ミオが新たにやってきたのは、海に囲まれた島のゾーンであった。ゾーンの名前は、アイランドゾーン。ネプトゥーンモン率いるバグラ軍に侵略されているゾーンである。
海岸に降り立ったミオは、クロスローダーからクラモンを1体リロードし、抱きかかえてゾーンの探索を始めた。
「バグラ軍の侵攻を受けてるって聞いてたけど、そんなに被害ないのね」
「ヘイワ ヘイワ」
「攻め倦ねているのか、ゾーンのデジモン達が優秀なのか、どっちかしら」
クラモンと会話しながら歩いていると、水柱が立ち上がった。
「ミオ アブナイ!!」
クラモンの警告に、ミオは身体を前に転がす。海辺から何かが現れ、先程までミオがいた場所を通過した。
「リロード、ガルルモン!!」
ミオは、起きあがると同時にポケットから黒紫のクロスローダーを取り出すと、襲撃者から目を離さずに、迎撃の為に青色と銀色が混ざった毛並みを持つ狼のデジモンを呼び出した。
「追い払って!!」
ガルルモンはミオの命令に一声吠えると、襲いかかって来たデジモンに飛びかかる。
「あのデジモンはギザモン?」
黄色の体躯に棘のような背びれの両生類のデジモンに心当たりがあるミオは、襲撃者の大体の実力を推測。ガルルモンだけでは分が悪いと思い、新たにデジモンを呼び出そうとクロスローダーを掲げた。
危険を感じたミオは、身体を丸めて突進して来るギザモンに気がついた。
ギザモンとの距離は短く、回避は間に合わないと判断し、防御の姿勢をとった。
「ヤラセナイ!!」
ギザモンとミオの間に彼女の傍にいたクラモンが、盾となるように割って入る。そして勢いを削ぐため、唯一の攻撃手段である泡を何度も吐く。
しかし、回転するギザモンの前では泡は無力であり、障害にはならなかった。泡は尾鰭に切り裂かれ、そのまま立ちはだかるクラモンを砂浜に叩き付けた。
「クラモン!? リロード、ナイトモン!!」
ミオは、クラモンが身を挺して作り上げた一瞬の時間を使い、護衛のデジモンを素早く呼び出した。呼び出されたナイトモンというデジモンは、全身を甲冑で覆い、背中には身の丈ほどの大きさがある両刃の大剣を背負っている。
ナイトモンは、すかさずミオとギザモンの間に入る。そして背負う大剣を抜き、向かってくるギザモンに振り下ろした。
ギザモンは大剣に身を切り裂かれ、ダメージに耐えられなかった身体は崩壊を起こし、データへと帰る。
ミオは、データへと帰ったギザモンを一瞥し、ガルルモンに視線を向けた。
ガルルモンの周りには、多数のギザモンがおり、殆どが身体の崩壊を起こしていた。一方のガルルモンは、身体に傷は負っておらず、疲労の色も見えない。それは強者の姿であった。
「ナイトモンはガルルモンと交代して。ガルルモンは下がってナイトモンの援護」
ミオの指示に、ナイトモンは大剣を手に前へ、ガルルモンは、牽制として口から蒼白い炎を吐いて後ろに下がる。
前衛のナイトモンが大剣を振るってギザモンをデータに帰し、後衛のガルルモンがミオに近付くギザモンを炎や前脚を駆使し、こちらもデータに帰す。
「ギザモン隊、撤退」
ナイトモンが6体のギザモンをデータに帰した所で、ギザモン達は撤退を始めた。20体少しいたギザモンが残り3体にまで減っていた。
「ガルルモン、ナイトモン、逃がさないで」
ギザモンの撤退を見て、ミオはガルルモンとナイトモンに追撃と殲滅の指示を出す。
2体は、ミオの指示通りに背を向けて撤退するギザモンに追撃を行う。ガルルモンは跳躍と同時にギザモンの撤退先に炎を吐き出し、行く手を阻む。そして、足の止まった
●
バグラ軍から撤退したミオ達は、島の内陸部を歩いていた。撤退の際にそばにいたクラモン、ガルルモン、ナイトモンは、すでにクロスローダーの中で怪我や疲れを癒している。
ミオの傍には、彼らの代わりに白い体躯の猫のようなデジモンが控えていた。そのデジモンは、金色のリングが付いた尻尾をゆらゆらと揺らして歩いている。
「あれは……?」
「どうしたの? テイルモン」
「ミオ、グリーンゾーンにいた子達がいる」
ミオ達がいた海岸の反対側へ出るという所で、何かを発見した猫のようなデジモンーーテイルモンが立ち止まる。
