 

「ボス、メロンでも買ってきました」

 

「おおブイさん、見舞いに来てくれたか」

 

 V3であるブイさんがメロンの入ったカゴをボスの膝の上に置いた。

 

「しかし災難でしたね、元に戻るためとはいえ全治二週間とは」

 

「ああ………………仕方ない事だ」

 

 

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