無事にアザゼル先生が提示してきた鍛錬も終了し、僕たちは鍛錬が終了した日から
数日の休暇を過ごしたある日の夕刻、
僕は学園の夏服を着てグレモリー家本邸の客間で待機していた。
女性陣は準備がかかるという事でこの場にはいなくて
木場君とギャスパーくんも用事があるとか言ってどっかに行っちゃいました。
「にしても冥界のアイスは美味しいな~」
僕がアイスを堪能していると聞きなれた声が後ろから聞こえてきた。
「よ、兵藤」
「あ、匙君」
そこには同じく夏服を着た匙君の姿があった。
匙君もところどころ包帯を巻いていて修行したんだと一瞬で分かった。
「俺、鍛えたんだぜ?」
「僕は毎日ドラゴンに後ろから火を吹かれて逃げたり
真正面から火球を受け止めたり、戦いすぎて山で落石が起きて
その落石を止めたりとかしてたよ。あ、あと」
「分かった。お前は相変わらずハードな生活をしているのは分かった」
匙君は驚きの表情を浮かべて、少し冷や汗をかきながら僕の話を中断した。
やっぱり僕の修行は他と比べてアブノーマルな物らしい。
まだ、続きがあったのに。
「ん~美味しい。食べる?」
「いや、良いよ」
僕は余っているアイスを匙君に勧めるけど匙君はそれを、断って
ボーっとどこかを見ていた。
「そう言えば匙くんって会長さんが好きなの?」
「げほっ!」
突然、僕が言ったことに匙君は咽ながら僕の方に顔を向け少し、考えるように腕をくんだ。
「な、なんで」
「いやね。君が会長の顔を見ているときの表情ってなんか……普段と違うから
そうなのかな~って思っちゃって。違うかったらごめんね?」
僕は匙君に一度謝ってから、新しいアイスを冷蔵庫に取りに行こうとした瞬間
「ちょ! ちょっと話を聞いてくれ!」
突然、肩を匙君に掴まれ僕は匙君に会場の隅っこに連れてこられた。
匙君は真剣な表情で僕を見てくる。
「女性経験の豊富な兵藤さんにぜひアドバイスを」
「僕、女性経験皆無だよ?」
そう言うと鳩が鉄砲玉を食らったような顔をした。
「い、いつも女に囲まれてるお前が?」
「うん。部長さんとかとは一緒に寝たりしたことあるけど」
「は、はははは。お、俺は……俺は」
すると匙君はヘナヘナと力なく座り込んでしまった。
「イッセーお待たせ、あら、匙君も来てたのね」
後ろを振り向くとそこにはドレスアップをした女性陣の面々がいた。
す、凄い。皆めちゃくちゃ綺麗だ。
皆、軽くお化粧もして綺麗なドレスを着こなしてる。
女の人って服装を変えるだけでこんなにも変わるんだ。
でも一つだけ問題が。
「で、なんでギャスパーくんまでドレスなの?」
「ぼ、僕もドレスを着たかったんだもん!」
いやいや、だもんじゃなくてさ。
すると軽い地響きが起きて何かが飛来したような音が聞こえた。
「タンニーン様の卷属の方々がお着きになられました」
召使さんに言われ、外に出てみるとそこにはタンニーンさん、そして
卷族らしきドラゴン達が複数いた。
「あ、タンニーンさん!」
「よ、最高の赤龍帝」
「そ、そんな~」
言葉では否定するものの嬉しくて僕は自分でもわかるくらいにニヤニヤしてしまった。
うぅ、嬉しい! そんな事言われたの初めてだ!
「背中に特殊な結界を張って髪やら服やらが乱れないようにする」
そう言われて皆がそれぞれのドラゴンの背中に乗った。
ドラゴンの鱗は硬くて、少し暖かかった。
「つかまっていろよ!」
タンニーンさんがそう言うと翼をバサッと広げ、真っ暗な空へと飛びあがり
パーティーが行われる会場へと向かった。
「タンニーンさんのウソつき! 高いじゃないですか!」
僕は部長に抱きしめられながら半泣きでタンニーンさんにそう言うと
タンニーンさんは少し、呆れた口調で話し始めた。
「おいおい、こんな高さで怖がってどうする。いつもよりも遥かに低空飛行だぞ」
「高いのは嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
タンニーンさんの言う低空飛行はドラゴンの立場から低空飛行であり
人から見たら、この高さは十分高いのである。
「はははははははは! お前はあらゆる
意味で最高の赤龍帝だ! お前もそう思うだろドライグ!」
『ああ、最高だ……まあ、流石に特撮を真似るのはそろそろな』
勝手に籠手が現れ、呆れ気味のドライグの声が聞こえてきた。
「ふはははははははは! 特撮を真似る赤龍帝様か!
