グラブル 復活!サイコガン   作:zunda312

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泣くなよ。人は悲しいから泣くんじゃない。 涙を流すから悲しくなるんだ

祭司の指示で騒ぎが落ち着くまで一時休憩となった。

 

休憩となった瞬間から警備隊の面々がコブラに押し寄せてくる。

 

「本当に助かった!!アンタがいなかったらどうなっていたか」

「へへへッ、よせよ……照れるじゃねぇか」

 

 

 

警備隊の連中から感謝をさているコブラを、ディアンサを含む巫女達が見つめていた。

 

「本当によかった~ディアンサが怪我しなくて!」

「・・・・・うん、無事で良かった」

「リナリアも本当に心配したんだから!!」

 

「だから、大丈夫だって!」

巫女達に詰め寄られているディアンサ、大丈夫と何度も言っているが彼女達はディアンサの元を離れようとしない。

 

 

コブラが来ていなかったらどうなっていたか、考えるだけで背筋が凍るようだった。

 

 

 

 

「というか、コブラさん・・・なんで間に合ったのかな?」

カンナが疑問を口にすると、一同は再びコブラに目を向けた。巫女達の視線に気がついたコブラがウィンクをしてくる。

 

「なんか、不思議な力を使って瞬間移動したとか?」

自分でもおかしな事を言っていると分かっているハリエは苦笑いを浮かべていた。

 

 

カンナの疑問はみんなが感じていることだった。

コブラが昨日の宿泊したホテルに向かって出発した場所は道中の半分辺りのところだ。

一度ホテルに戻りディアンサ達がいる行脚に追いつくのは限りなく不可能で、徒歩では走ったとしても、ディアンサ達が街に着く方が早いのだ

 

だが、今もコブラは脇に依頼された荷物を抱えているのだ。

 

一同は揃って首を傾げる。

なぜあの時コブラがディアンサを助けることが出来たのか、その答えは結局、分からずじまいだった。

 

 

 

警備隊や、巫女達も気がつかない、コブラを見つめるディアンサの頬が僅かに赤く染まっていることに。

 

 

 

 

その後は特に問題が発生することもなく一行は、最後の公演が開かれる街へたどり着いた。

 

 

 

ショチトル島最大の街に到着した一行。

ディアンサが襲われた事件以降はおおきなトラブルもなく無事にたどり着いた事に安心する。

 

ここでの公演の準備のため会場を設営するが、巫女達が踊る大祭壇の設営には2日かかる予定のため大掛かりな仕事なのがうかがえる。

 

それぞれのイクニア達も協力しながら設営の準備を行っている。

それぞれ熱心に自分のやるべき仕事をこなしている。警備隊で参加している面々も自ら手伝いに参加しているのだ、これも巫女達を崇拝しているためなのだろう。

 

一方、コブラはというと美人な女性を見つけては鼻の下を伸ばしていた。

 

 

「ハリエ。私は街の統治者と話をしてきます。その間、ここは任せました。

「はい、祭司様」

 

「へへへッ、嬢ちゃん、祭司の姉ちゃんからずいぶんアテにされてるじゃねーか」

「ふふ・・・なんて言っても、ハリエ様は巫女達の実質のリーダですもの」

ハリエ派のイクニアが作業をしながらコブラに自慢する。

 

「そう・・・・なのかな?確かにみんなの意見をまとめたりとかは多いかもだけど・・・」

「講演前に率先して仕切る所とか、かっこいいんでしよ!ほんとに!」

またもや、別のハリエ派の人が手元の作業を止めることなく会話に参加してくる。

 

「へへへッ、大した信頼じゃねーか・・・あと6年もしたらきっと美人さんになるぜこりゃ」

辺りのハリエ派の人たちの動きが止まる。声には出さなくても威圧感が増していく。

 

コブラも唐突の様がわりに驚いたが、その原因に気がついたのか訂正するように。

「ま。今でも十二分に美人さんだがな・・・・可愛いっていったほうがいいかい?」

 

正解だったようで、今までの威圧感が嘘のように消えていく。

 

「や、やめてくださいよ!コブラさん・・・か、可愛いだなんて」

 

声が聞こえた方に目を向けると・・恥ずかしそうに顔を赤くするハリエがいた。

 

照れている姿を見た女の子達がハリエに群がって行くのを尻目に。コブラはイクニア達と協力して設営の手伝いを始めた。

 

 

 

「へへへッ、こんなの朝飯前だぜ」

コブラは設営の大ベテランのイクニア達も舌を巻く速さと精密さで大祭壇を設置する木枠の一部を組み立てて見せたのだった。

 

