2日前・・・コブラが、自身が捕まる代わりにロミオ達を今回は見逃すという提案に渋々ながら賛成したパリス。しかし誘拐されている疑いのあるディアンサは見逃せないとして、一悶着あった後、結局、ロミオがモンタギュ-の王城にて保護し、誘拐が事実だったならば其方に引き渡すことを宣言したことで、渋々ながら引き下がったのであった。
その後、ロミオ達一行はロミオの父である神王に謁見し、事の次第をはぐらかしながら説明。ディアンサとソーンを一時的に、客人として取り扱うこととなり事態は収束するかと思われたが、パリス達がコブラを連れて去って行く最中に話した自身とジュリエットとの結婚が明後日に控えているという話しをマキューシオが神王に伝えてしまったため、事態はさらに危険な方向へと進んでしまうこととなる。
そこは、ほの暗い世界。
辺りは石に囲まれ、触れれば肌寒く感じる場所。聞こえてくる音は付近に落ちる水滴の音のみ――。
そこは、とある島にある国王の住まう王城・・・その地下牢である。罪を犯した物が、処罰が決定するまで拘束される場所なのだが、近年、収監されていた物はおらず、看守は暇を持て余していた。
しかし現在、しかし2日前の深夜、ついにこの地下牢に一名連行されてきたのだ。連れてきた何処かの偉い人物は、“警戒を怠るな”など何度もしつこく伝えてきたが、看守からすれば馬鹿げた話しである。
繋がれている男に傷つけられた外傷は見当たらないが、両足に鋼鉄の枷をはめられ、右手は壁に拘束され、本来あるはずの左腕は無く、おそらく義手と思われる物と、何かの銃のような形のものは男の手の届かない範囲に置かれているのだ。
この状況から逃げ出せる者がいるならば、会ってみたいものだと看守は思いつつ、気晴らしに拘束されている男に声をかけたのだった。
「おい、アンタ一体何をしてこんなことになってんだ?・・・我らが王女様とお前を此処に連れてきた伯爵様の結婚式のパレードが後3時間もしないで始まるっていうのに」
看守の声に顔を上げた男は、捕まることになれているかのように、余裕そうに言葉を返してくる。
「へへっ、オレなんかを慕う奴を守るためさ・・・・・・まぁ、それとは別にこの城のお宝を貰うためでもあるけどな。それと、結婚式だぁ?どうせ、国の為とかそんな考えだろうよ。そんなことよりだ!・・・なぁアンタ、この城にはどんな宝があるか聞いた事を教えてくれねぇか?」
男の表情からふざけていると判断した看守は、自分も暇で仕方ないため、暇つぶし半分で動けない男に自分が噂で聞いた話しを語り出した。
「そうだな~この国の宝っていったら、王妃の像じゃないか?」
「ほ~如何にもって感じの奴だな」
「王家の秘宝らしいんだが、“真に国を想う気持ちに応え、覆いなる力を与える・・・とか何とか噂だな」
言い終えた所で看守が何か思い出したのか、目を見開く
「あ、後・・・これは3年前ぐらいに此処にアンタみたいに収監された奴が言ってたんだが、伝説と呼ばれている弓があるって話しだぜ、ソイツの話しによれば、覚醒寸前だとか何とか・・・・・・まぁココから動けないアンタには関係ない話しだ――――」
「感謝するぜ、自ら捕まって収穫なしってのは、笑い話にもなんねぇからな」
看守が言葉を言い終える直前。男の者だと思われる義手が独りでに動きだし、看守の意識を絶った。
「まぁ、こんなことしなくても、この枷ぐらい引きちぎれるんだがな」
枷を外し、サイコガンと義手を左腕に収めた男・・・コブラは簡単に地下牢を脱出し、結婚式のパレードの準備で盛り上がっている最中、看守の言っていた2つの宝を探すため城内を探索し始めたのだった。
コブラが地下牢を脱出した同時刻――
ヴェローナ大聖堂。
ジュリエットの結婚を知り傷心のロミオはロレンス神父に今までの出来事を説明していた。
「そうか・・・・・・あの夜に、そんなことが・・・・・・」
「せっかく神父様に背中を押していただいたのに・・・・・・申し訳ないです」
意気消沈するロミオにロレンス神父は声を潜めて話しかける。
「こんな時になんだが・・・・・・実は、ヴェローナ教会の仲間から・・・・・・ジュリエット王女の暗殺計画の噂を聞いてな」
「・・・・・・なっ!?どういうことですか!?」
ロミオはロレンス神父から、神王の指令のもとで、パレード中に暗殺するという計画を聞き、阻止する方法を思いつかないまま計画を止めようと動こうとする。
