ゆるふわ仮面ライダーワールド   作:空飛ぶマネッキー

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変態(カズミン)は変態に巡り会う

 

 ある男の影がカフェ店『nascita』に近づいた。その男は不敵な笑みを浮かべある手紙を取り出した。

 

「フフフ……みーたん……いや石動美空、これで貴様の怨みを果たす」

 

 

 

 

 

 

 コーヒーの香りが漂う良き店内、内装は洋風でUの形をしたカウンター席に猿渡一海はコーヒーを楽しもうとしていた。

 だがカウンターの上のコーヒーはそんじゅそこらのコーヒーじゃない、自分が愛するネットアイドル石動美空ことみーたんがわざわざ自分のために淹れた奴だ。

 

「ああ……これがみーたんの淹れたコーヒー……」

 

 もう香りだけで満足しかけている俺の前に座る桐生戦兎は、引きつった顔でこちらを見ていた。

 

「何コーヒー1つでそんな大袈裟な」

 

 そんな言葉に少しイラッと来てドンと立ち上がった。

 

「戦兎てめぇ! これはなぁ!? みんな大好きみーたんが淹れたコーヒーなんだよ! もうこの一杯だけで10万ドルク、いや金額じゃ表せねぇ……心火を燃やすどころかハイになっちまうぐらい価値ある一杯なんだよ!」

 

 するとビクッと後ろに下がった戦兎は呆れた表情を浮かべた。

 

「おおっ…………分かったからさっさと飲めよ」

 

 確かにそろそろ冷めてきて本来あるべきのコーヒーの味が落ちてしまう、いや、アイスコーヒーにして……

 とそんな事考えながらも口につけ、みーたんのコーヒーを楽しもうとした。

 味はみーたんが淹れたんだ不味いわけは、不味かった。

 

(うっ……いや待て、ここで飲むのをやめるのはみーたんファンである俺がやってはいけねえ、全部飲むんだ、飲んで『旨かったぜ……みーたん』って伝えるんだ。そうなりゃみーたんも『カズミン素敵!』って俺を…………)

 

 カップの中身が半分になった時、突然冷蔵庫が開きその中から汗だく姿の万丈龍我が出てきて「プロテインプロテイン」っと一度冷蔵庫を閉じ、また開いてプロテインを取り出した。

 

「うわ汗くっさ……」

 

「筋トレしてたんだから当然だろ?」とプロテインを飲み出す万丈。

 

「そんな格好でお客様の接客できるわけないでしょ、さっさとシャワーでも浴びて着替えてこいよ」

 

 コーヒーを飲み続ける俺は客はあまり来ない事にはツッコンだ方がいいのかと思った。

 そしてプロテインを飲み干した万丈はコーヒーを飲み続ける俺に視線を向けた。

 

「おい戦兎、お前が俺のコーヒー飲みてぇ言い出したのに何カズミンに飲ませてんだよ。まぁいいけどぉぉぉ!?」

 

「ぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?!?」

 

「汚ねえ!」と万丈。

 

 その言葉を聞いた途端口からコーヒーを吐き出した。

 吐き出した同時に戦兎がマズイといった顔をした。

 

「ちょ、隠してたのに何言ってんだよこの筋肉バカ!」

 

「はぁ? 誰が筋肉バカだよ、バカって言うのはなバカって言う方がバカなんだよ! この科学バカ!」

 

「バカ! 今はそれどころじゃないんだよ! ああ!」

 

 コーヒーがゲロのように不味い理由が分かった。

 万丈はコーヒーを作るのが致命的に下手なのだ、この店のマスターも下手だから娘もそうなんだろうと思ってたがよくよく考えると義理の親子だった。

 

「み、みーたんのじゃなくてこのバカが作ったのかよ…………」

 

 怒りよりも吐き気がした。

 俺はこんなコーヒーを喜んで飲んでいたのか。

 

「おい、せっかく人が淹れてやったってのにバカってなんだよ」

 

「みーたんの一杯……貴重な一杯……を……テメェ!」

 

「いや本当に騙されるとは思ってなくてさ、思ったより万丈並に騙されやすいんだな」

 

 この悪魔の科学者は謝るどころか開き直って余計に煽る。

 

「みーたんの怒りを受けてみやがれ!」

 

 愛の拳の右ストレートが炸裂してパーンと大きな声がなったが、片栗粉の入ったボウルに受け止められ、右手が死んだ。

 

「ぐぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 白く濁った液体がかかった手を握って俺が床をのたうちまわっている中。

 

「戦兎、なんだそれ」

 

「ん、ダイラタンシー現象」

 

「ダイターンスリー現象?」

 

