ふざけていると味噌付けて食っちまうぞ
集合場所の喫茶店に辿り着いたコブラとディアンサ。
店内に客は少なく、カウンターに座り店主だと思われるドラフの男と話している金髪の男と、とにかく元気で、独特の話し方をして盛り上がっているエルーンの三人組だった。
入ってきたコブラ達に店主が声をかける。
「いらっしゃい・・・2人か、好きな席に座りな」
「ああ、そうさせてもらうぜ」
コブラが返事をしている間に、ディアンサは店内を見渡し入り口に近い4人がけの席を指さした。
「コブラさん、あそこにしましょう、協力者さんも気がつきやすいと思います」
「そうだな」
ディアンサの提案に賛成し、コブラ達は席に向かい腰を下ろす。
協力者との集合時間まではまだ余裕がある。
店主に飲み物を頼み、軽い会話をしながら時間を潰すコブラとディアンサ。
ゴブラの冒険の話しをしてほしいと、せがむディアンサ・・・だが、コブラは話す気が無いのか腕を首の後ろに組んで背もたれによりかかっている。
すると、聞き流せない3人組の男達の話し声が聞こえてくる。
「それよか、聞いたかよ、この近くにアウギュウステ列島ってあんじゃんよ?」
「ああ、それがどうしたし」
「オレ達がいた島みたいに帝国軍が島の星晶獣を暴走させたらしいんよ」
話しを聞いていた男二人が驚く顔をする。
「!!ッやべぇーじゃんソォレ~」
「だろぉ?」
話しをふった3人組の一人が驚く2人を他所に話しを続ける。
「だけど、なんか突如空から落ちてきた赤い服の男が放った攻撃で、暴れ回る星晶獣を一発で倒して怒りを沈めたって噂があんのよぉ」
「「マジで?!」」
「マジも大マジ・・・・・・見た人が大勢いるわけ、世の中にはヤベぇ奴もいんだな~」
「「だなぁ~」」
その時、ふと男の一人がディアンサ達のいる方に視線を向けて固まった。
「・・・・ってオイ待てよ、あの可愛い子と入ってきた男見ろよ・・・・・・服装真っ赤なんだが?」
「「「・・・・・・・」」」
ディアンサの目にはこちらを向いて固まっている3人組が映る。
しかし―――。
「「「ないないないない」」」
「なんか~その男の左手は銃なんだとヨォ~・・・・・・」
そう言って話題を振った男はコブラを左手を見つめ呟いた後、視線を元に戻す。つられる様に他の2人も視線を向けるのを辞めた。
彼らの話題の話しを続く。
「でぇ~話しは戻んだけど、その島で帝国軍と戦っている中に、キャタリナさんがいたらしいんよ!」
一連の話しを聞いていたディアンサはスッとコブラに視線を戻す。
「コブラさん・・・」
「ヘヘッ、また人気者になっちまうなこりゃ、サインの練習でもしておくか」
既に3人組の男達の内容変わっており、キャタリナさんというワードが何度も飛び交っていた。
喫茶店には緩やかな時間が流れていく・・・・・・。
3人組の男達は依然盛り上がっている。一方、金髪の男は食事を済ませたのか、今はパフェを口に放り込んでいる。それを遠くから羨ましそうに眺めているディアンサ。
コブラは葉巻を咥え暇そうに肩肘をついて怠そうにしていた。ディアンサのことを配慮したのか火は付いていない。
「来ませんね、協力者さん」
「そうだな~」
間延びした返答を返すコブラ。約束の時間はとっくの昔に過ぎている。
その後20分ほどした後・・・。
ディアンサが我慢出来ずパフェを注文し、店主が持って来たパフェを嬉しそうにほおばっている時、喫茶店の出入り口の扉が開かれる。
コブラは怠そうに扉を開け、現れた人物に目を向ける。
「ここが集合場所でいいんだよね?!うん、あってるあってる、赤い服の男・・・・・・あっ!いた!!」
コブラの姿を見つけ駆け寄ってくる。
見た目は17歳程度の赤いマントにミニスカート、髪をポニーテールにしていて・・・そして何より兎のような髪留めが印象的な少女だった。
姿を一通り確認したコブラは顔を手で覆った。
「またか・・・・・・少女は美女とは呼ばないぜ、シェロさんよ・・・」
少女がコブラ達の前で足を止める。
「遅れてごめんね!道に迷っちゃてさ~貴方・・貴方達が依頼を一緒にやってくれる人達かな?」
少女はコブラに近づき声をかけるが対面の席に座るディアンサに気がついて言葉を言い直した。
「ああ、そうだ俺が協力者のコブラだ・・・そしてこっちがディアンサだ、よろしくな」
コブラは少女に質問に笑顔で応える。そこに一瞬見せた残念そうな顔は見えない。
