「アイス♪ アイス♪」
僕はルンルン気分で会場の扉を開けるとまあ、それは悲惨な状態だった。
テーブルはバキバキに粉砕され椅子はグチャグチャに砕け散っていて、
部屋の中央辺りで二人の悪魔がいがみあっていた。
一人は上品で綺麗な女性で、もう一人は体にタトゥーが
たくさんあって、高級そうな金ピカの装飾品を沢山つけている。
ライザーさんを思い出させる風貌の男性だった。
「ゼファードル、こんな所で意味のない戦いは止めては?」
「はっ! 言ってろよくそアマ、俺が個室で
一発仕込んでやるっつうのによ! これだから今でも処女なんだよ!」
あわわわわわ! 止めないと!
僕は慌てて二人の仲裁に入った。
「ストップ! こんな所で戦いなんてやめましょうよ」
「貴方誰よ。どっかいきなさい」
女性は僕の方に視線すら向けずに男性の方を睨む。
うぅ、結構冷たい人だな。
「あ、お前……あ! お前もしかして赤龍帝か」
「え、ええ」
そう言った途端にチャラい男を含めた、卷族らしき
人達全員が僕を指さしながら腹を抱えて大笑いをし始めた。
「これはけったいな話だ! 今俺の下僕達と賭けてたんだよ!
ゲームで自分の魔力すら操作できずに自滅した悪魔のクズが
こんなところに来るか来ないかってな!」
まあ、悪魔が自分の魔力を暴走させるなんて聞いたこともない話し
らしいですからね。部長も驚いていましたよ。
今ここで転生悪魔だからって言っても言い訳にしか過ぎない……ここは、
我慢しよう。
「そうですね。でも、そんなことよりもこんなところで戦い始めたら
そっちの方が悪魔にとっていけないことではないんですか?」
「けっ!」
チャラい風貌をした男性は鬱陶しそうにそう言い、女性の方は
化粧直しにでも行くのか部屋から出て行った。
あ~あ、せっかくのアイスが台無しだよ。
僕が床に毀れているアイスを片付けようと手を伸ばそうとしたとき、僕の腕を
ふんづけてくる足があった。
「なんですか?」
「今、俺はイライラしてんだよ。ちょうど良いからお前でストレス発散させろよ」
僕はサンドバックですか……第一、なんでぼくなんかが。
「嫌ですよ。こんなところで戦いません」
「闘いませんじゃなくて闘えませんだろ? かははははははははは!」
……今の言葉はいくら僕でも怒るよ。
僕はチャラい男の足を思いっきり握って、無理やり退かせた。
「あ? やんのかよ」
『止めとけ、相棒。安い兆発だ』
頭にドライグの声が聞こえてきて、さっきまで沸騰しそうだった
全身の血液が一気に冷めていった。
僕は一回、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
危ない危ない……部長との約束を破っちゃいそうだったよ。
僕はホッとしながらそのまま会場から出ようとした瞬間
「お前みたいな奴を下僕にした奴の顔が見たいよ。あっ!
グレモリー家の次期当主だったか? あははははははは!
まったく! 堕ちたものだな! 魔王を輩出した家がよ!」
「あ? やんのかよてめえ」
『Boost!』
「さっきの言葉、撤回してください」
僕は龍の腕を伸ばし、辺りの物を目についたものから潰していき
ながら籠手を呼び出し倍加をかけた。
「はっ! そんな化け物みたいな腕で
脅してるつもりか? 甘いんだよ、お坊ちゃん」
『Boost!』
2回目の倍加がされた瞬間、目の前の人物の表情が絶望色に染まった。
「もう一度言います…………さっきの言葉を撤回してください」
「な、何なんだよその魔力は。何なんだよ! お前は転生悪魔なんだろ!?
なんで家柄がいい俺よりも魔力が多いんだよ!」
男性は僕の魔力に驚きを隠せずにいた。
このまま……このまま僕の魔力の多さに驚いてくれて、部長が来てくれるのを待とう。
「イッセー!」
その時、部長の声が聞こえ、僕はすぐさまセイグリッドギアを消して
さっきまでの倍加した魔力を元に戻した。
ふぅ……なんとか、部長の迷惑にならずに済んだ。
「はっ! 何もできねえ屑は死ね!」
僕が部長のもとへと戻ろうとした瞬間!
