「こ、これって」
僕達が教会についたころには既に何者かが戦いあった痕跡が残っていた。
それもかなり真新しい。
「一体誰が」
「……急ぎましょう」
「うん、そうだね」
僕たちはひと先ず先を急いだ。
わらわらと群れてくる黒光りするGみたいにたくさんの神父が出てきたけど
どうにかして全員倒した。でも、
「ひっぐ! い、痛い。めちゃくちゃ痛い」
僕は眼から出てくる涙を拭いながら壁伝いに歩いている。
『切り傷10か所、銃痕が3か所か。まずまずだな』
いくら、二天龍の片割れの魂は宿っているセイグリッドギアを持っていても
使いこなせなくてはただの宝な持ち腐れになる。
良い例が僕だ。
「うぅ、擦り傷なのに光のせいで、痛すぎる」
『少しくらい我慢しろ。男なら泣くな』
「わ、分かってるよ。この扉の奥におわっと!」
「いらっしゃい、悪魔さん」
僕がドアを開けようとすると勝手にドアが開いて
僕は前のめりになって見事に地面とキスをしてしまった。
「ア、アーシアさん!」
壁には魔法陣か何かで拘束されて、
張り付けられたアーシアさんの姿があった。
「ふふ、まさか一人で来るなんてね。どんなトリックを使ったのかしら?」
レイナーレは僕を見下したような目つきで僕にそう聞いてくる。
「ト、トリックなんか使ってないよ」
「なら全員倒して来たっていうのかしら?」
「そうだよ」
「あははははははははは!」
するとレイナーレを筆頭に周りにいた数人の神父が一斉に笑い始めた。
「な、なんだよ」
「赤ん坊以下の魔力しかない貴方が彼らを倒す? あはは! 無理無理!」
うぅ! 言っていることが当たっているから何も言えない!
「あんたみたいな奴には……そうね~……スライムと互角じゃないの?」
レイナーレがそう言うと再び教会の中が笑いの渦に巻き込まれた。
『Boost!』
流石に今の言葉は僕でも悔しさを感じた。
悔しくて手に力を入れて握ると力が入り過ぎて血が滲んできた。
「さっさと死になさい!」
レイナーレのその言葉とともに大勢の神父たちが僕に襲いかかってきた。
でも、神父たちめがけて巨大な像が何個も投げ込まれた。
「誰よ!」
後ろを向くとそこには木場君と小猫ちゃんがいた。
「グレモリー眷属、ナイトの木場祐斗」
「……同じくルーク、塔城小猫」
「な、なんで2人が」
「まさか君が来てるとは思わなかった。部長に頼まれてね。あ、そうだ。
部長から連絡だよ、プロモーションの許可が下りたよ」
「プ、プロモーション?」
「まあ、聞くより慣れろだね。ひとまず
プロモーション、ナイトって言ってみて」
「う、うん。プ、プロモーション・ナイト!」
すると体の中で何かが変わったような感じがして、体が軽くなったような気がした。
試しにその辺を歩いてみるといつのまにか2人よりももっと離れた場所にいた。
そうか! ナイトの特性は速さ!
……つまり、あんなことが……。
僕の頭の中に某特撮ヒーローの映像が流れてくる。
ヤ、ヤバいニヤニヤが止まらない! ……流石にもろパクリは駄目だから……。
「き、緊張するな~……よし、ハイスピードタイム!」
『Start high―speed time!』
籠手からそんな音声が辺りに響いた瞬間、
僕はナイトの特性である高速移動で近くにいた一人の神父を殴り飛ばした。
神父たちは僕の動きに全くついてこれなかったのか突然、
一人が吹き飛んだことに焦りを見せていた。
「ナイスノリだよ! ドライグ!」
『うぅ、ぐす! こうやって俺は堕ちていくんだな』
何故だかドライグの声が涙声になっていた。
「へ~。なかなかやるじゃない」
レイナーレは僕が意外と戦えるのを知ったのか驚嘆の声を出した。
「イッセーくん、ここは任せてアーシアさんを」
「うん! ドライグ! もう一回行くよドライグ!」
『Start high―speed time!』
僕はナイトのまま高速で動いてアーシアさんへと近づいて行くけど
レイナーレは一切手を出さないまま、ニタニタとにやけながら僕を見ていた。
それは僕がアルジェントさんを救出して抱きかかえた状態でも変わらなかった。
「早く行けば? 下級悪魔さん」
レイナーレの言葉に僕は疑問を抱かざるを得なかったけど今は、
アーシアさんの方が先なのでその場を木場君達に任せて教会の外へと出た。
「アーシアさん! アーシアさん!」
無事に教会の外に脱出できた僕はアーシアさんを抱きかかえたまま
何度も彼女に呼びかけるけど反応は鈍かった。
呼吸もなんか弱弱しいし。
「イ……ッセーさん?」
ようやく、目を覚ましたアーシアさんの声はかなり弱弱しかった。
「ごめ……んなさい………私……もう」
アーシアさんは突然、涙を流しながら僕に謝りだした。
「な、なんで謝るのさ!」
抱きかかえているアーシアさんの体から徐々に
