「ごぎゅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
『BoostBoostBoost!』
イッセーが叫び始めた途端、籠手からくぐもった音声が響き彼の魔力が倍加されていく。
こんなところで覇龍の一撃なんか放たれたら辺りを囲っている結界なんか
簡単に吹き飛んで観客にまで被害が!
『くそが! 覇龍に意識を持っていかれたのか!』
アザゼルが怒りに満ちた声で放送席から叫んでいた。
「サイラオーグ! 気をつけて! 暴走したイッセーは見境が」
「ぐあぁ!」
「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!」
「サイラオーグ!」
いつの間にかイッセーは高速で移動して金色の鎧を纏ったサイラオーグの
右腕に噛みついていた。
「これがうわさに聞く暴走か! ふん!」
サイラオーグは腕を横に振るってイッセーを弾き飛ばすけど
イッセーは龍の翼を使って体勢を立て直した。
「おぎゅぁぁぁぁぁぁぁ! おわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「赤龍帝が怪物になっちゃったよぉぉぉ!」
観客席から次々と子供たちの泣く声が聞こえてきた。
無理もないわ……今のイッセーは四つん這いになって口からよだれを垂らしているから。
「イッセー! 止めなさい!」
「おぎゅぁぁぁぁぁぁぁ!」
「退けリアス!」
サイラオーグは私をイッセーから退かすと彼の顔に拳を突き刺した。
凄まじい衝撃を頭に叩きこまれたからなのか、イッセーは動きを止め、
腕をだらんと垂らした。
「ぐおぉぁぁ!」
一安心しかけた瞬間、イッセーは顔に突き刺さった拳を腕で掴むと、
牙の生えた大きな口を開けてサイラオーグの拳を鎧ごと噛み砕こうとしていた。
「ふん!」
サイラオーグはどうにかして拳を口から離すことができたけど
鎧の上から噛んでいるのに牙が深く突き刺さり、血が流れていた。
「おぎゅわぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「ま、魔力が集まっていく」
イッセーが大きく口を開けて上を向くと今まで倍加してきた魔力が
集まっていき巨大な魔力弾を生成した。
「サイラオーグ避けて! 貴方まで死んでしまうわ!」
「それは無理だ! 俺がこれを避ければ確実に結界を砕いて
後ろの観客席にまで魔力弾が飛んでいく!」
そ、そんな! なんとしてでもイッセーの意識を取り戻さなきゃ!
「イッセー! しっかりしなさい!」
「うぎゅだぁぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁ!」
「リアス!」
私がイッセーに近づこうとするとその大きな龍の翼で弾かれて
飛ばされてしまった。
「イッセー! お願い! もう止めて!」
「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぉぉぉ!」
その時、突然イッセーの右腕がひとりでに動いて肩を掴んだ。
『くくく、直にこいつは覇龍の力に飲み込まれる』
『相棒! 目を覚ませ!』
『無駄だよドライグ』
暗い……何も見えないくらいの闇が僕の中に集まっていた。
目を開けているのに瞑っている時と同じくらいに暗かった。
なんだろ……体の奥底から力が湧いてくる。
『駄目だ相棒! 覇龍の力を認めるな!』
うるさいな~黙っててよ。今心地が良いんだから。
僕が目の前にいる人たちの手をつかみ取ろうとしたその時だった。
視界に光が入ってきた。
それはだんだん大きくなりモニターの様になって映像を映した。
『赤龍帝ー!』
……子供たちの泣き声?
『イッセー! お願いもう止めて!』
部長?
『イッセー! 覇龍に飲み込まれるな!』
アザゼル先生。
『皆泣いちゃダメぇぇぇぇぇぇぇ!』
この声は……ミリキャス様?
『あれは赤龍帝様の偽物なんだ!きっと本物がやってきて
偽物を倒してくれるよ!』
ミリキャス様につられて多くの子供たちが僕に声援を送ってくれる。
『頑張れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
『赤龍帝ーーーー!』
そして映像はもう一度、部長を映した。
『お願い……イッセー……もう止めて……目を覚まして! お願い!』
部長が……泣いてる?
部長が泣いている顔を見た瞬間、僕は完全に正気を取り戻した。
そうだ。もうこんな力に頼っちゃいけないって決めていたのに僕は頼ろうとして
大好きな人を……リアスさんを泣かせたんだ!