 

一日のコブラの働きぶりを見ていたハリエがイスに腰掛けているコブラの側に近づいてくる。

「あ、あの・・・コブラさん設営すごく助かってるんですけど、大丈夫ですか? 疲れていませんか?」

 

すでにこの近くでやる仕事は残ってなく、暇を持て余しているイクニア達も多かった。

「なぁに~この程度の仕事なんぞ、俺なら目隠ししながらでも出来るぜ」

全く疲れた素振りがないコブラ。そんなコブラの言葉を聞きハリエは驚いた顔をみせる。

 

「コブラさんの体力はホントに凄いですね・・・要領もいいですし本当にありがとうございます・・・・・でも、無理はしないでくださいね」

 

「おぉ?心配してくれるのか嬉しいねぇ~、自慢だが俺が本気でやれば大抵のことあ出来できるぜ?」

 

「凄い!なら島を吹き飛ばす事だって出来る?」

突如現れるカンナ。それに驚くハリエ……しかしコブラには驚いた様子はなく。

 

「あぁ出来るぜ」

カンナの冗談で言った質問に自身満々に言い切った。

 

「え・・・もうコブラさん堂々としすぎ、ホントに出来るのかもとか思っちゃったじゃん」

予想外の返答をされ、一瞬ひるんだカンナだったが直ぐさま立て直す。

「実は私、コブラさん、いいなってずっと思ってたんだ。だってコブラさん二つ返事でホイホイ警備についてくれたでしょ?私、凄いと思うの!」

 

「なんだ? お嬢ちゃんは俺が女性に声をかけられたら誰でもついて行く男に見えるってか?」

 

「違うよ~コブラさんはふざけているようで、ディアンサを助けてくれたり実は周りをしっかり見てる頼もしい人ってことだよ!」

ど直球にコブラを褒めたカンナは自分を呼ぶ声が聞こえ嵐のように走り去ってしまった。

 

「面白いお嬢ちゃんだ」

「カンナはああ言う子なんです」

 

日が沈みかけていた時、祭司が戻ってくる。祭司は設営の進行具合の驚いた顔をした後、今日の設営は終了と宣言した。

解散するイクニア達。ハリエも祭司と話しがあるとのことで、その場で分かれることとなった。

 

 

コブラもホテルに向かっている時、ホテルから出て何処かに歩いて行くディアンサを発見する。

 

 

「・・・・・・」

「どうした嬢ちゃん、そんな黄昏れて」

 

「コ、コブラさん?!!・・・えっと・・わ、私、この街の公演が終わったら巫女じゃなくなるんです。ちゃんと公演も続けてこれたしやっと終わりかー、って・・・・・・あ!……何言ってるんだろう私」

突然現れたコブラの姿に驚きアタフタするディアンサ。さらには焦っていたことで思わず本音が漏れてしまう。

「なんでい、嬢ちゃんは巫女が嫌だったのかい・・・・そんな風には見えなかったがな」

「・・・・うん。私、人前に出るの得意じゃないんです。誰にも言う予定は無かったんですけど・・・・コブラさんにならいいかなって思って。」

ディアンサは向き直りコブラの瞳を見据える

 

 

「公演で失敗したら悪いことが起るって言われていますけど・・・何より自分のために失敗出来ないんです。失敗した、人前に出るのがもっと怖くなるから」

「やれやれ、お嬢ちゃんは考えすぎだ、たとえ失敗したとしてもお嬢ちゃんの努力を無駄にならない。絶対にな」

 

「ありがとうございます。私の公演はこの街で最後!だから頑張ります。それと遅くなってすいません、今日のお昼は助けていただきありがとうございます。」

「オレは仕事をこなしただけだぜ、気にするな・・それと公演、頑張りな!」

そう言ってコブラはニヤッと笑う。

 

 

ふと、みんなが疑問に思っていたことを口に出す。

「そういえば、不思議に思ってたんです。コブラさんどうしてあの時、あそこに来れたんですか?」

「へへッ、オレは100メートルを5秒で走破できるし、体力にも自信があるんだぜ」

「・・・・100メートルを5秒?!!早すぎませんか?」

「だろぉ~?凄いだろ」

 

お互いに笑みを浮かべ笑う二人。

「お嬢ちゃんは巫女を卒業したらどうするんだ?」

「そうですね・・・今はまだ決めていません。・・・・・・・コブラさんは私達の護衛が終わったら直ぐに団長さんの元に向かうんですよね?」

答えを聞くのを怖がるかのように声が小さくなっていく。

「ああ、そうなるな、約束の日時はとっくに過ぎてるし・・・・・・ん? なんだいお嬢ちゃん俺に惚れちまったかい?」

 

