あの激励が部長の心に何かしらの変化を促してくれる。
僕はそう確信しながらある場所へと向かっていた。
サイラオーグさんが城を出てすぐにある方が場内に姿を現したとの
報告を受けて僕はその方がいる場所へと歩を進めていた。
向かっている場所はグレモリー邸にある表立たない場所にある一室で
そこにヴァーリチームがいた。
部屋に入るとヴァーリチームの面々と僕が探していた人物―――初代孫悟空がいた。
初代はベッドで上半身だけを上げているヴァーリに仙術の気を集めた手のひらを
腹から胸、そして口へと持って行く。
「ゴボッ!」
ヴァーリの口から黒い何かが吐き出され初代はそれを透明な入れ物に入れ
上から呪札の様なものを張り付けた。
恐らく封印したんだろう。
「ふぃ~。これでひと先ずは終わりじゃな。大馬鹿の
美猴が連絡を寄こしたと思ったらまさか、アルビオンを世話するとはのう」
「うるせえ、クソ爺。で、ヴァーリは治るんかよ」
「もともと、こいつは魔力が異常じゃから大丈夫じゃろうて」
「……礼を言う、初代殿。これで戦えそうだ」
ヴァーリが敬語を使うという事は彼の中でも初代孫悟空の存在は大きいらしい。
「初代様、少しよろしいでしょうか」
「なんじゃ、聖魔剣の」
僕は疑問に思っている事を初代に尋ねていく。
「呪いを受けた際にドラゴンが生き残る時はどのような状況なのか」
仙術と妖術を極め、仏にまで神格化された斉天大聖孫悟空。
この方がサマエルの毒に触れてどのように感じたかを聞きたかった。
「この呪いにかかればまずは肉体が滅ぶ。次に魂じゃ。
魂ほどもろいもんはないじゃろうからの~。じゃが、あの赤龍帝は
一回では死ななかったらしいのう。爺にも届いておるぞ」
以前、イッセー君が編み出した破壊の覇龍とスケールアップのバランスブレイクを
組み合わせた赤龍帝、最強最高にして最終の姿――――――バランスドライブをした際に
彼は碌に喋る事すら出来なかったらしい――――――
その苦しさが呪いよりも勝っているという事なのか。
「帰ってきた駒に毒の反応はあったんかぃ?」
「いえ、ありませんでした」
僕がそう言うと初代は煙管を吹かせ、口の端を笑ました。
「―――――――てことはだ。魂はまだ無事な可能性がある。
案外あの、最強坊主がひょっこり時空のはざまのどこかで生きてるかもしれんぜ」
……そうだ! まだ、彼が死んだと決まったわけじゃない!
僕の親友が生きている可能性があるんだ!
「じゃあな。外にウーロンを待たせてるんじゃ……赤龍帝は
民衆の心をひきつけ、白龍皇は荒くれ者を引きつけ、両者ともども
歴代最強とはのう。似た者同士じゃ」
そう言って初代殿は帰っていった。
「………ヴァーリ・ルシファー。君はこれからどうするんだい?」
「……兵藤一誠の敵打ちといえばお前達は喜ぶか?」
……つまり、まだ戦う意思はあるという事か。
初代に訊きたい事を聞き終わった僕は地下から上がってきた。
初代から聞いた情報をもとにあの方に連絡を取りたいんだが―――――
「祐斗さんですね」
そう考えていると後ろから不意に呼ばれた。
後ろを振り向くとそこには髪の毛を一本にまとめて、ボディラインが
はっきりと見える戦闘スーツを着たグレイフィアさんがいた。
「グレイフィア様も前線に?」
僕がそう尋ねるとグレイフィア様は首を縦に振った。
「聖槍の手前、出られないサーゼクスに変わってジャバウオックを
迎撃に向かいます。最低でもその歩みは止めてみせます」
この人が自信を持ってそう宣言されると本当に実行しそうに感じる。
