「将来的には悪魔の女性からヴァルキリーを輩出したいと思っています」
ロスヴェイセさんが思い描いている将来を語り終えるとお辞儀してから席に着いた。
今、僕たちグレモリー卷族は冥界の部長さんの本邸のダイニングでお茶をしている。
ようやく部長の卷族がすべてそろったのでその挨拶を言う訳である。
にしてもまあ……少ないね。
多分他の所よりかは数人くらいは少ないと思う。
そんでその主な原因は僕だよね。
僕の中に眠っている物がヤバいものだけに駒を全て消費して転生した。
うん、僕ってどこに行っても迷惑をかけるね。
その後も他愛ない会話は続いていく。
そして僕らが転移魔法陣で帰ろうとした時ミリキャス様が僕に近寄って来た。
「イッセーお兄様はこれからもずっとお姉さまを部長と呼ぶのですか?」
「ええ、まあ。僕と部長の関係は変わりませんからね」
………なんでだろ、前までは何ともなかったのに今は心がざわめくというか。
ふと後ろを向いてみると悲しそうな表情をした部長がこっちを見ていた。
なんで?何でそんな表情をするの?ねえ、なんで?
僕の疑問は消えることなく人間界へと帰った。
そして修学旅行当日。
僕たちは東京駅の新幹線のホームにいた。
見送りには部長だけが来てくれている。
「はい、これが人数分の認証よ」
部長が旅に出る僕たち二年生にあるカードを渡した。
「これが噂の?」
僕が聞くと部長が頷く。
「ええ、これが悪魔が京都を楽しむ際に必要なカードよ。
これがあれば京都の関係者にも伝わるから」
京都の名所は寺が多い。僕ら悪魔は寺とか神社とか神聖な場所には近づけないからね。
そんな事よりも気になるのがイッセーくんだ。
さっきから遠くの方をボーっと見て話に参加していなかった。
いつもなら一番に話に加わってくるのに。
部長も部長でイッセー君となんだか距離が開いてるような気が。
「まあ、3泊4日楽しんできなさい」
「「「「「はい!」」」」
こうして僕たちの修学旅行が始まった。
「………」
「ねえ、あいつどうしたのよ」
「さ、さ~。今朝からああなんです」
桐生さんの質問にアーシアさんも戸惑いを見せていた。
「イッセー、どこか具合でも悪いのか?」
「ん~」
……どうやら何かあるみたいだね。
ゼノヴィアさんに話し掛けられてもイッセー君は視線すら合わせようとしなかった。
ずっと窓の外を向いている。
……もしかして神器の中に潜り込んでいるのか?
いや、でもそうだったら反応はないはず。
『あら、いらっしゃ~い』
「お久しぶりです、エルシャさん」
新幹線でアーシアさん達が楽しそうに話していたから僕はセイグリッドギア
の中の歴代所有者様達に会いに来ていた。
といっても話してくれるのはいつもエルシャさんだけで後は表情すら見えない。
『ふふ、悩んでるみたいね。少年』
「悩む?僕がですか?」
『ええ』
「特に僕は悩んでなんか」
『んふふ♪お姉さんに隠したって無駄だぞ☆』
………悩み…か
ふと僕は歴代の所有者の中で年齢も体形も僕に近い人の前に行った。
『そいつはお前と同い年くらいの宿主だった。才能もありすぐに
覇龍にも目覚めた……が力におぼれ他のロンギヌスの使い手に殺された』
隣にドライグがいつの間にか立っていて目の前の所有者について話してくれた。
「白龍皇じゃなくて?」
『力に溺れれば他の神器によって殺されたりするのよ』
『それに比べエルシャもそうだがお前は力には全く溺れない。というよりも逆のパターンか?』
余りに弱すぎると勘違いしているとでも?
『んまあそのくらいがいいわよ。決しておごらない。それが
貴方の強みでもあるわ。ベルザードもそう言っているもの』
ベ、ベルザード?
僕が疑問に思っているとドライグがその人について説明してくれた。
『ベルザードは最強の赤龍帝だった。二度も白龍皇を倒したからな』
え、えぇぇ!?二、二回も倒しちゃったの!?強すぎでしょ!
『でも今回で覆るんでしょ?』
『だろうな』
いやいや、最強を目指すって言ってもあくまでレーティングゲームでの話ですから!
赤龍帝の中で最強を目指すなんて言ってませんから!