「な、な・・・なんで!私がコブラさんのことを惚れるんですか!!」

リンゴのように頬を赤くそめディアンサが抗議の声をあげる。

 

「違うのか、てっきり俺と別れたくないのかと思ったぜ、まぁ・・・・俺に惚れるのには4年早いがな」

「ち、違います!別にそうゆう訳じゃなくて、もう少し島にいてくれたらなぁって思っただけです。……それになんで4年なんですか!?」

 

ディアンサの表情は明るく、年齢に相応しい少女の姿がそこにはあった。

 

 

ディアンサとコブラはその後も他愛ない話しで盛り上がるが、やることを思い出したのか

「わ、私 ちょっと大祭壇で練習してきますね」

「へヘッ、こんな時間ににレディが一人は危ねぇぜ」

「大丈夫ですよ、大祭壇の近くには警備している人もいますし」

 

結局ディアンサが折れ、二人で大祭壇の元に向かうのだった。

 

 

 

 

 

ディアンサとコブラが大祭壇の元にたどり着いた時、なにやら騒がしいことに気がつく。

大祭壇の前でならず者2人と警備隊のイクニア達。

「コブラさん、あれ!」

「へへッ、どこにも似たような奴がいるもんだ」

ならず者の2人はお酒を飲んでいるのだろう。一人はふらふらしていて、視界も定まっていない。

 

 

「だから大祭壇には巫女タンが来るんだろう?待ってんだァ、俺達ァ。引っ込んでろ!!」

「この祭壇の上にいまちゅかねー?」

「祭壇に登るな!!そこは神聖な場所なんだ!」

「なんだ、テメェ、文句あんのかよ!」

どんどん彼らとイクニア達はヒートアップしていき、一触即発の雰囲気が漂ってくる。

 

 

 

「講演前の祭壇に上がるなんて・・・イクニアさんは絶対こんな事しない。あの人達、よその人?」

「ええ。巡業の時期にお酒を飲んでるので外から来た観光客の可能性が高いです」

コブラとディアンサの近くにいたイクニアがディアンサの質問に答える。彼も遠巻きに事態を見ていた一人だった。

ならず者たちの暴走は止まらない。彼らは遂に松明に使う油を大祭壇の石像に撒き、火をつけてしまった。

 

「ぎゃーつはっはっは! カッコイイじゃねえか!」

「な・・・・何してるの!せっかくコブラさんとイクニアの人達が設営したのに、燃えちゃう!」

「く・・・・もう我慢ならん!お前達、許さないぞ!」

「あーん?」

「いいか、その祭壇はなぁ!余所者が汚していい場所ではない!」

堪忍袋のきれたのか、大声を上げた

 

ふと、ならず者の一人が声の聞こえた方に視線を大声を上げたイクニアの近くにいるディアンサを発見する。

 

「って・・・・あそこの女、巫女ちゃんじゃねえの?」

「おい、おいおいーい!酒につきあえよ巫女ちゃん」

「・・・・・・・・・!」

ディアンサを発見したならず者達が大祭壇からおり、ディアンサの元に向かってくる。

 

驚き一歩後ずさるディアンサを守るようにコブラは一歩踏み出した。

「ダメだよぉ~大の大人が少女をいじめたりしちゃ~」

「ケッ、なんだテメェ邪魔だ!どきな」

ならず者がコブラ目掛けて拳を振るう。コブラは攻撃をスレスレで躱し男のボディに強烈な一撃を叩き込む。

コブラの一撃をもらったならず者は目を白目に変えその場に崩れおちた。

 

「て、てめぇ――やりやがったな!」

それを見たもう一人が手に持つ銃を構えた。

 

「きゃあああ!」

それを見ていたディアンサが叫ぶと

辺りに妙な気配が満ちた。

 

 

 

 

突如火の中から出現する魔物

「な・・・・魔物・・・!?」

現れた魔物達は銃を構えたならず者に襲いかかる。

突然の事に一行は呆気にとられる。その中でコブラは冷静にディアンサ抱き寄せると左手の義手を外してサイコガンを取り出した。

「え・・・・・・・・え?!!」

突然抱きかかえられたディアンサは困惑しているが、コブラはお構いなし。

 

サイコガンから放たれる4発の光弾、その全てがならず者を襲おうとする魔物に吸い込まれるように直撃し魔物を消失させた。

 

