「うごあぁぁぁぁぁぁ!」
突然、向こうの方から魔力の柱が立ちのぼり、辺りに凄まじい爆風が吹き荒れ、
戦っていたぼくら、果てはロキさえも動きを止め、目の前の光景に見入っていた。
「なんだ……何が起きようとしている」
ロキも異常何かが起きようとしているということは理解しているようだったけど、
その”何か”については理解していないようだった。
子フェンリルとフェンリルもその圧倒的な存在に動きを止めてそっちの方を見ていた。
でも、ぼくらは分かる。
つい、先日。似たような圧力を僕たちは感じたんだ。
「ぉぉぉあぁああああああ!」
「イ、イッセー。まさか」
遠くの方から聞き覚えのある咆哮が僕たちの耳に入ってきた
魔力の柱が消え去るとそこには血だらけのイッセー君が立っていた
「ぎゅあぁぁ!」
イッセー君が口から小さな魔力の塊を吐き出した瞬間!
その魔力は一瞬にして広範囲に展開され、量産型のミドガルズオルムを一瞬にして全て壊した。
それにより、凄まじい強さの爆風が地面を砂どころか地面を抉り、何もかもを吹き飛ばした!
「おぎゅぁぁぁぁぁぁ!」
『オォォォォォォォォォォォォォン!』
フェンリル達もイッセー君の共鳴しているかのように天に向かって吠えていた。
「な、何が起きているのだ! これは一体何なんだ!」
ロキはイッセー君の突然の変化に慌てふためいていた。
「ちっ! また使ったのか!」
『我、目覚めるは 覇の理に全てを奪われし二天龍なり
無限を妬み、夢幻を想う 我、白き龍の覇道を極め
汝を無垢の極限へと誘おう』
『Juggernaut Draive!』
言霊が籠手から発生された直後、一瞬にしてヴァーリの魔力が増大した!
「黒歌! 俺ごとこいつを予定のポイントに転移させろ!」
巨大な光の帯がフェンリルとヴァーリを包み込んでいき2人は夜の風景に溶けて消えた。
「朱乃!」
部長の悲鳴にも似た声が聞こえてきた。
よく見ると向こうの方で今にも子フェンリルに
食べられようとしている朱乃さんがいた。
今、持っている刀をのばして相手をどかそうとした瞬間!
朱乃さんを押し出す形でバラキエルさんが割って入り、彼女の代わりに
子フェンリルの爪に貫かれた。
「と、父様?」
予想外のことに朱乃さんは目の前で血を流して倒れている自分の父親の
傍に近寄っていく。
「なぜ?」
「お前まで亡くす訳にはいかん!」
血を吐きながら、バラキエルさんはそう言った。
「おぎゅぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
『ギャァァァン!』
その時、風を切り裂き、あたりを考えずに猛スピードで突っ込んできた
イッセー君が子フェンリルの喉にかみついた。
『ギャン! ギャァァァァァン!』
何かに助けを求めるかのように子フェンリルは叫びをあげるがその叫びも
徐々に消えていき最後はバタンと倒れた。
「うぎぁゅぁぁぁぁ!」
イッセー君は血だらけの口から大きな叫び声をあげた。
「こ、こんなのイッセーじゃない! イッセー! 元に戻って! お願い!」
部長は泣きながらイッセー君に戻るように懇願し始めた。
「ぎゅぉ!」
いきなりイッセー君は背中に生えているドラゴンの翼らしきものに爪が食い込んで、
血が流れ出てくるほどに強い力で握った。
「おぎゅがががぁぁぁぁぁぁ!」
必死にもう片方の腕が翼を握っている腕を離そうとするが翼から腕が離れることはなく、
ブチブチと聞きたくない音とともに背中から血が噴き出していく。
「おぎゅあぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして、大量の血を噴き出しながらドラゴンの翼がちぎられた瞬間!
