ゆるふわ仮面ライダーワールド   作:空飛ぶマネッキー

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ものすごく近くて、ありえないほど気づかない。

 そして待ちに待った温泉旅行の日、貧乏ながら泣く泣く出費を払った一海達は現在、電車に乗っている。別の車両にみーたんと紗羽さんがいる。

 

 一応変装の為ヒゲはヒゲを剃りサングラスにアロハシャツ、戦兎は髪を佐藤太郎風にして、万丈は学ランを着て、俺はバイオリニスト風に見せる為バイオリンのケースを背負っている。ちなみにケースの中には着替えを入れた。

 

「で……俺たちの目的は? 言ってみろ」

 

 戦兎、万丈、ヒゲの順で三人は答えた。

 

「旅行」

 

「温泉」

 

「パフェ」

 

「だっ違えだろ! みーたんを守護すんだよ!」

 

 そう言うと万丈は頭を掻きながら口を開いた。

 

「つーか守護するつったってどうすりゃいいんだよ」

 

「そりゃ勿論後ろから付けて怪しい奴がいねぇか……」

 

「お前が一番怪しいよ」

 

 と戦兎に頭を叩かれた。

 今から行く温泉街のガイドブックをパラパラと読むヒゲは渋々と言った。

 

「落ち着け、奴の予告状は『入浴』時以外では手を出さないと書いてある、そのタイミングを見計えばいい話だ」

 

「そんな上手く行けばいいけどな」

 

 目的である温泉街の駅に着き四人はこっそりと降りた。

 みーたん達が向かう宿は温泉街の突き当たりに当たる高級旅館だが様子を見るにまずは観光して行くようだだった。

 そしてみーたん達はとあるスイーツ店「BARON」に入って行った。俺たち四人は店の外から腰を屈めてこっそりと隠れる。

 

「さっきの続きだけどよ、その紙切れを信用すんには情報が少な過ぎんだろ?」

 

 そう言うと万丈は欠伸しながらこう言う。

 

「ふぁぁぁぁ~けどよ、ずっとこんな事すんのか? さっさと温泉入りてえよ」

 

「その隙にみーたんが襲われたらどうすんだよこの頭チンパンジー!」

 

「誰がチンパンジーだよこのドルオタ野郎!」

 

「落ち着け二人共、既に手は打ってある。葛城」

 

 ヒゲが戦兎の名を呼ぶと、待ってましたと言わんばかりに戦兎は服のポケットから一円玉サイズの機械のような物を取り出した。

 

「これは美空に付けた発信機で盗聴器だ、これとビルドフォンを繋げてるからいつでも気づく事ができる」

 

 少し犯罪スレスレな気もするが、二人も守るためだと自分の心に言い聞かせた。

 

「本当に使えんだろな?」

 

「ああ、水にでもかからない限り故障する事も」

 

「あっ、美空が水こぼした」

 

 万丈のその一言にその場の空気がかなり淀んだ。

 

「HAHAHA、俺は天才物理学者ですよ? あの角度の水からかかるわけないでしょ」

 

 戦兎はビルドフォンのアプリを起動させ、みーたんの会話を試し聞きしようとするが。

 

『ザ……ザザザーガザザザザー』

 

 砂嵐のノイズしか聞こえなかった。

 

「………………(戦兎)」

 

「………………(幻徳)」

 

「………………(一海)」

 

「仕方ない、こうなったら予備の発信機を美空に付けるしかないな」

 

 さっきの事は忘れたように気を取り直した戦兎はもう一つの発信機を取り出した。

 

「作戦でもあんのか?」

 

「みーたんにバレるやり方なら承知しねえぞ」

 

「なーに極めて簡単な話だ」

 

 戦兎はポケットからラビットボトルを手に。

 

「ボトルを使えばいいだけだ」

 

「さすが物理学者だな!」

 

 万丈が感心したように言い出し、俺はそれにツッコミを入れる。

 

「物理学者の物理はその意味じゃねぇよ」

 

「マジで!?」

 

 佐藤太郎ヘアの戦兎は笑みを浮かべボトルを振りながら人間には反応すらできない高速移動を始め店内に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

「んでさー戒斗、神様仕事も楽じゃ無くてよー」

 

 BARON店内でオーナーと一人の客が会話してるのが見えた、客の方はどっかで見たような気がするが、今は美空に発信機件盗聴器を付ける事に必死だ。

 

 店の端、チャンスは一瞬、水こぼしても大丈夫なように背中に発信機を……!

 だが、何者かに手を掴まれた。

 

「なっ……!?」

 

 驚きのあまり声が出てしまった。そして掴んだ相手の顔を見るとヤバイ、前に一度大きな事件で会った事がある神様、葛葉紘汰だった。

 

「もしかしてアンタ……戦兎じゃないかー!? おー! 久しぶりー!」

 

 突然肩を組まれて、マズイと冷汗が出る。

 

「戦……兎……?」

 

 聞き慣れた声が聞こえてより一層冷汗が増した。

 

 

 

 

 一方、別班。

 

「みーたんにバレた……何やってんだよ戦兎…………!!」

 

 俺は覗いてる双眼鏡を板チョコのように折り、あれだけ自信満々に言った後で失敗するとは、心の怒りがほとばしった。

 

「いや、桐生戦兎のボトルを使った速度は生身では史上最高だった。あの男が異常すぎる……高速移動する葛城の手を普通に掴んだ」

 

「クソッ……こうなったら全部洗いざらいみーたんに吐くしかねぇか……」

 

 俺はこのまま店に乗り出そうとしたがヒゲが俺を止めた。

 

「待て、まだ終わってない」

 

 

 

 

 

 

「えっ戦兎君……?」

 

 紗羽さんの目を丸くした顔と普通に疑問に感じる美空の視線が痛い。

 だが俺はてぇ~んさい物理学者、こんな時のための対処法は知っている。

 

「えっ!? 俺っすか? おれは佐藤太郎っしょ!」

 

 ここは自分が知ってる限りの佐藤太郎像を演じきるしかない。

 

「もしかして人違いか?」

 

 神様は首を傾げる、よし次!

