「あ、コブラさん!!!お帰りなさ・・・い?・・・じゃなくて・・・・・・お久しぶりです」
運転席の後ろに作られていた新たな座席、おそらくレディがディアンサの為に新たに作ったものだろが、その席に座っていたディアンサがコブラに気がつき、駆け寄ってくる。
「ヘヘへッ、ディアンサとりあえず、無事に合流出来てよかったぜ!それと、ちゃんとレディのところまで、届けてくれてありがとよ」
コブラはディアンサの頭に手を置きやさしく撫でる。
「コブラ、確認だけど、この近くで戦闘が行われてる場所を探して、向かえばいいのね」
「ああ、頼むぜレディ」
コブラの後に続くようにタートル号に乗り込んだレディが、コブラに目的地を確認しながら運転席に腰を下ろした。
「了解、ディアンサ座席に座ってちょうだい。発進するわよ」
「分かりましたレディさん!とにかくです、コブラさんまた再会出来てよかったです!!」
そう言ったディアンサは、コブラの手から残念そうに離れ、座席に座り直す。
ディアンサが席についたと同時にタートル号のエンジン音が響く。その後、少しの船体が揺れた着陸のために使用するランディングギアを外し、タートル号が浮上し移動を開始した。
雪の大地の上を高速で移動するタートル号。
発進と同時に、操縦室から突如出て行っていたコブラが戻ってくる。
「ディアンサ 護身用だ、これを持ってな」
どうやら、タートル号の荷物室で何かを探していたようだ。
操縦室に戻ってきたコブラは自分の座席に座らず、ディアンサの座席に背もたれに肘を掛けながらディアンサに向かって声何かを放り投げた。
「え?・・・え!!?」
膝の上に乗ったものに目を向けたディアンサが驚きの声を上げる。
コブラが放り投げた物・・・見た目はコブラの着る服と同じで赤く、一般的には銃と呼ばれるものだった。
「わ、わたし!こんな物使えませんよ!!」
慌ててコブラに返そうとするが、
「大丈夫だ、護身用って言っただろ? 弾を撃っても虫一匹殺せやしねぇ」
「で、ですけど」
「それにだ・・・その銃に入ってる弾は特別製でよ、使えば俺が駆けつけるまでの相当な時間稼ぎが出来る。その厄介さは俺が身をもって体験したから保証するぜぇ・・・おっとあいつらの姿が見えてきたな」
そういったコブラは、風神雷神の姿を目にすると話しを切り上げた。
タートル号内でコブラが遠くに風神雷神を確認した時、その戦場では雄叫びを上げながら攻撃を繰り出す風神雷神と、その攻撃をどうにかかいくぐり、接近しようとするゼタとバザラガ・・・・・・そして、彼らから少し離れた箇所でリラを持たず、代わりに以前、ならず者から拝借したブロードソード片手に魔物を圧倒しているアンリエットの姿だった。
「へへへッ、エティのやつとうとう隠す余裕が無くなったか・・・レディ、エンジンの調子はいいんだよな」
「ええ、さっきも言ったけど好調よ、それがどうかした?」
「へへッ、ディアンサにこの船を凄さを教えてやろうと思ってな」
レディの回答が満足のものだったが、コブラは再び、ディアンサに視線を戻す。
「ディアンサこの船のことどれぐらい教えて貰った?」
手に持つ赤色の銃に視線を向けていたディアンサが顔をあげる。
「え、えっとです・・・凄いお金がかかっているのとレディさんが教えてくれました」
「へへへ、そうだな、なら丁度いい、タートル号の機能の一つを見せてやるぜ」
すでにディアンサの目にもゼタ達の姿も目視で確認出来る距離に近づいており。彼らが苦戦しているのが見える。
「レディ、フォーメーションCだ!俺は上に出る」
何度目かの攻防の据え、大きく怯んだ雷神に向かって槍を繰り出すゼタ。しかし、今までと同じように、タイミングを狙ったかのような風神の攻撃がゼタに迫る。
「クソ!!ホント邪魔ね」
風神の攻撃を槍で受け止め、後方に吹き飛ばされるゼタ。空中で耐性を整え、着地する。
その直後、彼女の横に、バザラガ大きな振動と共に落ちてきた。
どうやら雷神に投げ捨てられたようだが、直ぐさま立ち上がり大鎌を構えるバザラガ。彼がダメージを受けたようには見られない。
「・・・・・・ッ!!」
「・・・どうしたゼタ、もう息切れか? 疲れたのなら下がっていろ」
「うっさいわね!アンタと違ってこっちは擦っただけで致命傷なのよ!!それに疲れてないわ!余裕よ」
遠くに佇む風神雷神を睨み付けるように見るゼタ。
先ほどバザラガに吠えたが、肩で息をする程度に疲れているのは確かなのだ。
「そうか、無理ならいつでも言うが良い。二体ぐらい俺には余裕だ」
「言わないわよ!アンタも疲れてるならそう言えば? アタシがあいつら纏めて倒してあげるから」
ゼタは、彼らから目を離すと、小言を言ってくるバザラガに目をむける。一見、戦闘前と変化は見られないが、訓練時代からよく見ているゼタにはバザラガの疲労が見て取れた。