「あ、あの・・・・・・お名前を聞いてもいいですか?」
「ああって! ごめんね! うちまだ名乗ってなかったね!・・・・美少女錬金術師のクラリスだよ☆よろしくねっ! いぇいっ☆」
ポカンとするコブラとディアンサ、その表情を見てクラリスは慌てはじめる。
「え、え・・・・うち何か間違えた?」
「いや、知り合いに似たような挨拶をする奴がいただけさ、気にするな」
コブラはディアンサがパフェを食べ終えているのを確認し、席から立ち上がると店主にお金を払い喫茶店を出ようと歩き始める。ディアンサとクラリスがコブラに続くように歩き出す。
「コブラさん、・・・お金――」
ディアンサが財布を取り出そうとバックに手を入れるが、コブラがそれを手で止める。
「いいってことよ、レディにお金を払わすなんてダサくて俺には出来ねぇ」
「ええ!!いいなぁ~ねぇ、おじさん依頼が終わったら私にも奢ってよ!」
「俺は、おじさんじゃねぇ・・・・・いくとするか」
扉に手をかけ一度立ち止まり、後ろを振り返る。コブラの瞳はディアンサ達ではなくカウンター席に向けられていた。
何事かとディアンサとクラリスが振り向きコブラが見ていた方に視線を向けると、出て行こうとするこちらに向かって金髪の男と3人組の男・・・そして店主が笑顔で手をふっていた。
ディアンサが軽く頭を下げ、視線を元に戻す。
すると・・・コブラは既に店を出ていて、ディアンサ達は慌ててコブラの背中を追いかけたのだった。
結果から言えば、魔物退治はあっという間に終わった――。
山を登り始めたコブラ達は魔物と遭遇。
ディアンサは祭司から貰った杖を使いコブラとクラリスを援護している。
援護を貰っているはずのコブラに変化は見て取れない。
コブラはサイコガンを使わず、愛銃であるパイソン77マグナムを使って魔物を倒していく。
コブラはかなりの数の魔物を倒しているのだが・・・・
そんなコブラよりも多く魔物を倒すクラリスがいる。
「それ☆!」
地形ごと魔物を爆破していくクラリス。
あっという間に周囲からは、魔物の気配が消え去っていく・・・・・・。
「ぃよしっ☆これで粗方片付いたかな?」
「こいつは驚いた・・・・・・」
流石のコブラも目の前の光景には驚き、咥えていた葉巻を落としていた。
コブラ達が立っていた場所は更地・・・・既に山ではなくなっていた。
「いっやぁ~なんか今日のうち、妙に力が湧いてくるっていうか・・・・これがディアンサちゃんの力なんだ!!凄いね」
更地化した原因が自分にもあると発覚したディアンサは酷く落ち込む。
「こ、これ依頼主に怒られたりしません・・・よね・・・」
「大丈夫!依頼主さんも了承済みだよっ!どんな人かは知らないけど・・・なんかね、とりあえず、全力でやってくれればいいみたいだから」
生き残りの魔物を発見し、走っていくクラリスをコブラとディアンサは見送った。
依頼を終えた、コブラ達は集合場所だった喫茶店に戻る。店内には金髪の男は既にいなくなっていたが、3人組はいまだに元気に騒いでいた。
魔物を掃討したコブラ達は祝杯をあげる。
コブラのおごりにより、並べられる料理の数々を美味しそうに食べるクラリス。
「やっぱりさ☆こういうのも何かの縁だと思うんだよね。それでウチ、一緒に依頼をこなした人とは、毎回お茶するんだよね・・・今回は御馳走だけど!!」
クラリスは自分の家が引きこもりだったから、いろんな話しを聞くのが好きだと話す。
ディアンサはクラリスの話に熱心に耳を傾けている。
そして今度はディアンサが自分の生まれた島の伝説を話し、クラリスも楽しそうに聞いている。
次第に打ち解けていくディアンサとクラリス・・・そんな彼女たちをコブラは酒を飲みながら静かに見守っていた。
そうして、辺りはいつのまにか日は沈み、夜になり・・・・。
「また、会えるといいね☆ディアンサちゃん!」
「はい!クラリスさんもお元気で」
喫茶店の入り口で再会の約束を交わし、コブラ達はクラリスと別れ、今日泊まる宿に向かって歩きだしたのだった。
(アストレイ・アルケミスト)
既に太陽が沈み不気味なほど静かだった。すでに0時を回っており街は暗闇と静寂に包まれている。
その中を必死に走る足音が響く。そんな足音の主を追うように無数の足音が続く。
「追え!必ず捉えるんだ!!!」
無数の足音の正体は帝国兵士達。彼らは大人数でとある少女を追っていた。
(なんで・・・ウチを追いかけてくるわけ、意味わかんないし!)