僕の剣の師匠もルシファー卷属の一人でナイトだ。
あの方の剣で断てないものなんかない。
「それとサーゼクスとアザゼル総督からの情報です。リアスに渡してもらえます?」
グレイフィア様から渡されたのは一枚のメモ用紙だった。
失礼ながらそのメモ用紙を見てみるとそこには悪魔文字で『アジュカ・ベルゼブブ』
『拠点』と走り書きされていた。
「これは?」
「アジュカ・ベルゼブブ様が拠点になさっている場所です。
そこへ赴き、彼の駒を見てもらえとの総督からの伝言です。
アジュカ様ならわずかな可能性でも拾い上げてくれるでしょう」
イーヴィルピースの制作者であるアジュカ様……僕が連絡を取りたい人だ。
「私の義弟がこの程度で消滅するはずがありませんから。
サーゼクスを倒すと宣言したものがこれで消滅すれば良い笑い話です」
イッセー君、君の義姉は優しくも厳しい人だよ。
深夜、僕と部長と朱乃さん、アーシアさん、小猫ちゃん、レイヴェルさんとで
僕達が住んでいる町から電車で8つほど、離れた場所にあるアジュカ様の
拠点地へと向かっていた。
廃ビルに一歩足を踏み入れる。
「……イッセーが怖がりそうな場所ね」
……部長……
「お待ちしておりました」
僕たちの前にスーツを着た女性が現れた。
「さあ、あちらのエレベーターへ。アジュカ様がお待ちです」
エレベーターで到着した屋上は広く、小さな庭園だった。
その庭園の中心にアジュカ様が座っていた。
「アジュカ様」
部長が一歩、踏み出してアジュカ様に近づこうとするとアジュカ様は
手を上げて僕達を制止させた。
「駒を見てほしいんだろう? だが、他にもお客がいてね」
暗闇で気づかなかったけど前に数人がいた。
この魔力……上級悪魔……いや、それ以上の力を持つ者もいる。
「で? 何の用かな、ジーク君」
「単刀直入に言おう。我々と」
「断る」
アジュカ様はジークフリートの話を最後まで聞かずにキッパリと断ってしまった。
「君達の事だ。同盟でも組む気だろう……それは私の趣味じゃないんだ。
私は一人で何かを細々としたいものでね。まあ、人間界で言うオタクというやつだ」
アジュカ様がそう言うと上級悪魔クラスの者たちが殺気立つ。
「だから言ったのだ! こいつとあの男は独善で冥界を支配しているだけだ!」
「今こそ滅するときぞ!」
しかし、目の前の光景を目にしてもアジュカ様は動かずに椅子に座りっぱなしだ。
「ふむ……この程度ならば立つ意味はないな。赤龍帝君のほうがもっと
濃い魔力を放っていたんだがね」
「ッッ! あんな奴以下ではない!」
一人が大質量の魔力弾をアジュカ様に撃ってきた!
「ふむ、駄目だな」
アジュカ様は手元の魔法陣を操作して魔力弾が当たる寸前で、
その弾の軌道が突然、変更され放ってきた悪魔に跳ね返された。
「――――――っ!」
絶叫する間もなく悪魔の一人が消え去った。
「貴様!」
残りの二人も負けじと魔力弾を放つが……。
「こうすることも出来る」
さらに魔法陣を操ると魔力弾の起動が変わり元の威力の何倍もの速さと
威力で放った元の主たちを貫いた!
「……流石は魔王だ」
「ふむ、君は逃げないのかい?」
ジークフリートは嫌な笑みを浮かべながら立っている。
「まだ切り札があるのでね。それでもだめなら撤退しよう」
「ふむ・・…面白そうだが君を倒すのは僕ではなく後ろに騎士君みたいだぞ」
アジュカ様は僕の戦意を感じられていたのか。
僕はそう言われ一歩踏み出す。
「祐斗?」
「部長、僕行きます」
僕は刀を一本作りだしジークフリート対峙した。