「違う違う、ダイラタンシー現象! お前にも分かりやすく説明するとローグの胸と同じ、衝撃を与えるとカチーン! と固くなる奴だ」

 

 すると万丈はポンと手を叩き。

 

「ああー。ローグを幾ら殴っても全然ひるまなかったなー、で、その片栗粉はなんだ?」

 

「あんかけに使う、今日の晩飯あんかけうどん」

 

「プロテイン入れていいか?」

 

「勝手に入れなさいよ」

 

 二人がそんな会話を続けてる中、俺はぜぇぜえ言いながら立ち上がった。

 

「けっ……なかなかやるじゃねぇか……今日はこの辺で勘弁してやるよ……」

 

 重い足取りで出口に足を進めて外のドアに手をかけて外に出た。

 それを見た万丈は首を傾げながら「あいつ何しに来たんだ?」

 

 

 

 

 

 一海は外に出て少し陽の暖かさが混じった空気を吸った。そのまま近くでも散歩しようかと考えた時、nascitaの灰色のドアに何か付けられてる事に気付いた。

 

「ん?」

 

 ドアに貼り付けられた黒い封筒に手を取ると、宛先は『石動美空ことみーたん様へ』とだけ書かれていて差出人の名も住所も書かれていない。

 

 見るからに怪しい、考えなくても怪しい。それに何故噂のネットアイドルであるみーたんの本名と住所を知っている?

 

 これは中身を覗くしかないと封筒に手をつけようとしたその瞬間。

 

「どうかした? カズミン」

 

 突然背後から声がして咄嗟に手紙を背中に隠した。

 

「紗羽さんか……なんでもねぇ……」

 

 背後から声をかけてきたのは滝川紗羽で、何やら彼女は嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

「これ、何だと思う?」

 

 ニヤニヤしながら二枚の紙切れを揺らした。

 

「温泉?」

 

 よく見るとそう書かれていた。

 

「そう! さっき商店街の福引きで当たったの。しかもペアで! せっかくだから美空ちゃんも誘っちゃおうかなーって」

「へぇよかっ………………み、みーたんとオ、ン、セ、ン!? つ、つまりみーたんはは、裸に……いや待て待て! 何考える俺はァ! そんな邪な目で見るなんて最低だ……あ……でも想像するだけなら…………」

 

 ああダメだ、一度みーたんと温泉という言葉を聞いてからは脳内が止まらない!

 

「気持ち悪い…………」

 

 そんな考えから現実に戻してくれたのは紗羽さんの辛辣な一言だった。

 

 

 

 

 

 

 俺は現実に戻ったその後、公園のベンチに座り黒い封筒を見つめた。居場所や本名を知っていたり冗談抜きでみーたんのストーカーの可能性が高い、だからこそ安全かどうか俺が最初に確かめる。

 

 黒い封筒を開けた跡がつかないようにこっそりと開け、中身を取り出した。

 

「ふむふむ……『予告状、石動美空事、みーたんの入浴写真を撮らせてもらう怪盗K』…………なぁぁぁぁぁ!?」

 

 俺は言葉を失った。一体これはどういう事なのかと。

 怪盗Kとかいう奴がこれを描いたっていうのか、馬鹿げている今更怪盗だなんて。

 だが入浴写真という単語に引っかかった。さっきの紗羽さんはみーたんを温泉に誘うと言った。

 

「ヤベェ……! 特に理由はねぇがヤベェ……!」

 

 偶然にしては出来すぎている、今すぐにでも辞めさせないと。

 nascitaの店までダッシュで走り、息切れになりながら店のドアを開けた。

 

「グリス? どうしたの?」

 

 店内は既に閉店寸前、客も誰もいないのでみーたんは堂々と店内のテーブルに座っている。

 俺はみーたんと同じ丸テーブルの椅子に座り、今すぐ温泉はやめるように言い出そうとした。のだが。

 

「そういえばさっきね、紗羽さんから温泉旅行一緒に行こうって誘われたんだ! 私、一度も旅行に行った事ないから今からすっごい楽しみなんだけど何持っていけばいいのか分からなくて……まずトランプでしょ、UNOでしょ、それにそれに……」

 

 そんなみーたんの無垢な笑顔を見ると今すぐやめろと言い出せるはずもなかった。

 

「そうそう! ちゃんとみんなのお土産も買ってくるから楽しみにしててね」

 

「ああ、みーたんは俺達の分も楽しんできてくれ」

 

 そのまま笑みを浮かべたまま俺はnascitaから出て行った矢先。

 