 

 

 

 

何者かが走ってくる足音が響く。

「これは一体・・・・・!」

いつのまにか祭司が息を切らしながらこの場に到着しており目を見開いていた。

「それが、祭司様!そこのならず者二名が祭壇に火を放って・・・・ディアンサ様が止めに入られて すると火から魔物が・・・」

 

「な・・・・・!ディアンサ、あなた一体何を?」

「わ、私は何もしていません!ただ、そこに倒れている人が銃を構えたので・・」

コブラが左手を元に戻し、ディアンサを援護する。

「そうだぜ、なんかよく分からんが、魔物が出てきて俺が倒した・・それでいいじゃねぇか」

 

「これも、巫女の持つ力・・・・?驚いたわね。・・・なんにせよ無事で何よりです。コブラさんも手間をかけさせてしまい申し訳ありません」

 

「へへ、いいってことよ」

「こ、コブラさん・・・降ろしてください」

「おっと、わりぃわりぃ」

ディアンサの声で、今もなお抱きかかえていた事実を思い出したコブラは優しく彼女を降ろす。

 

 

 

 

その後、イクニア達がならず者を縛り上げ、祭壇の被害を確認する。

すると運良く石像が煤だらけなだけで祭壇の被害は少ない事が分かり一同は安堵する。

明日、石像の掃除を祭司からコブラは頼まれそれを了承した。

「よろしくお願いします。・・・ところでリナリアは?」

「み、見ていません、多分ですけどホテルにいると思います・・・・」

「そう。様子を見てきます」

 

 

 

そう言って祭司は、頬を赤くしたディアンサとコブラ達のもとから去っていった。

 

 

 

「へへへッ、俺は便利屋にでもなっちまったのか、まぁいい今日は戻るか嬢ちゃん……こんなんじゃろくに練習も出来やしねぇ」

「は、はい!・・・コブラさん待ってください」

祭壇から歩いて離れていくコブラに返事をして彼に追いつこうとディアンサは駆けだした。

 

 

 

 

 

誰しもが寝静まった深夜。

 

 

「はぁ、はぁ・・・・・・夢、か。怖かった・・・・・」

ディアンサは夜中に目を覚ました。辺りを見渡しても誰もいない・・・ここが自分の部屋だったのを思い出す。

 

「・・・・練習、しよう」

 

寝間着のネグリジェから踊りの衣装に着替え、音を立てないよう部屋を出た。

誰しもが寝静まった夜、少女は練習する・・・失敗しないため、自分の不安を解消するために。

 

 

汗を流し必死に踊りの確認をするディアンサ・・・・・そんな彼女を影から見守る男がいた。

 

 

 

 

こうして夜は更けていく。男は願う、彼女の最後に公演が成功するようにと・・・

 

 

 

 

 

翌日、欠伸をしながら手際よく祭壇の石像を掃除するコブラ。

彼の手で石像は元の綺麗さを取り戻した。

「ああ、コブラさん石像綺麗にしてくれたんですね・・・・・どうしたんですか?そんな欠伸ばっかりして」

「おうよ、それが昨日全然眠れなくてよ」

「ダメですよ、夜更かししたら」

 

ディアンサの忠告を受け取った後、もう一度おおきな欠伸をするコブラ。コブラらの姿を見てディアンサは軽く笑う・・・・。そんな彼らの元に祭司が近づいてくる。

「ありがとうございます。これで遅滞なく公演が行えます。

綺麗になっている石像を確認し、祭司はコブラに一礼した。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の公演に向け、巫女達の最後の調整が始まる。コブラの仕事は終わり、観客席の一番後ろで公演が始まるのを欠伸しながら待っていた。

陽が沈み、会場にイクニア達が集まった。

公演が始まる直前、いつものように祭司が登場するが、今回は一言だけではなく……公演前に話しがあると言う。

 

ディアンサ派のイクニア達はこれが彼女の最後の公演なのだと悲しそうにしている。しかし悲しんでいるだけでは無い、彼らは目を見開きディアンサの最後の公演を目に焼き付けようとしていた。

 

「へへへッ、嫌な予感がするぜ」

コブラは一人呟いた。

 

 

 

祭司は突如リナリアに話しをふった。巫女達も知らされていなかったのか皆驚いた顔をする。

 

リナリアが自信満々に告げた内容・・・それは独立して単独公演をすると言うものだった。

 