赤龍帝よ、お前の目標はなんだ?」
「目標……最強です」
それを言うと今まで軽かったタンニーンさんの口調が真剣なものになった。
「それを目指すという事はお前は人を屍にして
越えなければならん。その勇気がお前にあるか?」
「…………」
僕はその言葉に黙ってしまった。
……誰かを屍にして強くなんてなれないよ。
「まあ今は良い。まだお前は若い。だがないずれお前は白との決着も
つけなければならん。そんな状況でも今の状態ならば確実にお前は死ぬぞ」
僕はタンニーンさんの話を心に刻みつけて会場へと向かった。
「あ~疲れた」
あれからパーティー会場に着いた後、部長についていきいろんな家の
あいさつ回りやらなんやらで歩き回り、今ようやく椅子に座れたところだ。
ロクにアイスも食べれていない。
アーシアさんもギャスパーくんも皆、疲れた顔をしていた。
「アーシア、ギャスパー、イッセー。みんなの分を取ってきたぞ」
「あ、ありがとう。ゼノヴィアさん」
ゼノヴィアさんはいろんなもの取りに行ってくれていた。
僕がゼノヴィアさんが持って来てくれた料理を食べようとした途端、どこからか視線を感じた。
首を振って周りを確認するとドレスを着た少女がこちらを睨んでいた。
……うぅ、あ、あの子は
ドレスを着た少女が僕を睨みながら近づいてきた。
「お、お久しぶりですわね。赤龍帝」
金髪の髪にこのお嬢様口調、以前戦ったフェニックス・ライザーの妹さんの
レイヴェル・フェニックスさんだった。
「お兄様は貴方に負けたのがショックだったのか寝込んでいますわ」
そ、そこまで僕に負けたのがショックだったの!?
僕ってどんなけ下に見られてたの、うぅ。
「赤龍帝」
「イッセーでいいよ」
「お、お名前でお呼びしてもよろしいのですか!?」
突然、レイヴェルさんは嬉しそうに声を一瞬、張り上げるがすぐに
周りの視線に気づき顔を赤くして黙った。
「で、ではイッセーさま」
「レイヴェル、旦那様のご友人がお呼びだ」
レイヴェルさんが僕に声をかけた瞬間、さらに僕たちの
元に顔を半分仮面で隠したイザベラさんがやってきた。
「分かりましたわ。それではイッセー様、また今度お茶でもいたしましょう」
そう言ってスカートのすそをつまんで少し上げてから向こうに行った。
いや~やっぱり上流階級のお譲様は上品だね~。
「やあ、久しいね」
「あ、はい」
そう思っているとイザベラさんが僕に話しかけてきた。
「君も本当に強くなったものだね。あの時の一発は
まだ記憶に新しい。私の話も有名になるかな?」
イザベラさんはニコニコと笑みを浮かべながら僕にそう言ってきた。
ライザーさんの卷属の中で一番、接しやすいな。
「赤龍帝。よい宴を」
「あ! レイヴェルさんにお茶の件はOKって言ってて下さい」
「分かった。彼女も喜ぶだろう」
そう言ってイザベラさんはレイヴェルさんのもとへと帰っていった。
さ~てと、アイスを―――――。
「にゃ~♪」
「………」
猫の声が聞こえたので、そちらを振り向くと窓から黒猫が一匹、僕の方をじーっと見ていた。
本当に目を離さずにじーっと。こんな経験は前にもある。
傷だらけの黒猫を見かけたときに一度こうやってじーっと見つめられたことがある。
その時は治療をしてあげて返してあげたけど……もしかして同じ猫かな?
いや、黒猫なんて何匹もいるしね。
………でも気になる。
黒猫は僕について来いと云わんばかりにこっちを振り返りながら歩いていった。
「行ってみるか」
僕は皆に適当に言っておいてからその猫を追いかけていった。
おはようございます! 新年あけましておめでとうございます!
センター試験まであと……二週間と二日ですか……早いものです。