島に降り立ち、ディアンサとクラリスが帝国兵とパラケルススに追い詰められていたグラン達を助太刀に入った事でピンチを脱出。賢者の石の影響で弱体しているカリオストロをグランが担ぎ、撤退している最中、男の姿はとある施設にあった。
葉巻を咥え、とある施設を遠巻きに見つめるコブラ。彼が調べた結果、すでにクラリスの両親は囚われているらしく。軟禁されている目の前の施設には多数の錬金術師と帝国兵の姿があった。
「おやまぁ~随分警戒が厳重だこと、パーティでもやるのかね」
コブラは冷静に施設を警備する兵士を確認するが、如何せん人数が多く正面突破は余り良い選択とは思えなかった。
「まぁ、忍び込むのは得意さ」
葉巻を吸い終えたコブラは施設に向かって歩き出した。
並大抵の人間では、近づく事すら出来ない警戒状態だが、コブラにとって潜入は本業に近い。
そして監視カメラや金属探知機などが無い場所に潜入することなど造作も無い。
兵士達の視線が逸れたタイミング。または話してる隙に、物陰から物陰に素早く移動。そして時には大胆に音を立てずに兵士の背後を走り抜ける。
コブラはあっという間に、誰にもバレることなく施設内部に潜入することに成功したのだった。
新しい葉巻に火をつけ、クラリスの両親を探すため、颯爽と施設内を歩くコブラ。
途中、遭遇する帝国兵や錬金術師を上手く躱し、施設の奥へと進んでいたコブラは遂に目的とする部屋を発見した。
「よっと、ここだな」
施設の最奥の部屋、扉は鋼鉄で出来ており見るからに無骨で頑丈、鍵穴が見受けられるが、コブラはここに来るまでに見つけられていない。
仕方無いと、一度手をはたき、扉の持てそうな箇所を握り。力を篭める。
「ッッッッッ!!」
すると、扉の周りの壁に亀裂が走りは始め、壁が少しづつ崩れ始めた。
そしてコブラは取り付けられた扉自体を強引に引き抜いた。同時に扉付近の壁が抱懐する。
「・・・・・・な、何事です!?」
中から狼狽する女性の声が聞こえ、コブラは両手で持っている扉を付近の壁に立てかけ。部屋の中に入っていった。
「さがっていろ、プロメティア!」
コブラが部屋に入ると、中にいたのは2人の男女。彼らはコブラの姿を見て警戒をあらわにする。
男が、女を庇うように前に出る。
「何者だ」
「オレか?ただの傭兵さ、名はジョー・ギリアン・・・・・・お転婆嬢ちゃん・・・アンタらの娘さんに助けるように言われて来ただけさ」
コブラの言葉に2人が反応する。
「く、クラリスは無事なのですか?何か怪我とかは・・・・・・」
「ああ、元気にしてると思うぜ、今は別行動中だがな」
少し安心した素振りを見せる2人。やがて女性が口を開く。
「そ、そうですか申し遅れました。私はクラリスの母でプロメティアと申します」
「父のハロルドだ、感謝する」
「へへッ、挨拶は後にしょうぜ、とりあえず今は脱出が優先だ」
コブラがそう言って自分が入ってきた報告に目を向ける。
プロメティアとハロルドがコブラの言葉に賛同し頷く。
「ついてきな、余り音を立てるなよ、バレちまったら面倒くせぇからな」
結局最後まで帝国兵士や錬金術師は気がつかれることなく、コブラは2人を施設から盗みだしていったのだった。
彼らが壁から強引に引き抜かれた扉、そしてプロメティアとハロルドがいなくなっていることに気がつくのはもうしばらく先の事。
「みんな大丈夫?」
。当初ルリア、ビィそしてカリオストロと研究施設に向かっていたが、それがおびき出す為の罠だったらしく。パラケルスス達との戦闘でカリオストロが賢者の石によって弱体化。
グランがルリアとカリオストロを守りながら賢明に戦うも、カリオストロが弱体化した原因。賢者の石で錬成された、白い人型の塊・・・・・・ヘルメスの門と呼ばれる兵器には攻撃が効かず絶対絶命の危機だった。
そんなタイミングで最近グランの旅のメンバーに加わり、アウギュステにいるはずのディアンサが少女と共に現れ、窮地を救われ、この場所まで逃げてきたのだった。
「グラン、私は大丈夫です」
「オイラも問題無いぜ」
グランの問いに真っ先に応えてくるルリアとビィ。グランは一同を見渡す。
息を切らしている自分達を助けてくれたクラリスという少女。そして彼女に声をかけているディアンサ。
「す、すごいね、ディアンサちゃんは……ウチもう走れないよ」
「私は少し踊りの練習とかで体力が付いただけだよ」
クラリスと対照的にディアンサはあまり疲れている様には見えない。
そして最後の1人、グランが今抱きかかえているカリオストロがいる・・・全員無事に逃げられていることほっとするグラン。
