「あの馬鹿が! 人の話くらいちゃんと聞け!」
先生の声だけを聞けば怒っているように見えるけど、
表情を見る限り、とくに怒っている様子ではなかった。
曹操とやらはイッセー君に任せ、僕たちは目の前にいる相手に集中する。
「じゃあ、レオナルド。悪魔のアンチモンスターでも行こうか」
感情の起伏が少なそうな少年が何も言わずにコクリと頷くと少年の下から
不気味な影が広がっていく。
―――――――っ!
背筋を冷たい物が走った。
言い表すなら僕達悪魔が、近づいてはならない
教会に近づいた時の悪寒に似たようなものだった。
「ギュッ!」
「ギャッ!」
「ゴギャッ!」
耳障りな音を発しながら影からRPGゲームなどで出てくるようなモンスターが大量に現れた。
聞いたことがある。ロンギヌスの中の上位は次元が違う能力だと……あれは
恐らくアナイアレイション・メーカー。使用者のイメージした生き物を
作り出すことが可能な神器……気合いを入れないと殺されるね。
「説明は後だ。今はこいつを片づけるぞ!」
「「「はい!」」」
僕の籠手と曹操の槍がぶつかり金属音が辺りに響く。
曹操は楽しいのか、笑みを浮かべながら槍を振るうけど一度、僕から距離を取った。
「いや~もっと楽に勝てるかと思ったけどどうやら見当違いみたいだ。
他の奴が君を過剰なまでに危険視する意味がようやく分かった」
僕は曹操が話している途中でもお構いなしに殴りかかるけど曹操は
それを難なく槍でいなす。
「その速さといい魔力といい、凄いな。君をなめてかかれば死ぬのはこっちだ。
良い例がシャルバだね。彼の両腕はもう使い物にはならなかったよ」
曹操が淡々と話す事実は、僕はあまり記憶のないものだった。
シャルバを倒したのは僕じゃない僕だったからね。
『Boost!』
何度目か分からない倍加がかけられ、僕の魔力は膨大なものになっていた。
「僕を最重要危険物みたいに言わないでよ」
「いや、もう君は十分最重要危険物だ」
曹操はトントンと肩に槍を当てながらそう言った。
「なんでもヴァーリと互角以上の戦いをするみたいだしね。
僕もいつ死ぬか冷や冷やしてるよ」
「よく言うよ!」
『Boost!』
特大のドラゴンショットと曹操の槍がぶつかり合い大爆発を起こした。
「どわぁ!」
さっきの爆風で僕は元にいた場所まで吹き飛ばされて、地面に直撃した。
「おいイッセー! アスカロンを貸してくれ!」
「分かった!」
僕は痛みを我慢しながらも起き上がり、籠手からアスカロンを取り出して、
ゼノヴィアさんに投げると彼女は空中でうまいこと
キャッチし一気に何体ものモンスターを葬った。
「ごぎゃぁ!」
モンスターの口から光り輝く何かが僕に向かって放たれるけど
僕はそれを姿勢を低くしてかわした。
「うわっと! こ、これって光の力!?」
ちょっとヤバいな……だったら。
僕は先程のモンスターが吐いた光の力を
見てあることを思いつき、木場君に声をかける。
「木場君! 確か光を喰らう剣作れたよね!?」
「……そうか!」
木場君も気づいてくれたのか人数分作るとそれぞれに渡した。
「イリナちゃんも前衛で戦って!」
「分かったわ! このミカエルさまのAに任せて!」
イリナちゃんは翼を出しモンスターをかく乱させてから何本もの
光の槍を作り出しモンスターにぶつけて一気に葬った。
「九重ももう少し下がって」
「わ、分かった」
『Boost!』
もう、十二分に魔力は倍加されている。
「僕にしかできない桜吹雪ドラゴンショット!」
籠手から何発ものドラゴンショットが放たれ、誰が生み出したか分からない
モンスターを3体ほど、体にいくつも大きな穴を開けて、バタンと力なく地面に倒れた。
「赤龍帝は私達が!」
奥の方から武器を持った女性達が僕に突撃してくる。
女の人までカオス・ブリゲードに入ってるのか……。
「止めときなよ! 曹操クラスじゃないとまともにやりあえないよ」
白髪の少年の忠告を無視して学生服を
着た女の子達がそれぞれの得物を持って僕に突っ込んできた。
「木場君! プロモーションするよ!」
「分かった!」
僕はナイトにプロモーションして高速で移動しそれぞれの得物を
一瞬で破壊し、背後からドラゴンショットを放った。
大きな爆音をあげて女の子達は爆風に巻き込まれ吹き飛ばされた。
良かった、誰も直撃してない。
「君は優しいね~」
「っ! 曹操!」
「何もしないよ。君と闘えただけで十分だ」
曹操は両手を上にあげて、降参の意を示していた
……闘う気がないの? それとも役目が終わったのか。
僕は警戒心をとぎらせないようにしながらも話を聞いた。
「どうやら君にはいくら下っ端を向けても無駄なようだ。
今度、上にも言っておくよ。『赤龍帝にザコをぶつけても人員の無駄』だって。
さっきも言ったが赤龍帝でもトップクラスで優しいんじゃないのかな?
