蛙が鳴いたら雪が降る   作:星森アキラ

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16.ボクと私

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『ノエル起きて!』

 

んーまだ眠たいよ…と思いながらノエルは目を擦り辺りを見渡した。

辺り一面真っ白な世界で暖かい…。

あれ?さっきまで森の中にいたような気がしたのに…?

 

『ここはノエルの夢の中、心の中なの!』

 

ボクの中!絵本で見たおはなしみたい!

とノエルは目をキラキラさせながら声の主の方に振り向いた。

一目で驚愕した。

目の前にいるのは自分そっくりの人物なのだ。

まるで鏡合わせのような彼女にノエルは戸惑いを隠せずに目をパチクリさせていたが当の本人はくすくすとその様子を笑うだけだった。

 

『あのねノエル、私はノエル自身なの』

 

ボク自身…?

困っていると目の前の彼女は目線を合わすようにしゃがみ込み両手でノエルの頬を包みこんだ。

にこりと笑う彼女は怖いという感情はどこかに飛んでいったようでいつのまにか震えはおさまっていた。

 

『だからいつでも安心して今は私を頼っていいからね?

まだ、こうしてた方がノエルのためでもあるんだから…って

何を言ってるのかさっぱりわからないって顔、してる』

 

そう言ってまたくすくすと彼女は笑い出した。

なにさー!と頬をむくれてみせるが彼女の両手に押されプシュッと空気を抜かれる。

それが少し楽しくて笑いあいながら遊んでいた。

 

『そろそろちゃんとした世界で起きないと心配されるわね。

ノエル、忘れないでね。貴方は現実世界で一人になることがあってもちゃんと私がいるってこと。

守るべき相手が“ココ”にいるってこと、忘れないでね』

 

そう言って彼女は自分の胸をとんとんと叩き離れていった。

否、ボクの視界がどんどん暗くなっていったんだ。

 

待って!と手を伸ばそうにも身体がうまく動かせなくてそのまま目を閉じた…はずだった。

薄っすらと見える世界は建物の中で色がある。

しかし視界は縦に揺れ妙に鼻がムズムズして気持ち悪い…

 

「はっ…はっくしゅん!」

 

思わず大きなくしゃみが出て意識をしっかりと取り戻した。

もふもふとした感触がくすぐったくて思わず顔を話してゴシゴシと擦る。

 

「あらノエルちゃん気が付いたのね!気分はどう?まだ気持ち悪い?」

 

走っていた足を緩くしてノエルが話しやすいように抱き直してくれた。

少し混乱して反応が遅れてしまったがにこりと笑う口元とこの声に聞き覚えがある…!

 

「ルッス姐さん!」

 

「あらあら!もう元気になったのね!やっぱりクーちゃんの力は凄いのね!」

 

「クーちゃん…?」

 

「そうよ!私のかわいい匣兵器のクジャクのクーちゃん!機会があればまたすぐ見せてあげるわね!」

 

「クジャク!見たい見たい!」

 

実際には見たことがないがクジャクという存在は聞いたことがありノエルは食い気味に答えた。

ぎゅっともう一度ルッスーリアの首に腕を回して抱きつくと違和感があり少し離れた。

 

何でボクは抱っこされてるんだっけ…?

 

「…あれ?なんか変な匂いがする…あっ!」

 

慌てて手を見つめてみるがそこにはもう炎は灯ってはいなかった。

ボクは炎を灯して消さなくて…それで…変な人に襲われて…?

人を…殺した?

微かに香る血の匂いと自分の記憶が合わさり納得する。

 

「ボ…ボクは…人を…たくさん…!!」

 

どんどん震えが大きくなっていくのに気付いたのかルッス姐さんは身体を引っ付かせるように抱き直してまるで赤子をなだめるかのように背中をとんとんと叩いてくれた。

 

「大丈夫よ。ここにいるみんなはそういうのに慣れっこだから逃げなくていいのよ。」

 

「慣れっこ…?」

 

「そういえば教えてなかったわね!それならみんなでご飯を食べながらお話しましょう!それがいいわぁ!」

 

何が何だか分からず困っていると部屋についたのかジャジャーン!と言いながらルッスーリアさんは扉を開けた。

その扉の先には先程いたメンバーが勢ぞろいしていた。

 

「ムッ…うるさいよルッスーリア」

 

「あらやだ、ごめんなさい!少しみんなの前でお話ししたいことがあったからつい興奮しちゃって!」

 

そっとノエルを地面に下ろしてから両手を取りまたにっこりと微笑んでから話し始めた。

 

「ノエルちゃんが怖がるかと思って避けようかと思ってたんだけど疑問に思ってたからきちんとお話しするわね!

私たちはイタリアンマフィア・ボンゴレファミリーにおける独立暗殺部隊ヴァリアーの一員なの!」

 

ぽかーんという顔をしているとぷっとレヴィが噴き出した。

 

「そんな説明じゃ、チビには分からないんじゃないの?」

 

「うむ、マーモンの言う通りだ。もっと分かりやすく言ってやれ」

 

「まぁ!じゃあ…どこから話せばいいのかしら!」

 

「お゛ぉい!ノエル、本当は大体わかってるんだろううがぁ!

何が分からないのかはっきりと言え!!」

 

相変わらずの声量にビクッと肩を震わしたがスクアーロの言っていることはあっている。

なんとなくわかる…というのもおばあちゃんの書庫にそれらしい文が書いてあった本を読んだことがあるからだ。

ただ、物語として読んでいたことと面白くないと途中で読むのをやめてしまった為深くは分からなかったのだ。

なんて返したらいいのかわからなくて余計に困惑しているとベルがししっと笑いながら近付いてきた。

頭の上にポンと手を置き目線を合わすためにしゃがんでくれた。

 

「オレたちは人殺しが仕事な連中なわけ。だからお前が何人殺そうが誰も怖がったりはしねーよ。」

 

「ほん…とう?」

 

「えぇ、本当よ。じゃなかったら名前も教えたりなんてしないわぁ!」

 

ごもっともと言わんばかりに皆が頷いた。

初めて受け入れてもらえたということに感動してか鼻が熱くなってポロポロと涙を流していた。

声を上げる時には無意識にベルの身体に抱きついていた。

 

その時のベルの顔が引きつっていたのはノエルは知らないが、突き放さずそのまま頭を撫でてくれたその暖かい手の感触ははっきりと伝わった。




ノエルが眠っていた時間は30分ほどで医務室に一度運んだが部下の人と血の匂いが充満してたので普通に自分の部屋で寝かそうとしていたという裏の裏のお話
なのでスクアーロと一度別れてたりベルが着替えが終わってたりしてる感じです。

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