その時、ヴェローナ大聖堂にマキューシオとソーンが現れる。
「ロミオ。やっぱりここにいたか・・・・・・それにしても良い目をもお持ちのようだ。王城からこの大聖堂に入っていくロミオの姿が見えるとは」
「ふふふ、私は天性の狩人だからね目はいいのよ、だから今城の窓からこっちを見ているディアンサちゃんの姿も見えるわよ」
そう言って、恐らくディアンサがいるであろう場所に向かって手を振るソーン。
現れた二人にロミオは神妙な面持ちでジュリエットの暗殺が秘密裏に計画されていることを伝える。
「おいおい・・・・・・それにしても、いきなり話しが大事すぎねぇか?」
話しを聞き終えた、二人の表情は似通っており、ソーンは何も声に出さないが、自身の右手首に巻かれている金属の腕輪を左手で支える様な素振りを見せている。
「正直、どうすればいいか・・・・・・行ってみないとわからない」
「お前にしちゃあ・・・・・・ずいぶんと無計画だな」
一旦落ち着かせようとするマキューシオの言葉にロミオは耳を貸さず、一人でも行くと二人の元を歩き去ろうとする。
「やれやれ。オレは、これ以上付き合いきれねぇな。・・・・・・ここで待たせてもらうぜ」
「・・・・・・分かった、コブラ殿にディアンサ嬢の護衛を頼まれたのは俺たち2人だ。任せてすまいマキューシオ」
少し寂しげな表情をしたロミオだったが、この場に来てからずっと自身の右手首に触れ続けているソーンに視線を移す。
視線を向けられている事に気がついた本人は――。
「・・・・・・あら?私・・・そうねぇ~いいわよ手伝ってあげる」
「感謝するソーン殿」
マキューシオを残し、キャピレット領に向かおうとする二人。
そんな中ソーンが振り向きマキューシオに向かって言葉を投げかける。
「マキューシさん・・・ディアンサちゃんの警護なら私が空からやるので、気にすることはないですよ」
「・・・・・・そうかい。なら、オレも参加させてもらうぜロミオ。だが・・・・・・覚えとけ。こんな無茶に付き合うのもこれで最後だからな・・・・・・」
「ありがとう、それにソーン殿も恩に着る」
「いいわよ別に、私は空から暗殺者を探すわ・・・・・・あと、マキューシオさん?」
「ん?」
「本当にこれからロミオさんの無茶に付き合わないつもりなの?」
ソーンの言葉に動きを止めるマキューシオ。しかしそれも一瞬彼は笑みを浮かべ楽しそうに応える。
「・・・・・・当然、冗談さ。俺は何度だって、コイツの頼みなら無茶でも付き合うとおもうぜ」
三人はロレンス神父が教えてくれた秘密の通路を用いてキャピレット領へと踏み込んでいったのだった。
「あっらぁ~」
キャピレット領の中央通りではジュリエットとパリスの結婚パレードが開催されている。
その最中、城から民家の屋根へと飛び降りる物陰そして衝突音。
「クソぉ、せっかくボーナスタイムの宝探し中だって言うのに、ソーンの奴覚えてやがれ」
愚痴をいいつつぶつけた鼻っ柱をさすりながら起き上がるコブラ、肩に白い袋を担ぎながら、屋根の上を高速で移動し始める。お宝探索中、ソーンからの通信が入り、耳を傾ければ、聞こえてきた内容は現在行われているパレードでのジュリエットの暗殺という内容だった。
知ってしまった以上、見捨てるのは目覚めが悪いと判断したコブラは、急遽、探索を終了し発見していた金色の弓を白い袋に入れ城から飛び降りたのだった。
やがて、遠巻きだが目視でジュリエットとパリス。そして守るように立つティボルトの姿を発見する。
やがて、突如空中へと飛び上がる物体を目視し、それがソーンだと理解したコブラはさらに、走る速度を上げながら殺気を放つ人物を探すため意識を集中し始めたのだった
やがて、ジュリエットとパリスを乗せた馬車が中央教会へと辿り着く。
するとコブラは中央協会の直ぐ近くの民家で足を止め白い荷物をドスンと地面に落とし、袋の中から盗み出した弓を取り出し構えるが―――――
「へへへッ、弓があっても矢が無くちゃ使えねぇぜ。」
袋の中に丁寧に戻し、左腕からサイコガンを抜き放つ。
構えた状態で目を閉じ狙撃手の気配を探し始めたのだった。。
上空から狙撃手を探すソーン。遠の昔にコブラが向かって来ていることが見えていたソーンは一度、ロミオ達に視線を向ける。
ロミオとマキューシオ二人とも頑張ってはいるが、人混みの影響で思うように近づけないでいる。何やらロミオが作戦を考えたらしく二人が話し合いを終え、強引に馬車に突っ込んで騒動となる。