 

「もっ、も、も、も、もしかしてそこにいるのはみーたん!?」

 

 ズタタタタとゴキブリのようなスピードでそちらに近づき。

 

「俺もバンドのトップ目指してるんっす! よかったらサインください! 俺のサインももらってください!」

 

「あっはい」

 

 美空は着ている服の背中に店のマジックでサインを書いてくれた。

 

「ヒャッホーウ! フッフゥゥゥゥ!」

 

 サインが終わった後、バカのような喜びを見せながら店の外に出て行った。

 

 戦兎が去った後、店内で紗羽は「マスクだけじゃなくサングラスもつけとく?」と美空はそれに「うん」と引き気味にうなづいた。

 

 

 

 

「一体何の騒ぎだ、葛葉」

 

「いや、なんか知り合いかと思ったら別人でさー、あ、そうそうアスガルドって国で……」

 

 

 

 

 

 

 戦兎が息切れになりながらこちらに戻ってきて、様子を見るに佐藤太郎を演じ、バレずに済んだようだ多分。

 

「ヒャッホーウだってよ……くそっ……」

 

 万丈は戻ってきた戦兎をからかうように笑い、戦兎はムッとしている。

 

「万丈にやらせりゃよかった……」

 

「だが葛城よくやった。発信機を付けた後は一旦ここから離れるぞ」

 

 俺もそれに同意で、次にバレたら誤魔化しきれる自信はない、四人揃って他人の空似は無理がある。

 

「えっ……」

 

 離れると言った瞬間、戦兎は驚きの声をあげた。そして手のひらを見せた。

 何ということだろう、発信機は戦兎の手にあるではないか。

 

「最悪だ……」

 

「またふりだしか……」

 

 ヒゲの言葉に全員がどんよりとして、溜息が出た。

 

「だったら次はどうすんだ?」

 

「遠くから遠距離狙撃……」

 

「このヒゲ! みーたんに怪我させてぇのか!」

 

「だったら変身して透明化、瞬間移動、時間停止……はダメだあの神様が対応してくる」

 

「葛城、あの男は一体なんだ?」

 

「説明すると長くなるからその話はまた今度な」

 

 三人が議論していく中、万丈一人が言う。

 

「外出た時に狙えばいいんじゃねぇか?」

 

 その言葉に俺たちはなんでそんな簡単な事に気付かなかったのだろうかと後悔した。

 

「だがあの男が邪魔する可能性もある、だったらこうすっぞ」

 

 俺の言葉に三人は耳を傾けた。

 俺は自分の考えた作戦を言い出す。

 

 みーたんと紗羽さんが外に出たその瞬間、まず既に変身したビルドが発信機を豪速球で投げた! 

 そして次にローグがダイヤモンドの力を使い、発信機を反射させる!

 最後は跳ね返った発信機を消しゴムフルボトルで姿を消したグリスが走りながらキャッチして、みーたん達二人の横を通り過ぎた!

 みーたんと紗羽さん二人は強い風が通りかかったと思い顔をしかめる。

 その瞬間にグリスはみーたんの服に発信機をつけた。そして即退散。

 

「俺の出番はどこだよ?」

 

「へっ、ゴリラに出番なんざ必要ねえ、どうせカンペねえと忘れんだろ」

 

「はぁ!? 俺だってなカンペあればできる男なんだよ!」

 

「カンペ必要だって言ってんじゃねぇか!」

 

「いやいや、発信機が先に壊れるよお二人さん……って幻徳どこ行った?」

 

 いつのまにかヒゲの姿が見当たらなくなっていた、作戦会議まではいたはずなのだが。

 

「あっいた」

 

 戦兎が指した先はヒゲがBARONの入り口の自動ドアから出てくるのを見た。

 

「さてはあいつ……バカだな!」

 

「すげぇな、正面突破しやがった」

 

「んな事言ってる場合じゃねぇだろ……!」

 

 だがヒゲは澄ました顔でこちらに戻ってきた、そして第一声が。

 

「石動美空に発信機を付けてきた」

 

「マジかよ……」

 

「マジで?」

 

 と戦兎がビルドフォンを取り出しアプリを付けると。

 

『さっきの人、どこかで見かけたよね……』

 

『誰だったっけ……』

 

「マジだ」

 

「一体どうやってやりやがったんだ」

 

 笑いながら俺はヒゲに話しかけると、ヒゲは暗く淀んだ声で喋り始めた。

 

「どうやらあいつらは…………俺の事をヒゲで区別していたようだ……」

 

「まさかのヒゲ>>>幻徳!?」

 

 確かにヒゲは変装の為剃っていて、ヒゲが無いと一瞬誰か分からない。それにアロハシャツにサングラスまで付けていると別人に近い。

 

「サインをくれと石動美空に接近した結果……成功した」

 

「マジかよ……ヒゲの存在感すげぇなおい」

 

 そんな話を続けている中、俺はみーたん達がお会計を始めようとしているのに気づいた。

 

「さっさとずらかるぞ……」

 

 その言葉に三人共頷き、その場から自分達が一晩過ごす予定の宿に足を向かわせた。

 

(だがまだ問題は終わっちゃいねぇ…………今晩が勝負どころだゴラァ……)

 

 時間が1時を過ぎ、緊張感が高まる一海だった。

 

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