魔力の柱がイッセー君を中心にして空高く昇った。
「はぁ、はぁ、はぁ」
魔力が晴れると、体力を消耗し肩で息をついているイッセー君がいた。
「イ、イッセー!」
『オォォォォォォッォォン!』
もう一匹の子フェンリルが部長に今にも襲いかかろうとしていた!
部長は突然の事に何もできずにいた。
「おい、犬っころ」
『ア、アギャッ』
今迄に聞いたことのない、ひどく低いイッセー君の声が子フェンリルの動きを止めた。
「その人にかみついてみろ。どうなるか……分かってるのか?」
イッセー君は子フェンリルを睨みつけるだけで圧倒していた。
その声を聞いている僕も背筋に冷たい何かが走り、全身がまるで
凍りついたかのように動かなくなってしまっていた。
『オォォォォォォォォォン!』
子フェンリルは恐怖を振りほどき、獲物である部長をその鋭い牙で貫こうと襲いかかった。
「ふん!」
高速で移動したイッセー君の拳が子フェンリルの喉を貫いた。
そのまま喉を貫かれた子フェンリルはバタンと力なく倒れた。
「バ、バカな。フェンリルの子が二頭ともこんな青二才にやられるなど」
ロキはひどく狼狽した様子でこちらを見ていた。
でも、僕はそちらではなく朱乃さん達の方を見ていた。
「私は……っ! 父様ともっと会いたかった!
父様にもっと頭をなでてもらいたかった! もっと遊んでほしかった!」
バラキエルさんはそんな朱乃さん本音の告白を聞き一言こう呟いた。
「私は……お前の事を…一日たりとも忘れたことはないよ」
バラキエルさんは穏やかな表情で彼女の頭をなでていた。
その表情は一人の父親に見えて仕方がなかった。
「……父様!」
「消えろぉぉぉぉぉ!」
ロキは二匹の自慢のペットを倒されたことに激高し、手のひらから巨大な
魔力弾を、そしてそれに付随する形で魔法陣をいくつか展開させて、そこからも
魔力弾を放った。
放たれた魔力弾は地面を抉っていき、二人へと突き進んでいく。
―――――――そして、魔力弾は二人を飲み込んだ
そこに僕という障害物が現れなければ。
「っっ! バ、バカな。き、貴様が……片手で弾くなど」
強めに叩いた魔力弾は大きく方向を逸らされ、まったく意味のない場所へと
飛んでいき、遠くの方で着弾した。
「こんなバカなことがあるかぁ!」
『オォォォォォォォォォォォォォッォン!』
ロキがもう一度、魔力弾を放とうとした瞬間! 突然、
地面に陣が展開され、そこから真っ黒な炎を纏った一匹の龍が出てきた。
その炎はロキを包み込んだ。
「な、なんだこの炎は! ち、力が抜けていく!」
黒い炎に包みこまれたロキは必死に魔法陣を展開して脱出を試みるが
魔法が発動する前に魔法陣が砕けた。
『こいつは……ヴリトラの炎か』
ドライグが籠手を通して炎を眺めていた。
「この魔力……もしかして……匙君?」
『ひょ、兵……藤か?』
籠手を通じて匙君の声が聞こえてきた。
「うんそうだよ! 意識をしっかり保って!」
『い、今俺はどうなってるんだ』
「今、君は少し力が暴走しているんだ。でも、僕が君を止めるよ」
僕がそう言うと黒い炎に包まれていたドラゴンの動きが荒々しいものから
落ち着いた動きに変わっていった。
「そう。そんな感じで徐々に落ち着こう」
『ああ……兵藤……俺が落ち着いている間にこいつに止めを刺せ』
「勿論」
「ぬおあぁぁぁ! 邪魔な炎だ!」
ロキは抜け出そうと幾重にも魔法陣を展開するが黒い炎によって
魔法陣は効力を成す前に砕け散っていった。
「終わりだ。この戦いも、そして朱乃さんの悲しみも!」
僕はミョルニルを持って、ありったけの魔力を流し込むとどんどんでかくなっていき
最終的には量産型の……名前は忘れちゃったけど大きな龍王なんか一撃で、粉砕できるくらいの
大きさにまで膨らんだ。
「これで終わりだ! ロキ!」
『Transfer!』
僕は空高く飛びあがり、さらに譲渡の力で10倍に力を引き上げ
思いっきりハンマーをロキに向かって振り下ろした!
