「本気か? お前」
文化祭が終わってすぐのことだった。
突然、俺のプライベート用の通信魔法陣に通信が入ったかと思えば
連絡の主はあのヴァーリだった。
その連絡を聞いた時、俺―――――アザゼルは生涯しないであろう顔をしていた。
『彼……いや今は彼女か。彼女もそう望んでいる。それにさっきから
イッセーに会いたいとうるさくてね。俺としても久々にあいつに会いたいし
興味もあるからぜひ便宜を図りたくてね』
連絡用の魔法陣からオーフィスらしき声も僅かに聞こえてくる。
まあ、イッセーは悪魔になりたての頃から何かとオーフィスに遭遇していたと
は聞いている。イッセーとオーフィスの関係は友達みたいなもんだからな。
「……それだけじゃねえんだろ?」
『流石は総督殿だ。各組織からうとまれているだけの事はある』
「うっせ。で? 要はイッセーか?」
『ああ。聞いたよ、赤龍帝最強にして最高の姿。バランスドライブ』
「だがあの力は今のイッセーにはでか過ぎる」
『ま、そこら辺の事も含め、あいつに会いたいね』
その戦いも寝床から始まった。
やけに大きな音が聞こえると思い、目をあけるとベッドの端の方で
部……リアスと朱乃さんが言いあいをしていた。
戦の発端は朱乃さんが僕に目覚めのキスをしようとしたところがバレたことにより
第二次二大お姉さま大戦が始まった……らしい。
今、2人はベッドの上に立ちあって睨みあっている。
「朝からイッセーにキスするなんて……と言いたいけれど
昨夜はたっぷりと甘えさせてもらったから許してあげるわ」
リアスは勝者の余裕というものがあるのか、めちゃくちゃ余裕の笑みを浮かべてる。
ま、まあ昨日寝る前にめちゃくちゃ甘えてきたからね~。
だって『おやすみのキスして?』とか『抱きしめて寝て?』
とかめちゃくちゃ可愛く言うんだよ!?
あんな目をするリアスを断れたら僕、尊敬するよ!
まあ、誰にも見せる気はないけど。
「あらあら、正妻の余裕かしら?」
「ふふ、イッセーと私は一緒なの。これは決して揺るがないわ」
リアスが言う事に僕は自分でもわかるくらいに頬を赤くしてしまう。
う、うんまあ離す気はありませんけど。
「朝ごはんよ、降りてきなさい」
リアスはそう言うと下に降りていった。
「ああ見えて彼女、少し焦ってるのよ」
朱乃さんはベッドに腰をおろしながらそう言った。
焦ってる?
「先日のゲームで彼女はイッセー君の枷になってしまった。
結果的には勝てたけど彼女の中では敗北したも同然なのよ」
「そ、そんな! 戦った相手がロンギヌスだったからですよ!」
「イッセー君はそのロンギヌス所有者にも勝利、
もしくは引き分けに終わっていますわ。私も無様に負けてしまいましたし」
朱乃さんは表情を暗くした。
彼女が戦った相手は若手悪魔のクイーンの中で一番の実力を持つとまで
言われているし、相手の能力と朱乃さんの能力の相性が最悪に近かった。
「あ、あれはただ単に相性が最悪だっただけです!」
「でもイッセー君は一撃で決めましたわよね?」
うぅ! ど、どう言えばいいんだぁぁぁぁぁぁ!
何を言えば分からなくなって混乱している僕の顔を見て朱乃さんは
笑みを浮かべて頬を撫でてくる。
「ふふ、私も強くなりますわ。イッセー君ほど強くはなれなくても
枷にならない程度まで強くなります……ふふ、アーシアさんも来た事ですしね」
「っ!?」
慌ててドアの方を向くとそこには顔を
引きつらせて無理やり笑顔を浮かべているアーシアさんがいた。
「はうぅぅう! 目覚めのキスをしようと思っていたんです!」
いやいや、流石にそれは。
「え! 嘘! 先越されてる!」
後ろからゼノヴィアさんとイリナさんも部屋を覗いていた。
「むぅ! 突撃だぁぁぁ! 皆のもの行くぞ!」
ゼノヴィアさんの合図とともに三人が僕に襲いかかってきた!
もう止めてくれぇェェェェェェェェ!
「イッセー! おはよう」
「はい! おはようございます!」
一階の居間に行くとリアスが満面の笑みで僕を迎えてくれた。
はぁ~朝のあの激闘の疲れはリアスの笑顔で一気に吹き飛びます!
おっ! 今日の朝ごはんは和食ですか。
テーブルを見てみると和え物や、煮物などがズラリと並んでいた。
うんうん、朝の定番メニューだよね!
「頂きます!」
美味しくご飯を頂いていると父さんが笑いながら僕に話しかけてくる。
「イッセー。今、父さんは朝が一番幸せだ」
「うん、僕も幸せだよ!」
だってリアスっていう好きな人も出来たんだから!