「オイ、グランいいからもう降ろせ」
その声には恥ずかしさが混ざっており、頬も若干赤くなっている。
今のカリオストロの状態はお姫様だっこと呼ばれるものであり、その姿を見たルリアが羨ましがるなどの経緯もあった。
グランはゆっくりカリオストロを降ろす。
逃げながら途中、軽く自己紹介をするクラリスと、そんな彼女を警戒するカリオストロとの間で少しもめ事があったが、無事に解決していた。
グラン達はディアンサとクラリスが指定した場所に向かっている。そこに何があるのかは知らされていないが、ディアンサが行けば分かるとの事なので一同は歩みを進めている。
やがて、集合場所だと思われる広場が見えてくると、その場に立つ人影が見えてくる。
その光景を目にした途端、グランの脇をクラリスが走り抜けていった。
グラン達が近づき人影の正体が見えてくると、そこには、ディアンサが現れた時点で、いるであろうと予想していた人物がグランの到着を待っていた。
「お父様! お母様!」
「クラリス・・・・・・心配かけたようですね」
「すまないな、クラリス。お前に迷惑をかけてしまって・・・・・・」
「そ、そんなの気にしなくていいって!お父様達が無事なら・・・・・うち、それで十分だから」
プロメティアとハロルドの元に駆け寄ってきたクラリス。
その後、両親に何か言われたのか戸惑ったような表情を浮かべるクラリス。
家族の再会に水を指さないよう、少し下がったコブラはクラリスが走ってきた方向からグラン達の姿を確認し、葉巻を取り出した。
「おい、コブラじゃねーか!なんで、オメぇがここにいるんだよ」
「うっせーなトカゲ、少し黙ってろ。家族の感動的な再会シーンだぞ」
「オイラはトカゲじゃ「コブラありがとう」・・・おい、グラン・・・オイラまだ話してんだけど」
自分の抗議の声をかき消され少し落ち込むビィをおいて、話すコブラとグラン。
「いいってことよ……おお、ディアンサもお疲れさん」
「ははは、私は殆どなんもしていませんけどね……コブラさんはやっぱり凄いですね」
話すクラリス一家に目を向けディアンサが呟く。
「そんなことない ディアンサさの援護は助かったよ」
「そうですか……それなら頑張ってよかったです!」
少し落ち込む素振りを見せるディアンサにグランがフォローを入れる。
「いいか、ディアンサ、誰にも得意、不得意はあるんだ。完璧な人間なんてこの世にはいねぇよ。自分の出来ることをやればいいんだ」
「は、はい!!分かりました」
それから家族の再会を見守ること数分。
「さて、それじゃ、クラリスそろそろ始めるか」
「ううっ・・・・・・わかったよー」
カリオストロの声に嫌そうに反応するクラリス。
こうしてカリオストロによるクラリスの錬金術講座が始まろうとしていた。
集合場所から移動し、カリオストロがクラリスに講義をしている途中、他のメンバーは近くの建物に入り、現状の報告共有をしていた。
「錬金術の勉強・・・・・・ですか?それも開祖直々の?」
「はい。クラリスさんにみっちり、教え込むんだそうです。」
プロメティアの疑問にルリアが元気よく答えている。
どうやら、逃げている途中。クラリスがグランの旅の仲間に加わりたいと言ったようで、グランが頷こうとする直前、加わる条件としてカリオストロがこの講義を提案したようなのだ。
外では、カリオストロの怒号とクラリスの悲鳴が聞こえている。
グラン達との合流前、コブラがカリオストロのことを軽く話していたおかげで、プロメティアとハロルドは開祖カリオストロを警戒はしているが敵視してはいなかった。
彼らは一通り内容を話したところで、カリオストロ達の場所に向かったのだった。
講義が進みカリオストロに教えられたとおりに、錬成をしていくクラリス。しかし中々思うようにいかず、失敗が続いていた。
そんな彼女達を遠くから眺めるコブラとディアンサ。
「クラリスさんは大丈夫ですかね」
「分からん・・・お転婆嬢ちゃん次第だな」
彼らが見守る先で再び爆発が起きる。
「ちっ・・・・・・また、失敗か・・・・・」
「・・・・・・ごめん。やっぱり、うちには・・・・・・」
錬成の失敗続きで元気がなくなっているクラリス。カリオストロが励ましていた。少してカリオストロがひとり、何かを考え込み始める。
そこにコブラ達と同じようにグランとルリアが近づいていく。どうやら2人も落ち込むクラリスを励まそうとしているらしい。
グラン達のおかげで元気を取り戻すクラリス。もう一度錬成に取りかかろうとした時―――
コブラがディアンサに呟く。
「・・・ディアンサ。俺の後ろに隠れてろ」
「コブラさん一体何を・・・・・・」
