この力、この世界で役立つか? in 魔法科高校の劣等生   作:zaurusu

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第11話

「まぁ、座りたまえ」

 

正直いうと、今すぐにでもここから逃げ出したい。

 

だが、それはやめたほうがよさそうだ。

 

既に、扉の向こうには何人か待機しているのが気配でわかる。

 

恐らく、逃げ出さないように警戒してるのだろう。

 

逃げれなくもないが、下手に敵対するわけにはいかない。

 

まぁ、既に目がつけられるのだが……

 

ここは、素直に従うことにした。

 

「今、お茶を出そう」

 

そういうと、戸棚から湯呑みと茶瓶を取り出し、お茶っぱを手に取り、ヤカンに水を注ぐ。

 

しばらくすると、水が沸騰し、ヤカンから蒸気が出る。

 

茶瓶に葉を入れて湯を注ぐ。

 

ただ単純な行動なのに、彼の動きは洗練されたものだった。

 

恐らく、相当仕込まれたのだろう。

 

そして何より、美しかった。

 

こんなものを見せられては、そりゃ、モテるわけだ。

 

しかし、次狼は彼が下着限定の女装趣味野郎(へんたい)という事を知っている。

 

ゆえに、勿体ないなと心の底から思った。

 

「なんだ、その変なものを見る目は?」

 

どうやら、向こうもそれを感じ取ったようだ。

 

「いや、今時珍しいと思って」

 

「あー、たしかに今時、こんな古風なものは滅多に見ないからな。これは、癖みたいなものだ。昔、母上……母さんに仕込まれてな」

 

今、母上と聞こえた気がするが……それはさておき

 

やはり、親からの仕込みだったか。

 

見た感じ、相当厳しかったんだろうな。

 

「成る程、どうりで美味しいわけか」

 

一口飲むと、茶の香りと程よい苦味が口全体に広がる。こんな美味しい茶を飲んだのは烈さんに京都に連れてかれて、休憩がてら寄った老舗和菓子店で飲んだ時以来だ。

 

「そうか、そう言ってもらえると僕も嬉しい」

 

と言って、鳴神も自身の湯呑みに茶を注いで飲み始める。

 

しんみりと、ゆったりとした空気がながれ、その甲斐あってか、先程まで緊張していた空気が嘘のように軽くなった。

 

しばらくして……

 

「さて、君を呼んだ理由についてだが……」

 

飲み終わったのを確認すると、先に話し掛けたのは鳴神からだった。

 

呼び出した理由……もう、あれしか思いつかない。

 

「もちろん、僕の秘密についてだ」

 

思った通りで、思わず現実から逃げたくなる。

 

いっそのこと、あのパンチを食らって、その時の記憶を無くしたことにすればと良かったと今更だが後悔している。

 

「君も見た通り、僕は……」

 

「あー、大丈夫だ。言わなくてもわかる。趣味は人それぞれだし、それを責める権利なんて俺にはない。ただ、学校ではやめたほうがいいと思うぞ? 事故とはいえ、他の生徒に見られる可能性があるからな。人によっては、脅して、貢がせることだってあるからな。まぁ、俺はそんな事しないから安心して……」

 

と言いかけたその時

 

物凄い殺気を感じ、咄嗟に身を躱す。

 

すると、いつのまにか拳が通り過ぎた。

 

それを放った本人は物凄い剣幕だった。

 

冷や汗が止まらない中、彼は静かに首を動かしてこちらを見る。

 

「君は、僕を変態かなにかと勘違いしてないか?」

 

まさに、その通りです。

 

なんて、正直に言えるわけがなくどうやって誤魔化そうと考えてると

 

「僕は正真正銘の……」

 

拳を再び握りしめると

 

女だ!!

 

と次狼の顔面目掛けて再び拳を振り下した。

 

それを聞いた次狼はというと……

 

「ぇぇぇええ!!!!」

 

驚きのあまり絶叫した。

 

そして、難なく彼から放たれた拳を避ける。

 

「避けるな!!」

 

「無茶言うな!!」

 

殴る避けるの繰り返し。

 

前のようにノッキングで大人しくさせようと考えたが、鳴神勇人が女であるとカミングアウトした為、若干ためらいが出来てしまったので取り敢えず、落ち着かせることにした。

 

しかし、鳴神の方はアドレナリンが出すぎたのか狂戦士(バーサーカー)状態で手遅れかもしれない。

 

結局、二人の攻防は30分は続くのだが、その間、狂戦士とかした勇人が机を持ち上げてそれを投げたり、ガラスを割ったり等、此処が風紀委員会本部という事などお構いなく暴れた。

 

これ以上、施設を破壊するのは自分にとっても彼女にとっても都合が悪くなる。そう考えた次狼は仕方なく、彼女をノッキングをする羽目になった。

 

一応、女性であるからなるべく痛みを感じにくいところを狙った。

 

思いの外、ノッキングが効いたのか、力が抜けたかのように、こちらに向かって倒れてきたので優しく受け止める。

 

そのまま、ソファーに寝かしつけても良かったのだが、彼女を支えた時に違和感を感じ取った次狼は念のためにと、保健室へ運ぶ事にした。

 

どうやって運んだかは想像に任せる。

 

一言言えることがあるとすれば、後日それを知った鳴神勇人は顔が真っ赤になり、次狼に八つ当たりするとかになるのだが、まだ、それを誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少し、短めです

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