『あら、不思議そうな顔をしてるわね。最強を目指すなら
ついでに私たちも超えちゃいなさい。そしてもっと笑わせてね、少年』
目を開けたら新幹線の中だった。
かなり長い時間潜ってたのかな。
「あ、起きた?イッセー君」
「ん」
隣にはいつの間にか木場君が座っていた。
……顔が近いのは気のせいだと思いたい。そして所々から
『木場君×兵藤君!?ありかも!』とか言ってるのも気のせいだと思いたい。
「有事の際について確認しておいたくて。僕と君は別クラスだから」
「ん~」
それから有事の際の集合場所だとかを知らされているうちに駅に着いた。
「す、すげえ。俺達二年全員泊める金大丈夫なのか!?」
とまあそんな風に偶然会った元浜君がそう言っている。
まあ無理はない、僕達が宿泊するホテルのロビーは
めちゃくちゃ豪華絢爛な装飾が施されており上にはシャンデリア、
床には赤い絨毯がある。僕も最初は元浜君と同じことを思ったよ。
でもホテルの名前を見て気付いた。
サーゼクスホテル……どう見てもグレモリー家が絡んでるホテルだ。
とまあそんな訳で今僕たちは先生から注意事項を受けている。
「とまあそんな感じでいろいろ注意して遊んでこい。以上」
アザゼル先生、もう少しやる気を出して説明しましょ。
そんな訳で荷物を部屋に置きに行くべく鍵をそれぞれ受け取りに行くが
「あ、イッセーはこれだ」
何故か僕だけアザゼル先生から直接渡された。
何故に?
その理由は部屋に行ってすぐに分かった。
「………なんで僕だけ古風な和室?」
僕の目の前には8畳分くらいの広さの部屋と丸いテーブルに
敷布団、そして……だからなんでダイヤル式の昭和テレビ!?
ためしにダイヤルをまわしてみるとカラーではなく白黒の映像が映った。
しかも画質まで昭和もんだよ!白黒って今どき売ってないよ!?
まさかと思いトイレを確認すると案の定……ボットン便所だった。
いやね、昔はボットンが常識だという時代もあったさ。
今じゃおかしいだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
というか和室にボットンというチョイスはおかしいと思います!
僕は半泣きになりながら班の集合場所に行った。
「あ~可愛いですぅ~」
「おぉ、確かにこれは可愛いな」
「ここで買い物しても大丈夫よね?」
ついて早々、教会トリオは狐の可愛い置物に目を奪われていた。
桐生さんが急に伏見稲荷に行こうと言い出し電車でひと駅の所に来ていた。
なんというか平和で良かったよ。
僕は大きな鳥居をいくつも通り抜けて階段を上っていくと前には古ぼけた社があった。
「……京都だけに怪奇現象ってか?」
おかしすぎる。伏見山はまあまあの高さはある。
僕は数分しか上ってないのにもう前は行き止まりになっていた。
それにまだお昼というのにあたりが薄暗い。
「……京の者ではないな?」
突然の声に僕は辺りを見回した。
数は……10~20という感じか。
夏休みにタンニーンさんに追いかけられたせいで感覚が研ぎ澄まされているせいか
姿が見えなくても気配でどの程度の強さなのか、また何人いるのかが
大体分かるようになった。気を抜けば即死の世界だからね。
そして、前から何かが歩いてきた。
「……女の子?」
目の前にキラキラ光る金色の髪に巫女装束を着て獣耳がある少女がいた。
「……よそ者め!かかれ!」
な、なんでいきなり襲いかかるのぉぉぉぉ!?
僕パス持ってるよ!?
辺りから烏天狗やらなんやらの妖怪が大勢出てきた。
京都で暴れたら怒られるから本気は出せない。
僕は籠手からアスカロンを出すと刃の部分ではなく峯の部分で
相手の攻撃を弾いたり相手をはじきとばしたりしていた。
「母上を返せ!」
「何の事かな!?僕は今日ここに来たんだけど!」
「嘘をつくな!私の目はごまかしきれんのじゃ!」
あぁもう!
「何何?乱闘ゲームのリアル版?」
その時、イリナちゃんとゼノヴィアさんが来て、遅れてアーシアさんも来てくれた。
「二人とも、京都の名所だから相手の武器を破壊するくらいに」
「オッケ~」
「任せろ!」
それからはあっという間に鎮圧できた。
「っ!今の戦力では無理じゃ!一度撤退じゃ!」
少女がそう言うと風にまぎれてどこかへと消えていった。