ゲーム当日の朝まで僕は爆睡していた。
皆のお陰で僕は過去のトラウマを完全に克服できてこれまでの寝不足を
無くして完全な復調を果たせた。
でも、まだ完全に復調していないことがある。
「……部長」
そう、部長との関係だ。
僕はあの日から寝てたから分からないけどたぶんまだ機嫌がよろしくないと思う。
だから僕はこの戦いが終わったら……この想いをぶつける。
フラれればその時はその時だ。
また新しい恋を見つける。
それよりも今日はあの、サイラオーグさんとの戦いだ……相手は
若手ナンバーワンと言われている相手。全力で行かないと。
「んじゃ行こうか」
僕は皆が待つところへと向かった。
「す、凄い。空に島が浮いてる」
僕たちは今、会場に向かうゴンドラの中で景色を堪能していた。
とりあえず冥界までいったのは良いものの途中で用意されていたリムジンに
乗り込み、ある場所まで行ってさらにそこから今のっている会場行きの
ゴンドラに乗った。
「そう言えば僕らが試合している時に英雄派が来るって事は」
「それはねえな。まあ一応警戒を最大にしているが杞憂に終わるかもしれん」
アザゼル先生は自信ありげにそう言った。
「どうしてそう言いきれますの?」
朱乃さんの言うとおりだ。
なんで先生はこうも自信ありげに言えるんだろ。
「個人的にヴァーリから連絡が来てな。『邪魔はさせない』だとさ」
あのヴァーリがね……まあ、それはそれで良いか。
ふと部長の方に視線を向ける。
部長は遠いどこかを見ているようでこっちには視線を向けようとはしなかった。
……僕、告白する前に玉砕決定かも。
そう思っているとゴンドラが動きを止めた。
どうやら着いたようだ。
「お待ちしておりましたわ」
用意されているリムジンの前でレイヴェルさんが待っていてくれた。
僕らはそれに乗り込んで車は会場を目指して発車したけど後ろから車が追ってきた。
「お前らそろそろ個別にマネージャーをつけた方がいいな。
日が経てば落ち着くだろうが冥界に来るたびにこんな事になるぞ。
この際だ、レイヴェルがイッセーのマネージャーをしろよ。
いい経験になるぞ?女からの嫉妬が多いと思うがな」
直後、朱乃さんがどこから取り出したのか大きなハリセンでアザゼル先生の
頭をたたいた。
「っ! 何すんだ朱乃!」
「うふふ、ちょっとデリケートな時期もありますんで
そういうのは控えて下さいな。ね? 部長」
部長は顔を真っ赤にして俯いた。
部長の機嫌も前と比べればだいぶマシになった。まだ会話はしてないんだけど。
そんな風に考えながらもリムジンは会場となる巨大なドームを目前としていた。
僕らが案内されたのは会場の隣にある高級高層ホテルだった。
なんか悪魔になってから豪華な所に泊まってるような。
ゲーム開始まで後六時間ほど、僕らはそれぞれの事をしていると
一人の人物が部屋に入ってきた。
「邪魔する」
ライザーさんだった。
「お兄様!」
「ライザー!」
部長もレイヴェルさんも素っ頓狂な声を上げた。
「よー、来てやったぜ。レイヴェルも元気そうだな」
そう言うとライザーさんは近くにあった椅子に座った。
確か僕に負けてから寝込んで立って聞いてたけど復調したんだ。
「今回のゲームはプロの好カードともなんら遜色ないゲームだ。
実戦とは違ってエンターテイメント性があって戸惑うだろうが気にせず闘え」
ライザーさんは朱乃さんが入れたお茶をすすりながら真面目な顔でゲームに
ついて語ってくれた。
なんというか会った時と比べてだいぶマシになったような気もしない。
というよりも荒々しさがなくなったのかな?
「……私はソーナほど戦略の組み立てが上手い訳でもないし
サイラオーグほどパワーもある訳じゃない」
いや、部長が筋肉モリモリだったら逆に怖いです。
「でも卷属には恵まれているのは分かっているの。皆を
うまく導けていない自分の力量不足が腹立たしいわ」
そんなこと思っていたんですね部長。
部長といえど一人の女の子、健気に振舞っていても中身は
不安で今にも壊れそうってわけね。
「戦略の組み立てとかは戦いの中で自然と鍛えられていく。だがな
卷属に巡り合える能力は鍛えられねえ。今の卷属が
集まったのは赤龍帝の龍の特性かもしれないがそいつと
お前が巡り合ったのはまぎれもないお前の力だ。自信を持てよリアス」
めちゃくちゃ良い事言いますね。
「それに今じゃ」
ライザーさんは僕に炎を軽く飛ばしてくるけど僕は片手でそれを払った。
「会った頃はあんなにも弱かったこいつがここまで強くなってんだ。
今やっても俺達がボロ負けしそうだ。ま、頑張れよ」
そう言ってライザーさんは部屋から出ていった。
ゲームの開始も押し迫ったので僕たちは入場ゲートに続く通路にいた。
あと少ししたら試合が始まる。
「みんな、勝つわよ!」
『はい!』
通路に僕らの気合のこもった声が響いたと同時に会場から凄まじい歓声が聞こえてきた。
『それでは登場してもらいましょう!東ゲートからはサイラオーグ・バアル卷属!
西口ゲートからはリアス・グレモリー卷属の登場です』
「さあ行くわよ!」
僕たちは会場へと進んだ。
最初に目に飛び込んできたのは超大型のモニター、次に陣地にある
人数分の椅子と謎の台、そして陸上競技くらいのサイズのフィールドだった。
『ごきげんよう皆さん! 今回の実況は私
元七十二柱のナウド・ガミジンがお送りいたします!』
なんかド派手な衣装をした実況さんがモニターに映し出された。
『今回のゲームをしきる審判役はリュディガー・ローゼンクロイツ!』
宙に魔法陣が現れそこから銀髪のイケメン男性が現れた。
「…元人間の転生悪魔でランキング七位」
あの人が転生悪魔の頂点に立つ人か。
『そして特別ゲストとして堕天使総督のアザゼルさんにお越しいただいております!』
画面いっぱいに映し出されたのは見知った男性。
……何をしてんだか。
『そしてもう一方! 皇帝のディハウザー・ベリアルさんです!』
っ! あ、あの人が皇帝!
モニターに映し出された人を見て僕は華がある人だなって思った。
そしてルール説明が行われた。
それぞれのチームのキングがサイコロを振り、2人が振ったサイコロの
出た目の数を合わせた駒価値を持つ下僕が出ることができる……そんな感じのルールだった。
『さあそれではバアル卷属VSグレモリー卷属のゲームを開始致します!』
「両チームのキングはこちらへ」
審判役に言われ部長とサイラオーグさんがダイスの置かれた陣地に立った。
『用意は良いですね? シュート!』
実況の声に合わせ2人はサイコロを振った。
モニターに出された数字は……3だった。
『出た和は合計3となります!
僕たちは作戦会議を5分間貰っている。
その間の話で決まった出場者は……木場君だった。
もうすぐこの作品も最終章だぜ!