温もりが無くなっていくのが分かった。
僕の腕をつかんでいる腕もフルフルと震えていて僕が腕を動かしただけで
彼女の腕は地面にだらしなく落ちた。
「な、何がどうなって」
「その子はもう助からないわよ」
「レイナーレ!」
突然、後ろから声が聞こえ、そっちの方向を向くとそこにはレイナーレが立っていた。
「ねえ、見て。この肩の傷。あの騎士君に付けられた傷
なんだけどねとっても痛いわ。でもね、ほら」
彼女の指からポわっと淡い光を出すと、傷口に沿って
指を動かすと切り傷が完全に消えた。
僕は彼女の方の傷がいえた事よりも
レイナーレの手から出た光に疑問を抱いた。
「な、なんで君がアルジェントさんのセイグリッドギアを使えるの!?」
「その子のセイグリッドギアを取り出して私に移植したの」
レイナーレは自分の掌を何度も見ながら僕にそう言った。
「これも教えてあげるわ。神器を無理やり摘出された者は死に至る」
「っ!」
レイナーレは言ったことに僕は驚きを隠せずにはいられなかった。
一瞬、彼女のウソかとも思ったけどアーシアさんの状態を見ると
とても嘘を言っているようには思えなかった。
「イ……ッセーさん」
アーシアさんが必死に喉を震わして、集中して聞いていないと
聞き逃すんじゃないかと思うくらいに小さな声を出した。
「私……は……ま……だ……貴方の……友達で……すか?」
「当たり前じゃないか! ずっと! 友達だよ!」
「ふふ……よ……か……った」
そのままアーシアさんは眠るようにして瞼を閉じ、
僕の腕を必死につかんでいた手はダランと力なく地面に落ちた。
「アーシアさん? ……ねえ、アーシアさん!」
僕は何度も彼女の体をゆすって声をかけるが、僕の耳に
彼女の綺麗な声が届くことはなかった。
彼女が死んだと分かった時から僕の眼から大粒の涙がずっと流れ続けている。
止まることを知らない涙はそのまま僕の眼から落ち、アーシアさんの顔に
ぴたぴたと落ちていく。
その代りに聞きたくもない声が耳を貫いた。
「うふふふふふ! これよ! この神器さえあれば私は
あの方々から愛を受け取ることができる! シェムハザ様! アザゼル様!
うふふ! これで私の堕天使としての地位は確立したわ! あははは!」
僕は冷たくなったアーシアさんをゆっくりと床に置き、制服の
上着を彼女にかぶせてあげた。
「あはははっ!?」
『Boost!』
突然、レイナーレは高笑いを止めてまるで、恐ろしいもの
でも見ているかのような目で僕の方を見てきた。
待ってて、アーシアさん……すぐに終わらせるから。
「な、なに?」
…………許さない。
『Boost!』
「な、何? 何が起きてるの!?」
倍加されていくにつれて、地面が、柱が、窓ガラスが悲鳴を上げていた。
「アーシアさん…………アーシアさんは!」
『Boost!』
地面にいくつもの大きな穴が開いていく。
「こんなところで死んじゃいけないんだ!」
僕の叫びとともに辺りに全身から魔力が一気に放出され窓ガラスが一斉に割れ、
さらに暴風が辺りに吹き荒れ、木々が大きく揺さぶられていた。
「は、はは。なんなのよ! なんなんのよその魔力の量は!
今の貴方の魔力は上級悪魔、いや! 最上級悪魔に匹敵するほどの量じゃない!」
「許さない!」
「こんの!」
レイナーレは目の前の怪物である僕に光の槍を投げつける。
「だぁ!」
僕は籠手が装着されている腕を横に振りはらって光の槍を一撃で消した。
「そ、そんな! か、片手で!」
レイナーレは更に数を増やし、光の力を強めてて槍を僕に投げつけてくる。
「やぁ!」
籠手を向かってくる槍に向けると先の方から魔力が球体上に集められていき、
放たれると光の槍を全て飲み込んで消滅した。
今は……今だけはいつもみたいにビクビクしたらだめなんだ!
僕は気合を入れるために地面を強く蹴ると地面に大きな穴があく。
「悪魔風情がぁぁぁぁ!」
彼女は自身が持つ全身全霊の光の力を収束させ槍を生成して僕に投げてきた。
「うおぉぉ!」
僕は魔力を籠手に集めて力いっぱい殴りつけると砕け散った。
光の力が僕の皮膚を焼いていく……痛い。もう泣きたいくらいに痛いけど
今は……今は目の前だけを見るんだ!
「こ、こんなのに勝ってこないじゃない!」
そう言ってレイナーレは黒い翼を生やして
羽ばたこうとするけど僕がそうはさせなかった。
「捕まえた!」
「きゃ! 離せ!」
僕は飛びあがってレイナーレの羽根を掴むと力の限り自分側に引き寄せた。
「や、止め」
「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
僕は獣みたいに咆哮をあげて魔力を溜めに溜めまくった籠手で殴りつけると
教会を貫通して遠くのほうにまで飛んでいった。
こんばんわ~