『な、なんだこれは』
「お、おぉぉぉ」
徐々に僕にまとわりついていた闇が光へと変わっていく。
『ふ、ふん! 今さら何をしようが覇龍の力は追い出せん!』
追い出すんじゃない! 覇龍の力を受け入れるんだ! 反抗するから
今までのような暴走が起きたんだ!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
『くぅ!』
僕が叫ぶとあれだけ暗かった空間が一気に破壊され光り輝く
空間に変わり僕を覆っていた覇龍の闇も光へと変わった。
「はぁ……はぁ」
『バ、バカな。あり得ない、覇龍の闇を光に変えたのか!』
歴代所有者たちは首を左右に振り、今まで暗闇だった空間が
光に満ちたことに驚きを隠せないでいた。
「僕は二度と覇龍の力を壊すために使わない! 護りたいものを護るために使う!」
『小癪な! ならば無理やりにでも』
『待て』
無理やり、覇龍の力で僕を操ろうと歴代所有者が近づいてきた瞬間、
その中の一人が声を上げた。
この人も顔は見えないけどどうやらまだ意識はあるらしい。
『お前、名前は』
「兵藤一誠」
顔を上げて声を上げた、所有者を見るけど表情は一切見えなかった。
『そうか……イッセー。俺はお前の物語が見たくなった、力を貸そう』
っ!? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
『な! 貴様!』
今、僕の目の前にいる所有者の言った事に他の所有者たちは動揺を隠せなかった。
力を貸すってことは覇龍の力を僕が完全に制御できるようになるかもしれない。
『初めはただ単に暴走させていただけの俺達がこうまでして執着するようになった。
それはこいつが全てを破壊する可能性があると考えたからだ。だが逆を言えば
俺達が執着するほどの可能性を秘めているということだ』
それを言うと他の所有者たちはダンマリをした。
『……僕も続きが見たい』
次々と歴代の所有者さん達が僕の近くに寄って来て、結局、
過去の歴代所有者全員が僕に近づいてきた。
「え、えっと」
『満場一致だ。お前に力をやる、覇龍の力を使う際の負担を
俺達がいくらか無くしてやる。それで恐らく寿命は削らなくなるだろう』
『でも注意しておけ小僧。覇龍の力はいつも暴走と隣り合わせじゃ』
『君の気持ちが揺らげばすぐに暴走し寿命を削る』
「はい! 分かりました!」
よ、ようするに今まで発動すれば暴走していた力を自由に扱えるようになるということ……
つまり今まで以上の力が僕の手の中に入ってくるんだ。
そう考えていると一人の所集者が僕の肩に手を置いた。
『獅子の小僧にひと泡吹かせて来い』
「おがぁぁぁぁぁ!」
な、何!?何が起こってるの!?
いきなりイッセーは龍の腕で自分の体に傷をつけ始めた。
その直後、彼の体に小さなひびが入っていき集まって来ていた魔力弾も消滅し消え去った。
そして次の瞬間。
「きゃっ!」
辺りに衝撃波を放ちながらガラスが砕けるかのようにイッセーは砕け散った。
「イ、イッセー?」
砕け散った後には何も残っていなかった。
「きゃ! 今度は何!?」
突然、上から何かが降ってきて辺りを大きく揺らした。
「お前の運命は俺が決める」
「イッセー!」
粉じんが晴れ、そこにいたのはいつもの彼だった。
『なんということでしょうか! 赤龍帝が割れたかと思うと
空から降って来ました! 赤龍帝の復活です!』
『おぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『たっく心配掛けさせやがって』
アナウンサーのその一言で会場が一気に盛り上がった。
ふぅ……実際、本当に今回は覇龍の力に飲み込まれかけた。
「お前は色々と凄いな」
「それはありがとうございます」
『Welsh Dtagon バランスブレイカー!』
僕は赤い鎧を身にまとった。
「この力はバランスブレイク」
僕はそう呟き、赤色の鎧を消滅させると
サイラオーグさんは驚いたような表情を浮かべていた。
「何故、鎧を消した」
僕はサイラオーグさんの話を今は、無視してある力を発動した。
「我、目覚めるは 覇の理を神より奪いし二天龍なり 無限を嗤い、
夢幻を憂う 我、赤き龍の覇王と成りて 汝を紅蓮の煉獄に沈めよう」
『Juggernaut Draive!』
僕を赤黒い鎧が包みこんだ。
「寿命を減らす気か!?」
「いいえ、歴代の先輩方に力を貸してもらって
完璧に制御できるようになりました」
そう言うと僕は覇龍を納めて少し休憩した。
二つの力を連続で発動したから、その分かなり魔力を消費してしまった。
「もしも、破壊に特化した覇龍とスケールアップのバランスブレイク―――――この
二つを組み合わせたらどうなると思います」
『そんなこと可能なのかよ!?』
放送席でアザゼル先生が驚嘆の声をあげていた。
先生が驚くのも無理はないと思う。だって今まで二天龍の力を持った人たちが
バランスブレイクと覇龍の力を組み合わせたなんてのは聞いたことがないもん。
実際にドライグもかなり驚いていた。そんなことが可能なのかと。
「可能なのか?」
「可能だから言っているんです! 見せてやります!
これが赤龍帝の! 正真正銘、最後の姿だ!」
『我、目覚めるは 覇王の真理を天に掲げし、赤龍帝なり』
籠手の宝玉が紅色に輝きはじめ、先輩達の呪詛が響いてくる。
今までのような怨念がふんだんに込められた声じゃない。
『無限の希望と不滅の夢を抱いて、覇道を往く
我、紅き龍の覇王と成りて 汝を真紅に光り輝く覇道へ導こう』
さあ行きましょう先輩方! 歴史に名を刻むくらいの勢いで!
『Balanse Drive!』
ますます、イッセー君がチート化していく。
ていうか、学校がもうすぐ始まってしまう(泣)