男性の声が聞こえ、後ろから大質量の魔力弾が迫ってきた!
やっば! 避けきれない!
「イッセー!」
部長は僕のもとに走ろうとして来る。
木場君とゼノヴィアさんもナイトの高速移動でこっちに
来るけどこの距離では間に合わないと一瞬で分かった。
僕は今にも直撃しそうな攻撃に目をつむって耐えようとする。
「すまないな、赤龍帝」
声が聞こえてきたので、目を開けると目の前に体格がよくて
野性を感じさせる男性が立っていた。
先程まで、僕を殺そうとしていた魔力弾は跡形もなく消え去っていた。
「イッセー! イッセー!」
部長は泣きながら僕に抱きついて離れようとしなかった。
「ゼファードル、貴様は上級悪魔のプライドもない屑だったのか」
「あ!? 無能が調子乗ってんじゃ」
目の前の男性に殴られたゼファードルって言う男の人が壁にぶつかって
ずるずると床に落ちた。
卷族が慌てて確認しに行くが既に気を失っていた。
「やれやれ、だからこんな会などやらずに早々と始めればいいものを」
男性は呆れながらそう呟くとスタッフを連れて来て、この部屋の
修復を命じた。
「私はシークヴァイラ・アガレス。大公、アガレス家の次期当主です」
あれから駆け付けたスタッフの魔力によって部屋は戻されて
軽い自己紹介が始まった。
「ごきげんよう、グレモリー家次期当主、リアス・グレモリーです」
部長はちょっと鼻声だけどいつもの部長に戻っていた。
会長、そしてさっきのサイラオーグさんが自己紹介をし終えた
ちょうどいいころに呼び出しが喰らった。
僕達が通された部屋は異様な雰囲気を醸し出している部屋だった。
一番高い所にお偉いさんが座っていて、その一段下に魔王様方が座られていた。
「君達六人は家柄、実力とともに申し分ない悪魔たちだ。
互いに互いを高め合い強くなって言って欲しい」
そこからそれぞれの魔王様方が僕達新人悪魔にコメントを言っていき、
魔王様達の一段上に座っている数人のお偉いさん達が各々のコメントを
言っていった。
「では、君たちの目標を言ってもらおうかな」
全員からコメントを貰うとサーゼクス様がそう言われ、次期当主人たちの目標が語られた。
魔王になる、平等な学校を作るなどなど色々な目標があった。
全員が言い終わるとサーゼクス様は少し困ったような顔をした。
「ん~時間が余ってしまったな」
「だったらだったら! 下僕ちゃん達の代表にも
目標を言ってもらおうよサーゼクスちゃん!」
……レヴィアタン様、せめて公の場くらいは普通にすればどうでしょうか。
会長は恥ずかしそうにうつむいてますよ。
「うむ、それは良いね。それでよろしいですか?」
レヴィアタン様の提案にサーゼクス様も良いと思ったのか
お偉いさんに断りを入れてからそれぞれの下僕の代表に目標を言っていくした。
まあ、ほとんどが女王さんだったんだけどね。
そして僕たちの番になって朱乃さんが立とうとした時。
「赤龍帝よ、貴様が話せ」
一人のひげたっぷりのおえらい様が僕を指名してきた。
ま、まじすかぁぁぁぁ!?
皆を見ると『イケイケ!』みたいな目をしてたし、サーゼクス様も
僕を見ていたから思いきって立った。
……のは良いんだけど頭が真っ白になって何も話せない。
お偉いさん達、魔王様方、そしてほかの新人悪魔たちの視線が僕に集中していた。
僕に目標なんか……。
そんな事を思っていると部長と目があった。
それはほんの一瞬だったけど、その一瞬で僕は目標ができた。
「……最強」
「ん?もう一度言ってくれないかい? 赤龍帝」
「最強……ですよ」
「ほう」
サーゼクス様は驚いたように小さく息をはいた。
「僕は最強になります。リアス様の目標のために、
僕が最強になって向かってくる奴らをすべて倒す」
「つまりそれは魔王も倒すという事かな?」
サーゼクス様は面白いものを見ているかのような表情で僕にそう言ってきた。
「ええ、僕が最強になる道に立つ者は全て倒す! それが目標です!」
それを言いきって座った……ところまでは記憶があるんだけど……後はほとんどない。
こんばんわ