「全く薄汚いバランスブレイクはさらに汚いな。
まあ、良い。蛇を飲んだ僕にしたら君など瞬殺だ」
そう言いディオドラは手をかざし、魔力弾を放とうとする。
「遅い!」
僕は彼が反応できないほどの速度で近づき、
ディオドラが魔力弾を放つ前に腹部を思いっきり鋭く打ちこんでやった。
「がはっ!」
体を九の字に曲げて顔を苦悶の表情に染め上げて、奴は血反吐を吐きながら壁に激突した。
激突した壁は大きく、凹んだ。
「瞬殺って聞こえた気がしたけど、気のせいかな?」
ディオドラは腹部を抑えながら、立ち上がるが奴の顔には先程の余裕の表情はなく焦りがあった。
「くっ! こんなことで! 僕は上級悪」
また奴が言いきる前に再び高速で移動して胸のあたりを蹴り飛ばしてやった。
多分鎖骨辺りは折れたんじゃないかな?
「がはっ! はっ! はっ!」
ディオドラは苦しそうに息をしながらも僕を睨みつけ、立ち上がった。
『相棒、お前はもう何ものにも止められん。やってやれ』
「ドライグ、カウント。プロモーション、ナイト」
『Start! High speed time!』
「君の様な下級で転生悪魔ごときにこの気高」
僕は奴が言いきる前に、高速で近づき一発蹴りを入れて
奴を空中に蹴りあげると、まるでスローモーションのような動きの遅さだった。
ドライグも何かを言ってるみたいだけど、何を言っているのか分からない。
僕はそのまま連続で、それもマシンガンの様に蹴りを何発も打ち込んでいった。
籠手から倍加する音声も聞こえてくるけどあまりに遅くて聞き取りにくかった。
僕は辺りに小さな魔力の弾をいくつもディオドラに向かうように放出して、
時間を元に戻した。
――――――ドドドドドドドドドドドド!
「がっ! ごうぇ! うげわぁあわ!」
高速移動中に蓄積されたダメージが、ようやくディオドラ本人が感じることが
出来るようになり、爆発音が何度も鳴り響いたあと彼は壁に激突するまで
吹き飛んだ。
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
奴は叫びながら立ち上がり、無限に近い魔力の雨を僕に放ってきた。
でも僕はそんなもの気にせずに立ち止まったまま全てを受け続けた。
「なんだ? 本物の雨なの? 曲芸師にでもなるき?」
「そ、そんなバカなぁぁぁ! 僕はオーフィスから蛇を貰ったんだ!」
僕は噴射口から魔力を噴射させディオドラに近づくと
魔法壁みたいな物を目の前に展開してきた。
「邪魔」
僕は手を横なぎに振るっただけで壁は粉砕された。
そのまま僕は近づき顔面に一発、腹部に一発殴ってやった。
「ぐわっ! がはっ!」
もう一発殴ろうとすると、また魔法壁が出てきて相殺されそうになった。
「ほら見ろ! 僕の方が魔力は上なんだ! ただのパワー馬鹿の
君なんかに負けるはずが!」
『BoostBoostBoostBoostBoost
BoostBoostBoostBoostBoost
BoostBoostBoostBoostBoost!』
噴射口から凄まじい勢いで魔力が噴き出され、勢いが上がっていき
遂に魔力の壁を殴り破り、顔面を綺麗に捉え柱を何本も折りながらぶっ飛んでいった。
「自分の力を過信しすぎだよ」
あいつは未だに生きている
……まあ、殺しはしないって誓ったから当たり前だけど。
奴に近づいて胸倉をつかんでこう言ってやった。
「二度とアーシアに近づくな。もしも同じことを別の人にもやってみろ」
近くにあった一番ぶっとい柱をたった一発の拳で粉砕してやった。
するとディオドラは体全体をがたがたふるわせて瞳には涙を溜めていた。
僕はディオドラを離すとただ単に地面にうずくまって
ガチガチ震えるだけだった。
しかし、ディオドラに近づく存在がいた。
「イッセー、今この場で殺さなければまた近づくかもしれない」
ゼノヴィアさんだった。
彼女の目はひどく冷たく凶暴なものになっていた。
「もう十分だよ。二度としないと誓ったんだ。だよね?」
僕が奴の方を振り向くと首を縦に折れるんじゃないかと
思うくらいに激しく振った。
「んじゃ、アーシアさんを助けるかな」
僕はアーシアさんに近づいていき足枷を取ろうとする。
……あ、あれ? 取れないな。
何度か強めに枷を叩いてみるけど一切、傷などは入らなかった。
「無駄だ。それは一度限りのものだが、逆にいえば一度使えば
絶対に外れない。停止させるにはアーシアの神器を発動させるしかない」
奴は口数を少なくして淡々と話し始めた。
「結界系最強の神器である絶霧の使用者が作ったものだ」
「能力とこの結界の発動条件は」
木場君が問いただす。
「条件は僕か、ほかの関係者の起動合図、もしくは僕が倒されたら。
能力は枷につないだ者…つまりアーシアの神器を増幅しリバースすること」
僕はそれを聞いたとたんにいやな予感がしてたまらなかった。
それは木場君も同じだったみたいでまた問いただし始めた。
「効果範囲は」
「……このフィールドと観戦室にいる者たちだよ」
僕は必死に外そうとするけど一向に外れようとはしなかった。
「イッセーさん! 私ごと!」
「うるさい! 父さんも母さんもアーシアさんを
待ってるんだ! 僕は必ず君を無傷ですくってみせる!」
そう言うとアーシアさんは涙を流し始めた。
何度叩いても壊れる気配すらしなかった。
………仕方がない。
『Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!
Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!
Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!
Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!
Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!
Boost! Boost! Boost! Boost! Boost!』
普段以上に倍加を行い、僕は彼女を拘束している結界に手を置いた。
「何をするつもりだ赤龍帝」
「……壊す」
「だからさっき」
「不可能なんか超えてやる!」
『Transfer!』
僕は譲渡の力を発動させ、今僕の中にある大量の魔力を結界に全て
与えると許容量を大きく超えたのか、結界の至る所にヒビが走り、
あっという間に砕け散った。
「バ、バカな……装置の許容はかなり大きいはずなのにそれを超えるなんて」
まあ、魔力が大きくなるのが僕の個性みたいなものだし……
でも、良かった、アーシアさんも無事だし皆も無事だ!
「みんな! 帰ろう!」
僕がそう言った後、皆が一様に笑みを浮かべて神殿の出口に
向かって歩き始めた。
アーシアさんも僕の後ろについて歩き始めた。
突如、辺りを輝きが支配した。
目の視力が回復してアーシアさんがいたところを見るけど彼女はいなかった。
「アーシアさん?」
誰もいなかった。
更新はここで終了。