ディアンサを背後に回し、コブラはホルスターからパイソン77マグナムを撃ち放つ。
コブラの放った銃弾は物陰にいる何かに確かに命中し鈍い音が響く。
しかし、コブラの銃弾が効かなかったのか怯んだ様子は無く物陰の何かから光線が放たれる。
「クソォ! オイ、嬢ちゃん!」
コブラの声に反応してクラリスとカリオストロが振り向くが時既に遅く、光線がクラリスに迫っていた。
「え・・・・・・」
「チッ、何ボーっとしてやがる!」
反応出来ず、棒立ちのクラリスを守るためその身を盾にするカリオストロ。
「ぐはっ・・・・・・」
攻撃を代わりに受けたカリオストロは力なく地面に倒れる。
「まさか、ニグレドの奇襲に気がつく者がいるとは思わなかった、だが残念なことにニグレドには錬金術しか効かないことを知らなかったようだな」
物陰からニグレドを連れてパラケルススが現れる。同時に多数の帝国兵士が後方から駆け寄ってきてコブラ達を包囲する。
「今日の俺は運が良い。さぁ、ニグレド・・・・・チャンスだ。開祖を吸収しろ。」
「させるかよ」
コブラがパイソンの銃口をパラケルススに向けて放つ。
だが、その攻撃は近くの帝国兵士が盾となりパラケルススに届かない。
「こんにゃろぉ~何処からともなくゴキブリのようにゾロゾロと・・・・・ディアンサ俺の側を離れるなよ」
「は、はい!!」
ディアンサを抱き寄せるコブラ。この間にもグラン達とコブラ達の間に兵士が入り込んできて彼らと段々と距離を離され孤立する二人。
コブラは斬りかかってくる兵士にパイソン77マグナムを放ち、ホルスターに戻すと左手の義手を外し、サイコガンを引き抜く、そして兵士達には銃口を向けず、真上に向かって撃ち放った。
コブラが最後に兵士と兵士との隙間から見えたのは吸収されていく、カリオストロの姿と絶望するクラリスの姿だった。
大袈裟な身振りで喜びを表すパラケルスス。そしてニグレドの体にちりばめられた結晶が少しずつ輝きを放ち始める。
やがて閃光が収まると、そこにはカリオストロの容姿を模したニグレドの姿があった。
「あはははっ! これで開祖の知識と技術は私の――――なにっ!!?」
突如パラケルススは背後を振り向き手から障壁を展開し、迫る光弾を防いだ。しかし―――。
「っ!!! なんだ、この攻撃の威力は!!」
迫る光弾を防いだパラケルススは息を切らしながら崩れるように、片膝をついた。
「あの赤い服の男・・・何者だ、まぁいい開祖は手に入れた。あの男は今、帝国兵と戦っているはずだ、こっちには来れまい」
パラケルススは体制を立て直し立ち上がった。
グラン達は帝国兵士達を捌きながら、各々に背中を預けていた。
「うちが・・・・・・うちがちゃんと出来なかったから・・・・・・」
「違うクラリス!!まだ何も終わって無い!!」
「そうです!クラリスさん、カリオストロさんも言ってました。まだ何か出来るはずです!」
「なに言ってんの!?そんなわけ・・・・・・」
「大丈夫、カリオストロはそんな簡単にくたばったりしない!」
グランの瞳がクラリスを見つめる。その目にはカリオストロの無事を確信しているように強く輝いていた。
「っ!!」
「私達はクラリスさんなら、なんとかできるって!・・そう信じていますから!」
ルリアの言葉に強く頷くグラン。
「もちろん、オイラも信じてるぜ」
グランとルリアが必死に声に反応するように、絶望しかけていたクラリスの瞳に灯りが点る。
グラン達に続くようにプロメティアとハロルドも声をかける。
貴方になら出来ると・・・・・それまでは私達、親が貴方を守ると。
一同は体制を立て直し、前にいるパラケルスス、そして何人もの帝国兵に向かって各々の武器を構える。
すると 突如、彼らの体を優しい力が包み込む。突然の状態に驚く一同。プロメティアとハロルド以外は全員この力が誰のものなのか知って居た。
グラン達が逃走している時、グラン達の心を支えてくれた力。
何も出来なかったと言っていた少女の人の精神力を底上げしてくれる優しい力。
この力こそが彼らが今も戦っていることの証明だった。
「そろそろ作戦会議は終わったか?」
余裕そうにグラン達を見据えているパラケルスス。その傍らにはカリオストロの姿を模したニグレドが圧倒的な威圧感を放っていた。
私は早くレディを出したい・・・だけど話しが進まない。
アストレイ・アルケミストは次回で終わる予定。
感想、お気に入りありがとうございます。
誤字脱字の指摘をしてくださる方本当に感謝です。
今のところ、クラリス以降で2、3人仲間を増やせたらいいなと思ってるんですが、何も考えていません。