「……」
「……」
沈黙が痛い。痛すぎる。
現在私がいるのはヒーロー科 二年A組の教室。本来なら二十人が使うための教室は、二人で使うには広過ぎる。だが私の苦悩はそんな事が原因ではない。
「……目のやり場に困るからまともな服着て? あと…巨乳爆発しろ」
「ほ、法律には違反してないから! っていうか酷いわね、貴方。嫉妬は醜いわ「うるさい」
18禁ヒーローとして名高い(?)プロヒーロー、ミッドナイトのコスチュームはこう…色々と目のやり場に困る。日本政府が態々『コスチュームの露出における規定法案』を制定するだけある。因みに彼女のファンはかなりの数いるらしい。勿論男性のみだが。
「噂じゃ極薄のタイツ着てるって聞いたけど…絶対嘘ついてるわよね」
「違うから! いや本当に!」
「あっそ」
「貴方本当酷いわね!」
というかこの人もう三十代の筈なのだが、もうちょっと自重しなさいよ、と言いたい。コスチュームは個人の自由なので別に何も言わないが。私も彼女程では無いが露出はあるし。
「はぁ、あの相澤が気に入ってた生徒って聞いたから絶対面倒な奴とは思ってたけど…」
「気に入られてはいなかったわよ? というか寧ろ“一人に教えるために時間を割くとか非合理極まり無いから見込みが無かったらお前も即除籍にする”位のこと言われてたし」
「前から思ってたけどアイツもなかなかに酷いわね!?」
ミッドナイトは良いリアクションをする。だがツッコミのしすぎで疲れてしまったようだ。肩で息をしている。
「良いリアクションね。お疲れ様」
「…もう何もツッコまないからね。はぁ…知ってると思うけど一様自己紹介しておくわ。香山 睡。ヒーロー名はミッドナイト。雄英高校の二年生A組、つまり貴方の担任よ。…まぁ貴方以外に生徒いないけれどね。あ、近代ヒーロー美術史担当ね」
「じゃあ私もしようかしら。本名 博麗 霊夢。ヒーロー名は…考え中。漢字よりカタカナが良いんだけれど巫女だから良いのが浮かばないのよ。個性は『主に空を飛べる程度の能力』後霊力的なのも扱えるわ。得意科目は数学。 こんなところかしらね」
「ふーん。ヒーロー名決まってないの? じゃあ一緒に考えてあげましょうか?」
どうやらミッドナイトは私と交流して仲を深めたいらしい。意外とちゃんと教師をやろうとしているようだ。だが…
「今日はいいわ。多分もうそろそろ来るでしょうし」
「来るって誰が?」
「オー「わーたーしーがー!! 普通に窓から来た!!」
「普通に窓ってここ二階なんだけど?」
「お、お、オールマイト!!??」
突如として窓から登場した人物を見て、ミッドナイトが異常に驚いているがそれも当然。
V字型の金髪に、筋骨隆々な鍛え上げられた肉体。そして何よりも…明らかに違う画風。誰もが知る人気No.1ヒーロー、オールマイト。
「いやぁ、久しぶりに君とランチできると思ったら、二階までジャンプするなんてなんてこと無いさ」
「それ聞きようによっては口説き文句になるからやめた方がいいわよ」
「HA HA HA!!君以外にはやらないさ!」
「そう、ならいいわ。というかなんでミッドナイトはそんなに驚いてるの? 同僚なんだから面識あるでしょう?」
今から約二年前の知り合った当初は、私のことをだいぶ警戒してる様子だったけれど何度か話すうちにだいぶ仲良くなれた。何故知り合ったかは…まぁうん色々あった。
にしてもなんでミッドナイトはそんなにオールマイトの存在に驚いているのだろう。二人は同僚のはずだが。
「だ、だってあのオールマイトとなんでそんな仲よさげなの!?」
「博麗少女とは色々あってね! あー香山クン、彼女を借りてもいいかな?」
「は、はい。大丈夫です」
いやいや、ちょっと待て。
「なんで私が了承してないのに勝手に決めてるのよ。誰も行くなんて言ってないわよ」
「まぁまぁ、そう言わずに!!」
陽気に笑うオールマイトに私は溜息をつく。この人はやると決めたら一直線だ。仕方ない。
「…ランチ代は奢りで頼むわ。最近出費が激しい上に参拝客が減って賽銭が全然無いのよ。雄英に特待生制度が無かったら飢え死にしてるわ」
「こちらから誘ったんだから当然奢ろう!!」
こうして今日のランチ代はオールマイトの奢りに決定した。よし、思いっ切り食べよう。
…オールマイトが無駄にいい勘で私の思考を察したのか、顔を青くしていたのは余談である。