彼女の視線の先には、3人の少年少女と小さな体躯の赤い小竜や青い体躯にカブトムシに似たデジモン達がデジノワーーこの世界の食べ物の一つーーを食べていた。傍には、このゾーンの住人らしきデジモンもいる。
「バグラ軍を退けて来たのね」
「じゃあ、グリーンゾーンのコードクラウンはーー」
「誰だ!!」
テイルモンがミオに問いかけようと、口を開いた時に少年の鋭い声が聞こえた。
2人は、声が聞こえた方向へ視線を向けると、ゴーグルを頭に載せた少年が警戒の眼差しで、クロスローダーを手に持ち、こちらを観察していた。それに合わせ、彼に従うデジモン達もリラックスしたものから、緊迫したものへと雰囲気が切り替わる。
「ミオ、随分警戒されているわ」
「向こうは、バグラ軍だと思っているのかな?」
少年達の反応にミオは苦笑する。テイルモンは少年達に対抗するように、警戒の眼差しで彼らを観察していた。
「テイルモン、そんな顔だと向こうが余計警戒するよ?」
ミオはテイルモンの表情を笑い、ポケットからクロスローダーを取り出した。
「ミオ?」
テイルモンは、クロスローダーを取り出したミオを不信な眼差しで見る。
「今から、向こうと話し合いしようかなって思うから、身元を明らかにするためにね」
ミオはそう言うと、少年達に向かって歩き始めた。
「ほら! いくよー、テイルモン」
テイルモンもミオの後に続いた。
●
「こんにちわ、赤のジェネラル君。無事にグリーンゾーンのバグラ軍を退けたようだね」
「君は……?」
工藤タイキの緊張した問いかけに、森から出たミオは微笑みを浮かべる。
「私は久瀬ミオ。あなたと同じジェネラルよ。こっちは、パートナーのテイルモン」
「よろしく」
ミオは、少年達に自己紹介するとともに、赤紫色である自分のクロスローダーを見せる。
クロスローダーを見た少年達は、グリンゾーンで出会ったジェネラル以外のジェネラルがまだいたことに驚く。
「……俺は工藤タイキ。仲間のアカリとゼンジロウ。こっちがパートナーのシャウトモン」
いち早く驚きから立ち直ったジェネラルの少年――工藤タイキは自分の名前を告げると、仲間のアカリとゼンジロウ、そして自分を守るように立っている小竜デジモンをミオに紹介した。
「君もこのゾーンのコードクラウンが目的なのか?」
「ええ。元の世界に帰るために、あちこち探しているんだけどなかなか……ね」
チラリとこのゾーンの住人である古代のアーケロンやカメに似たデジモン達を見て、ミオはタイキ達の質問に答えた。
「ア、アーケロモン様~」
彼女のコードクラウンを集める理由が自分達と同じことに安堵した時、遠くから慌てた幼い声が聞こえた。
皆が声のする方を見ると、シャコ貝の様な幼いデジモンが、跳ねながらこちらに来るのが見えた。
「どうしたんじゃ? シャ、シャーー」
「シャコモンですシャコ。バグラ軍が攻めてきましたシャコ」
シャコモンの報告に、ミオとテイルモン以外の広場にいるデジモンと人間に緊張が走る。
「とにかく、状況を確認しよう! 対応はそれからだ。シャコモン、バグラ軍が見える高い場所まで案内してくれ」
工藤タイキは、自分のパートナー達に指示を出すと、敵が見える場所までの案内をシャコモンに頼む。
「工藤タイキ君。私達も手伝うわ。ジェネラルとして、バグラ軍の侵攻は見過ごせないから」
「と言っても、大して動けない」
その様子を眺めていたミオは、タイキにバグラ軍の迎撃を手伝う旨を伝え、テイルモンは、過度な期待はしないように釘を刺す。
彼女らの言葉に疑問を覚えたタイキは、どうしてか質いかける。
「この前の戦いで随分と消耗してね。戦えるとしても、精々雑兵を倒すぐらいかな?」
手伝うと言いながら、満足に動けない現状に、ミオは苦笑せざるをえない。
しかし、タイキはミオの参戦を歓迎する。
「シャコモン、バグラ軍の姿が見える所まで、案内を頼む」
「分かったシャコ。こっちシャコ」
2人のジェネラルと仲間達は、シャコモンの案内でバグラ軍の見える場所へと移動を始める。そして攻めてきたバグラ軍の軍勢とこのゾーンの地形に、タイキ達の赤のジェネラル達はグリーンゾーン以上の強敵に表情を強ばらせ、ミオとテイルモンの赤紫のジェネラルは司令官として確認できるデジモンとこれから戦いに眉を顰めた。