その翌日、僕と木場君とギャスパーくん男組はトレーニングルームで特訓をしていました。
「はぁ!」
「うらぁ!」
木場君はお得意の魔剣で僕に斬りかかってくるけど僕はアスカロンで
防いで、龍の腕で殴り飛ばそうとするけど向こうはナイトの特性の
高速移動で距離を取った。
「バランスブレイク!」
直後、木場君の放つ魔力が先ほどよりも数段濃くなり、彼が持っている刀からも
僕を殺そうとする殺気が伝わってきた。
――――っ! 来た! 木場君のバランスブレイク!
木場君は聖魔剣を作り出すと僕に斬りかかってきた。
「はぁ!」
「くっ!」
アスカロンで木場君の刀を防ぐけど、あっちの方が魔力の質が高いらしく
魔の波動なるものが僕の全身に丸で重しのように降りかかってきた。
龍殺しのアスカロンといっても流石に
龍相手じゃないとその本領は完全には発揮しきれない。
普通に聖剣としての威力もある事はあるんだけどやはり、木場君の聖魔剣の方が
切れ味も数段上だった。
「だったら!」
僕はアスカロンを籠手に戻し、魔力を徐々に上げていく。
「バランスっ!?」
『Burst』
籠手からそんな音声が聞こえてきていつもの鎧を身に纏えず、さらには
先程まであった膨大な魔力が一瞬にして消え去った。
「隙あり!」
「しまっ!」
木場君は隙だらけな僕の足を氷の聖魔剣で凍らした。
さらに、バチバチと音が聞こえ、顔を上げてみると放電している刀を
振りかぶり、いまにも地面に差し込もうとしているところだった。
―――――っ! 雷の聖魔剣で内部から感電させるつもりか!
『Boost!』
「うらぁぁ!」
僕は倍加させた籠手から魔力弾を地面に打ち込み木場君を遠くに
吹き飛ばすと同時に足の氷を砕いた。
「くっ!」
「さあ! これで止めだ!」
『Boost!』
「はぁぁぁぁぁ!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
僕の籠手と木場君の剣が当たる瞬間、けたましい音が鳴り響き僕たちは
当たるすんでのところで攻撃をやめた。
「そこまでです!」
どうやら時間が来たらしい。
「時々イッセー君の練習量にはついていけないよ」
あれから僕らは各々各自の特訓をしている。
ギャスパーくんは動き回る小型の機械を停める鍛練、木場君は剣関連。
僕は少しでもパワーをあげるべく腕を中心に鍛えている。
先生曰く僕のパワーは並以下らしいからね。
「いやいや、僕なんかパワーは木場君以下だよ」
「でも速さはナイトの僕を優に超えているよ? それに
技術だって上がってきてるじゃないか。ほら、籠手から大量の小型の
魔力弾を射出して全部操ってるじゃない」
「全部じゃないよ。それに操っている時はそれに集中しないといけないから
その間は避けることしかできないしたとえ避けていても操作がおろそかになる」
それにさっきの感覚は……。
「よっ! 話の内容もなかなか成長してきたな若人よ」
そこへ小包に包まれたものを数個、持って先生が乱入してきた。
「ほれ、女子どもの差し入れだ」
先生が小包を開けるとその中にあったものは美味しそうな具材がたくさん入った弁当だった。
「わ~美味しそう!」
ギャスパーくんは目をキラキラさせて目の前に広げられたお弁当の前に座った。
木場君もお腹が空いているのかいつもよりも機嫌が良さそうだ。
んじゃ僕も食べますか。
お弁当に手を伸ばそうとした瞬間
『壊せ』
「っ!?」
「どうした?イッセー」
突然、体をビクつかせた僕に先生が不思議そうな表情を浮かべて聞いてきた。
「い、いえ別に」
い、今のは一体。
「す、少しトイレに行ってきますね」
そう言って僕はなるべく皆から離れたところに来た。
『相棒』
「一体どうなってるの? 頭の中に声が」
『恐らく、覇龍を発動したことをきっかけに歴代の宿主の残留思念が
解放されてお前に近づいてきているんだろう』
「そっか……」
僕はまあ、大丈夫だろうと思ってそのまま皆に合流した。
オーディン様が日本に来日してから数日。
今日は八本足の巨大な馬のような生き物、スレイプニルの場所に僕たち
先生、ロスヴェイセさん、オーディン様が乗っていた。
他にも外には翼で空を飛び、スレイプニルの周りを囲むようにして皆がいた。
「日本のゲイシャガールは素晴らしいの~」
「オーディン様! これから日本の神々との会談です! 旅行気分はお収めください!」
「やれやれ、これだからお主は彼氏ができんのじゃ」
「ふぇえぇぇぇぇぇぇん! 私だって好きで年齢=彼氏いない歴してるんじゃないんですよ!」
オーディン様に言われたロスヴェイセさんは大きな声を上げて泣き始めてしまった。
にしても最近は疲れがたまり過ぎてる。
毎日の護衛での疲れ、そして日々の鍛錬の疲れなども蓄積されていて
僕も時折、意識が沈んでしまう。
お隣でアーシアさんは僕の肩に頭を乗せておねむだし、朱乃さんは朱乃さんで
話しかけるなオーラを出して不機嫌だし。
『ヒヒィィィィィィン!』
突然、巨大なお馬さんの鳴き声が聞こえ、僕たちは前のめりになってしまった。
ふつう、こんな急な止まり方はしないはず。こんな急な止まり方をするときは
大体目の前に、何か障害物が急に現れたって決まっている。
僕と先生は急いで外に出てみるとそこには黒いローブを着た若い男性がいた。
「やあ、諸君! 俺は北欧の悪神、ロキだ!」
まじですか、北欧の神さんが反旗を翻したんですか?
