遠くへみんなから遠くへ行かないと…また誰かを傷つけてしまう
傷つけるという単語が頭の中を支配するかのごとくぐるぐると回る。
どれぐらい走ったか分からないが氷の道が途切れてしまったいたのでそこで一旦しゃがみこんだ。
はぁはぁとそばにあった木に寄りかかり何度かおえっと胃液を吐き出す。
そういえば起きてから飲まず食わずですぐボスのところに連れて行かれたな…なんてのが頭をよぎった。
「ご飯もらっとけばよかった」
「ヒューッ!変な炎の少年はっけーん!」
誰!?と振り向くとそこには見知らぬ格好をした人が何人もズラリと並んでいた。
全員似たような服を着ている為、なにかの組織かというのはわかった。
でもそんなことより突っ込みたいことがある。
「…ボクは少年じゃない!!女だ!!」
「まぁ!強気でかわいいじゃない!ヴァリアーの誰かの子供かしら?
そんな情報聞いたことらないけど」
「だったらこいつ囮にすれば…?」
「まぁ!いいわねそれ!賛成!!」
ポンポンと話が進んでいき腕を掴まれる。
先程吐いてしまった為か力がうまく入らず恐怖からか言葉もうまく発せない…。
出来る限り力一杯暴れるが相手は大の大人だ。
力でねじ伏せられ黙らされた。
そんな時ヒュンッ!とナイフが飛んできてノエルを捕まえていた男の手に刺ささった。
あ゛ぁ!!と嘆きながらノエルを掴んでいた手を離した為そのまま地面に落下した。
「ゲッもう捕まってんじゃん。チビ弱すぎね?」
「…!ベル…!!」
「てか人数多すぎね?王子大ピーンチっ!」
嬉しそうに口角を上げながらベルはナイフを手に握る。
「顔は全然ピンチそうに見えないけどねプリンス・ザ・リッパーのベルフェゴールさん?」
「あ?なんだこっちの情報は筒抜けかよ!」
ヒュッ!とナイフがボスと思わしき男の元へと飛んでいくが横の木にぶつかる。
タタンッタタンッといい音を出しながらナイフは次々と木に刺さっていく
しかし一向にナイフは人物一人傷付けることは出来なかった。
「残念だったなプリンス・ザ・リッパー
お前のナイフとワイヤーの攻撃はもう把握済みなんだよ!」
今度は敵の一人が縦横無尽に剣を振り回していく
カランカランとナイフが地面に落ちてきた。
目の前に落ちてきたナイフを拾って見てみるとそこにはワイヤーが張っていた。
剣をただ振り回していたんじゃなくてワイヤーを切っていたんだと理解するのは難しくなかった。
「っち!こいつの攻撃はわかるのに近付けねぇ…おっそういやいいもんいたじゃねーか」
クイッと顔を動かしノエルの方を見る。
逃げなくちゃいけないのに足に力が全く入らず動けない…
ふるふると震えているとさっきとは違う男がニタッと笑いノエルの髪を鷲掴みにし持ち上げた。
「…おい!!このガキがどうなってもいいのかぁ!?」
「んーー!!いーやーー!!」
「暴れるな!暴れたらうつぞ!!」
ひやっとした感覚に包まれ身動きがとれなくなる。
一瞬だけベルの顔が歪んだ気がしたがすぐにいつもの笑顔に戻った。
「…へぇ…人質ってやつ?しょうもねっ、王子キョーミなし!」
「本当にそうかい?一瞬顔が歪んだような気がするけどね」
ニタニタと笑いながら男は剣を構え直した。
「死ぬ前に教えといてやろう!これは解毒薬も晴れクジャクなんてまのも効かない猛毒だ!!
こいつをこのガキの身体に打てばどうなることかねぇ!?」
ノエルを掴んでる男の手には注射器のようなものが握られており今か今かと待ち構えている。
「お前達の攻撃パターンわかり易すぎなんだよ」
「な…に…?」
ベルの腕が勢いよく上がると同時にグァッ!!という声が後ろで響いた。
掴んでいたノエルの髪の毛を離し自分の腕を掴み悶えぽとりと注射器が落ちた。
ベルが守って…くれた?
「そんな…不可能だ!ワイヤーは全て切り裂いていたはず…!?」
「ししっ!天才のオレに不可能はなしっ!!」
ブンッと今度は大鎌がベルの首を狙い飛んでいく
「どこ狙ってんだよ。やっぱペーペーマフィアじゃこれが精一杯?」
「…フッそれはどうかな!」
ぐるっと鎌が反転しブーメランのように返ってくる。
逆に避けようもんなら今度は棘のついた鎖の持ち手が道を塞ぐ
上に避けようもんなら鎌で脚が切られるであろう距離である。
「…やっべ」
「死ねぇぇ!!」
ベルが殺される?
そう悟った瞬間にもう手は出ていた。
ピキピキと大鎌から鎖を凍らせ一瞬にして破壊する。
「なっ!?幻覚…ではないのか!?」
「へぇ、結構やんじゃんチビ」
「こしゃくなぁ!!」
今度はまた別の人達がベルに襲いかかる。
キィンッという金属音が何度も何度も聞こえてくる。
聞こえるたびに思うことがある。
ーーこの人達はベルを殺そうとしてるんだ。
ベルはボクを助けてくれた。
ボクの事怖がらないでいてくれた。
それだけで守るという対象には充分だった。
「…ベルを殺さないで」
「あぁ?」
「ベルに…近付くなぁあああ!!!!」
ブワッと炎がノエルの身体を包みこみ辺り一面氷が地面を這うように伸びていく。
一本のツララがベルを襲おうとしていた人の心臓を貫きそのまま木にめり込んだ。
グシャっという音と共に赤い雫が飛び散る。
透明な氷の上を赤い雫が流れていく
「なんだ…このガキは…こ、殺せ!!」
今度はノエルの方に敵がやってくる。
いやっ!と顔を隠す…ペチャッと手に液体がつく感触がして目を開ける。
…血…?
「お前…どこでこんな力を…ガハッ!!」
そう言って男は動かなくなった。
血だ。
血がノエルの辺り一面に広がり流れている。
自分のじゃない、周りの人たちのだ…。
まただ、またこの感覚だ。
「た、隊長の恨みぃー!!」
「いやああああ!!!!」
ノエルの甲高い声に共鳴して氷の刃が次々と人を刺していく。
腕を飛ばされる者、首を飛ばされる者など様々だったが変わらないのは即死だという事だった。
肉の引きちぎれる感覚と人々の叫び声がノエルの耳に入る。
聞きたくない、聞きたくない!と何度も願うが考えれば考えるほど研ぎ澄まされていく。
ノエルは身を守るかのように氷で自身を包み込んだ。
なにも見えないように
全て夢だと思い込めるように…
ポトリと最後の一人の首が飛び辺りが静かになった。
30人余りの人数が一人残らず消え去るまでノエルの攻撃は止まなかった。
個性豊かな敵は1話にして全員死にました。
南無三…