その少女とは、さきほどコブラ達と分かれたクラリスである。
クラリスは既に走り続けていた影響で体力をかなり消費しており、肩で刻むように息をしている。
必死に走る。しかし、どこに逃げても帝国兵士が待ち伏せしており、段々とクラリスが逃げられる場所が減っていた。
このような状況になった経緯は。
クラリスはコブラ達と分かれた後、帝国軍の兵士に背後から声をかけられた。
最初なぜ声をかけられたか分からなかったクラリスだったが、普通に受け答えをしようと振り返った。
その時、帝国の兵士の周りにいた人物達を視界に納めた途端、クラリスの直感が告げていた。
――このままこの場所にいたら危険だと――。
その直後、クラリスは全力で帝国兵士と錬金術師から逃げるように走り出していた。
そして今現在、追いかけて来ている兵だけで六名いる帝国の兵士に追われていた。恐らくクラリスを追いかけている人物は錬金術師も含めれば20人はくだらないだろう。
クラリスは逃げながら必死に考えていた。このままでは近いうちに捕まるという確信があった。
息を整えるため、クラリスは全速力で走り追いかけてくる兵士との差を広げると、通路を曲がり路地の物陰に身を隠した。
「近くにいるはずだ、必ず見つけ出せ!」
クラリスを追っていた帝国兵が過ぎ去っていく。それを見送りクラリスは大きくため息をついた。
(・・ウチなんも悪い事してないよ・・・・・・ご先祖様探してないけどさぁ)
息を落ち着かせ、クラリスが立ち上がろうとした時、こちらに迫る足音に気がつく。クラリスは立ち上がり狭い路地に向かって走り出す。
「こっちだ!いたぞ!」
帝国兵が声を上げクラリスに迫る。
狭い路地を走り障害物となりそうなものを倒し、再び前を向いて走りだそうとした、クラリスが突然足を止める。
クラリスが目を向けた先・・・路地は行き止まり、壁は高すぎて上れそうにない。クラリスに逃げ場はなかった。
「やっと追いついたぞ、覚悟しろ!」
妨害工作も虚しく。帝国の兵士はクラリスに追いついた。帝国の兵士に続くように錬金術師も現れる。
「や、やだよ!!ウチは付いてかないからね!!」
壁に寄りかかり、大声で叫ぶクラリス。
帝国軍はクラリスに言葉に反応を見せず、ジリジリと迫ってくる。それは彼女の錬金術を警戒してのことだろう。
クラリスが錬金術を使えば、目の前の帝国の兵士たちは余裕で倒せるだろう。しかし加減が出来ない、そのため周りに住んでいる街の人達も巻き込んでしまうので使う事が出来ない。
帝国の兵士もクラリスがここでは錬金術を使う事が出来ないと知り、わざと町中でクラリスを追いかけていた。
帝国兵とクラリスの距離はもう殆どない。帝国兵の一人の手がクラリスを捕まえようとした所で・・・。
「その辺でやめとけ、嫌がってる子供相手に大人が何人も囲んだりして、見ちゃいられねぇ」
突如発せられた男の声に警戒する帝国兵達。一度クラリスから距離を取り辺りを見渡す。
帝国兵達の視線がある一点に集まる。
そこは誰もいなかった筈の壁の上、そこに一人の男が立っている。
「誰だ、お前は!!」
「俺か? 俺はジョーギリアン、ラグボール期待の新人さ」
いつの間にか姿を現したコブラは、壁から飛び降りクラリスの隣に着地する。
「コブラさん・・・」
「よお、さっきぶりだな、お転婆娘」
突然姿を現したコブラにクラリスは思考が追いついていない。