(カッコつけたのはいいがどうすりゃいいんだ! あんな笑顔を俺に向けてくれるなんて……! いや今はそれどころじゃねぇ、みーたんに旅行を楽しませて盗撮もさせない、俺が犯人を見つけ出すんだ。やるしかねぇ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の公園に一人待っていた。そしてざっざっと足音がしてそちらに顔を向けた。

 

「何の用だジャガイモ」

 

 俺が呼んだ男は氷室幻徳、ヒゲ男だった。

 

「俺が呼んだ用はこいつだ」

 

 俺は予告状を手裏剣のように投げヒゲはそれをキャッチした。

 

「なんだこれは」

 

「しらばっくれんじゃねぇ、テメェがやった事だろ」

 

「何の事だ? くだらん話なら帰らせてもらう」

 

 これでもシラを出さないつもりらしい、なら証拠を並べてやる。

 

「テメェは過去に紗羽さんをホテルに誘ったんだろ、紗羽さんだけじゃなくみーたんにまで手を出そうとしてんだろゴラァ!」

 

 襟を掴みグワングワンと揺らしながら問い詰める。

 

「うっ……本当に何の事だ! この事と俺は無関係だ!」

 

 だがヒゲの反応を見るに嘘をついてるとは到底思えない。やはりヒゲが犯人ではないのか。

 なら他に誰がこのイタズラの犯人なんだ、紗羽さんのアリバイは辻妻が合うし商店街で福引きがやっていたのも確認した、nascitaの連中達がドアに予告状を貼る隙が無いのは自分が知っている、つまり俺の知らない第三者が。

 

「ワケを説明しろ」

 

 これ以上自分一人背負っていても仕方ない。

 

「ああ、わかったよ」

 

 俺はそのまま知っている事を説明した。

 

「イタズラじゃないのか?」

 

 まずヒゲの物事を聞いた後の第一反応は当然これだった。

 

「最初は俺もそう思ったぜ……だが余りにも偶然が重なってんだ気味悪いほどにな」

 

 ヒゲは少し眉間にシワを寄せた。

 

「仕方ねぇ……あいつらも呼ぶか」

 

 俺は電話を取り出した。

 

 

 

 

 

 

「こんな時間に何の用だ? 話ならnascitaですればいいじゃないか」

 

 戦兎と万丈は面倒そうな表情でこっちに来た。

 特に戦兎は何かの修理中に突然呼ばれたらしく気分が悪い。

 

「今からそれを話すから黙ってろ」

 

 俺は戦兎達に事情を話した。そしてもう一つ。

 

「俺たちはみーたんを守るために隠れながらみーたん達の温泉旅行について行く」

 

 それを言った途端、三人共目を丸くした。

 

「みーたんは今世紀最大のピンチに陥ってんだ。だからお前らも手ェ貸せ」

 

「それってイタズラじゃないのか?」

 

 戦兎がヒゲと同じような質問を返して来た。

 

「それならそれでいい、みーたんに危険は及ばねえしそれが一番いい。だが本当だったらどうすんだよ、清純派で売ってるみーたんがヌード写真なんて違法販売されたら人気ガタ落ちになるだろぉが!」

 

「美空が普通の女の子になるんだったら丁度いいタイミングじゃねぇか?」

 

「万丈お前古いよ。まあ俺も半信半疑だな、もし心配なら行かせなければいいだけなんじゃ」

 

「みーたんが楽しみにしてんだよぉ! 言えるワケねぇだろ!」

 

 ゼェゼェ息が上がってきた、仕方ない、奥の手を使う。

 

「てめぇら……相手はみーたんの正体を知ってる奴だ。男達と同棲してる事だって知ってるかもしれねぇぞ!」

 

「だからそれの何が……ハッ!?」

 

 戦兎はやっと事の重大さに気づいたらしい。

 

「万丈……戦兎……nascitaの売り上げだけで食ってく自信あんのかぁ!?」

 

 万丈もそれに気づいたらしく口を開けた。

 nascitaはゼロという訳ではないが、本当に客が来ない。今までどうやって食って来たんだと心配になるレベルでだ。

 だがそれもみーたんの支援のおかげという事も俺は知っている。

 

「万丈……俺達で美空さんを守るぞ!」

 

「今の俺たちから盗撮できる気がしねぇよな!」

 

 戦兎と万丈の二人はヘイヘーイとハイタッチをし合っている。

 

 この酷い掌返し、俺は一発殴ってやろうかと拳を滾らせたがヒゲが首を横に振った。

 

 この四人でやるしかねぇ。俺は軽く溜息を吐いた。

 

「なあ」

 

 ヒゲが話しかけてきた。

 

「俺も必要か?」

 

「ああ、お前も必要だ。一緒に来いよ」

 

 その時のヒゲは苦笑いしたが少し嬉しそうな表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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