ロミオが叫んだことによりジュリエットが姿を現した直後――――
ソーンの視線の端に窓を少しだけ開け、狙撃銃を構える人物を発見する。
「見えた!」
狙撃手を確認した瞬間、左手に矢を出現させ瞬く間に狙撃手に向けて撃ち放つ。
彼女の矢は狙った目標に外れることは、けして無く。見事に直撃し目標を沈黙させた。
長距離からの狙撃に加え、弓のため音は出ず、気がついた人物はこの場に三人といないだろう。
暗殺を阻止出来たと安心した瞬間、ソーンの心臓を凍らせる者が視界に映る。
ソーンは狙撃兵を確かに沈黙させた。しかし・・・・・・狙撃兵が一人しかいないという訳ではない。
先ほどまではソーンの視線外だった箇所・・・・・・つまり、一人を仕留めた時は開いていなかったはずの窓が僅かに開き、銃口が窓枠から外に出ているのを発見する。
ソーンの目は驚異の力をもっているが、弱点が無いわけでもない。例えば彼女の目の前で閃光弾が炸裂した場合。通常よりもダメージが大きいだろう。
今回は、建物の中・・・彼女の瞳でも見えない場所だったため、気がつくのが遅れてしまった。
広場では・・・馬車の近くで狙撃に気がついたのか、ティボルトがジュリエットを庇おうと射線上に立つ姿が見える。
急遽新しい矢を構えるが、時既に遅く―――――
中央広場に銃声が響いた・・・・・・しかし銃声だけでは無く、銃声が鳴るよりも一瞬早く、光弾が駆け巡っていった。
静まりかえる中央広場、始まりは女性の悲鳴・・・やがて、連鎖が始まり一斉に悲鳴を上げる観客。
銃声とほぼ同時に駆け抜けた光弾、中央広場は蜘蛛の子を散らす様に大混乱に包まれる。
最初は一つだったものが突如分裂し3本の光となって広場を駆け巡り狙撃手とその仲間を同時に撃ち抜き無力化したのをソーンの瞳は捉えていた。
彼女は驚いた後、目を輝かせ始める。
「殺気を感知した時点で光弾が撃ち出される常識外の早撃ち、そして殺気を瞬時に感知する彼・・・・・・凄いわね。シエテが気にする理由も分かるわね。
広場を駆け巡った光弾を見て、狙撃手がコブラだと勘違いしたパリスは、聖王軍を指揮しコブラを捕まえるよう指令を出す。
「コブラだ!屋根の上にいる!あの大罪人を捕まえろ!!・・・それとそこに居るロミオを捕らえろ!」
「そりゃねーって!!こっちは――ヒィ!危ないったらありゃしねぇ!当たったらどうするんだ!!」
パリスの指示で攻撃する聖王軍の攻撃を叫びながら躱すコブラ。
「けっぇ~しつこい野郎だぁ!!やってらんねぇぜ」
そう言い残して、コブラは中央広場から姿を消す。コブラが戦闘を行っている近くでロミオとマキューシオもこの場から撤退しようと戦っている。
「また、コブラ殿とソーン殿に借りが出来てしまったな・・・マキューシオ!俺たちも撤退しよう」
「そうだな・・・・・・逃げられればだがな」
決死の覚悟を身にまとい聖王軍の攻撃を捌きながら包囲網を突破しようとする2人。かれらに諦めの表情は無い。
見たところ、ジュリエットを守るためティボルトは彼女の側を動かないのを確認しつつ二人は後退していったのだった。
コブラの追跡に大人数が向かったようで、ロミオとマキューシオは、手傷を負わずに撤退出来ている。
本来ならばコブラが役半数以上を引き連れて消えたとしても、2名で捌ける人数では
「待てっ・・・・・・逃がすかぁ!」
マキューシオに向かって振り降ろされた剣を難なく受け止め、弾いたのち鎧の隙間を斬りつけ無力化した。
「これで・・・五人ってとこか。へっ・・・死ぬ気でやればなんとかなるもんだな!・・・・・・まぁ実際問題全然辛くないんだがな」
「気を抜くな!まだ追っ手がいる!・・・彼女が大半の兵士を倒してくれているとしても、一太刀喰らえば、どうなるか分からない!」
二人が撤退を初めてから、間もなく、彼らが帰る道を作るかのように、無数の矢が飛んで着始めた。
最初は警戒した二体だったが、飛んで来た全ての矢が聖王軍に直撃していき、聖王軍を大幅に減らしていくのを見て彼女の援護だと気がつく。
「こいつは、すげぇ・・・彼女だけで国とやり合えるじゃねぇか?・・・おっと!ロミオあそこの路地を曲がるぞ!」
「ああ、分かった」
「くそっ・・・・・・逃がすかぁ!!・・・っなんなのだ!この矢は我々のみを正確に撃ち抜いてくる!一体何処から・・・」