「ねえ、イッセー」
「何、母さん」
「孫はいつになる?」
「ゴホッ! ゴホッ!」
僕は母さんの言った事に口に含んでいた味噌汁を吹き出してしまった。
こ、子ども!? な、何言ってんだよ母さん!
「と、当分先かな? 今はリアスと過ごしたいから」
「ふふ、そう……絶対に離すんじゃないよ」
「勿論!」
母さんは僕にそう言うと今度はリアスに視線を移した。
「リアスさんにならイッセー、渡してもいいよ」
「お、叔母様」
母さんの言った事にリアスはメチャクチャ顔を赤くして俯いていた。
……これって地味に結婚はもう許しちゃってるからね~っていう事?
そういえば気になることが一つあった……若干小猫ちゃんの顔色が悪い。
「どうかしましたの? 小猫さん」
「何もない……余計な御世話」
レイヴェルさんの気遣いもいつもよりも冷たくあしらっている気がする。
大丈夫かな?
その日の晩、僕の部屋にサーゼクス様とグレイフィアさんがやってきた。
僕たちはお二方をVIPルームに招き入れて話を聞いていた。
「先日も話した通りイッセー君、木場君、朱乃君に昇格の話が出ている」
僕達は何度も敵を追い払ってきてるし、何度も悪魔の
お偉いさんとかを事前に助けているということで昇格の話が来ているらしい。
先生曰く、これまでの経歴を見てもむしろ遅すぎるほどみたい。
「お前ら三人はむしろ上級に飛び級で行ってもいいほどなんだが
上がうるさいらしくてな。特例は認めても例外は認めないらしい」
「昇格推薦おめでとう、三人とも! 貴方達は自慢の卷属だわ!」
リアスはまるで自分のことのように喜んでくれている。
……まあ、リアスが笑ってくれているから良いかな。
そう思っていると急に2人が真剣な顔して立ちあがった。
「このたびの昇格のお話、誠にありがとうございます。身に余る光栄です。
リアス・グレモリー卷属のナイトとしてありがたく受けさて頂きます」
「わたくしも身に余る光栄です。リアス・グレモリー卷属の
クイーンとしてありがたく受けさて頂きます」
「イッセー君も受けてくれるかな?」
「は、はい!」
僕も立ち上がってサーゼクス様に頭を下げた。
こうして僕たちは中級悪魔に昇格する権利を頂いた。
「にしてもすげえなお前は」
「ありがと」
翌日、僕は匙君と生徒会室でお菓子を食べながら駄弁っていた。
本当は会長さんに呼ばれてきたんだけど、あいにく会長さんに突然仕事が入ってしまい
会長が来るまでの間、匙君と駄弁って時間を潰している。
「もう中級悪魔への推薦きたのかよ」
「うん。なんか禍の団とかと闘ってたら来ちゃった」
僕は生徒会室に置かれている冷蔵庫からアイスを取り出して彼と喋っていた。
うん、このアイスは本当に美味しいよ。
「ていうよりも生きてる方が不思議だ」
「そんな化け物みたいに言わないでよ」
「あら兵藤君、来ていたのですね」
すると、仕事を終えたらしき会長さんがここに降臨。
匙君は慌ててお菓子を隠そうとするが速攻で見つかって
頭グリグリされた後、問題が発生したから解決して来いって言われてダッシュで向かった。
……静かだな~。
「リアスに告白したそうですね」
「はい……リア……部長から聞いたんですか?」
「ふふ、リアスで良いですよ。彼女とは昔から友人でしたから。
今では通信用の魔法陣で惚気を聞かされていますが」
あ~……恥ずかしい。
「貴方は私が出来なかったことをどんどんしていくわね」
会長は少し、表情を暗くしてポツポツと言葉を吐いていく。
「……どういう事でしょうか」
「……ライザーフェニックスを倒してまで彼女を護り。木場君の過去を
払拭し、朱乃の全てを受け入れ彼女を癒し、小猫さん、ギャスパー君の力を
大幅に上げた。リアスが抱えていたものを全部貴方が軽くしたの。
長い間、傍にいた私が出来なかったことを全てした」
……多分会長は悪魔のしきたりだから、上級悪魔の御家の問題だからとかで
手を出したくても出せなかったんだと思う。
「……逆に会長にしかできないことだってありますよ」
「私にですか?」
会長は驚いたような顔をしていた。
「はい、リアスが貴方に惚気を言うのも親友である貴方だからですよ。だって、
リアスが惚気話を会長に話すっていうことは会長に完全に心を許しているからですよ」
だって木場君や小猫ちゃんには惚気を聞かせていない。
恐らくだけど惚気を聞かされてるのは会長だけだ。
「……イッセー君。これからもリアスの事、護ってあげてください」
「はい! ずっと守っていきます!」
それが僕の……あの方のポーンでもあり恋人でもある僕の誓いだ。
夏休みが終わっちまう。