イクニア達も突然の発表で驚いたようで、反応は様々である。

巫女とは二年間の巡業で力を蓄え、この島の平和と繁栄を守るもの、そして公演で歌う巫女様は必ず五人組。

 

昔からの伝統を破ろうとする祭司に批判の声を上げるイクニア達もいれば、応援する声もある。

祭司は語る。この枠組みの影響でかかる労力、そして長年に渡り進行を集めれば強力な力が宿る可能性があると。

「つまり、島の繁栄のため目指すべきは単なる象徴としてではなく真の意味での神格化!島の巫女にまつわる枠組みをまずは人数制限から壊す。リナリアにはその試金石となってもらいます」

 

 

コブラは祭司の言葉を聞き、一理あると考えている。

時代により文化や伝統は変わっていく。様々な惑星を見てきたコブラは知っている。新しいことに挑戦するのは消して悪いことではない。伝統に囚われ続けるだけでは衰退していくだけだと言うことを。

 

 

しかし次のリナリアの言葉に眉をひそめた。

告げられたのはディアンサも単独公演をするというものだった。

コブラはディアンサに目を向けると彼女は今の今まで知らされていなかったのだろう、誰からみても彼女が狼狽しているのは明らかだった。

 

 

リナリアは知らない、ディアンサが一刻も早く巫女を卒業したいと思っている事を・・・または知っていながらも、ディアンサに負けたままで終わりたくないと起こした行動なのかもしれない。

 

勝ち逃げを許したく無かったリナリアが、無理矢理ディアンサを巻き込んだのだろうとコブラは推測する。

 

 

動揺の収まらない会場。そのざわめきに割って入るように楽師達の演奏が始める。

困惑する四人の巫女。中でもひときわ狼狽していたのは他ならぬディアンサだった。

 

「こいつはいけねぇ」

 

なんとか調子を取り戻していくディアンサ以外の巫女達。しかし、対照的にディアンサのステップは乱れていく。

そして曲の最後を飾るステップで足をもつれさせ、転倒してしまった。

 

 

 

 

完璧のはずの巫女の失敗に、会場全体が混乱に包まれる。

観客の中で一人を除いた誰もが、信奉する巫女の単独公演の発表に動転してたのかもしれない混乱の渦はどんどん大きくなっていく。

 

巫女達が場を沈めようと声をかけるが、すでに手遅れ、リナリア派とディアンサ派の喧嘩が始まってしまう。

しかし唐突の地鳴りによって争いは止まる。

 

一部の人達の声が響く

「石像が・・・・!石像が・・・・!」

地鳴りの発生源・・それは今日コブラが必死に綺麗にした石像が声を上げて涙を流したことによるものだった。

 

 

 

コブラはディアンサ達の元に駆けだした。人の隙間を駆け抜けあっという間に祭壇に到着すると、動き出した石像に拳を叩き込んだ。

 

 

まるでスポンジのように吹き飛んだ石像は動きを止め、やがて石像から飛び出た何者かが飛び出し忽然と姿を消した。

 

 

「何が起きたか私には推し量ることはできません」

舞台袖から祭司が姿を表す。彼女も困惑しているのが見て取れる。

 

「ただ、あの存在の出現は公演の絞めの失敗が引き鉄となったかもしれません」

「・・・・・・!」

ディアンサの表情がどんどん沈んでいく。その目には涙を浮かべ――

 

「原因として考えられるのはそれだけじゃないだろ」

ディアンサを庇うようにコブラが祭司の前に立つ。自分の予測を否定され、睨むように祭司がコブラを見る。

 

「どうして関係ないと言えるんですか、あれが何者なのか祭司の間ですら語られた事のない存在です。それを……部外者の貴方に何が分かるんですか?」

「確かに俺にはアレが何だったのか分からねぇよ」

「なら―――」

「だが、今までの公演と違うのはこの嬢ちゃんの失敗だけじゃない、こんな雰囲気の原因を作りだしたオメェさん達が原因だって可能性もあるだろう・・よっと」

 

コブラはそう言って、いつの間にか巫女達の背後に向かって来ている魔物に向かってサイコガンを抜き放ち、迫ってきていた魔物を沈黙させる。

 

 

「とりあえず話しは後だ、一体逃げるとしようぜ」

コブラの案に皆賛成し一同は祭壇から離れるのだった。

 

 

 

 

 




コブラは名言多くてどれにするか悩みます。


評価してくださった方ありがとうございます。


アニメも漫画もコブラは悲鳴ばっか上げてる気がするんですよね。
小説にするとちゃんとコブラが話しているように見えているか、心配で仕方ないです。



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