地球へと帰還したテツオに待っていたのはもう一つの戦いでした。
仲間と別れたテツオはたった一人で立ち向かわなければいけないません。
テツオの前に立つ相手は静かに腕を組み無言でこちらを見下ろしていました。
逆光のなか、無表情にこちらを睥睨する二つの目だけが怪しく光って見えます。
恐怖で身動き一つ取れずに固まっているテツオ。
テツオが今感じている威圧感に比べれば先程戦っていた巨大ミミズなどなんと可愛らしい存在でしょう。
身の丈2mはゆうに超え、体は一見ふっくらとしているが脂肪の下には鍛え抜かれた強靭な筋肉がギッチリと詰まっています。
体の前に組まれた腕は膨張した筋肉がこれみよがしに張り詰めています。
自身の胴体より太いその腕に締め上げられたら骨など欠片も残らないのではないでしょうか。
本人曰くチャームポイントのおばちゃんパーマは今では怒りのあまりユラユラと逆立ちつつあります。
相手は同じ人間。
だがテツオにはそれが同じ人間だとは到底思えません。
それは人というにはあまりにも大きすぎました。
大きく、
分厚く、
重く、
そして大雑把すぎました。
それはまさに『ママン』でした。
「テツオオオオオ!こんな夜中まで何処ほっつき歩いていたの!!!」
「ごめんよーママーーーン!!!」
条件反射で転生チートを全開にして猛烈な速度で逃げるテツオ。
そんなテツオに容易く追いつき高速タックルで押し倒し、そのまますばやく回転しテツオの胴体を片腕で拘束して持ち上げるママン。
ママンは拘束したテツオのズボンを脱がし、
「いだああああああああああーーーーー!!」
容赦なくお尻へと平手打ちを行いました。
その際に鳴る音は、ペチンなんて可愛らしいものではありません。
振り下ろす腕が音速を超え、空気の破裂する音が響くのと同時にテツオのお尻へと叩きつけられた手から鉄塊に鋼鉄のハンマーを叩きつけられたような音が炸裂します。
もしテツオが転生チートで耐久性を上げていなければ下半身は無くなっていたのではないでしょうか。
それだけの人外じみた威力がそこにはありました。
もちろんママンもテツオが転生チートで鋼のような体をしているのを前提での平手打ちです。
テツオ自身は隠そうとしているが、化け物のような腕力と耐久力があることにママンは気付いていました。
赤ん坊の頃におっぱいをあげようとすると猛烈に嫌がり逃げようとする際に無意識的にチートを使っていたからです。
ママン自体も父や兄と同じく人外じみた肉体を持っているので血は争えないかと感じて少し悲しくなりました。
せめてその力を正しいことに使える優しい子に育てよう。
そう決意したママンは小学生になってから夜中まで遊び歩いている息子へと、
今日も愛の平手打ちをお尻へと叩き込むのでした。
『
元女子プロレスラー・伝説のチャンピオンがママンなのです。
+++++
転生させてくれた神様が言うにはこの世界は俺達が転生チートを持って転生したせいで、本来のソードアート・オンラインの形から揺らいでしまっているらしい。
転生チートは言ってみれば世界のバグである。
なのでそのまま転生させたらチートが発動しないか、最悪の場合は世界が修正しようとして俺達の存在を無かったものへとしてしまう。
なので転生させる際に、転生チートの能力が存在してもおかしくないというつじつま合わせができるようにしたらしい。
神様はパラレルがどうたら改変が何やらと難しいことを言っていたけど、
結局原作のソードアート・オンラインの事件は間違いなく起こるのと、
サチちゃんが存在すること、俺等がサチちゃんと出会える運命であること。
これらを確認した俺等は「難しいことはサチちゃんを助けてから考える」と一笑した。
そうした結果、転生したソードアート・オンラインの世界には、
俺の転生チートである『SSS級魔導師並のリンカーコアと特級インテリジェンスデバイス"レイジングハート弐式"の所持』、
これを存在する根拠として、元ネタのリリカルなのはの次元世界理論が適応されていた。
先程俺達がレベル上げしていた世界も次元世界のうちの一つだ。
人がいなく、倒しても問題ないモンスターや亜人がいる世界で俺達は修行をしている。
使っている魔法がミッドチルダ式なので、きっと探せば時空管理局が存在するだろうし、
デバイスがレイジングハートのスペアという設定なので、リリカルなあの少女(もしかしたらもう大人かも)も存在するかもしれないが、
ヘタなことをしてソードアート・オンライン事件に関与できなくなるのはゴメンなので関わろうとは思わない。
