この力、この世界で役立つか? in 魔法科高校の劣等生   作:zaurusu

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もうすぐ夏休みですね

今年はどうやって過ごそうか


第13話

衝撃の事実を知る羽目になった後、教頭は次狼に遅刻理由書を渡し、速く授業に参加するよう促したので、ここは素直に、その紙をもらい、保健室から出て行った。

 

その時の教頭の顔は、「これ以上お前に話すことはないからとっとと消えろ」と言わんばかりだった。

 

出来れば、もう関わらない方がいいかもしれないな。

 

だいぶ関わってしまった気もするが……まぁ、教頭の目に俺は全然映ってないようだったから、問題はないか。

 

さて、今日の事は忘れて、なんか美味いものでも食べに行くか。

 

レオあたりでも誘って……

 

 

 

 

 

と思っていた時期があった。

 

授業が終わり、放課後になるとさっちゃん先生が次狼の教室に訪ねてきて「少し、話したいことがある」との名目で呼び出されたのだ。

 

ちなみにその時のクラスメイトは「今度は何をやらかしたんだ」と一斉に次狼の方をみた。

 

そして、一部の男子生徒からは殺気に近い視線を感じ、半ば逃げるよう先生の後をついて行った。

 

その時のさっちゃん先生はというと

 

「やっぱり、ジロー君のクラスは面白いわね〜」

 

と相変わらずのテンションに癒された……というわけではなく、頭痛がしてきた。

 

そして、なぜかわからないがとてつもなく嫌な予感がする。

 

正直いうと今すぐ帰りたい。

 

先生には悪いが今日はここでおさらば……。

 

「逃げちゃだめよ〜?」

 

しようかと思ったが、どうやら、無理みたい。

 

思わずため息をつきながら、次狼は保健室へと向かった。

 

 

 

 

「ちょっと待っててね〜」

 

保健室に着くと、扉の前で待機するように言われた。

 

中から何やら、話し合う声がかすかに聞こえるが先客がいるのだろうか?

 

ケンカ……というわけではないが、結構、言い合っている気がする。

 

時々、悲鳴に近い声が聞こえた気もするので、本当に何をやっているのか?

 

おもわず気になって、扉に耳を当ててみると

 

「本当にこれを私が……」

 

「ええ、そうよ〜?」

 

「わ、私にこんなのは……」

 

「そうかしら〜?似合うと思うのだけど?」

 

何やら、女子生徒と話しているようだ。

 

怪我の手当でもしているのだろうか?

 

しかし、話からしてそんな風には見えない。

 

それ以前に、この声何処かで……

 

「盗み聞きはだめよ、ジロー君?」

 

「うわぁ!?」

 

突然、扉が開いたため、ダーッ!! と流れ込む形でこける次狼。

 

その姿ときたら、思いのほか体重がかかり、扉が外れて、覗きがばれてしまった男子生徒みたいだった。

 

今回は盗み聞きという事ですあながち間違ってはないかもしれない。

 

「あらあら、大丈夫?」

 

開けた本人は倒れるとは思ってなかったのだろうか、少し心配していた。

 

「大丈夫です……」

 

鼻を抑えながら、立つ。

 

思いっきり鼻を打ったが、大したこともなく、鼻血も出てない。

 

「よかった」

 

それを聞いて安心した先生。

 

わかってたんなら、急に開けないでほしいと思わず言いかけたがなんとか堪えて押し止まる。

 

しかし、問題はそこではない。

 

「なぁ!?、き、き、貴様は!!」

 

先生の後ろに控えていた女子生徒。

 

突然顔を真っ赤になり、口をパクパクし始めたと思ったら、まさかの貴様呼ばわり。

 

一瞬、なんだこいつと思ったが……

 

「も、もしかして……鳴神!?」

 

次狼は直ぐにその女子生徒が鳴神勇人だという事に気がついた。

 

何故か、女子の制服を身につけていた。

 

「ち、違、違うわよ!」

 

必死でごまかすが、声でバレバレだった。

 

しかし、こうしてみると、本当に女なんだな。

 

突っかかってきた時に凛々しさは微塵のかけらもないし、それ故なのか、声もほぼ女の声だ。

 

顔も整っていて、体形もスレンダーで、出てるところは出ているし、文句のつけようがないくらいの美少女だ。

 

そういえば、魔法師には美形が多いとレオから聞いたことがある。

 

さっちゃんの話だと鳴神かは古式魔法の名家だというし、血筋からいってそうなるのは必然かと思うと納得がいく。

 

そのせいか、彼女をまじまじと見てしまった。

 

「み、見るな!!」

 

余程恥ずかしいのか、カーテンの端にくるまってしまった。

 

信じられるか?つい3時間前までは、彼女は拘束しようとしてきて容赦なく腹パンしようとしてきたんだぞ?それも、二回に渡って。

 

 

それが、今、カーテンにくるまってるなんて誰が想像できるか?