「エティはこの騒ぎで集まった魔物の相手をして貰ってるし援護は期待できそうにないわね・・・というか彼女、どう見ても剣の扱い初心者じゃないわよね」
「そうだな、やはり何処かの機関には属しているようだ。だが俺たちの敵ではなさそうだ」
息を合わせたかのように二人がアンリエットの視線を向ける。
女性が持つのに丁度いい長さの剣を可憐に操り、魔物の群れを蹴散らすアンリエット。
彼女が魔物の注意を引きつけてくれているおかげで、ゼタ達は2対2で戦えているのだ。
「さぁて、バザラガ、仕方無いから協力してあげる。先に片方潰しましょう?あいつら強さの上限無に感じるから、このままだと正直な話し・・・負ける可能性もあると私、思うだけど・・・」
「いいだろう」
バザラガは多くを語らなかった。しかし、ゼタの提案を受け入れる。彼らを指導した教官がこの場にいたのなら目を見開いて驚愕していただろう。
「――くかかかか・・・貴様らなど既に我々の敵にあらず・・・――」
あざ笑う風神を、にらみ殺さんばかりの視線を向け、槍を構えたゼタ。彼女に続く様に大鎌を構えたバザラガ。
「うっさい!!お前達みたいな―――??!なにこの機械音・・・・・・なによあれ?」
機械音のする方向に目を向けたゼタは。遠くから戦場に向かってくる物体を見つけると目を細め、その正体を確かめようとする。
ゼタの視界が捉えたソレは、騎空艇にしては四角くそして長かった。ソレは今もなお凄まじいスピ―ドーでこちらに向かってきているのだ。
そして遠くからでも目に付く赤色・・・・・・凄まじいスピードで動く機械の上で発生しているであろう風に一切怯む事無く、葉巻を加え、左腕の銃を風神に向けて構えている男を発見する。
ゼタはその男の名前を小さく呟く。
瀕死の重傷を受けても、液体窒素で体を凍らせても・・・死ぬことがない奴の名前を。
やがて、男の左腕の銃から赤色の光が飛び出した。
勝負は一瞬。
高速で風神雷神の元に接近するタートル号、その姿は先ほどまでとは異なっており、列車のようにも見え、獲物を捕らえるために動く蛇のようにもみえる。
轟音を感知し、接近する視線をタートル号の方角に向けた風神雷神だったが、彼らが振り向いた時には既に、コブラの放った無数のサイコガンの光が目に前に迫っていた。
攻撃を防ごうとした風神は風をおこし、雷神は雷で対抗しようとしたが、
普段とは異なる赤色の光を放っていた無数の光弾は雷に相殺されず突き進む。
また、風神の風で逸れたに思われたが、光弾は意識があるかのごとく湾曲し風神雷神の元に向かって飛んでいき、彼らの体に直撃した。
風神の体を光弾は貫通し、残っていたもう一方の腕も吹き飛ばした。一方雷神も無傷なはずはなく、少なからずダメージをその身に受けていた。
しかし、風神雷神が揃い時間がたっている影響によって、この一撃も彼らを再起不能にすることは出来なかった。
普通の星晶獣が今のコブラの一撃を受けていたならば、一発で致命傷となるのだが、それに耐える風神らが異常だとしか言いようがない。
サイコガンを放ったコブラはタートル号の上で屈み、これから起こるであろう振動に備えると相棒に聞こえるようにと、大きな声で叫ぶ。
「レディ!突っ込め!!」
コブラの声に反応するかの如く、タートル号はさらにその速度を上げ、風神に向かって突き進む。
風神らとの距離は50メートルもなく、タートル号は速度を落とさず風神に体当たりした。
衝突した直後、タートル号の先端からフックのような物が2本出現すると、体当たりの勢いと衝撃で吹き飛ぶ風神を逃がさないように、ガッチリとホールドするとスピードを維持したまま急上昇を開始する。
まるで花火でも打ち上げるかのように、風神を掴みながら上昇していったタートル号だったが、少しずつその姿が少しずつ霞んでいき、風神ごと突如消失したのだった。
「・・・・・・なに?どういうこと?」
「・・・さぁな」
目の前で起きた戦闘に理解が追いつかないゼタ、それはバザラガも同じだったようで今、目の前で起きた出来事を理解しようとしているようだ。
そこに、轟音に動きを止めた魔物達の隙を見逃さず、手に持つ剣で、魔物を掃討し終えたアンリエットが合流する。
サイコガンにより、反撃の隙を与えず怯ませ、高速で接近した騎空艇のようなもので、風神を吹き飛ばし、その後捕まえて、何処かに連れ去った。彼らにはソレしか分からないのだ。
やがて、考えても無駄だと判断したアンリエットが二人に声をかける。
「えっと・・・とりあえず、いいではありませんか。あちらはコブラが引き受けてくれるようですし、我々で、弱体したもう一方を倒すことにしませんか?」