さっきのも直撃させずに爆風で地面に直撃させて気を失わせたし。
それに君の指示もなかなかの物だった。よくあの光の攻撃を見た瞬間に
考えれたものだ。将来的には脅威になりそうだ」
曹操はつらつらと喋り続けていくが、僕は彼の言っていることが今一、分からなかった。
「まあ、君以外も確かに危険だが君ほどではない。見なよ、
ジークフリートで三人を相手にしてるぞ」
曹操に言われ、木場君達の方を向くと
三人の剣をジークフリートって言う人が一人でいなしていた
「堕天使の総督殿も厄介だな。そうだな、言うなら全体の危険度が
Sクラスとすれば君はSSSSだな。どうだい?こっちにきてその力を」
曹操の顔のスレスレを通ってドラゴンショットが地面に直撃し大爆発を起こした。
曹操は残念そうな顔を浮かべながらも既に分かっていたような雰囲気を
醸し出して僕を見てくる。
「答えは……分かった?」
「残念だよ……ん?」
僕らの近くに一つの魔法陣が輝きながら出現した。
……みたことがない文様だ。
そして、出てきたのは魔法使いの格好をしたかわいらしい外国の女の子だった。
「初めまして! 私はルフェイ、ルフェイ・ペンドラゴンです!
ヴァーリチームの魔法要員です!」
………なんでヴァーリの魔法使いさんが。
するとその女の子は僕を見ると目を輝かしてこちらにダッシュで来た。
え? な、何何?
「あ、あ、あの赤龍帝さんですよね!?」
「は、はい」
「私、仮面の戦士の大ファンなんです!握手してください!」
「あ、はい」
終始圧倒されながら握手をすると、とても喜んでくれた。
な、なんというか場違い感が半端ないですけど。
「何の用かな?」
「ヴァーリ様から伝言です。『邪魔はするなといった筈だ』
私たちに監視者を送ったバツです♪」
「わっ!」
突然、大地が大きく揺れ始めた。
戦いの最中だった他の人たちもあまりの大きな揺れに闘いを中断していた。
突然、目の前の地面が盛り上がったかと思えばそこから大きな何かが
地面の中から現われた!
『ゴォォォォォォォオオオン!』
「ゴグマゴグか!」
そんな中、ゴグマゴグと呼ばれている物がその太くて大きな腕を上げて、
英雄派に向かって振るう!
そのドでかい拳は渡月橋を一撃で崩し、大量の砂ぼこりが魔っていた。
……な、なんて威力なんだ。
「アハハ! どうやらヴァーリはお冠か! 伸びろ!」
曹操がそう叫ぶと槍が伸びていきゴグマゴグ……
言いにくいのでゴグ君の肩を突き刺しそのまま押し込んだ。
こ、こっちにくるぅぅぅぅぅぅぅぅ!
「うっひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
僕はこちら側に倒れてくるゴグ君から命からがら逃げた。
巨大なゴグマグが地面に倒れた瞬間、凄まじい揺れが僕たちを襲い、
大量の砂ぼこりが舞った。
突然、僕の耳に誰かの足音が聞こえてきた。
僕は首だけを動かして辺りを見回すと近くにロスヴェイセさんが立っていた。
「ロスヴェイセさん?」
僕が話しかけても、ロスヴェイセさんはボーっとしたまま動かなかった。
そして、突然―――――。
「さっきからうるらいんれすよ~! チュド~ンとかバッキュ~ンとか!
そんな奴には全属性、全精霊、全神霊を使った北欧式フルバーストをお見舞いだ!」
ロスヴェイセさんの周りに大量の魔法陣が現れた瞬間!
凄まじい数の炎やら雷やら水やらいろんな
属性の魔法が英雄派に向かって飛んでいった。
でもそれらの攻撃は全て霧に弾かれている。
「少々乱入が多すぎたな。アザゼル殿! 俺達は今晩この京都の特異な
力場と九尾の御大将を使って二条城で一つ大きな実験をする!
是非止めに来てくれ!」
徐々に霧が辺りを包んでいった。
「全員急いで武装を解除しろ!」
僕は慌てて籠手を戻した。
気がつくとそこは何一つ変わっていない渡月橋の上だった。
「どうしたのあんたら?すんごい険しい顔してるけど」
桐生さんは僕たちの様子を怪しんできた。
「ふざけたことを言いやがって!」
先生は電柱に拳をぶつけ怒っていた。
「……母上は何もしていないのに」
僕は九重の頭をなでることしかできなかった。