この京都を牛耳るボスの九尾、八坂が須弥山の帝釈天から使わされた
使者と会談するために出ていったきり帰っていないらしい。
そしてその数日後、八坂姫を警護していた烏天狗が瀕死の状態で発見され
その死に際に八坂姫が襲撃されさらわれた、そう言い残して眠られたらしい。
「…………許せない」
「落ち着けイッセー。こんな所で切れても怖がらせるだけだ」
アザゼル線背に言われ、ふと隣を見ると少し怯えたような眼をした九重がいた。
……何をしてるんだか。先生の言うとおりこんな小さい子を泣かせるなんてヒーロー失格だよ。
「ごめんね九重」
僕は九重の綺麗な金髪に手を置いて頭をなでた。
「必ず八坂姫は助けるよ」
「……どうかお願いじゃ。母上を助けるために力を貸してくれ…貸してください!」
九重は目に涙をためて僕たちに懇願してくる。
こんな小さな子すら奴らは泣かすのか! カオスブリゲード!
「あ~疲れた」
あの後いくつか話しあったあと僕らはホテルに帰りシトリー卷属と話し合いをした。
その結果、簡易転移魔法陣を携帯し何か起こればホテルに帰って対処、するということになった。
旅行中の戦闘は避けられそうにないか……。
僕は自分の両手を天井に挙げて見上げた。
「龍の腕と……龍が宿った神器……そして封じられた
バランスブレイク……この状態で僕は勝てるのかな?」
僕の恐怖はいまだに消えずバランスブレイクを使えなくしていた。
この状態がずっと続くのであれば……僕はこれから荷物になるだろう。
なんとしてでもサイラオーグさん達と闘う前に取り戻さないと。
もしも取り戻せないのであれば僕は……誰だろ。
突然、ドアがノックされた。
「開いてますよ~」
「イ、イッセーさん」
入ってきたのはアーシアさんだった。
寝間着の状態でいつもよりも髪の毛があっちやこっちやに向いていた。
恐らくお風呂上がりのまま走ってこの部屋に来たんだろう。
「え、えっと髪を乾かしてくれませんか?」
「うん、いいよ」
僕はアーシアさんからドライヤーと櫛を借りて彼女の
長くてきれいな金色の髪を乾かし始めた。
「痛くない?」
「はい……イッセーさんは」
「ん?」
「リアスお姉さまの事が好きなんですか?」
僕はそれを聞いてドライヤーを動かしている腕を止めた。
「な、なんで?」
「よくイッセーさんはお姉様の事見つめていますし……
何より話している時のイッセーさんの表情がとてもにこやかなんです」
………分からない。
「むぅ、先を越されたか」
「おぉ! 良い雰囲気!」
そこへイリナちゃんとゼノヴィアさんもやってきた。
「私も乾かしてくれイッセー」
「じゃあ私もー!」
という訳で僕は三人の髪の毛を順番に乾かしていくことになった。
翌日、九重が嵐山方面を案内してくれるというのでお言葉に甘えて
案内してもらうことにした。
「ここの景色は絶景じゃ。なんせ世界遺産じゃからな」
九重に紹介された場所の景色は本当に絶景としか言いようがなかった。
向こうではあんまりみることのできない景色だね。
庭園も見回り、僕達が次に案内されたのは法堂だった。
堂内に入り天井を見上げると上には壮大な迫力の龍の絵があった。
「どこから見てもにらんでいるように見える雲竜図じゃ!」
凄いな~東洋のドラゴンはみんなこうなの?
『まあ大体そうだな。龍王のウーロンを思い出す』
ドライグが雲龍図を見て懐かしそうな声を出した。
雲龍図は撮影禁止だから残念だけど記憶に焼き付けておきますか。
「ん、美味しい」
「そうじゃろ!」
いろんなところを回った僕たちは九重の勧めで湯豆腐屋で湯豆腐を食べていた。
九重は満面の笑みで僕たちのお皿にどんどん湯豆腐を入れてくる。
きっとこれが彼女のいつもの姿なんだろうな……それをあんな悲しいものにした
奴ら……後悔させてやる。
ふと、イリナちゃんと目が合うけど顔を真っ赤にして目をそらされた。
まあ昨日の今日だしね。
「あ、イッセー君」
「木場君」
木場君の班もどうやら湯豆腐を食べに来たらしい。
「お、おいもうそろそろ止めた方が」
「え~? アラレルさんはこんなていろなんれすか~?」
……どこかで聞いたことがある声だ。
後ろを振り向くとそこにはベロンベロンに酔ったロスヴェイセさんと
未だに飲もうとしている、彼女を止めようとしているアザゼル先生がいた。
何してるんだか。
「凄いことになってましたね」
「だな」
僕たちは湯豆腐で腹も膨れ今は渡月橋を歩いている。
「………」
「どうかしたのか? イッセー?」
九重が急に止まった僕を訝しげに見てくる。
……誰かに見られてる? どうやら木場君達も気づいたみたいだった。
その瞬間、何か生暖かい感触が僕たちを包んだ。
気がつくとそこは今の今までいた渡月橋、でも僕ら以外は誰もいなかった。
「……この霧、間違いありません。私がディオドラさんに捕まったとき
神殿の奥でこの霧に囲まれてあの装置に捕まっていたんです」
辺りには霧が立ち込めていて、一目見ただけで自然現象で見る
霧ではないという事だけは分かった。
「ディメンションロストだね」
木場君が呟きながらこっちに向かってきた。
「ロンギヌスの一つだったはずだよ。
先生やディアドラ・アスタロトも言っていたはずだよ」
そう言い木場君はその場にしゃがんで霧に触れた。
「おい大丈夫かお前ら」
上から声が聞こえたので、見上げると黒い羽を
羽ばたかしてアザゼル先生が降りてきた。
「たっく、こんなド派手にセット作りやがって」
すると霧の奥から何人もの影が見えてきた。
徐々にその影は大きさを増していき、ついには霧から人が完全に姿を現した。
「初めまして、堕天使総督殿」
話しかけてきたのは学生服らしきものの上から漢服を
きた僕と同い年くらいの青年だった。
そして肩に槍を一本、担いでいる。
「お前が英雄派を仕切っている奴か」
「いかにも。曹操と名乗っている。三国志の曹操の子孫だよ。一応はね」
「貴様一つ聞くぞ!」
九重は目の前にいる曹操に向かって、怖がりもせずに大胆にも話しかけた。
「何でしょうか幼き姫君」
「私の母上を攫ったのはお前か!」
「いかにも。貴方の母上には俺達の実験に付き合ってもらうだけだ」
曹操は悪びれた様子を見せずに、ただ単にそういった。
っ!実験だと?ふざけるなよ!
この子の中で母親がどんなに大きい存在だと思ってるんだ!
「お前ら、あの槍にだけは」
―――――ガキィィィィィィン!
先生が何か言おうとしていたけど僕は気にもせずに漢服を着た男に殴りかかった。
「報告通り少し……いやかなり血気盛んだね」
「九重の母親を返せ!」
『Boost!』
周りにいた英雄派のメンバーが一気に警戒心を上げるけど、
曹操がそれを手を上げて落ち着かせた。
「ジークフリート! レオナルド! お前達はそっちの奴らの
相手をしてくれ! 俺は赤龍帝と一戦するからさ!」
そのまま僕たちは攻撃しながら遠くのほうに行った。