強敵に対し協力することを選んだ2人だったが、その真化を発揮することなく、戦いは終結することになる。
相手は一人でも余裕で倒せてしまうほどにまで弱体した雷神のみ。もちろん、彼らが協力する訳も無く、お互いに妨害しあう二人を避け、雷神にトドメを指したのはアンリエットだった。
現在コブラ一同と風神がいる場所、そこは異次元と呼ばれる場所である。
元々タートル号にはこのように異次元に潜り込むことは出来なかったのだが、コブラに命を救われたエンジニア達によって恩返し的に異次元潜行能力を付加されたのだった。
風神雷神は側にいることで力を増していくため、コブラのサイコガンで仕留められなかった場合、二体を引き離すために準備していたのだ。
異次元に潜り込むまでは風神の抵抗する力が強く、バリアを展開していたが異次元に潜ってからはみるみる弱体化していき、使う必用は無くなっていた。
船体正面のスーパーブラスターを捕まえている風神にたたき込みながら、左右の側面にもある複数ビーム砲をぶっ放している状態である。
言うまでもなく、風神は既に虫の息であった。
やがて、タートル号の砲撃が止まり、コブラが立ち上がり、風神に目を向ける。
「悪いな、アンタラを無理矢理、離すようなまねして」
「――――キ、キサマ!―――――」
風神はコブラを睨み付ける。その目には確かに怒りがあった。
「最後だな風神、お祈りの時間ぐらいは待ってやるぜ」
一時の静寂のあと、一発の光弾が異次元に走った。
男はサイコガンを義手に収めると、葉巻を取り出し火をつけた。
やがて一服終えたコブラはタートル号の船内に戻っていったのだった。
雪原の大地に、最初はぼんやりと、そして少しずつタートル号が姿を現す。
気がついた3人は話しを中断し視線を向ける。
やがて、完全に姿を現したタートル号のハッチが開き、コブラが姿を現す。
「へへッ、さっきぶりだなぁ?元気だったかい」
一同様々な表情を見せるが、コブラは気にする素振りを見せず言葉を続ける。
「へへへッ、三人とも、お帰りの切符はお持ちかい、なんなら送ってくぜぇ?」
コブラはそう言って腕を首の後ろで組むと、体を反転させ、タートル号の内部にへと消えていった。
「ふふふ、ではお先に」
最初に一切の悩む素振りを見せず、アンリエットがタートル号に乗り込む、既に彼女が使っていた剣は何処にも見当たらず、彼女の持ち物は大事そうに持つリラだけだった。
「ねぇ、バザラガ、コブラはひとまず置いておいて、エティって結局何処の者だと思う?」
「さぁな・・・帝国でも組織でもないなら秩序か全空捜査局のどちらかだろう。何せよ彼女一人に協力するぐらいなら問題ないだろう」
「そっか・・・・・・そうだよね。やっぱ問題はコッチかぁ~」
そういったゼタは、タートル号に目を向ける。近くで見ればみるほど、その異質さが分かるのだ。
明らかなオーバーテクノロジー、艇内には何があるのか全く検討がつかないのだ。
一度大きなため息をついたゼタ。しかし自分の頬を叩き気持ちを切り替え、タートル号に乗り込むために一歩踏み出したのだった。
雷神を倒し、コブラが合流するまでの間、三人で話していた内容、ゼタの質問にアンリエットは自分の所属する組織以外の事の質問には正直に話していた。
その後、アンリエットはゼタとバザラガのことは会う前から知って居たことも伝えたところで、とある提案をしたのだった。
その提案をゼタとバザラガが受け入れた直後、タートル号が姿を現したのだ。
ゼタの後を続くようにバザラガが艇内に足を踏み入れる。アンリエットや、ゼタ達はこの艇内で過ごす時間はそう長くは無い。
彼らがどんな協定を結んだかコブラは知りもしない。しかし、「彼らがコブラの敵になること」これだけは、絶対にあり得ないだろう。
この世界の一部の組織、一部の人物がこの男の危険さに気がついているのだ。やがて、男の選択によって本来の筋書きから乖離していく事件がいくつも発生することにる。
(神境にて辿る後 終了)
ロミオとジュリエットってしってるか?
恋愛悲劇だとよく言われているが、まぁ、悲しい物語だと思えばいい
ところが俺がディアンサと降り立ったこの島、何か~その話と似ている箇所がチラホラあるんだよねぇ
まぁ、その話しは置いといてだ
買い物をしてた俺とディアンサはひょんなことから演劇を見ることになったんだが
そこからこの島は大変なことになっていくわけよ。
若い恋人たちが社会の障壁によって制限される。
気に入らねぇ、そんな障壁この俺達が吹き飛ばしてやるぜ
次回、「届かないほど、近くのあなたへ」でまた会おう。
神境にて辿る後編終了です。読んでくださったかたありがとうございます。
感想、お気に入りありがとうございます。
誤字脱字の訂正も本当にありがとうございます。