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ロキは幾重にも魔法陣を展開して、防御しようとするが一瞬にして重ねられた
魔法陣は砕かれていき、そして―――――ロキにハンマーが直撃した瞬間、
凄まじい威力の雷がロキに振りかかりロキは地面に叩きつけられた。
叩きつけられたロキはもう、動くことはない。
「いっちょ上がり、神様のこんがり焼き」
地面には意識を失ったロキが大きな穴に埋もれていた。
戦いが集結し皆の顔には疲労が見えていた。
「お疲れ匙君」
黒い炎が消え、匙君は地面に横たわっていた。
「ああ……兵藤か……お前は凄いよ……いつもこんな死ぬ気の戦いをしてんのか?」
「まあね。よく生きてるよ、僕も」
「はは、そうだな」
僕はアーシアに匙くんを任せてその場を後にした。
「イッセー! 体は!? どこか痛いところとかは!?」
「だ、大丈夫ですよ部長」
部長はひどく狼狽した様子で僕の体の状態を確かめていた。
「本当ね? 私に心配掛けたくないからとか思ってないわよね?」
「本当です!」
「そう、良かったわ」
部長は僕の元気な声に一安心したみたいだ。
「赤龍帝」
後ろを振り向くと数人に肩を支えられているバラキエルさんの姿があった。
「君は……朱乃の事が好きか?」
「ええ、嫌いなはずありません。朱乃さんは僕が護りますよ。貴方が
その命をかけて守った彼女を」
「そうか……娘をよろしく頼む」
なんだか照れ臭いな。でも、ようやくバラキエルさんにも認められたんだ……
それに朱乃さんとバラキエルさんの確執もなくなった。まだ、親子として接するには
時間がいるかもしれないけど大きな一歩だよ。
「さてと、イッセー。この土地を直すぞ」
「え?」
タンニーンさんのその声に僕はみっともない声を上げた。
「“え?” じゃない。ここにも人間が来るやもしれんからな」
結局、朝まで傷ついた体で僕は大きな穴を埋めていた。
ちなみに地面に開いていた大きな穴のほとんどはヴァーリが開けたものだったのに
彼がもういないからとの理由で僕が手伝わされた。
ヴァーリの馬鹿野郎ぉぉぉ!
数日後、部室には一人の女性の悲しみにくれる声があった。
「ふふふ、どうせ私は年齢=彼氏いない歴ですよ~だ。
はぁ~これ絶対にクビよね……うん、絶対クビだわ」
なんと、オーディン様の護衛をしていたはずの
ヴァルキリーのロスヴェイセさんが部室にいた。
曰くオーディン様が一人で勝手に帰ったかららしい。
でも、部長さんの計らいで女性教諭としてこの学園で働けるんだってさ。
「はいはい。そんなあなたには。これ」
部長さんは数枚の紙をロスヴェイセさんに見せた。
「う、嘘! 冥界の保険金ってこんなにもあるの!?」
何故か目が某忍者アニメの一人の様に小判……ゲフンゲフン! お金に変わっていた。
「さらに今なら」
「今なら!?」
「お安くいたします」
「買った!」
早! ていうか部長、キャラあんなんでしたっけ!?
そして部長はポケットから最後の悪魔の駒をロズヴェイセさんに渡した。
ロスヴェイセさんはそれを自身に取り込み背中に黒い翼を生やした。
「ということで悪魔に破れかぶれでなったロスヴェイセです!」
もとヴァルキリーさんの悪魔の誕生だ。
こんにちわ。以前も言いました通り、気弱は原作十二巻の内容までしか書きません。
それでは!