 

できるわけない。

 

しかも、かすかに泣いてるみたいだ。

 

なぜか、罪悪感が半端なく込み上がってくる。

 

泣きたくなるのはこっちだというのに……

 

「んー、とりあえず勇人ちゃんはそのまましておいて、取り敢えず座りましょう?」

 

先生のこの言葉には救われた気がした。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

10分ぐらいだろか?

 

カーテンに来るんだ勇人を落ち着かせ、なんとか先に座らせることができた。

 

しかし、相変わらず睨まれてはいるが。

 

まぁ、それはさておき本題に移ろう……と思ったが、それ以前に聞きたいことがあるのでそれからだ。

 

 

「先生」

 

「なにかしら、ジロー君?」

 

「先生はどうして、鳴神が女だっで知っていたんですか?」

 

そう、次狼が気付く前から彼女はその正体を知っていたのだ。

 

しかも、それを隠すことなく次狼に言った。

 

それに付け加え、鳴神家の世間には知れ渡っていない極秘といってもいいくらいの情報と過去。

 

あまりにも知りすぎている。

 

この人は一体……

 

「それについては僕が説明する」

 

何者なんだと思った時

 

口を割ったのは意外な事に鳴神本人だった。

 

「佐知子先生は鳴神家を代々守護してきた、風宮家の一員なんだ」

 

「風宮家?」

 

「一般的にはエレメンツだと言われてるが、本当は影で鳴神家を支えてきた一族だ。先生は風宮家現当主のひ孫で、僕の護衛兼師匠でもある」

 

エレメンツと聞くと原作キャラの光井ほのかが光のエレメンツの末裔だったな。

 

苗字に風とついてることから風のエレメンツということだろうか?

 

「君の事だから、風宮は風のエレメンツの末裔と思っているだろうけど、それは間違いだ。魔法師が世間に出回る前から風宮家は風を操る一族として鳴神家に仕えていたんだ」

 

「へぇー、じゃ、なんでエレメンツ末裔なんて言われてるんだ?」

 

「恐らくだが、そんな風に噂され始めたのはエレメンツの事が明るみになってからだな。ほら、エレメンツの末裔にはその属性の名や苗字が付いているだろ?」

 

「成る程、要は誤解されているわけか」

 

「ああ、それに古式魔法の家に従事していたからずっと秘匿されてたんだ。名前が知られるようになってのも数年前からだから、信憑性を持ってもおかしくはない」

 

たしかに納得のいく話だ。

 

「でも、いいのか、そんなにベラベラ喋って?」

 

「問題ない。君の事は師匠から聞いたからな。ずいぶん可愛がられてるというか……いや、この場合は信頼されていると言うべきかな?」

 

そう言われると、なんか恥ずかしい。

 

「まぁ、いざという時は師匠にどうかしてもらうから心配はない」

 

さらりと怖いことを言った気がするが、ここはあえて聞かなかった事にしよう。

 

「あらあら、うふふ」

 

笑っているけど、逆効果でものすごく怖い。この人なら本当にやってしまうんではないかと思えてきた。

 

「それと、だな……」

 

おもむろに立ち上がる勇人。

 

そして

 

「僕は君のことを誤解していた。君の話を聞こうともせず、殴りかかって……挙げ句の果てに魔法を使ってだ。いくら風紀委員会でも一般生徒に向けて魔法を放つのは犯罪だ。それを僕は2回もしている。だから、この場で言わせてもらいたい」

 

といい、一方下がると

 

「殴っても構わない。僕はそれだけと事をしたんだ。でも、これだけは言いたいんだ」

 

頭を深々と下げて

 

「すまなかった!」

 

謝罪した。

 

深々とそれもずっと下げたまま。

 

その一連の動作に次狼は……

 

「……」

 

黙ることしか出来なかった。

 

まさか、謝罪されるとは思っていなかったからだ。

 

勇人の性格からして、先生との話が終わったらまた捕まえようとしてくるんだろうなーと思っていた矢先のこれだ。

 

混乱するほかない。

 

彼女の言うとおり、一般人に魔法を使用するのは度がすぎる行為だ。次狼はそこまで、気にはしていなかったが、普通に考えれば、犯罪で大怪我をする恐れがあるのだ。

 

でも、元の原因は次狼が勇人の下着を覗いた事にあり、変態だと勘違いした事だ。

 

いえば、五分五分だ。

 

でも、勇人の性格だとケジメはキチンとつけるまでは納得いかないだろうな。

 

どうしようかと悩んでいる時

 