「これはこれはロキ殿。この馬車には北欧のオーディン様
が乗っているのを周知の上での行動ですか?」
「勿論だ。我らの神が他の神話体系と和議を結ぶと
ほざきだしたのでな。粛清しにきた」
「馬鹿言うのも大概にしろ」
先生の声にも怒りが見て取れた。
「ま、そう言う訳だ」
ロキが手を前にやると大きなプレッシャーが集まってきた。
今ここで放たれたら馬車の中にいるアーシア達が危ない!
「バランス」
『Burst』
籠手から音声が流れ、いつもの赤色の鎧を身に纏う事が出来なかった。
ただ、今回は魔力は失わずにすんだ。
「くそ!」
『Boost!』
「ふん!」
「チッ! 赤龍帝ごときが!」
僕はバランスブレイクを諦め、普通に倍加をして高速で近づいて殴ろうとするが
ロキは僕の拳を避けて、距離を取った。
僕は飛べないから一回殴った後、籠手から軽く魔力を噴射させて、
その憩いを使って馬車の上に戻った。
「イッセー! 何をしている! バランスブレイクをしろ!」
「させるか! 来い! 我が愛しの息子よ!」
空間から不快音が辺りに響き渡り、歪んだ空間から
出てきたのは巨大な犬……いや灰色の狼だった。
『相棒、奴とは対峙しない方がいい』
「フェンリル」
「知っていたのか。こいつの牙は神をも殺す。ま、王の血筋の物の
血をなめさせるのも糧になるであろう……やれ」
『オオオオオオオオオオォォォォォォン!』
フェンリルは大きく雄叫びをあげるとものすごい速度で部長に向かっていった。
「させるかぁぁぁぁぁぁ!」
『Boost!』
「ふん!」
フェンリルの頬のあたりを殴ったのと同時に腹部に激痛が走り、口から
血反吐を吐きだしてしまった。
「イッセー!」
「ぅ……っ」
部長に支えられながら腹部に視線を落とすと、
鎧も何も身に纏っていない生身の腹に大きな穴が開いた。
「イッセー! しっかりなさい!」
ゼノヴィアさんと小猫ちゃんが負傷した僕と部長を護るように立った。
ダメだ! 君たちじゃ殺されてしまう! もう誰かが傷つくのを見たくはないんだ!
『壊せ』
っ! また声が聞こえてきた。
先程、傷を負ったせいかいつもよりも大きく聞こえ、徐々に意識が遠のいていく。
や、やばい! 飲み込まれる!
「ぁ……ぁぁぁぁぁああああ!」
「イ、イッセー!?」
『我目覚めるは―――――――――』
「馬鹿か! 今の状態で覇龍を発動したら死んじまうぞ! イッセー!」
僕の意識に逆らい、口が勝手に全てを破壊する力――――覇龍の発動の言霊を
紡いでいく。
止めようとしても口は勝手に動いていく。
『Juggernaut』
『Half Demension!』
今にも覇龍が発動しようとした瞬間に、僕の魔力が半分になり覇龍を発動するほどの
魔力がなくなったことで、不発になりさらに何かに体が押し付けられたみたいになった。
「やれやれ危機一発というところか」
「おいおい赤龍帝! しっかりしろい!」
意識が朦朧とする中、声が聞こえた方を向くとそこにはヴァーリと金色の雲に乗った美猴が隣にいた。
「ほぅ。白龍皇か」
「初めまして悪の神、ロキ。俺は白龍皇のヴァーリだ」
「まさか、こんな所で会えるとわな……二天龍が見られて満足だ」
ロキはマントを大きく翻すとフェンリルごと空間のゆがみに身を
包み込みどこかへと消えた。
それを最後に僕の意識は堕ちた。
こんにちは。最近、一人暮らしがしたくて仕方がないです。