コブラは帝国の兵士と錬金術師と相対する。
不足の事態に驚いた帝国兵士達だったが、落ち着きを取り戻す。
「貴様、痛い目を見たく無かったら、その娘を渡せ」
「嫌だね」
帝国兵士の要求を簡単に突っぱねるコブラ。
「我々の邪魔をするのが、どういうことか分かっているのか?!!」
帝国兵士の威嚇にも動じる素振りはない。
「いいぜぇ、追われるのはいつものことさ」
この言葉が決めてとなり、帝国兵士は実力行使に移った。相手は一人こちらは六人、この男を殺した後に少女は捕まえればいいと考えて。
先頭の帝国の兵士がコブラに襲いかかる。
「おっと、危ない」
コブラに向かって突き立てた槍を交わし、槍の持ち手を掴む。
掴んだ槍を引き寄せ、バランスを崩しコブラに引き寄せられる帝国兵の顔面をヘルムの上からぶん殴り吹き飛ばす。
殴り飛ばされた兵士が一人の兵士を巻き込み地面に倒れ込む。その男は先ほどコブラにクラリスを引き渡すように言った、帝国兵士だった。
「イテぇ、手が赤くなっちまうぜ、こりゃ」
唖然とする帝国兵をよそに殴った右手を痛そうにしているコブラ。殴られた兵士のヘルムは大きく陥没しており起き上がる気配はない。
その光景を見て騒然としていた帝国兵士が剣を構え、錬金術師が術を発動させようとするが・・・・
「早撃ちは得意でね」
コブラが左手の義手を外し、放たれたサイコガンが直撃し、皆崩れ落ちた。
戦闘は一瞬のうちに終了した。コブラの正面にはうめき声を上げながら倒れている兵士と錬金術師。
その後、巻き添えを食らい地面に倒れていた帝国兵士が起き上がろうとしたタイミングでコブラがサイコガンを構える。
「言いな、このお転婆娘を狙ってる理由はなんだ?」
立ち上がろうとした兵士は辺りを見渡し、仲間が全員倒されていることに気がつき、怯え始める。
「し、知らない!オレ達はタダ、上からの命令で」
コブラは右手で怯える帝国兵を持ち上げ、サイコガンを兵士のヘルムに押し当てる。
体を持ち上げられ、向けられているサイコガンから逃れようとする帝国兵士だったがコブラの腕は鋼鉄のようにビクともしない。
「2度目はないぜ」
コブラの一言で観念した帝国兵が口を割り、クラリスを襲った理由、そして彼女の両親も今頃襲われているであろうと話し始めたのだった。
「それで、お前達の親玉の名前は?」
「し、知らない!!ホントに知らないんだ、俺は研究所に入ったことがないんだ」
聞きたいことは聞けたと判断したのか、持ち上げていた帝国兵を壁に投げ飛ばし気絶させ、クラリスのいる方に振り向く。
「だ、そうだ、お転婆嬢ちゃん、俺は一度宿に戻るが一緒に来るか?」
「う、うん!ウチもいく」
いまだに、どうしてここにコブラがいるのか、そして、あっという間に帝国兵を倒してしまった事態に理解が追いついていないが。
クラリスは一度うなずき、コブラの後に続き、彼らが泊まっている宿に向けて歩き出したのだった。
宿に戻ったコブラは、ディアンサが泊まる部屋のドアを叩き、しばらくして眠そうに目をこすりながら扉を開けて現れたディアンサにクラリスを任せ、コブラは自分の泊まる部屋に戻っていった。
感想、評価ありがとうございます。
そして誤字脱字の指摘してくださる方、本当にありがとうございます。
注意
次回の更新は遅くなると思います。
コブラの口調が難しくて辛い