コブラに逃げられ、憤るパリスが撤退する2名を睨み付けている。彼は現在、先ほどまで自分が乗っていた馬車を立てにすることで、なんとか空から墜ちてくる矢を避けてはいたが、動く事が出来ないでいた。
「撃て!逃がすくらいならロミオを撃ち殺せ!」
「はっ!大盾を持つ者は固まって、盾を上に向けて矢に耐えろ・・・狙撃班はその下で構えろ」
聖王軍の一人が指示をだし、何とか射撃準備を整えた。
そして、マキューシオとロミオが曲がり角を曲がる直前―――――
「撃てぇ!」
発射の号令が中央広場に響き渡った。
「ん・・・・・・!!っ!ロミオ! 危ない!」
マキューシオがロミオに標準が向いていることに気がつき咄嗟に、盾になろうと射線上に飛び込んだ。
しかし・・・聞こえて来たのは銃声ではなく爆発音。
マキューシオの目にはスローモーションでこちらに向けられた銃に、横から突き刺さった矢が見えていた。
銃弾を放とうとした兵士は、矢を受けたことで発生した爆発に周囲の兵士も巻き込みながら吹き飛んだ。
「マキューシオ!!」
「大丈夫だ!撃たれてない。急げ、このまま逃げ切るぞ!」
路地を曲がった二人の前にロレンス神父が姿を表す。
「こっちだ!この先に秘密の通路がある!」
するとそこに、頭上からソーンが降りてくる。
「よっと、・・・無事二人とも撤退は出来たみたいね。最後のは少し危なかったけど」
彼女は疲れた素振りもみせず、出発前と同じ表情で話しかけてくる。
「感謝するソーン殿。あなたがいなかったら、どうなっていたか分からない」
「俺からも礼を言わせてくれ、正直銃口を向けられた瞬間・・・覚悟してたぜ」
追っ手をまいた一行はロレンス神父に案内された小さな聖堂の地下に隠されていた秘密の通路を進むのだった。
コブラが聖王軍から逃げ回っている間に、ロミオとマキューシオはソーンと合流し、元来た道から大聖堂へと戻ることに成功する。
「ふぅ・・・どうやら無事に帰って来られたようだな」
「あ、ああ しかしコブラ殿を置いてきてしまった」
自分が生還できたことよりも置いてきてしまったコブラの事が気がかりで仕方がないロミオ。
「彼なら大丈夫よ・・・これはディアンサちゃんに聞いたんだけど・・・・・・彼の呼び名は不死身のコブラなんですって」
そう、彼が帰ってくるのを確信するソーンであった。
ジュリエット暗殺未遂事件は二国間の緊張状態をさらに圧迫し・・・ついに決壊した。
キャピレットは暗殺未遂事件はモンタギューがコブラに指示をしたとして、パリスを指揮官に任命し、ティボルト、ジュリエットの必死の説得も虚しく同盟国の力も借りてモンタギューへの戦争を宣言した。
ロミオとマキューシオから見ても、キャピレットがそう認識してしまう可能性があるのは分かっていた・・・・・・だがもう一つの国、自分達が兵士として守るモンタギューの行動に目を見開くこととなった。
モンタギューの神王は自ら計画したジュリエットの暗殺計画を都合良く現れたコブラになすりつけた。
その後公的に、モンタギューは暗殺未遂への関与の一切を否定。また、自国の名誉を守るとコブラ捜索においては協力することを宣言した。
そればかりでは無く、マキューシオからディアンサの事情を聞いていた神王は、『コブラが誘拐したと思われていた少女は、コブラの犯罪グループの一員であると自身が証言した』と宣言しディアンサを拘束、尋問したのち、数日後帝国軍に引き渡すとしたのだった。
自身は何もしていないが、あらぬ疑いをかけられ、さらに宣戦布告されたと世間にアピールした後、宣戦布告に応じる対応を見せ、諸侯へ呼びかけ兵を集め、決戦の準備を開始した。
両国の決戦は近い・・・・・・
神王は戦争に持ち込むまで、最良の結果が出せたと考えているのかもしれない
だが・・・・・・暗殺を阻止したのにも関わらず実行犯として聖王軍に追われ・・・・・・神王に暗殺の罪をなすりつけられた。これらは、男にとってはよくある事かも知れないが・・・
それに加えて・・・・・・自分を慕う少女を傷つけようとしている人物をあの男が許すだろうか
―――――「オレだ。少し頼みがあるんだが・・・・・・何をするかって? 決まってんだろう。借りはきっちり返す。そんで、アイツが恐怖を感じる前に助け出すのさ。・・・場所は・・・・・・だ。よろしく頼むぜ」
誤字脱字の訂正ありがとうございます。
また、感想くださった方もありがとうございます。
本編とは少し違った話に変わってきたかと思います。無事に収められればいいですが・・・・・・(汗)