「ジロー君、ちょっと耳貸して」

 

先生が手招きしてきたので、なんだろうと思ったらどうやらなにかあるらしい。

 

言われたとおり、耳を貸す。

 

「ここはね……して……すればいいのよ?」

 

「でも、それだと……」

 

「殴るわけじゃないから大丈夫よ。それに、このままだとお互いうやむやになるわよ?そんなの嫌でしょ?」

 

「そうですね……わかりました。その手でいきます」

 

先生に感謝を述べ、鳴神の元へと向かう。

 

鳴神本人はずっと頭を下げたままだ。 何かをするか、言うまでは頭をあげそうにない。

 

「鳴神、取り敢えず頭を上げろ」

 

そう言うと、鳴上は頭をあげる。

 

ただ、殴られると思っているのか拳に力が入っている。

 

次狼が鳴神の額に手を伸ばすと、目をつぶりブルブルと身構え始めた。

 

恐怖のあまり、泣きそうな雰囲気だ。

 

本当に前の凛々しさはどこに行ったんだか

 

 

そして、次狼は……

 

拳を振り上げ

 

それを下ろす

 

パチン!

 

「ーッ!?」

 

なんてことはなく、鳴神の額を人差し指で弾いた。

 

デコピンだ。

 

「これで、ちゃらだ」

 

それ以上やる必要はない。

 

本人がちゃんと反省しているからだ。

 

「え、あ、そ、その、あ、え!?」

 

本人はまだ、状況を掴めてないようだが。

 

しばらくすれば、状況を理解したが、彼女はまだ不満そうだった。

 

「本当にこれだけいいのか?」

 

「元はと言えば、俺のせいでもあるからな。それに、お前はキチンと謝ったじゃないか。反省もしてるみたいだしな。なら、なんの問題もない」

 

この言葉が意外だったのか、勇人は多少驚いていた。

 

そして、気づいた時には笑っている自分がいた。

 

「君は変わった奴だな」

 

「よく言われるよ。それにさ、よく言うだろ?(レディー)を殴る男は最低(クズ)だって」

 

勇人みたいな美少女は尚更ね

 

「だから、デコピンか?」

 

とおでこをさする勇人。

 

結構綺麗に入ったからか額の一部が赤くなっている。

 

「まぁ、佐和子先生の案だけどな」

 

「だからか、僕もよく無茶したりやり過ぎた時は師匠にやられたものだ」

 

成る程、受け売りだったんだ。

 

それを聞いた先生は笑顔で何か懐かしむようにこう答えた。

 

「だって、勇人ちゃんみたいな可愛い子は殴れるわけないじゃない?」

 

おっしゃる通りです。

 

「だけど、本気でやらなかったか?まだ、ジンジンするんだが……」

 

「上手く入ったからじゃないか?」

 

まぁ、それなりには入れた……かもしれない。

 

 

それはさておき……

 

「ところで、佐和子先生。話とはなんですか?」

 

「あら、いつもみたいにさっちゃんでかまわないわよ?」

 

いや、もうあんな事聞いたら呼ぶことなんてできない。

 

見た目に限らずとんでもない人物なのだから。

 

「まぁ、いいわ。話……というよりはお願い事かしら?すこし、ジロー君に頼みたいことがあるの」

 

「俺に頼みたいことですか?」

 

「うん、最初は無理かなとおもったけど、これなら大丈夫だってわかったから」

 

はて、何が大丈夫なのか?それに、無理とはなんだったのだろうか?

 

色々と気になるワードが……

 

「師匠!もしかして、例の話の相手って……」

 

と、ここで勇人がまさかと言った表情で佐和子先生に詰め寄る。

 

それに、チラチラとこちらを見ている。

 

「うん、そうよ?」

 

何が、そうなのだろうか?

 

当の鳴上は顔を真っ赤にした瞬間、頭から湯気が出はじめ、椅子に座ったまま、固まってしまった。

 

なんか、わからんがとんでもないフラグが立ちそうな気がする

 

案の定それは

 

「えっとね、頼みっていうのはね……ジロー君に勇人ちゃんの彼氏役をやってもらいたいの」

 

無慈悲に落とされた。

 

「えぇえええええ!!」

 

フラグ乱立宣言(バクダン)であると同時に

 

更なる波乱を呼び寄せるものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さっちゃん先生の正体は鳴上家専属の護衛。そして、勇人の師匠でもある。
それなら、鳴上家の事情を知っていてもおかしくはないは……ず?

次回は 偽物の恋人 略して ニセコイ!! なんてなるかも?

あれ、鳴上勇人は校内だと男と認識されてるはず……てことはまさかの!?

教頭とは?許嫁なんじゃないの?一体どうなるの!?

お楽しみに!!


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