ちなみにこの能力は転生チートガチャの大当たりらしく、Fate能力ピックアップ期間中なのに何故当てたと神様もビックリしていた。
個人的にはこの能力は情報分析もできるので応用性が高く非常に気に入っている。
ただ、チートはあくまでもリンカーコアとデバイスの所持なので、
それを扱うだけの魔法的才能はついていなかったため、使いこなすのに四苦八苦しているわけだ。
それでも
テツオとダッカーは無難にFateのチート能力を手に入れた。
テツオはそこそこ良かったが、ダッカーはレアリティは低めだったため、本来の能力の一部という劣化具合だったのは残念だが。
そして二人の転生チートが存在するということはFate世界と混合していて、
聖杯戦争なんてのが唐突に起きるかもしれないので注意が必要である。
Fate世界の魔術は科学世界には秘匿されているし、ソードアート・オンラインの世界はFate世界より未来の話のため、
もし混合していても特に違和感が無いのでありえない話でもない。
ちなみにテツオの家系がちょっと特殊なのはチート能力のせいなのかは不明である。
そう考えることにした。
世界観的にこちらから探そうとしなければ関わり合うことはないだろう。
全員一致で関わらないことになった、魔王とか魔人とか無理ゲーだしね。
レベル神にレベルを上げてもらい、更に使い勝手がよくなった探索魔法で俺は今夜もサチちゃんを探している。
同じ中学に通える範囲の小学校にはサチちゃんが所属していない事は確認できていた。
魔法の探索範囲が隣の市まで広がってくれたので早速捜索しているのだが、成果は芳しくない。
原作開始前に出会えることは神様が保証してはいたので、何処かのタイミングで転校してくるのかもしれない。
だがサチちゃんの子供時代という尊い姿を拝謁できないのは悲しい。
少しでも早くサチちゃんと会いたいという気持ちがあり、捜索を続けていた。
だが、もしサチちゃんを見つけても直ぐに出会おうとは考えていない。
今は小学3年で原作開始までまだ余裕はあるが、
サチちゃんと出会ってからはレベル上げの時間がとれるかは分からないので、
今のうちにもっと戦えるようにならないといけないからだ。
だってサチちゃんがキリトさんとくっついたら、将来的に軍事組織相手に戦う可能性も出てくる。
サチちゃんが少しでも危険な目に遭うことを避けるため、今は力が必要なんだ。
それともう一つ、サチちゃんと早い段階で出会うことで幼馴染となり、
もしサチちゃんがキリトさんより先に幼馴染の俺等のうちの誰かを好きになってキリトさんのフラグが折れてしまったら。
そんなオリ主がサチちゃんかっさらうなんてクソなSSを俺等は誰も認めてはいないのだ。
もしそうなったら迷わず自害する。
それだけの覚悟が俺達にはあった。
『我ら四人、生まれし日、時は違えども兄弟の契り結びしからは、心を同じくして助け合い、サチちゃんを救わん。
上は国家に背いても、下は民を見捨てても、ただただ、サチちゃんのために。
同年、同月、同日に生まれることを得ずとも、サチちゃんの幸せのために笑って死せん事を願わん』
そんな三国志ファンが聞いたら助走をつけて殴りつけられるぐらいの桃園の誓いを立てたのだ。
「ケイタくーん、そろそろお勉強はやめて寝なさいね」
「はーいママー、僕、今日もいっぱいお勉強したよー」
部屋の外から母親が声をかけてきたので元気よく返事をした。
現世の親を心配さえないための擬態はもう慣れたが、仲間には絶対見せたくない姿だ。
俺は並行思考で行っていた勉強を中断し、本日の探索も打ち切って寝ることにした。
寝る子は育つ。
幾ら精神的には大人でも体は子供なのだ。
特に俺は肉体的なチートはないので、少しでも健やかに育てるよう気を配らなければ。
牛乳の瓶を一気飲みし、眠りについた。
そういえば俺達、SAOキャラ名がリアルネームになっていたけど、きっと神様が分かりやすくしてくれたってことでいいんだよな。
いいえ、単なる作者都合です。
というわけで今回は半分は説明回でした。
チート能力を存在させるためのつじつま合わせのクロスオーバーなので、
本筋にリリカルな人とか赤いうっかりさんとかは出てくる予定はありません。
ましてやササマルが次代の魔王として拉致られるなんて事もありません。
また、三人称視点と一人称視点で意図的に文体を変えてみました。
読みにくかったらゴメンナサイ。
色々試行錯誤していますのでご容赦ください。
質問や感想やネーヨっていう批判などなどお待ちしています。